Paradigm Zero

狐島 秋

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[3] ロッカーの行方

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手始めに俺が取りかかったのは、ロッカーの捜索だ。
俺も卯月も知っている場所で、ロッカーのあるような場所といえば、俺たちの通っていた学校、通学路、最寄り駅などが浮かんでくる。俺はそのあたりを中心に調べていった。
すでに卒業した学校のロッカーには、過去の写真を漁ったりツテを辿って情報を得たが、それらしい鍵のロッカーは見当たらなかった。

通学路に点在するコインロッカー等にも、合う鍵のロッカーは見当たらなかった。

(後は駅か………)

俺の最寄り駅から学校までは三駅、卯月はそのひとつ先の駅が最寄り駅だった。

そのロッカーがあるとすれば、俺たちの最寄り駅のどちらかか、学校前駅の3つに絞られるだろう。

「よし……」

ここまででおよそ半日が過ぎていた。隅の方で、やはり悪ふざけなんじゃないか、と思いかけた心を正すように、頬を叩いた。

学校側の最寄り駅。ロッカーは入り口すぐ近くにあった

(…あった…コインロッカー)

卯月の鍵には、よくみる番号の振られたタグはついていない。鍵のかかった適当なところに、鍵を指してみる。

(……………刺さった!)

指した鍵は何の抵抗もなく奥まで届いた。しかし、鍵が回ることは無かった。

(刺さったった事は、少なくともこのロッカーと同じタイプのものだって事だ。これは大きな前進だぞ)

手当たり次第に鍵を刺していく。
鍵はするりと刺さるが、回らない。
ここじゃないのか?、と諦めかけたその時


───ガチャリ。



「───ッ!!」

鍵が回った。

扉に手をかける。

キィ……と金属が擦れる音がして、扉が動いた。

「この中に………」

5年前に繋がる『何か』がこの中にあるはずだ。
卯月に繋がる『何か』が………!!

ゆっくりと扉を引いた。

「…これは………アタッシュケース?」

黒い光沢のある真四角な形状。フチには取っ手がついている。取っ手の側には留め具がついていて、どうやら鍵などはついていない様子だ。

これが卯月の遺したもの?

旅行なんかでもピンク色のスーツケースを使っていた卯月にしては、随分と可愛げのない渋いケースだ。

気持ちを落ち着かせるように、ゆっくりと息を吐いてから、アタッシュケースに手を伸ばす。



「──お前が、鷹栖 蓮か?」



「───ッ!?」

とっさに声をかけられ、すくんでしまう。

そこにいたのは、黒いコートを着た男だった。

見た目で推測できるおおよその年齢は20代前半~後半程度。19の俺よりも年上のように写った。
全体的に髪は長い。目にかかった前髪が影になっているのか、その瞳は獲物を狩る獣のようにこちらを睨み付けている様にさえ見えた。
右腕には、金属の装飾が施された重そうな腕輪をしている。

「………誰…ですか?」

「質問しているのはこちらだ」

男は表示一つ変えない。

「…そうですけど、あなた誰ですか?」

おそるおそる聞き返す。
男は未だに表情を崩さない。

「そうか。なら良い」

「……そうか、ってあなたはいったい───」

 

「大人しく鍵を出せ。抵抗は無意味だ」



「──は?」

…………鍵……って、あの鍵か?

なんでコイツがその事を?

卯月の部屋で見つけてから帰るまで誰にも見せていないし、シャツの下に提げているからここまででも見られるような事はないはずだ。

……コイツ、何者だ?

「あんた…いったい……」

「大人しく鍵を出せば無事に済ませてやる。俺の手を煩わせるな」 

男はその一点張りだ。

…………鍵を渡す訳にはいかない。

この際、この男がなんで知っているかはどうだっていい。

鍵は卯月の貴重な手がかり。渡したらそれでおしまいだ。

それに、卯月は『誰にも渡すな』って言ったんだ。それをこんな男に渡す訳がない。

 「…なんで、鍵の事を?」

「答える義務はない。渡せば済む、それだけだ」

「そうですか。それじゃあ──」

懐から自転車のスペアキーを取り出す。

「──くれてやるよ!!」

俺はそれを男の後ろの方めがけて、大きく放り投げた。

「なっ!?」

─チャンスだ!

俺はアタッシュケースを持って逆側へ全力で走った。

男が来る前に電車に乗って逃げてしまえばいい。そうすれば追って来れなくなる。


いそいで改札を通り、閉まりかけた電車に飛び乗った。

そこに男の姿は無い。

ちょうどよく扉は閉まり、電車は走り出した。
電車は何事もなく進んで行き、男が追い付いて来る様子は無かった。

(………助かった。何者なんだあの男)

そして、しばらくすると電車は俺の家の最寄りまで来ていた。

(……あの鍵の事を探してる連中がいるのか)

用心しなければならない。

卯月が手放すな、と言った意味さえまだはっきりしていないのだ。

渡すな、と書いてあった段階で誰かがあの鍵を探している事を考えるべきだったか。

アタッシュケースの中身と何か関係があるかもしれない。ひとまず家に帰って、ケースの中身を確認してから考えよう。



「よぉ、忘れ物だぜ?」



背後から、チャリン、と金属のようなものが地面にが落ちる音がした。

───!?

「………な…!?」

「なんでいる?とでも言いたいのか?住所ぐらい割れている」

待ち伏せ……!

「さぁ、鍵を寄越せ」

男はこちらにじわじわと迫ってくる。

「何で鍵なんか欲しがる…!!これは大切な人の形見だ。アンタに渡す訳にはいかない!」

提げたままの鐘を握りしめ、威嚇するように叫ぶ。

「そうか。交渉決裂だな」

男は迫る足を止め、何やら懐に手を入れた。

そして、そこから光り輝く1本の鍵を取り出した。

「──ここからは実力行使だ」
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