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最終話 天才魔導師の二度目の恋
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バルト団長の一件が落ち着き出した頃、私とアシェルト様とノアはラシャ様のお墓に祈りを捧げにやって来た。
ソルファス侯爵閣下に今回の一件を説明しに行き、そしてラシャ様のお墓へ祈りを捧げたいと願い出た。ソルファス侯爵閣下は事件の顛末を聞き、両手で顔を覆い隠しながら泣き崩れた。
アシェルト様は自分のせいだ、と頭を下げ続け、私とノアはなにも言えず、ただひたすら泣き崩れるソルファス侯爵閣下と頭を下げ続けるアシェルト様を見詰めることしか出来なかった。
そして落ち着いた頃には侯爵閣下自ら、「ラシャに会ってやって」とそうおっしゃってくださった。
王都から離れたソルファス侯爵領にある墓所。侯爵領にはラシャ様のお母様、侯爵夫人もいた。酷くやつれてしまった夫人に侯爵閣下が丁寧に説明していた。出来る限り、心の傷を広げないように。夫人は泣き崩れ、侯爵閣下が寄り添い退室した。
誰もが真実全てを受け入れられる訳ではない。それは分かっている。夫人からすると、真実を知ったところで事故ではなく「殺されたのだ」という事実が余計に心の傷を抉るだけなのかもしれない。私たちが行った真実を突き止める行為は、独りよがりで身勝手な行為だったのかもしれない。真実を知らなければ、痛ましい事故として皆の記憶に残るだけ。しかし、今回真実を突き止めたせいで、たくさんの人たちが再び苦しむ結果となってしまった……。
それが良かったことなのか、それとも悪いことだったのかが分からない……。しかし、酷く苦しそうではあるが、ラシャ様のご両親の想いをも受け止めようとしているアシェルト様の姿を見ると、夫人にも受け入れてもらいたかったと思ってしまう。そんな自分の身勝手な想いに嫌にもなる。でもそれが私のアシェルト様への……ラシャ様への想いだった。
ふたりは愛し合っていたし、ラシャ様が死んで長い長い間苦しんでいたのはアシェルト様も同じだから……。
私室へと夫人を送り届けて来た後、侯爵閣下は私たちの元へと戻り、そしてラシャ様の眠る場所まで案内をしてくれた。
ソルファス侯爵領、屋敷から少し離れた場所に広大に広がる墓所。代々のソルファス侯爵家の人々が眠る場所。
周りには草原が広がり、自然豊かな場所。墓所には華やかな色とりどりの花が咲き誇り、爽やかな風が花弁を舞い上がらせた。
大地に並ぶ真っ白な四角い石板。そのなかのひとつにラシャ様の名前が彫られている。いつも誰かが丁寧に手入れをしているのだろうことが分かる。綺麗に飾られたたくさんの花。汚れなどない墓石。そんな墓石の前に私たちは立った。
「正直、私は君を恨んでいた……憎んでいた……君と出逢わなければラシャは死なずに済んだだろう……」
侯爵閣下はラシャ様の墓石を見詰めながら呟いた。アシェルト様を非難した言葉。しかし、その言葉と裏腹に声音から怒りは感じなかった。
「……はい」
アシェルト様は侯爵閣下の言葉を真っ直ぐに受け止めようとしている。ラシャ様の墓石の前に立つ侯爵閣下の顔を見詰め頷いた。辛くとも、苦しくとも、ラシャ様のご両親の想いを受け止める覚悟を決めたのだ。
「だから君が私たちに会いたいと言ってくれても、私たちは一切君に会おうとはしなかった……すまなかったね……」
「いえ……」
アシェルト様もラシャ様の墓石を見詰めた。そんなふたりの後ろ姿を見詰めながら、私とノアはここに眠るラシャ様に祈りを捧げた。
ラシャ様……、真実を突き止めたことが良いことなのか、私には分からない。ただ……ただ私はアシェルト様に前へと進んで欲しいだけで、真実を追い求めた。そのことでご両親を苦しめたかもしれない。ごめんなさい……。いつか……いつかおふたりのお心が癒えるときが来ますように……。
