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√マリーヤ act.1
① ストローハット♪
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「わぁマリーヤの着る民族衣装もほんと可愛い!」
「生活は令嬢と比べたら質素だピコ。でも大自然に囲まれ、産地直送の美味しいものを食べられる暮らしだピコ」
正直私、令嬢より村娘のが合ってると思うんだよね。お嬢の集団とか、もううんざり。
「今日も乳絞りに行けばいいのかしら? ところでマリーヤって家族は?」
あれ、なんだかピコピコがもじもじしてる。なによ、ちゃんと案内しなさいよ。
「ぴゅ~~♪」
口笛吹いたってことは、なにか言いにくいことがあるのね。じゃあまず階段を降りて家族と対面しよう。
トテトテトテ。あれ、誰もいない。
あ、こっちに部屋がある。誰かいるの?……そこには狭いベッドに眠る老人が。
「マリーヤはこのおじいさんとふたり家族だピコ。犬も一応いるピコ」
へ、へぇ、でもなんか、おじいさん、やつれてて具合悪そう……。
「おじいさん、余命1ヶ月の宣告受けてるピコ」
ってことは、マリーヤの目下の課題は……。
「終末期老人の介護アンド看取り~~~~!!?」
なんでこんなゲームで超現実的なことやらせるんですか。
「なんてこと言うピコ! たったふたりの家族だピコよ!」
うっ。私、そういうの弱いの……。
「まぁ、責任持って看取らせていただきますが……」
まずマリーヤのハッピーエンディングへの道筋を考えよう。
「マリーヤだって幸せな結婚だピコ」
「ピータンに逃げられたから、今はフリー。選び放題」
「彼氏のいない女子は選び放題とか前向きに言うけど、ふたを開けたら5年くらい選び放題のままだったりするピコ」
「この娘に関してはほんとに選び放題なんじゃないかな。ていうかなんでマリーヤって5股もかけてたんだろう?」
「たくさんの男にモテるのは女子の夢だピコ?」
「そうだけど、女は結局ひとりに絞らなきゃいけないんだから。たくさんの男にモテたいのはその中でいちばんの男をゲットしたいからよ。結婚考えてなければ適当にモテて自己満に浸ってりゃいいけど、マリーヤは一応ピータンに絞ってたから、残りの男はお荷物にしかならない」
実際バレて第一候補に逃げられたわけだし。
「ちょうどピータンに絞ったところで、あとはこれから整理しようとしてたんじゃないピコ?」
「う――ん。大体、どうしてピータンにしたんだろ?」
「いちばんイケメンだから?」
「マリーヤって男を顔で選ぶキャラかなぁ? なんかもっと……」
あの腹黒さじゃ、顔みたいなふわふわした理由より、もっと実用的な男を欲しがりそう。
「マリーヤに対して偏見が過ぎるピコ……」
「うっ……うう~~……マリーヤ……」
「あっ、おじいさん! 大丈夫? お水飲むっ?」
っておじいさん、やっぱり大柄だから上半身を起こすだけでも難しい。どうやってカップの水を飲ませればいいの? ボタンワンタッチで変形する介護用ベッドが欲しい!
「ピコピコ! ストロー! ストロー台所から取ってきて!」
「この時代、まだストローないピコ」
「ええ――!?」
介護用ベッドどころかストローすらないとか……。
あら? 玄関の扉が開く音が聞こえた。
「やあ、マリーヤ。おじいさんの具合はどうだい?」
なんだか優しそうな男の人だけど、誰??
