【完結】海賊令嬢と幽霊船 ―誰の心にもある“冒険への憧れ”を君に!― (海賊令嬢シリーズ4)

SHOTARO

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3.バルト海を並び行く幽霊たち

3-14.海賊令嬢の帰還

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3-14.海賊令嬢の帰還

 私たちは、幽霊船に乗り込んだ。

 幽霊船は、既に誰もおらず、ボートもすべて無くなっていた。

「これは、なんだ」
「冗談じゃない」と言う声が聞えてきた。

「どうした?」と、近づいてみると、船員たちが“しゃれこうべ”をいじっている。
「うわっ」と、眼を避けたいシーンだ。若い女が骸骨をいじって、喜んでいるなんて!

「お頭、この骸骨たちは、木で出来ています」
「えっ!」
 なんと、白く塗られた木材で骨を作っていたようだ。
 しかも、すごく雑で、枯れ木を組み合わせているだけだ。

 だが、頭蓋骨の中には、灯りを入れることが出来るらしい。
「試しに火を灯してみようよ」と言う船員が、頭蓋骨の中に灯りを入れてみたところ、なんと、霧に頭蓋骨の影が大きく投影されたのには、驚いたわ。

「ああ、こんな仕掛けもしていたの」と、皆で頷きあった。
 これを木と糸で操っていたようだな。

 また、幽霊船は、霧に紛れるため、白い布を用意しており、船のあちこちに布をかけるフックがあった。

「お頭、宝もありません。破壊しますか? 試し撃ちの練習になります」

 それも悪くはないが、伯父の領民を安心させるため、捕獲しようと思う。
「いや、港まで運ぼう。被弾しているが動かせるか?」
「それは、大丈夫です」
「なら、頼む」

 そして、我ら女海賊団は、ケーニヒスベルクまで幽霊船を、ゆっくりと運ぶことにした。

 すると、途中で追い越していった漁船や商船が、港に連絡していたようで、私たちが入港する時には、既に、黒山の人集りだった。


「旦那様、港から幽霊船が捕まったと連絡が入りました」
「本当か? すぐに港に行く」と、伯父の公爵が執事と話してると、それを聞いていたアンナも出かける用意をして、港に行くことにした。

 伯父たちが港に着くと、漁村組合も商館の人々もやじ馬も、捕獲された幽霊船を見に集まっている。

 そして、漁村組合の者たちは知っていた。
 この捕獲した海賊団は、「公爵様から依頼を受けたキーナ・コスペル海賊団だ」ということを。


「よし、錨を下ろせ! 皆に幽霊船の骸骨の正体を説明してやろう」と言うと、私たちはタラップを降り、骸骨が木で出来た木偶人形で灯りを灯すと影が出来る仕掛けになっていることを説明してやったわ。

 それを突堤前の港湾事務所では、
「お父様、あれはヴィルでは?」
「旦那様、ホーエンツォレルン家の者が海賊風情に……」
「どういうことだ。ヴィルが海賊になっているでは?」と言うと、公爵も執事もアンナも、事務所から駆け出して、突堤へ向かっていたのだな。


 その突堤では、子供たちが、
「白い船、カッコいい」と歓喜している。

 また、漁師たちは、「海賊令嬢様、万歳!」と繰り返し、喜んでいたが、さすがに、万歳三唱は、ちょっと慣れないわ。

 さて、街の女性たちが、ヤスミンに視線を送っている。
 理由は、すぐに分かった。
 ヤスミンは美しい。

 美しいと言っても、美人とか美女ではない。
 どういうことかと言うと、ヤスミンは『男前』だ。
 例えるなら、宝塚の男役のような美しさなのだ。

 なので、女性から熱い視線を送られている。

 一方、男性からは、ローズマリーとイリーゼが気に入られたようだ。
 ローズは世間知らずの可愛い娘だ。可愛いが好きな男性に人気だろう。
 イリーゼは、純粋に美人な上、若いので可愛さもあり人気は出るのはわかる。

 昔、他所のご主人を襲ってしまって、村から追い出されたイライザが若い男を襲わないか、ちょっと心配だ。

 そんなこんなで、突堤はお祭り騒ぎになった。

「幽霊船の見学料は……」と、エマリーが既に商売を始めていた。幽霊船は私たちのものなのか?

 すると、そこに、居てはいけない人物たちが……
「お、伯父様ッ」
「おい、これはどういうことだ?」と、伯父の公爵が説明を求めてきた。
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