私とノアとアシェルト様は侯爵邸を後にすると、街を歩いた。のどかなで緑豊かな街。見晴台からは街が一望出来る。
ノアが大きく伸びをし、息を吸い込んだ。ようやく解放された、といったような、ここしばらくは見ることが出来なかった表情だ。
ここしばらくは様々なことがあり過ぎて、私もノアもアシェルト様も、皆表情は暗かった。ようやく全てが終わり、久しぶりに晴れやかな顔となる。
ノアは大きく伸びをした後、こちらに振り向き微笑んだ。
「ルフィル、魔導師団に戻ってこいよ」
「え?」
突然のノアの提案に、私もアシェルト様も驚いた顔をした。
「副団長がバルト団長の代わりに昇進した。そのとき言ってくれたんだ。ルフィルにその気があるなら、また魔導師団に戻って来いって」
「魔導師団に……」
ノアは私を真っ直ぐに見詰め、真面目な顔になった。
「今回の件が落ち着くまでは、とずっと思っていた。でも、改めてバルト団長のおかげで俺もちゃんと伝えないとな、と思ったよ」
クスッと笑ったノアは、私に一歩近付き手を取った。握られた手は私とは違い、大きく温かい。優し気な目を向けられドキリとする。
「ルフィル、お前が好きだ。ずっと好きだった。魔導師団で同期として入団したときから、ずっと好きだったんだ」
「え、ノア……」
熱い眼差しで真っ直ぐに見詰められ、顔がカァッと熱くなるのが分かった。入団したときから? そんな前からずっと私のことを想ってくれていたの? ノアが? え、本当に?
「あ、えっと、その……わ、私、全然気付いてなくて……ごめん」
「ハハ、分かってたから大丈夫だ。俺のこと、親友としてしか見てくれてなかったしな」
ノアは意地悪そうな目を向け笑った。
「うっ、ご、ごめん」
「だから返事は急がない。これから俺のことを意識してくれたら良い。俺がお前のことを好きなんだ、って知った上で、同僚として俺の隣にいてくれないか?」
「あ、えっと……」
「魔導師団に戻って来いよ」
あまりにも真っ直ぐに伝えられる想いと熱い眼差し。どうしたら良いのか分からない。あわあわとしてしまい、思わずチラリとアシェルト様に目をやった。
アシェルト様は眉を下げながら寂しそうに微笑んでいた。
あぁ、アシェルト様にはもう私は必要ないんだ……。そうだよね……。もうラシャ様のことは解決した。辛い事実だったけれど、それでもアシェルト様はちゃんと受け入れて前を向き始めた。
私に出来ることはもうない……。
ノアに握られたままだった手を再び見詰め、そしてノアの顔を見上げた。ノアに好きだと言ってもらえたことは嬉しい。でもまだ私はアシェルト様への気持ちがなくなった訳ではない。こんな気持ちのまま、ノアの気持ちを受け入れる訳には行かない。でも……これ以上アシェルト様の傍にいることも……。
「ノア、今はまだ私はノアのことを親友以上には見られない」
「うん、分かってる。それはこれから俺が意識してもらえるように頑張るよ」
ニッと笑ったノアに、クスッと笑った。告白されたことで緊張し、ギクシャクしてしまうのではないかと思ったけれど、きっとノアとなら大丈夫。もし今とは違う関係性になったとしても、きっとノアとならずっと良い友のままでもいられるはずだ。
ノアの手をグッと握り返し、その手を離した。そしてアシェルト様へと向き直る。
「私、魔導師団に戻りますね」
アシェルト様は真っ直ぐに私を見詰め、寂しそうに笑った。
「うん」
引き留めてくれないことに悔しさが込み上げる。涙目になりそうになるのを必死に堪えた。そして精一杯笑った。