「彼は村男のスチーブンだピコ」
スチーブンってなんか聞いたことあるような……。あっ、ピータンが言ってた、二股の片方の!(※実際5股)
「なんか僕にできることあるかい?」
う――ん。今おじいさんの上半身起こすの手伝ってって言いたいところだけど、それじゃ根本的に解決しないし、やっぱりストローみたいなもの……。
「あっ!! あるある! スチーブン、葦、採ってきて!」
「ん? うん分かった」
「スチーブン、早速パシられてるピコ……」
「こんな末期老人いるところに顔を出すくらいだし、おじいさんの具合聞いてきたし、協力してくれてるんじゃないかな」
彼はマリーヤの状況把握するのに役立ちそう。
「はいっ。採ってきたよ」
スチーブンも仕事早―い。
「ありがとう、スチーブン」
「おお~~。葦って茎が空洞なんだピコね~~」
なんとか寝たままでもおじいさんに水飲ませられたわ。
「のりえ、この知識なんだピコ? ほんとに都会っ子だったピコ??」
そんな疑いの目で見るのよして。
「実はね、某国民的人気コミックの主人公の帽子について検索してたらね……それって英語で“ストロー”なんだって……そこからね」
「どんどんトリビアしちゃったピコかぁ~~。暇人の検索に対する情熱すご―いピコ~~」
「おじいさん、またずっと寝てるみたいだし、外行ってきていいかなぁ。一応仕事しなきゃ」
「一日中ここにいるわけにもいかないから、行くといいピコ。今はボクとヨーゼプゥが見てるよ」
家族の一員、名犬ヨーゼプゥはたぶん全然役に立たない。
「離れてる間に何かあったら……」
「それも運命ピコ」
まぁたとえ今すぐ死んでもこれ大往生だよね。
「スチーブン、ちょっと乳でも絞りながら、お話しましょうか」
「うん! うんっ!」
うわぁスチーブン超嬉しそう。これはちょっと魔性の女モード入っちゃうかも??
というわけで、私たちはヤギの乳絞りをしながら会話をしてるのだけど。
「最近、ピータンと会ってないみたいだね」
あ、この人探ってきてる?
「でもアベルとフランツとギャルンとはもっとよく会うようになったよね……」
あ―、それが5股のうちの3人ね!
「君は魅力的だから、君と結婚したい男が他にもたくさんいるの知ってるけど、僕は君のおじいさん思いなところが大好きなんだ」
へぇ、表面上のことだけじゃなく、ちゃんと中身見て言ってくれてるんだ。このスチーブンも良い人じゃない。ずば抜けたイケメンばっか見てきたから麻痺してたけど、十分かっこいいし。
「それでさ、えっと、また後で君の手伝いするから、帰り道に、あの、その……」
ん? 彼もオオカミくんになるのかしら?
「ききき君と、ててて手を繋いでいいかなぁ!?」
マリーヤ、十代後半男子を幼稚園児並みに調教してしまってるのね……。
「生活は令嬢と比べたら質素だピコ。でも大自然に囲まれ、産地直送の美味しいものを食べられる暮らしだピコ」
正直私、令嬢より村娘のが合ってると思うんだよね。お嬢の集団とか、もううんざり。
「今日も乳絞りに行けばいいのかしら? ところでマリーヤって家族は?」
あれ、なんだかピコピコがもじもじしてる。なによ、ちゃんと案内しなさいよ。
「ぴゅ~~♪」
口笛吹いたってことは、なにか言いにくいことがあるのね。じゃあまず階段を降りて家族と対面しよう。
トテトテトテ。あれ、誰もいない。
あ、こっちに部屋がある。誰かいるの?……そこには狭いベッドに眠る老人が。
「マリーヤはこのおじいさんとふたり家族だピコ。犬も一応いるピコ」
へ、へぇ、でもなんか、おじいさん、やつれてて具合悪そう……。
「おじいさん、余命1ヶ月の宣告受けてるピコ」
ってことは、マリーヤの目下の課題は……。
「終末期老人の介護アンド看取り~~~~!!?」
なんでこんなゲームで超現実的なことやらせるんですか。
「なんてこと言うピコ! たったふたりの家族だピコよ!」
うっ。私、そういうの弱いの……。
「まぁ、責任持って看取らせていただきますが……」
まずマリーヤのハッピーエンディングへの道筋を考えよう。
「マリーヤだって幸せな結婚だピコ」
「ピータンに逃げられたから、今はフリー。選び放題」
「彼氏のいない女子は選び放題とか前向きに言うけど、ふたを開けたら5年くらい選び放題のままだったりするピコ」
「この娘に関してはほんとに選び放題なんじゃないかな。ていうかなんでマリーヤって5股もかけてたんだろう?」
「たくさんの男にモテるのは女子の夢だピコ?」
「そうだけど、女は結局ひとりに絞らなきゃいけないんだから。たくさんの男にモテたいのはその中でいちばんの男をゲットしたいからよ。結婚考えてなければ適当にモテて自己満に浸ってりゃいいけど、マリーヤは一応ピータンに絞ってたから、残りの男はお荷物にしかならない」
実際バレて第一候補に逃げられたわけだし。
「ちょうどピータンに絞ったところで、あとはこれから整理しようとしてたんじゃないピコ?」
「う――ん。大体、どうしてピータンにしたんだろ?」
「いちばんイケメンだから?」
「マリーヤって男を顔で選ぶキャラかなぁ? なんかもっと……」
あの腹黒さじゃ、顔みたいなふわふわした理由より、もっと実用的な男を欲しがりそう。
「マリーヤに対して偏見が過ぎるピコ……」
「うっ……うう~~……マリーヤ……」
「あっ、おじいさん! 大丈夫? お水飲むっ?」
っておじいさん、やっぱり大柄だから上半身を起こすだけでも難しい。どうやってカップの水を飲ませればいいの? ボタンワンタッチで変形する介護用ベッドが欲しい!
