魔王となった俺を殺した元親友の王子と初恋の相手と女神がクズすぎるので復讐しようと思ったけど人生やり直したら普通に楽しかった件

へたまろ

文字の大きさ
66 / 125
第3章:覚醒編(開き直り)

第13話:ミラーニャの町で

しおりを挟む
「へえ」

 思わず、口から感嘆の声が漏れてしまった。
 いや、俺のせいだというのは分かる。
 良い意味でも、悪い意味でも。

「どうですか? なかなか、立派なものでしょう」

 ジェノスが少し誇らしげだ。
 うん、納得できる。
 目抜き通りから商業区で観光のデモンストレーションをしているのだが。
 件のアーケード街は完成していて、見事に日差しを遮ってくれている。
 さらに道の中央には幅の広い溝が掘られ、水が流されている。
 ところどころ橋が渡してあったり、屋根付きの椅子と机のある休憩スペースがその水路の上にあったりと、見た目にもおしゃれで涼しく見える。

「これは、誰が考えたんだ?」
「ルーク様の理想ですよね?」

 いや、理想というわけではないけど。
 俺の知っているアウトレットモールの造りに、よく似ている。
 ということは、そういうことだろう。
 無意識にアーケード街をイメージしたときに、こういったのが良いなと思ってしまったのかもしれない。
 そういえばアーケード街の一部も、どちらかというとテラスっぽい感じになっているし。
 うん、どうしてこうなったんだ?
 上に目をやって、首を傾げる。

「これも、ルーク様のイメージですよね?」

 そう、この土地の建物は屋根が平らなことが多い。
 だから、奥行きのある建物が連なっているのを見て、屋根伝に移動できそうだなと脳裏をよぎったのは確かだ。
 パルクール的なイメージで。
 同時に、テラス的な商業区のイメージもしてしまった。
 そのくらいに建物と建物の間が狭く、また移動がしやすそうだったのだ。
 結果として、建物の屋根部分に道を作って、少し下がった場所に狭いながらも部屋を用意したらしい。
 カフェや小物を扱うお店が多くあるが、情報センターっぽいものや衛兵の詰め所まであった。
 
 下の通りに大きな水車があったりして、2階部分にも水があげられていた。
 うん、どれだけ俺のイメージが職人さんや役人さんに伝わったのか知らないが、完全にオーパーツだな。
 そりゃ、憧れの町になるわけだわ。
 すべてがこの世界の基準と比べても洗練され過ぎている。

「最近では、ここミラーニャの町を美容と観光の町ではなく、空中庭園都市ミラーニャや水の都ミラーニャ、世界のオアシスなどと呼ばれる方もいらっしゃるとか」

 まあ、屋根の上にまで水路を通して植物を育てたりしてたら、そう思われるわな。
 凄いよな……水車に、魔石に、ありとあらゆる手段で立体的に水を使って、様々な視覚的効果を促すとか。
 ヒュマノ王国で住みたい町ランキングでもやれば、1位間違いなしだな。

「貴族の方にアンケートを行った結果、引退後に住みたい町第1位のようですよ? というか、アーリーリタイアしてこっちに移住したいという貴族家当主の方々も少なくはないようで」

 そうですか。
 すでに、やってたんですね。
 抜け目のないことで。

 商店の取り扱ってる商品の中に、なんというか……色々と見慣れたものもあるし。
 ご当地タペストリーや、提灯、大きなしゃもじや……うん、なんか俺のイメージが色々と伝染してしまったみたいだ。
 良いんだか、悪いんだかと言った感じだが。
 賑わっているから、問題ないのだろう。
 なんか、途中から和風建築物が並んでるスペースとかあるけど……
 そっかー、一番同調が迸ってたのはこの町だったのか。
 そういえば、そうだよなー……

 アルトや警備隊とも一体感を持って、なんか悪人退治した記憶が。
 ベクトルが完全に一緒だったというか。
 怒りやら目的が完全に一致してた気がするし。
 うん、今思えばみんな俺の思考と感情に引っ張られてたんだろうなというのが、考えなくても分かる。
 そして、そんな状態の俺があれこれと前世というか、地球時代の感覚で都市開発を考えれば。
 それがイメージとして職人や、住人の方々に伝わったならば……