「私の気持ちはもうバレバレかと思いますが、私は……アシェルト様が好きでした。尊敬する魔導師としても、男性としても好きでした。だから前を向いて生きて欲しくて支えて来た……でも……もうアシェルト様はひとりで大丈夫ですもんね。私は必要ない……」
「違う!!」
私の言葉が終わり切る前にアシェルト様は叫んだ。その顔は怒っているようにも、悲しそうな顔にも見えた。
「僕は君のおかげで前に向けた。ラシャを死なせてしまって、僕は生きる意味がないと思っていた。だからただひたすら研究を続けていただけだ。それが終わればきっと生きる意味を見失っていたと思う」
アシェルト様は悲痛な顔のまま訴え、そして、泣きそうな顔で微笑んだ。
「でも、君が必死に僕を助けてくれた。僕を前へと踏み出させてくれた。僕は君がいないときっといつまでも前へと進むことは出来なかった。必要ないなんてある訳がない。ありがとう、ルフィル。こんな僕を支えてくれて」
目に涙を溜めながら、アシェルト様は今までにないほどの笑顔を見せてくれた。こんな笑顔は初めて見る。あぁ、嬉しい。こんな笑顔を見ることが出来て嬉しいと思ってしまう。私はまだアシェルト様のことが……。
「魔導師団に戻ることに頷いたのは、そうするほうがルフィルのためだと思ったから……。僕自身はずっと君に傍にいて欲しいと思っているけど、ルフィルのようにまだまだ伸びる魔導師は魔導師団で多くの魔導師たちと過ごすほうが良いに決まっている……。それに……僕にノア君の気持ちを止めることなんて出来ない。ルフィルがノア君を選ぶのなら僕には止める権利はない……」
チラリとノアに視線を向けたアシェルト様は再び寂しそうに眉を下げた。そして、再び私を真っ直ぐに見詰める。その瞳は初めて見る熱い眼差し。初めてアシェルト様からこんな眼差しを向けられた。そのことにドキリと心臓が高鳴る。
「僕自身、ルフィルに想い続けてもらう自信もない……でも……」
アシェルト様は大きく深呼吸をすると、頬を赤らめながら微笑んだ。
「ルフィル、今度は僕が君を追いかけてもいいかな?」
アシェルト様の声はまるで魔法のように風に乗って私の元へと届いた……。
私はあれから魔導師団へと戻った。
ノアと同僚へと戻り、毎日を忙しく過ごしている。ノアとは親友であり、同僚であり、そして時々不意打ちに好意をアピールされ……と、なんだかドキドキとさせられている。
アシェルト様は相変わらずあの家で一人暮らしをしているが、最近はどうやら家事なども頑張るようになってきたそうだ。定期的に回復薬の納品にアシェルト様自身が魔導師団までやって来るようになり、魔導師団内ではどうやらアシェルト様を再び団長として迎えてはどうか、と議論が上がっているらしい。
え? あの「追いかけてもいいかな?」宣言の後どうなったか?
え、いや、あの後は……あー、ハハ……色々その……キャパオーバーで逃げ出し……いや、うん、ね……
と、とにかく天才魔導師は二度目の恋をすることが出来た! ということで! もうこれ以上は聞かないでぇ!!
完
*********
☆後書きです。
「天才魔導師は二度目の恋を知る」これにて完結です!
最後までお付き合いくださった皆様ありがとうございました!
恋愛小説大賞に参加中ですので応援いただけると嬉しいです!
初めてほんのりミステリーっぽいものを書いてみましたが、いやぁ、難しいですねー。
ミステリーを書ける方は本当に凄い!尊敬します!
今回切ないお話で、さらにはひたすら人間模様を色々書いていたので、
「恋愛ジャンルではない!?」と若干悩みましたが、まあ最後には恋愛ぽく終われた?のでこのままにします(^^;)
ルフィルとアシェルトとノアの三角関係が今後どうなるのかは……
あまりにジャンルが違うものになりそうなのでちょっと違うかな、と。
天才魔導師が二度目の恋をすることが出来た、というお話ですので、とりあえずここで完結とさせていただきます!
