【完結】元ドラゴンは竜騎士をめざす ~無能と呼ばれた男が国で唯一無二になるまでの話

樹結理(きゆり)

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第四章《覚醒》編

第百三十二話 共に生きる

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「私も一緒に行きますよ」

 ヴィリーが声を上げた。

「私の国の話ですからね。リュシュ一人で行かせるわけないでしょう。私とロドルガも共に行きます」

「私たちももちろん行くわよ!!」

 アンニーナも声を張り上げる。

「フェイとネヴィルも当然行くでしょ!?」
「あったり前だろ! リュシュみたいに頼りないやつ、誰が一人で行かせるか!」

「ちょ、ちょっとどういう意味だよ」

「ハハ、リュシュ、皆、心配してるんだよ。僕たちも一緒に行く。仲間だろ?」
「フェイ……」

 皆、ニッと笑い頷いた。

「皆……ありがと……」

 俺にはもったいない仲間だよ。

「でもあの怪しい術の魔導具には近付かないで。絶対に。見付けたら教えるから、そのときは退避して欲しい。これだけは約束してくれ」

 あの術に捕まったら恐らく助からない。術の発動前に破壊出来たら良いが、そうでないと近くにいる者の命を吸い取ってしまう。
 皆にそんな危険を冒して欲しくない。

「リュシュ……」

「分かった、約束する」

 真剣な顔で話したからか、皆、頷いてくれた。ただ一人……クフィアナ様はやはり不安そうな顔をしていた。

「リュシュ…………私も共に行きたい…………」
「フフ、駄目ですよ。貴女は女王じゃないですか。貴女が動くわけにはいかない」
「そんなことは!! …………そんなことは分かっているんだ…………でも…………やはり心配だ…………私は二度と失いたくないんだ」

 分かるよ。クフィアナ様の気持ちは痛いほど分かる。おそらく逆の立場なら俺もきっと不安だったはずだから。
 きっと以前の俺なら……なんの力もない俺だったなら……こんなとき皆を見送るしか出来なかったはずだ。
 だから……クフィアナ様の気持ちは分かるんだ。でも……今回はクフィアナ様が出るわけにはいかない。

「大丈夫だから……俺は絶対死なないから。信じてよ、フィー」

 そう言葉にし、クフィアナ様をギュッと抱き締めた。

 これが《俺の気持ち》なのか《ルドの気持ち》なのかは分からない。でも……記憶が蘇る前から俺にとって白竜は特別だった。あのとき出逢ったクフィアナ様は特別だった。記憶が蘇ってからはさらに特別になっただけだ。


 俺はクフィアナ様が好きだ。


 家族としてなのか、女性としてなのか、尊敬する存在としてなのか、憧れの存在なのか…………それは分からないが、そんなことはどうでも良かった。


 ただ、俺はクフィアナ様が好きなんだ。


 クフィアナ様を泣かせたくないんだ。守りたいんだ。これからも……これからもずっと共に生きて行きたいんだ!


「無事に帰って来たら、ちゃんと伝えるから待っててよ」


 誰にも聞こえないくらいの小さな声で、クフィアナ様の耳元で囁いた。抱き締めていたその身体はビクッと反応し、小さく俺の名を呼んだのが身体越しに伝わった。

 クフィアナ様の手は俺の背中をギュッと掴み、力強く抱き締めたかと思うと、そっと緩み俺から身体を離した。
 クフィアナ様は俺の服を掴み、俺を真っ直ぐに見詰める。

「絶対に死ぬな。私はルドが死んだときに力や記憶を封印しただけではないんだ……」

「え?」

「ルドの力を封印したと同時にじゅをかけた。君が死んだときに私も共に死ぬ呪だ」

「!!」

 皆が驚きの顔をした。

「もう一人で生きていくのは嫌だった……君と共に人生を終えたい。だから……君が死んだら私も死ぬのだ……だから絶対に死ぬな!」

「今度こそ……私と共に生きてくれ……」


「フィー……」


 酷く切なくなった。
 どれだけの長い間、この人は孤独だったのか。
 周りに多くの仲間がいても、ずっと孤独だったのか……。
 本当の自分をずっと隠して、多くの竜を犠牲にして造られた竜だということに罪悪感を感じ、独り生きて来た。

 なんて悲しい…………そして、なんて愛しいんだろう…………。


「リュシュ……待っている…………無事に帰って来い……必ず……」


「うん、必ず」


 そう言葉を交わし、俺たちは謁見の間を後にした。


 俺は生きて帰るよ。


 フィー…………絶対に……。


*****************

第四章 これにて完結です。
次話から最終章に入ります!
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