 やっちゃうよなー。
 この世界に不釣り合いなお洒落な、テラス型の商業区。
 そこで商売するのも憧れるし、そこで買い物するのも憧れるし、それを設計して実際に造るのも憧れるし、そんなお洒落な区画を持つ場所に住むのも憧れるだろう。
 やらいでか!
 全員が一致団結して、この町の景観を作り出したであろうことは、想像に難しくない。

「どうされました? 頭を抱えて」
「いや、これから友達をここに招くことを考えると、この発展度合いはどういったらいいか」
「なにか、不満でも? 猶予はありませんが、なんなら建物を取り壊しての立て直しを図りましょうか?」
「建て直しだけにってか? って、やかましいわ! いや、いい意味で嬉しい誤算だったよ。ただ、こんな場所を紹介したら、周りの子たちがどう思うかなと」
「憧れるのでは?」
「うん、王都に戻って宣伝もしてくれると思うけど……キャパを超えるくらいに人気が出そうだなと」
「ほう」

 うん、これはヤバい。
 きっと、観光客が増え続けるのは間違いない。
 なんせ、他の町の数世紀は先を行っている。
 簡単に模倣しようにも、俺が関わらないとできないだろうし。
 謎技術が色々とちりばめられているからね。
 そして職人さんたちはこの町で働けることに誇りをもっているし、新たな技術を惜しみなく伝えてもらえることに恩義を感じていると。 
 引き抜きに応じることはないだろう。
 せいぜいが満足いくほどに経験を積んで、師から許可が降りたら故郷の町に戻るくらいだろうが……
 常に最先端の技術が生み出されるこの町から離れたい職人さんが、はたしてどれだけいるだろうか?

「うん、とりあえずジェノスクラスの人材を至急育成してくれるかな?」
「それは……」
「無理だと感じるのは分かる。無理を押してお願いしてるんだ」
「お願いですか……命令されれば、嫌とはいいませんし。お願いならば、喜んで叶えたい所存ではありますが」
「無茶を承知で言ってるけど、なに1人じゃ無理なら3人合わせてとか、10人チームでならジェノスに近いクオリティーの仕事ができるとかでも良いんだ」
「なるほど、でしたらまだ可能性は」

 別にジェノスが己惚れているとは思わない。
 それだけの年月を生きてきた、大精霊だからな。
 
「で、どうされるのですか?」
「えっと、コンサルタント業を本格的に始めようかと。そして、職人もセットで派遣出張できるような会社を」
「コンサルタント……なるほど、理解しました」

 うん、理解が早くて助かる。
 同調の効果を切ってないからね。
 こういう、意思の統合を図るときには便利な能力だな。
 同調も変化も言葉の範囲が広すぎて、能力的に使いこなせてないが。
 便利な部分に関しては、凄い速さで吸収して使えるようになるってことは……うん、好きこそものの誉れなりというのはあながち間違いじゃなかったな。

 同時進行で、ジェノスには友達の受け入れ準備を。
 うん、そうだ。
 友達を観光案内するためのデモンストレーションだったはずが、いつの間にやら都市開発の流れに。
 さらには、コンサル事業で他の領地や王都の開発にまで手を広げることになるとは。
 恐るべし、ミラーニャ。

「で、ここが皆様にご宿泊いただくホテルです。希望があれば各々方の別荘にお泊り頂いてもいいのですが」

 ジェノスが案内してくれた建物の前で、思わずため息が漏れた。
 うん、都合7階はありそうな、この世界だと高層ビルだろう建物。
 なんだろう……摩天楼計画とかあるのかな?

 あー、あー……
 色々と諦めた。
 うん、もうね……リアル空中庭園を兼ね備えた、超高級ホテルを前にして何を言えばいいのだろう。
 そのホテルの最上階にフリーパスというか、もう支配人さんに直々に案内されるとか。
 魔術師が常駐しているものの、ほぼ自動式の釣瓶式のエレベーターには驚かされた。
 ここにも魔力回路と魔石がふんだんに使われている。
 人がのる籠のスイッチ部に魔力回路が描かれていて、複雑な工程を定型アクションに特化した回路を複数用意することで対応している。
 
 そして最上階のテラスに出ると、下の階層がよく見える。
 高層階にも緑園やらが用意されていて、もうなんていうか……

「ちなみに、皆に泊まってもらうのは?」
「ここ、最上階のロイヤルスイートと、各スイートルームです」
「そっか……」

 まあ、ガチセレブの人たちだから、大丈夫だよねきっと……
 料理を食べて、色々と思うところがあったけど。
 うん、友達を信じることから始めよう。
 
 
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...