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
ソルファス侯爵閣下に今回の一件を説明しに行き、そしてラシャ様のお墓へ祈りを捧げたいと願い出た。ソルファス侯爵閣下は事件の顛末を聞き、両手で顔を覆い隠しながら泣き崩れた。
アシェルト様は自分のせいだ、と頭を下げ続け、私とノアはなにも言えず、ただひたすら泣き崩れるソルファス侯爵閣下と頭を下げ続けるアシェルト様を見詰めることしか出来なかった。
そして落ち着いた頃には侯爵閣下自ら、「ラシャに会ってやって」とそうおっしゃってくださった。
王都から離れたソルファス侯爵領にある墓所。侯爵領にはラシャ様のお母様、侯爵夫人もいた。酷くやつれてしまった夫人に侯爵閣下が丁寧に説明していた。出来る限り、心の傷を広げないように。夫人は泣き崩れ、侯爵閣下が寄り添い退室した。
誰もが真実全てを受け入れられる訳ではない。それは分かっている。夫人からすると、真実を知ったところで事故ではなく「殺されたのだ」という事実が余計に心の傷を抉るだけなのかもしれない。私たちが行った真実を突き止める行為は、独りよがりで身勝手な行為だったのかもしれない。真実を知らなければ、痛ましい事故として皆の記憶に残るだけ。しかし、今回真実を突き止めたせいで、たくさんの人たちが再び苦しむ結果となってしまった……。
それが良かったことなのか、それとも悪いことだったのかが分からない……。しかし、酷く苦しそうではあるが、ラシャ様のご両親の想いをも受け止めようとしているアシェルト様の姿を見ると、夫人にも受け入れてもらいたかったと思ってしまう。そんな自分の身勝手な想いに嫌にもなる。でもそれが私のアシェルト様への……ラシャ様への想いだった。
ふたりは愛し合っていたし、ラシャ様が死んで長い長い間苦しんでいたのはアシェルト様も同じだから……。
私室へと夫人を送り届けて来た後、侯爵閣下は私たちの元へと戻り、そしてラシャ様の眠る場所まで案内をしてくれた。
ソルファス侯爵領、屋敷から少し離れた場所に広大に広がる墓所。代々のソルファス侯爵家の人々が眠る場所。
周りには草原が広がり、自然豊かな場所。墓所には華やかな色とりどりの花が咲き誇り、爽やかな風が花弁を舞い上がらせた。
大地に並ぶ真っ白な四角い石板。そのなかのひとつにラシャ様の名前が彫られている。いつも誰かが丁寧に手入れをしているのだろうことが分かる。綺麗に飾られたたくさんの花。汚れなどない墓石。そんな墓石の前に私たちは立った。
「正直、私は君を恨んでいた……憎んでいた……君と出逢わなければラシャは死なずに済んだだろう……」
侯爵閣下はラシャ様の墓石を見詰めながら呟いた。アシェルト様を非難した言葉。しかし、その言葉と裏腹に声音から怒りは感じなかった。
「……はい」
アシェルト様は侯爵閣下の言葉を真っ直ぐに受け止めようとしている。ラシャ様の墓石の前に立つ侯爵閣下の顔を見詰め頷いた。辛くとも、苦しくとも、ラシャ様のご両親の想いを受け止める覚悟を決めたのだ。
「だから君が私たちに会いたいと言ってくれても、私たちは一切君に会おうとはしなかった……すまなかったね……」
「いえ……」
アシェルト様もラシャ様の墓石を見詰めた。そんなふたりの後ろ姿を見詰めながら、私とノアはここに眠るラシャ様に祈りを捧げた。
ラシャ様……、真実を突き止めたことが良いことなのか、私には分からない。ただ……ただ私はアシェルト様に前へと進んで欲しいだけで、真実を追い求めた。そのことでご両親を苦しめたかもしれない。ごめんなさい……。いつか……いつかおふたりのお心が癒えるときが来ますように……。
私とノアとアシェルト様は侯爵邸を後にすると、街を歩いた。のどかなで緑豊かな街。見晴台からは街が一望出来る。