「ピコピコ! ストロー! ストロー台所から取ってきて!」
「この時代、まだストローないピコ」
「ええ――!?」
介護用ベッドどころかストローすらないとか……。
あら? 玄関の扉が開く音が聞こえた。
「やあ、マリーヤ。おじいさんの具合はどうだい?」
なんだか優しそうな男の人だけど、誰??
「彼は村男のスチーブンだピコ」
スチーブンってなんか聞いたことあるような……。あっ、ピータンが言ってた、二股の片方の!(※実際5股)
「なんか僕にできることあるかい?」
う――ん。今おじいさんの上半身起こすの手伝ってって言いたいところだけど、それじゃ根本的に解決しないし、やっぱりストローみたいなもの……。
「あっ!! あるある! スチーブン、葦、採ってきて!」
「ん? うん分かった」
「スチーブン、早速パシられてるピコ……」
「こんな末期老人いるところに顔を出すくらいだし、おじいさんの具合聞いてきたし、協力してくれてるんじゃないかな」
彼はマリーヤの状況把握するのに役立ちそう。
「はいっ。採ってきたよ」
スチーブンも仕事早―い。
「ありがとう、スチーブン」
「おお~~。葦って茎が空洞なんだピコね~~」
なんとか寝たままでもおじいさんに水飲ませられたわ。
「のりえ、この知識なんだピコ? ほんとに都会っ子だったピコ??」
そんな疑いの目で見るのよして。
「実はね、某国民的人気コミックの主人公の帽子について検索してたらね……それって英語で“ストロー”なんだって……そこからね」
「どんどんトリビアしちゃったピコかぁ~~。暇人の検索に対する情熱すご―いピコ~~」
「おじいさん、またずっと寝てるみたいだし、外行ってきていいかなぁ。一応仕事しなきゃ」
「一日中ここにいるわけにもいかないから、行くといいピコ。今はボクとヨーゼプゥが見てるよ」
家族の一員、名犬ヨーゼプゥはたぶん全然役に立たない。
「離れてる間に何かあったら……」
「それも運命ピコ」
まぁたとえ今すぐ死んでもこれ大往生だよね。
「スチーブン、ちょっと乳でも絞りながら、お話しましょうか」
「うん! うんっ!」
うわぁスチーブン超嬉しそう。これはちょっと魔性の女モード入っちゃうかも??
というわけで、私たちはヤギの乳絞りをしながら会話をしてるのだけど。
「最近、ピータンと会ってないみたいだね」
あ、この人探ってきてる?
「でもアベルとフランツとギャルンとはもっとよく会うようになったよね……」
あ―、それが5股のうちの3人ね!
「君は魅力的だから、君と結婚したい男が他にもたくさんいるの知ってるけど、僕は君のおじいさん思いなところが大好きなんだ」
へぇ、表面上のことだけじゃなく、ちゃんと中身見て言ってくれてるんだ。このスチーブンも良い人じゃない。ずば抜けたイケメンばっか見てきたから麻痺してたけど、十分かっこいいし。
「それでさ、えっと、また後で君の手伝いするから、帰り道に、あの、その……」
ん? 彼もオオカミくんになるのかしら?
「ききき君と、ててて手を繋いでいいかなぁ!?」
マリーヤ、十代後半男子を幼稚園児並みに調教してしまってるのね……。
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