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第3章:覚醒編(開き直り)
第13話:ミラーニャの町で
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「へえ」
思わず、口から感嘆の声が漏れてしまった。
いや、俺のせいだというのは分かる。
良い意味でも、悪い意味でも。
「どうですか? なかなか、立派なものでしょう」
ジェノスが少し誇らしげだ。
うん、納得できる。
目抜き通りから商業区で観光のデモンストレーションをしているのだが。
件のアーケード街は完成していて、見事に日差しを遮ってくれている。
さらに道の中央には幅の広い溝が掘られ、水が流されている。
ところどころ橋が渡してあったり、屋根付きの椅子と机のある休憩スペースがその水路の上にあったりと、見た目にもおしゃれで涼しく見える。
「これは、誰が考えたんだ?」
「ルーク様の理想ですよね?」
いや、理想というわけではないけど。
俺の知っているアウトレットモールの造りに、よく似ている。
ということは、そういうことだろう。
無意識にアーケード街をイメージしたときに、こういったのが良いなと思ってしまったのかもしれない。
そういえばアーケード街の一部も、どちらかというとテラスっぽい感じになっているし。
うん、どうしてこうなったんだ?
上に目をやって、首を傾げる。
「これも、ルーク様のイメージですよね?」
そう、この土地の建物は屋根が平らなことが多い。
だから、奥行きのある建物が連なっているのを見て、屋根伝に移動できそうだなと脳裏をよぎったのは確かだ。
パルクール的なイメージで。
同時に、テラス的な商業区のイメージもしてしまった。
そのくらいに建物と建物の間が狭く、また移動がしやすそうだったのだ。
結果として、建物の屋根部分に道を作って、少し下がった場所に狭いながらも部屋を用意したらしい。
カフェや小物を扱うお店が多くあるが、情報センターっぽいものや衛兵の詰め所まであった。
下の通りに大きな水車があったりして、2階部分にも水があげられていた。
うん、どれだけ俺のイメージが職人さんや役人さんに伝わったのか知らないが、完全にオーパーツだな。
そりゃ、憧れの町になるわけだわ。
すべてがこの世界の基準と比べても洗練され過ぎている。
「最近では、ここミラーニャの町を美容と観光の町ではなく、空中庭園都市ミラーニャや水の都ミラーニャ、世界のオアシスなどと呼ばれる方もいらっしゃるとか」
まあ、屋根の上にまで水路を通して植物を育てたりしてたら、そう思われるわな。
凄いよな……水車に、魔石に、ありとあらゆる手段で立体的に水を使って、様々な視覚的効果を促すとか。
ヒュマノ王国で住みたい町ランキングでもやれば、1位間違いなしだな。
「貴族の方にアンケートを行った結果、引退後に住みたい町第1位のようですよ? というか、アーリーリタイアしてこっちに移住したいという貴族家当主の方々も少なくはないようで」
そうですか。
すでに、やってたんですね。
抜け目のないことで。
商店の取り扱ってる商品の中に、なんというか……色々と見慣れたものもあるし。
ご当地タペストリーや、提灯、大きなしゃもじや……うん、なんか俺のイメージが色々と伝染してしまったみたいだ。
良いんだか、悪いんだかと言った感じだが。
賑わっているから、問題ないのだろう。
なんか、途中から和風建築物が並んでるスペースとかあるけど……
そっかー、一番同調が迸ってたのはこの町だったのか。
そういえば、そうだよなー……
アルトや警備隊とも一体感を持って、なんか悪人退治した記憶が。
ベクトルが完全に一緒だったというか。
怒りやら目的が完全に一致してた気がするし。
うん、今思えばみんな俺の思考と感情に引っ張られてたんだろうなというのが、考えなくても分かる。
そして、そんな状態の俺があれこれと前世というか、地球時代の感覚で都市開発を考えれば。
それがイメージとして職人や、住人の方々に伝わったならば……
やっちゃうよなー。
この世界に不釣り合いなお洒落な、テラス型の商業区。
そこで商売するのも憧れるし、そこで買い物するのも憧れるし、それを設計して実際に造るのも憧れるし、そんなお洒落な区画を持つ場所に住むのも憧れるだろう。
やらいでか!