ノアが大きく伸びをし、息を吸い込んだ。ようやく解放された、といったような、ここしばらくは見ることが出来なかった表情だ。
ここしばらくは様々なことがあり過ぎて、私もノアもアシェルト様も、皆表情は暗かった。ようやく全てが終わり、久しぶりに晴れやかな顔となる。
ノアは大きく伸びをした後、こちらに振り向き微笑んだ。
「ルフィル、魔導師団に戻ってこいよ」
「え?」
突然のノアの提案に、私もアシェルト様も驚いた顔をした。
「副団長がバルト団長の代わりに昇進した。そのとき言ってくれたんだ。ルフィルにその気があるなら、また魔導師団に戻って来いって」
「魔導師団に……」
ノアは私を真っ直ぐに見詰め、真面目な顔になった。
「今回の件が落ち着くまでは、とずっと思っていた。でも、改めてバルト団長のおかげで俺もちゃんと伝えないとな、と思ったよ」
クスッと笑ったノアは、私に一歩近付き手を取った。握られた手は私とは違い、大きく温かい。優し気な目を向けられドキリとする。
「ルフィル、お前が好きだ。ずっと好きだった。魔導師団で同期として入団したときから、ずっと好きだったんだ」
「え、ノア……」
熱い眼差しで真っ直ぐに見詰められ、顔がカァッと熱くなるのが分かった。入団したときから? そんな前からずっと私のことを想ってくれていたの? ノアが? え、本当に?
「あ、えっと、その……わ、私、全然気付いてなくて……ごめん」
「ハハ、分かってたから大丈夫だ。俺のこと、親友としてしか見てくれてなかったしな」
ノアは意地悪そうな目を向け笑った。
「うっ、ご、ごめん」
「だから返事は急がない。これから俺のことを意識してくれたら良い。俺がお前のことを好きなんだ、って知った上で、同僚として俺の隣にいてくれないか?」
「あ、えっと……」
「魔導師団に戻って来いよ」
あまりにも真っ直ぐに伝えられる想いと熱い眼差し。どうしたら良いのか分からない。あわあわとしてしまい、思わずチラリとアシェルト様に目をやった。
アシェルト様は眉を下げながら寂しそうに微笑んでいた。
あぁ、アシェルト様にはもう私は必要ないんだ……。そうだよね……。もうラシャ様のことは解決した。辛い事実だったけれど、それでもアシェルト様はちゃんと受け入れて前を向き始めた。
私に出来ることはもうない……。
ノアに握られたままだった手を再び見詰め、そしてノアの顔を見上げた。ノアに好きだと言ってもらえたことは嬉しい。でもまだ私はアシェルト様への気持ちがなくなった訳ではない。こんな気持ちのまま、ノアの気持ちを受け入れる訳には行かない。でも……これ以上アシェルト様の傍にいることも……。
「ノア、今はまだ私はノアのことを親友以上には見られない」
「うん、分かってる。それはこれから俺が意識してもらえるように頑張るよ」
ニッと笑ったノアに、クスッと笑った。告白されたことで緊張し、ギクシャクしてしまうのではないかと思ったけれど、きっとノアとなら大丈夫。もし今とは違う関係性になったとしても、きっとノアとならずっと良い友のままでもいられるはずだ。
ノアの手をグッと握り返し、その手を離した。そしてアシェルト様へと向き直る。
「私、魔導師団に戻りますね」
アシェルト様は真っ直ぐに私を見詰め、寂しそうに笑った。
「うん」
引き留めてくれないことに悔しさが込み上げる。涙目になりそうになるのを必死に堪えた。そして精一杯笑った。
「私の気持ちはもうバレバレかと思いますが、私は……アシェルト様が好きでした。尊敬する魔導師としても、男性としても好きでした。だから前を向いて生きて欲しくて支えて来た……でも……もうアシェルト様はひとりで大丈夫ですもんね。私は必要ない……」
「違う!!」
私の言葉が終わり切る前にアシェルト様は叫んだ。その顔は怒っているようにも、悲しそうな顔にも見えた。
