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第2章《修行》編
第65話 二人の関係性
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ランバナス、砂漠に出来た街。それほど大きくはないが、砂漠を越えるにはこの街が必要不可欠なため多くの人が必ず立ち寄る。そのためかなり栄えた街らしい。ランバナスで皆、休息を取り、荷を整え、砂漠を越えて先へ進むのだ。
「ディノとイーザンはランバナスに行ったことはあるの?」
「あぁ」
「俺もあるぞ」
二人とも頷いた。乗合馬車に乗り込みながら話をする。この乗合馬車はローグ伯爵領を経由した後ランバナスへ向かう。私たち以外に乗客はおらず、少しゆったりと間隔を開けて椅子に腰を下ろした。
御者は私たちが乗り込んだことを確認すると「出発します」と声を掛け、その声と共に馬車がガタリと動き出す。
「そっかぁ、二人とももうあちこち旅をしているのね。凄いなぁ」
「俺やイーザンは護衛の仕事だからな。必然的に依頼によってあちこち出向くことになる」
ディノの言葉にイーザンも頷く。
「二人はどうやって知り合ったの? やっぱり護衛の仕事で?」
「あー、まあ護衛の仕事はそうなんだけど……」
ディノは苦笑しながらチラリとイーザンを見た。ん? なんなのかしら。イーザンは無表情のままだ。
「護衛の仕事が初対面?」
「うん、まあその初対面が最悪でな。アハハ」
「?」
「あー、なんというか、お互い初仕事だったから調子に乗ってたというかなんというか……ハハ」
ディノが十六、イーザンが十八の頃、お互いが初めて護衛の仕事に就いて出会ったらしい。そのときはお互いの力量も知らず、初対面、しかもどんな性格なのか、どんな戦い方をするのかなど一切知らなかった。だから『失敗』しかけたのだそうだ。
「王都から別の街まで商人の護衛だったんだけどな。魔獣が出て意気揚々と討伐しようとしたらだな、お互い戦い方が嚙み合わず連携もくそもないグダグダな戦いになってさ」
ディノは苦笑する。
「で、危うく依頼主である商人の荷を損失するところだったんだ。もう一人いたベテランの剣士のおかげで事なきを得たんだがな」
アハハと笑いながら話すディノ。その横ではムスッと眉間に皺を寄せたイーザンがいた。
「あれはお前が私の魔法を無視して攻撃をするからだ」
「いやいや、あそこで攻撃しないとこっちがやられていただろ! まあ俺がやられたのはお前のせいだが」
「引き付けてから魔法を放とうと準備をしていたのは分かっていたのに、お前が飛び出すから敵ではなくお前に当たったんだろうが」
は? なんかちょっと怖い会話なんですけど!
「ちょ、ちょっと待ってよ、イーザンの撃った魔法がディノに当たったの!?」
「「あぁ」」
二人同時に返事をした。
「いやいやいや! ちょっとそれどういうこと!? 味方同士で攻撃って!」
「だからイーザンのせいだって!」
「だからあれはお前が飛び出したのが悪い」
二人でやいやいと言い合っている。
「プッ。聞いただけではそんなことがあれば滅茶苦茶仲が悪くなりそうなのに、二人とも仲が良いんだね」
アハハ、と笑ってしまった。お互い喧嘩しながらも、未だにこうやって一緒に旅をする。いくら仕事とはいえ、もし仲違いしているのなら最初から険悪な雰囲気になっていそうなものだが、そういった雰囲気は一切なかった。それどころか気心知れた相手、といった感じだった。
「あー、仲が良いというか、なんだかんだ何度も一緒に仕事をしていると、お互い慣れてくるし、やっぱりイーザンの強さも認めるしかないしな」
ハハ、と笑ったディノにイーザンも少し表情を崩し、クスッと笑った。
おぉ、イーザンも笑うことあるのね! 怖い印象が少し変わったかも!