全員が一致団結して、この町の景観を作り出したであろうことは、想像に難しくない。
「どうされました? 頭を抱えて」
「いや、これから友達をここに招くことを考えると、この発展度合いはどういったらいいか」
「なにか、不満でも? 猶予はありませんが、なんなら建物を取り壊しての立て直しを図りましょうか?」
「建て直しだけにってか? って、やかましいわ! いや、いい意味で嬉しい誤算だったよ。ただ、こんな場所を紹介したら、周りの子たちがどう思うかなと」
「憧れるのでは?」
「うん、王都に戻って宣伝もしてくれると思うけど……キャパを超えるくらいに人気が出そうだなと」
「ほう」
うん、これはヤバい。
きっと、観光客が増え続けるのは間違いない。
なんせ、他の町の数世紀は先を行っている。
簡単に模倣しようにも、俺が関わらないとできないだろうし。
謎技術が色々とちりばめられているからね。
そして職人さんたちはこの町で働けることに誇りをもっているし、新たな技術を惜しみなく伝えてもらえることに恩義を感じていると。
引き抜きに応じることはないだろう。
せいぜいが満足いくほどに経験を積んで、師から許可が降りたら故郷の町に戻るくらいだろうが……
常に最先端の技術が生み出されるこの町から離れたい職人さんが、はたしてどれだけいるだろうか?
「うん、とりあえずジェノスクラスの人材を至急育成してくれるかな?」
「それは……」
「無理だと感じるのは分かる。無理を押してお願いしてるんだ」
「お願いですか……命令されれば、嫌とはいいませんし。お願いならば、喜んで叶えたい所存ではありますが」
「無茶を承知で言ってるけど、なに1人じゃ無理なら3人合わせてとか、10人チームでならジェノスに近いクオリティーの仕事ができるとかでも良いんだ」
「なるほど、でしたらまだ可能性は」
別にジェノスが己惚れているとは思わない。
それだけの年月を生きてきた、大精霊だからな。
「で、どうされるのですか?」
「えっと、コンサルタント業を本格的に始めようかと。そして、職人もセットで派遣出張できるような会社を」
「コンサルタント……なるほど、理解しました」
うん、理解が早くて助かる。
同調の効果を切ってないからね。
こういう、意思の統合を図るときには便利な能力だな。
同調も変化も言葉の範囲が広すぎて、能力的に使いこなせてないが。
便利な部分に関しては、凄い速さで吸収して使えるようになるってことは……うん、好きこそものの誉れなりというのはあながち間違いじゃなかったな。
同時進行で、ジェノスには友達の受け入れ準備を。
うん、そうだ。
友達を観光案内するためのデモンストレーションだったはずが、いつの間にやら都市開発の流れに。
さらには、コンサル事業で他の領地や王都の開発にまで手を広げることになるとは。
恐るべし、ミラーニャ。
「で、ここが皆様にご宿泊いただくホテルです。希望があれば各々方の別荘にお泊り頂いてもいいのですが」
ジェノスが案内してくれた建物の前で、思わずため息が漏れた。
うん、都合7階はありそうな、この世界だと高層ビルだろう建物。
なんだろう……摩天楼計画とかあるのかな?