「僕は君のおかげで前に向けた。ラシャを死なせてしまって、僕は生きる意味がないと思っていた。だからただひたすら研究を続けていただけだ。それが終わればきっと生きる意味を見失っていたと思う」
アシェルト様は悲痛な顔のまま訴え、そして、泣きそうな顔で微笑んだ。
「でも、君が必死に僕を助けてくれた。僕を前へと踏み出させてくれた。僕は君がいないときっといつまでも前へと進むことは出来なかった。必要ないなんてある訳がない。ありがとう、ルフィル。こんな僕を支えてくれて」
目に涙を溜めながら、アシェルト様は今までにないほどの笑顔を見せてくれた。こんな笑顔は初めて見る。あぁ、嬉しい。こんな笑顔を見ることが出来て嬉しいと思ってしまう。私はまだアシェルト様のことが……。
「魔導師団に戻ることに頷いたのは、そうするほうがルフィルのためだと思ったから……。僕自身はずっと君に傍にいて欲しいと思っているけど、ルフィルのようにまだまだ伸びる魔導師は魔導師団で多くの魔導師たちと過ごすほうが良いに決まっている……。それに……僕にノア君の気持ちを止めることなんて出来ない。ルフィルがノア君を選ぶのなら僕には止める権利はない……」
チラリとノアに視線を向けたアシェルト様は再び寂しそうに眉を下げた。そして、再び私を真っ直ぐに見詰める。その瞳は初めて見る熱い眼差し。初めてアシェルト様からこんな眼差しを向けられた。そのことにドキリと心臓が高鳴る。
「僕自身、ルフィルに想い続けてもらう自信もない……でも……」
アシェルト様は大きく深呼吸をすると、頬を赤らめながら微笑んだ。
「ルフィル、今度は僕が君を追いかけてもいいかな?」
アシェルト様の声はまるで魔法のように風に乗って私の元へと届いた……。
私はあれから魔導師団へと戻った。
ノアと同僚へと戻り、毎日を忙しく過ごしている。ノアとは親友であり、同僚であり、そして時々不意打ちに好意をアピールされ……と、なんだかドキドキとさせられている。
アシェルト様は相変わらずあの家で一人暮らしをしているが、最近はどうやら家事なども頑張るようになってきたそうだ。定期的に回復薬の納品にアシェルト様自身が魔導師団までやって来るようになり、魔導師団内ではどうやらアシェルト様を再び団長として迎えてはどうか、と議論が上がっているらしい。
え? あの「追いかけてもいいかな?」宣言の後どうなったか?
え、いや、あの後は……あー、ハハ……色々その……キャパオーバーで逃げ出し……いや、うん、ね……
と、とにかく天才魔導師は二度目の恋をすることが出来た! ということで! もうこれ以上は聞かないでぇ!!
完
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☆後書きです。
「天才魔導師は二度目の恋を知る」これにて完結です!
最後までお付き合いくださった皆様ありがとうございました!
恋愛小説大賞に参加中ですので応援いただけると嬉しいです!
初めてほんのりミステリーっぽいものを書いてみましたが、いやぁ、難しいですねー。
ミステリーを書ける方は本当に凄い!尊敬します!
今回切ないお話で、さらにはひたすら人間模様を色々書いていたので、
「恋愛ジャンルではない!?」と若干悩みましたが、まあ最後には恋愛ぽく終われた?のでこのままにします(^^;)
ルフィルとアシェルトとノアの三角関係が今後どうなるのかは……
あまりにジャンルが違うものになりそうなのでちょっと違うかな、と。
天才魔導師が二度目の恋をすることが出来た、というお話ですので、とりあえずここで完結とさせていただきます!
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
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