【完結】魔石精製師とときどき魔王 ~家族を失った伯爵令嬢の数奇な人生~

樹結理(きゆり)

文字の大きさ
67 / 247
第2章《修行》編

第65話 二人の関係性

しおりを挟む
 ランバナス、砂漠に出来た街。それほど大きくはないが、砂漠を越えるにはこの街が必要不可欠なため多くの人が必ず立ち寄る。そのためかなり栄えた街らしい。ランバナスで皆、休息を取り、荷を整え、砂漠を越えて先へ進むのだ。

「ディノとイーザンはランバナスに行ったことはあるの?」
「あぁ」
「俺もあるぞ」

 二人とも頷いた。乗合馬車に乗り込みながら話をする。この乗合馬車はローグ伯爵領を経由した後ランバナスへ向かう。私たち以外に乗客はおらず、少しゆったりと間隔を開けて椅子に腰を下ろした。

 御者は私たちが乗り込んだことを確認すると「出発します」と声を掛け、その声と共に馬車がガタリと動き出す。

「そっかぁ、二人とももうあちこち旅をしているのね。凄いなぁ」
「俺やイーザンは護衛の仕事だからな。必然的に依頼によってあちこち出向くことになる」

 ディノの言葉にイーザンも頷く。

「二人はどうやって知り合ったの? やっぱり護衛の仕事で?」
「あー、まあ護衛の仕事はそうなんだけど……」

 ディノは苦笑しながらチラリとイーザンを見た。ん? なんなのかしら。イーザンは無表情のままだ。

「護衛の仕事が初対面?」
「うん、まあその初対面が最悪でな。アハハ」
「?」
「あー、なんというか、お互い初仕事だったから調子に乗ってたというかなんというか……ハハ」

 ディノが十六、イーザンが十八の頃、お互いが初めて護衛の仕事に就いて出会ったらしい。そのときはお互いの力量も知らず、初対面、しかもどんな性格なのか、どんな戦い方をするのかなど一切知らなかった。だから『失敗』しかけたのだそうだ。

「王都から別の街まで商人の護衛だったんだけどな。魔獣が出て意気揚々と討伐しようとしたらだな、お互い戦い方が嚙み合わず連携もくそもないグダグダな戦いになってさ」

 ディノは苦笑する。

「で、危うく依頼主である商人の荷を損失するところだったんだ。もう一人いたベテランの剣士のおかげで事なきを得たんだがな」

 アハハと笑いながら話すディノ。その横ではムスッと眉間に皺を寄せたイーザンがいた。

「あれはお前が私の魔法を無視して攻撃をするからだ」
「いやいや、あそこで攻撃しないとこっちがやられていただろ! まあ俺がやられたのはお前のせいだが」
「引き付けてから魔法を放とうと準備をしていたのは分かっていたのに、お前が飛び出すから敵ではなくお前に当たったんだろうが」

 は? なんかちょっと怖い会話なんですけど!

「ちょ、ちょっと待ってよ、イーザンの撃った魔法がディノに当たったの!?」

「「あぁ」」

 二人同時に返事をした。

「いやいやいや! ちょっとそれどういうこと!? 味方同士で攻撃って!」

「だからイーザンのせいだって!」
「だからあれはお前が飛び出したのが悪い」

 二人でやいやいと言い合っている。

「プッ。聞いただけではそんなことがあれば滅茶苦茶仲が悪くなりそうなのに、二人とも仲が良いんだね」

 アハハ、と笑ってしまった。お互い喧嘩しながらも、未だにこうやって一緒に旅をする。いくら仕事とはいえ、もし仲違いしているのなら最初から険悪な雰囲気になっていそうなものだが、そういった雰囲気は一切なかった。それどころか気心知れた相手、といった感じだった。

「あー、仲が良いというか、なんだかんだ何度も一緒に仕事をしていると、お互い慣れてくるし、やっぱりイーザンの強さも認めるしかないしな」

 ハハ、と笑ったディノにイーザンも少し表情を崩し、クスッと笑った。
 おぉ、イーザンも笑うことあるのね! 怖い印象が少し変わったかも!

「ディノは無茶苦茶なところはあるが、やはりそれだけ実力があるのは私も認めているしな」
「おい、無茶苦茶って」
「相変わらず無鉄砲で無茶苦茶なところは変わっていないだろう」
「うぐっ。ま、まあ悔しいがそれは認める」
「フッ。まあしかし私たちも何度となく共闘しているから、今は何を言わずとも連携が取れるから安心しろ」

 イーザンは私に向かってそう言った。その表情は笑顔とは言い難いが自信に満ちた顔だった。

「うん、頼りにしてるね」

 少し二人の関係性が見えた気がして嬉しかった。

 その後もディノは二人で共通の仕事をしたときの話を色々としてくれた。イーザンは魔導師ではあるのだが、剣にも長けているらしく、イーザンの剣は魔石が埋め込まれた魔導剣なのだそうだ。
 だから杖の代わりに魔法の発動も剣を媒体にすることで強力な魔法を放つらしい。さらには剣としても扱うことが出来るため、剣自身に魔法を帯びさせ剣を振るう、といったこともやってのけるということだった。

 凄いわね。ただそれほど凄いと、ふと疑問が……。

「そんなに強いなら国の騎士団には入らなかったの?」

「自由がなくなるのは嫌だからな」

 イーザンが間髪入れずにしれっと答えた。

しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...