あー、あー……
色々と諦めた。
うん、もうね……リアル空中庭園を兼ね備えた、超高級ホテルを前にして何を言えばいいのだろう。
そのホテルの最上階にフリーパスというか、もう支配人さんに直々に案内されるとか。
魔術師が常駐しているものの、ほぼ自動式の釣瓶式のエレベーターには驚かされた。
ここにも魔力回路と魔石がふんだんに使われている。
人がのる籠のスイッチ部に魔力回路が描かれていて、複雑な工程を定型アクションに特化した回路を複数用意することで対応している。
そして最上階のテラスに出ると、下の階層がよく見える。
高層階にも緑園やらが用意されていて、もうなんていうか……
「ちなみに、皆に泊まってもらうのは?」
「ここ、最上階のロイヤルスイートと、各スイートルームです」
「そっか……」
まあ、ガチセレブの人たちだから、大丈夫だよねきっと……
料理を食べて、色々と思うところがあったけど。
うん、友達を信じることから始めよう。
思わず、口から感嘆の声が漏れてしまった。
いや、俺のせいだというのは分かる。
良い意味でも、悪い意味でも。
「どうですか? なかなか、立派なものでしょう」
ジェノスが少し誇らしげだ。
うん、納得できる。
目抜き通りから商業区で観光のデモンストレーションをしているのだが。
件のアーケード街は完成していて、見事に日差しを遮ってくれている。
さらに道の中央には幅の広い溝が掘られ、水が流されている。
ところどころ橋が渡してあったり、屋根付きの椅子と机のある休憩スペースがその水路の上にあったりと、見た目にもおしゃれで涼しく見える。
「これは、誰が考えたんだ?」
「ルーク様の理想ですよね?」
いや、理想というわけではないけど。
俺の知っているアウトレットモールの造りに、よく似ている。
ということは、そういうことだろう。
無意識にアーケード街をイメージしたときに、こういったのが良いなと思ってしまったのかもしれない。
そういえばアーケード街の一部も、どちらかというとテラスっぽい感じになっているし。
うん、どうしてこうなったんだ?
上に目をやって、首を傾げる。
「これも、ルーク様のイメージですよね?」
そう、この土地の建物は屋根が平らなことが多い。
だから、奥行きのある建物が連なっているのを見て、屋根伝に移動できそうだなと脳裏をよぎったのは確かだ。
パルクール的なイメージで。
同時に、テラス的な商業区のイメージもしてしまった。
そのくらいに建物と建物の間が狭く、また移動がしやすそうだったのだ。
結果として、建物の屋根部分に道を作って、少し下がった場所に狭いながらも部屋を用意したらしい。
カフェや小物を扱うお店が多くあるが、情報センターっぽいものや衛兵の詰め所まであった。
下の通りに大きな水車があったりして、2階部分にも水があげられていた。
うん、どれだけ俺のイメージが職人さんや役人さんに伝わったのか知らないが、完全にオーパーツだな。
そりゃ、憧れの町になるわけだわ。
すべてがこの世界の基準と比べても洗練され過ぎている。
「最近では、ここミラーニャの町を美容と観光の町ではなく、空中庭園都市ミラーニャや水の都ミラーニャ、世界のオアシスなどと呼ばれる方もいらっしゃるとか」
まあ、屋根の上にまで水路を通して植物を育てたりしてたら、そう思われるわな。
凄いよな……水車に、魔石に、ありとあらゆる手段で立体的に水を使って、様々な視覚的効果を促すとか。
ヒュマノ王国で住みたい町ランキングでもやれば、1位間違いなしだな。
「貴族の方にアンケートを行った結果、引退後に住みたい町第1位のようですよ? というか、アーリーリタイアしてこっちに移住したいという貴族家当主の方々も少なくはないようで」
そうですか。
すでに、やってたんですね。
抜け目のないことで。
商店の取り扱ってる商品の中に、なんというか……色々と見慣れたものもあるし。
ご当地タペストリーや、提灯、大きなしゃもじや……うん、なんか俺のイメージが色々と伝染してしまったみたいだ。
良いんだか、悪いんだかと言った感じだが。
賑わっているから、問題ないのだろう。
なんか、途中から和風建築物が並んでるスペースとかあるけど……
そっかー、一番同調が迸ってたのはこの町だったのか。
そういえば、そうだよなー……
アルトや警備隊とも一体感を持って、なんか悪人退治した記憶が。
ベクトルが完全に一緒だったというか。
怒りやら目的が完全に一致してた気がするし。
うん、今思えばみんな俺の思考と感情に引っ張られてたんだろうなというのが、考えなくても分かる。
そして、そんな状態の俺があれこれと前世というか、地球時代の感覚で都市開発を考えれば。
それがイメージとして職人や、住人の方々に伝わったならば……
やっちゃうよなー。
この世界に不釣り合いなお洒落な、テラス型の商業区。
そこで商売するのも憧れるし、そこで買い物するのも憧れるし、それを設計して実際に造るのも憧れるし、そんなお洒落な区画を持つ場所に住むのも憧れるだろう。
やらいでか!