「ディノは無茶苦茶なところはあるが、やはりそれだけ実力があるのは私も認めているしな」
「おい、無茶苦茶って」
「相変わらず無鉄砲で無茶苦茶なところは変わっていないだろう」
「うぐっ。ま、まあ悔しいがそれは認める」
「フッ。まあしかし私たちも何度となく共闘しているから、今は何を言わずとも連携が取れるから安心しろ」
イーザンは私に向かってそう言った。その表情は笑顔とは言い難いが自信に満ちた顔だった。
「うん、頼りにしてるね」
少し二人の関係性が見えた気がして嬉しかった。
その後もディノは二人で共通の仕事をしたときの話を色々としてくれた。イーザンは魔導師ではあるのだが、剣にも長けているらしく、イーザンの剣は魔石が埋め込まれた魔導剣なのだそうだ。
だから杖の代わりに魔法の発動も剣を媒体にすることで強力な魔法を放つらしい。さらには剣としても扱うことが出来るため、剣自身に魔法を帯びさせ剣を振るう、といったこともやってのけるということだった。
凄いわね。ただそれほど凄いと、ふと疑問が……。
「そんなに強いなら国の騎士団には入らなかったの?」
「自由がなくなるのは嫌だからな」
イーザンが間髪入れずにしれっと答えた。
「ディノとイーザンはランバナスに行ったことはあるの?」
「あぁ」
「俺もあるぞ」
二人とも頷いた。乗合馬車に乗り込みながら話をする。この乗合馬車はローグ伯爵領を経由した後ランバナスへ向かう。私たち以外に乗客はおらず、少しゆったりと間隔を開けて椅子に腰を下ろした。
御者は私たちが乗り込んだことを確認すると「出発します」と声を掛け、その声と共に馬車がガタリと動き出す。
「そっかぁ、二人とももうあちこち旅をしているのね。凄いなぁ」
「俺やイーザンは護衛の仕事だからな。必然的に依頼によってあちこち出向くことになる」
ディノの言葉にイーザンも頷く。
「二人はどうやって知り合ったの? やっぱり護衛の仕事で?」
「あー、まあ護衛の仕事はそうなんだけど……」
ディノは苦笑しながらチラリとイーザンを見た。ん? なんなのかしら。イーザンは無表情のままだ。
「護衛の仕事が初対面?」
「うん、まあその初対面が最悪でな。アハハ」
「?」
「あー、なんというか、お互い初仕事だったから調子に乗ってたというかなんというか……ハハ」
ディノが十六、イーザンが十八の頃、お互いが初めて護衛の仕事に就いて出会ったらしい。そのときはお互いの力量も知らず、初対面、しかもどんな性格なのか、どんな戦い方をするのかなど一切知らなかった。だから『失敗』しかけたのだそうだ。
「王都から別の街まで商人の護衛だったんだけどな。魔獣が出て意気揚々と討伐しようとしたらだな、お互い戦い方が嚙み合わず連携もくそもないグダグダな戦いになってさ」
ディノは苦笑する。
「で、危うく依頼主である商人の荷を損失するところだったんだ。もう一人いたベテランの剣士のおかげで事なきを得たんだがな」
アハハと笑いながら話すディノ。その横ではムスッと眉間に皺を寄せたイーザンがいた。
「あれはお前が私の魔法を無視して攻撃をするからだ」
「いやいや、あそこで攻撃しないとこっちがやられていただろ! まあ俺がやられたのはお前のせいだが」
「引き付けてから魔法を放とうと準備をしていたのは分かっていたのに、お前が飛び出すから敵ではなくお前に当たったんだろうが」
は? なんかちょっと怖い会話なんですけど!
「ちょ、ちょっと待ってよ、イーザンの撃った魔法がディノに当たったの!?」
「「あぁ」」
二人同時に返事をした。
「いやいやいや! ちょっとそれどういうこと!? 味方同士で攻撃って!」
「だからイーザンのせいだって!」
「だからあれはお前が飛び出したのが悪い」
二人でやいやいと言い合っている。
「プッ。聞いただけではそんなことがあれば滅茶苦茶仲が悪くなりそうなのに、二人とも仲が良いんだね」
アハハ、と笑ってしまった。お互い喧嘩しながらも、未だにこうやって一緒に旅をする。いくら仕事とはいえ、もし仲違いしているのなら最初から険悪な雰囲気になっていそうなものだが、そういった雰囲気は一切なかった。それどころか気心知れた相手、といった感じだった。
「あー、仲が良いというか、なんだかんだ何度も一緒に仕事をしていると、お互い慣れてくるし、やっぱりイーザンの強さも認めるしかないしな」
ハハ、と笑ったディノにイーザンも少し表情を崩し、クスッと笑った。
おぉ、イーザンも笑うことあるのね! 怖い印象が少し変わったかも!
「ディノは無茶苦茶なところはあるが、やはりそれだけ実力があるのは私も認めているしな」
「おい、無茶苦茶って」
「相変わらず無鉄砲で無茶苦茶なところは変わっていないだろう」
「うぐっ。ま、まあ悔しいがそれは認める」
「フッ。まあしかし私たちも何度となく共闘しているから、今は何を言わずとも連携が取れるから安心しろ」
イーザンは私に向かってそう言った。その表情は笑顔とは言い難いが自信に満ちた顔だった。
「うん、頼りにしてるね」
少し二人の関係性が見えた気がして嬉しかった。
その後もディノは二人で共通の仕事をしたときの話を色々としてくれた。イーザンは魔導師ではあるのだが、剣にも長けているらしく、イーザンの剣は魔石が埋め込まれた魔導剣なのだそうだ。
だから杖の代わりに魔法の発動も剣を媒体にすることで強力な魔法を放つらしい。さらには剣としても扱うことが出来るため、剣自身に魔法を帯びさせ剣を振るう、といったこともやってのけるということだった。
凄いわね。ただそれほど凄いと、ふと疑問が……。
「そんなに強いなら国の騎士団には入らなかったの?」
「自由がなくなるのは嫌だからな」
イーザンが間髪入れずにしれっと答えた。
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