【完結】海賊令嬢と幽霊船 ―誰の心にもある“冒険への憧れ”を君に!― (海賊令嬢シリーズ4)

SHOTARO

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3.バルト海を並び行く幽霊たち

3-8.公爵の危機

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3-8.公爵の危機

「ヴィル! 聞いて!」と、従姉妹のアンナが駆けてきた。
「どうしたの? アンナ?」

「実は、実は、私たち公爵家と付き合うと、『騎士団に殺された者の幽霊が領地に入り込むから、私たちとお付き合いしてはいけない』って、他の貴族たちが噂しているのよ」
「何ですって!」

 間に合わなかった!
 恐れていたことが、起きてしまった。

 私は、頭が白くなってしまったが、一呼吸して落ち着くことにした。

 そうなのだ。あまりにも噂が早すぎる。
 ほんの数日で、領地を超えて、他の貴族まで伝わるのだろうか?
 私たちが着いた、一週間前までは、幽霊船が出るらしい程度の噂だったはず。
 
「アンナ、落ち着いて中でお話を聞きましょう。伯父さまも中なのでしょう?」と言うと、アンナは落ち着いたせいか、クライネスの存在に気が付いたようだ。

「あら、これは可愛いお客様ね。貴女はどなたなの?」

 おい、クライネス。
 教えた通りに、ご挨拶するんだよ。でないと、クッキーは無しだからな!

「あわわ、おかし……ら、いや、お嬢様のふふふねで……」
「おかし??? お菓子が、どうしたのかしら」とほほ笑むアンナ。

 ダメだ!
 フォローしておこう。

「紹介いたしますわ。うちの商船で飼っている、仔犬ですわ」
「「ええっ!?」」

「エルメンヒルデ! このワン子の面倒を見ておやり。後のことは任せました」と、クライネスをエルメンヒルデに任せて、伯父のいる部屋にアンナと向かうことにした。

 頭を下げているが、エルメンヒルデが笑っているのが分かったわ。ふふふ。

「伯父様、アンナから聞きましたわ。他の貴族が良からぬ噂を立てていると」
「ヴィル……」と言うと伯父は黙ってしまった。
「アンナ、その噂は誰から聞いたの?」
「王妃様よ。そして、言っている本人も王妃様よ」

 なんと、自分で噂を流し、自分で忠告してきたのか?
 根性が悪すぎる。
 やはり、ハプスブルクの連中は始末するに限る。

「伯父様、今回の一件は、誰かが糸を引いているはずです。あまりにも事の進展が早すぎます。黒幕がいるはず。だから、黒幕を捕まえない限り、収まらないわ」
「ヴィル!」
「幽霊船は、捕まえるまで、ここから離れないわ。だから、安心して」
「分かったわ。ヴィル」
「だから、陸のことは任せますわ。私は、海の方をします」
「ありがとう」
「助かるよ。ヴィル」

 私は、早速、バルト海へ巡回に行きたかったので、お暇させて頂くことにしたが、クライネスがいない。
「エルメンヒルデ、クライネスは?」
「はい、先ほどから、公爵様がご試走してくださっています」

 伯父が気を利かせて、あの後、クライネスの相手をしてくださったようだ。クッキーで。
 伯父の顔は鷹の様で恐ろしいんだけど、よくクッキーを食べれたよな。クライネス。


「エマリー、もう時間がないようだ。実は……」
「それって、相手の術中にはまっているじゃない。相手が動いてからでは手遅れね」
「ああ、この狭いバルト海に隠れる場所などあるのか?」
「というか、入り江だらけなので、一つ一つ調べるのも手間よ」
 そして、東に行けば行くほど、ポーランドやリトアニアなど、ドイツ騎士団に恨みを持つ連中が多い場所になる。
 だから、その辺りが隠れ家ではないかと思っている。

 では、最もドイツ騎士団に恨みを持っているところはどこだろうか?
 ドイツ騎士団が皆殺しをしたという、ゴットランド島だろうか?


 ここは、ドーバー港のとある酒場の個室。
 黒船のキャプテンが、例の設計図を広げていた。

「ホーキンスの親父さん、これをどう思う?」
「うん。これは危ない。放置は出来ん。フランシス、お前もそう思うだろう?」
「あぁ、これを放置していると、イギリスは攻め込まれる」
「ボスに報告が必要だ。ボスには儂から伝えておく、バーナー」と、ホーキンスが答えた。

 ホーキンス!
 この時代を代表する海賊で、誰もが認めるナンバーワンだ。
 その従兄弟がドレイクで、後継者的存在だ。

 その海賊のボスとは誰だろうか?
「女王陛下も苦労が絶えないな」
 女王陛下?
 そうなのだ。海賊たちの頂点に立つのは、エリザベス一世なのだ。
 海賊と海軍を仕切るボス、それがエリザベス女王ということになる。

「しかし、この巨大戦艦。大砲を積み過ぎではないのか? バラストはこれで良いのか?」
「儂もそう思う。船首ヘビーなガレオン船を、さらにヘビーにしている。かなり船速も遅いだろうし。バランスが悪い上、横転でもするんではないか?」

(改良が必要か? となると腕の立つ技師も必要か? この船をバーナー・シュバルツ海賊団の旗艦にしたいのだが)と、黒ずくめのキャプテンは思っていた。

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