全員が一致団結して、この町の景観を作り出したであろうことは、想像に難しくない。
「どうされました? 頭を抱えて」
「いや、これから友達をここに招くことを考えると、この発展度合いはどういったらいいか」
「なにか、不満でも? 猶予はありませんが、なんなら建物を取り壊しての立て直しを図りましょうか?」
「建て直しだけにってか? って、やかましいわ! いや、いい意味で嬉しい誤算だったよ。ただ、こんな場所を紹介したら、周りの子たちがどう思うかなと」
「憧れるのでは?」
「うん、王都に戻って宣伝もしてくれると思うけど……キャパを超えるくらいに人気が出そうだなと」
「ほう」
うん、これはヤバい。
きっと、観光客が増え続けるのは間違いない。
なんせ、他の町の数世紀は先を行っている。
簡単に模倣しようにも、俺が関わらないとできないだろうし。
謎技術が色々とちりばめられているからね。
そして職人さんたちはこの町で働けることに誇りをもっているし、新たな技術を惜しみなく伝えてもらえることに恩義を感じていると。
引き抜きに応じることはないだろう。
せいぜいが満足いくほどに経験を積んで、師から許可が降りたら故郷の町に戻るくらいだろうが……
常に最先端の技術が生み出されるこの町から離れたい職人さんが、はたしてどれだけいるだろうか?
「うん、とりあえずジェノスクラスの人材を至急育成してくれるかな?」
「それは……」
「無理だと感じるのは分かる。無理を押してお願いしてるんだ」
「お願いですか……命令されれば、嫌とはいいませんし。お願いならば、喜んで叶えたい所存ではありますが」
「無茶を承知で言ってるけど、なに1人じゃ無理なら3人合わせてとか、10人チームでならジェノスに近いクオリティーの仕事ができるとかでも良いんだ」
「なるほど、でしたらまだ可能性は」
別にジェノスが己惚れているとは思わない。
それだけの年月を生きてきた、大精霊だからな。
「で、どうされるのですか?」
「えっと、コンサルタント業を本格的に始めようかと。そして、職人もセットで派遣出張できるような会社を」
「コンサルタント……なるほど、理解しました」
うん、理解が早くて助かる。
同調の効果を切ってないからね。
こういう、意思の統合を図るときには便利な能力だな。
同調も変化も言葉の範囲が広すぎて、能力的に使いこなせてないが。
便利な部分に関しては、凄い速さで吸収して使えるようになるってことは……うん、好きこそものの誉れなりというのはあながち間違いじゃなかったな。
同時進行で、ジェノスには友達の受け入れ準備を。
うん、そうだ。
友達を観光案内するためのデモンストレーションだったはずが、いつの間にやら都市開発の流れに。
さらには、コンサル事業で他の領地や王都の開発にまで手を広げることになるとは。
恐るべし、ミラーニャ。
「で、ここが皆様にご宿泊いただくホテルです。希望があれば各々方の別荘にお泊り頂いてもいいのですが」
ジェノスが案内してくれた建物の前で、思わずため息が漏れた。
うん、都合7階はありそうな、この世界だと高層ビルだろう建物。
なんだろう……摩天楼計画とかあるのかな?
あー、あー……
色々と諦めた。
うん、もうね……リアル空中庭園を兼ね備えた、超高級ホテルを前にして何を言えばいいのだろう。
そのホテルの最上階にフリーパスというか、もう支配人さんに直々に案内されるとか。
魔術師が常駐しているものの、ほぼ自動式の釣瓶式のエレベーターには驚かされた。
ここにも魔力回路と魔石がふんだんに使われている。
人がのる籠のスイッチ部に魔力回路が描かれていて、複雑な工程を定型アクションに特化した回路を複数用意することで対応している。
そして最上階のテラスに出ると、下の階層がよく見える。
高層階にも緑園やらが用意されていて、もうなんていうか……
「ちなみに、皆に泊まってもらうのは?」
「ここ、最上階のロイヤルスイートと、各スイートルームです」
「そっか……」
まあ、ガチセレブの人たちだから、大丈夫だよねきっと……
料理を食べて、色々と思うところがあったけど。
うん、友達を信じることから始めよう。
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