魔王となった俺を殺した元親友の王子と初恋の相手と女神がクズすぎるので復讐しようと思ったけど人生やり直したら普通に楽しかった件

へたまろ

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EX章1:学園編

第10話:ジェファードの扱い

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「さてと、色々と言いたいことはありますが。まずは、ようこそヒュマノ王立学園へ」

 そう言って、学園長が両手を広げてジェファードを歓迎する。
 ジェファードはキョトンとしているが。
 今度は何を考えているのやら。

「私のことは、存じていらっしゃるのでは?」

 ジェファードの質問に、今度は学園長の方が首を傾げる。
 ジェファードの言いたいことが分からないようだ。

「私が魔王であることを、ご存じないと?」

 うわあ。
 ド直球で突っ込んできたよこいつ。
 確かに魔王ではあるけども。
 こいつが魔王となると、俺はなんだ?
 大魔王とか、裏ボスになるんじゃないのか?

 いや、某シリーズだと裏ボスが神様とかってパターンもあるけどさ。
 
「何を言ってるんだ? 君は人だろう。そして、我が校の生徒だ」

 学園長強い。
 ジェファードの目を見て、はっきりと言い切った。
 かっこいい。

「はあ、ルーク様……この学園のセキュリティは大丈夫なのでしょうか? 魔王を手放しで歓迎するなど」

 これは、俺の命令に従っている状態なのか?
 礼儀正しい生徒を演じるよう命じたはずだが、取り繕った言葉遣いの無礼者にしか見えないが。
 こいつ、本当にポンコツじゃないか?

「ああ、問題ありませんでしたね。ルーク様がいらっしゃれば、七難八苦すらも楽の一言で片付きますもんね」

 ジェファードの言う通りなら、とんだマゾ野郎だな俺は。

 よしっ、殺しても良い気がしてきた。
 うん、魔王を倒すんだ。
 俺が真の勇者ってことだな。

「ルーク様? 顔が少し」
「なんだ?」
「凛々しくなっておられます。当時を思い出しますね。私もその目で睨まれて、何度竦みあがったことか。本当に感動で身震いする思いです」

 くっ!
 殺意すらも懐かしむようなやつとか……てか、最初の世界でも俺に殺気を向けられていたのか。
 本当に大丈夫かこいつ。
 リカルドと一緒にいた時が、かなりまともな状態に思えてきた。
 なんか、状態異常とかに掛かってないよな?

「話の続きをしてもいいかね?」
「はい! お願いします」

 学園長が困った様子で声を掛けてきたので、元気よく返事を返す。
 ジェファードにも、とりあえず叩いて合図を送る。
 
「はい……おなしゃす」

 この野郎。

 よし、帰ったら3回は殺そう。
 うん、アリスに頼んだら、そのくらいなんとかなるだろう。

「お前……ふざけてるのか?」
「いえ、つい声が小さくなってしまったようですね」

 ていうか、こいつも実は日本にいたりしなかったよな?
 なんか、色々と不安になってきたが。

「まあ、ジャストールの言うことは一応だけど、ちゃんと聞くようだな」

 ……ジャッカス先生。
 学園長室にノックもせずに入ってきて、いきなり後ろから声を掛けてくるとか。
 唐突に頭の上から降ってきた声に振り返ると、ジャッカス先生が難しい顔をして立っていた。
 流石に、教師がそれってどうなのかな?
 上司というか、組織の長に対してさ。
 しかも、王族相手に。

「ジャッカス先生。生徒の目の前ですよ? 入室の作法くらい、ちゃんとしてください」
「はい、申し訳ありません。扉の外まで不穏な空気が漏れておりましたので、気が急いてしまいました」

 俺のせいか?
 俺のせいなのか?

「ジャッカス先生は、私がまだ教員だった頃に受け持った子でね。少しばかり、生徒と先生という気分が抜けてないみたいで、困ったものですよ。特に彼は、やんちゃな「学園長。その話は、今はよくないですか? それよりも、今日の本題はジェファードのことですよね?」」

 学園長が微笑ましい表情で遠い記憶を探っているのを、ジャッカス先生が遮る。
 どうやら色々と生徒に聞かれたくない話を、学園長は知っているらしい。
 これは、いくつか是非とも教えてもらいたい。
 後で聞きに行こう。

「おい、ジャストール! お前、あとで俺の話をオーランド先生から聞こうとかって思ってないよな?」

 おおう、バレテーラ。
 まあ、いいじゃないか。
 幼い子のやんちゃなんてのは、お茶うけにもってこいだしな。
 なんだかんだで、俺からしたらジャッカス先生も若造なんだよな。

 最初の世界のルークと、魔王ルークと融合してから精神年齢の適正化が楽になった。
 自然に歳相応に振舞い、思考を合わせるくらいには。
 ただ、無意識で出来るというだけで、意識次第でこれはどうとでもなる。

 第二の人生の自我を強めに出せば、伊勢海としての人格をはっきりと引き出せるからのう。
 
「なんだ、急に爺みたいに老け込んで」
「ジャッカス殿……我が主に対して、少し無礼が過ぎませんか?」

 お前は、先生と呼べと。
 思わず、学園長と顔を見合わせてしまった。
 そして、一番気になることを聞いておこう。

「で、なんで私たちは呼ばれたんですか?」

 うん、まだここに呼ばれた理由を聞いてないからね。
 
「まあ、いくつか理由はあるのだけれども、最初に謝罪からさせていただこう。この度は、我が国がジャストール一人に多大な迷惑を掛けてしまったこと、誠に申し訳なかった」
「私もジャストールの悩みや事情に気付けなかった。結局私が手助けすることなく自己解決したことは、教師として誇らしく思うと同時に担任として情けなく居た堪れない思いしかない。申し訳ない」

 おおう。
 全く関係のない2人から、謝られてしまっても。
 ジェファードだけが嬉しそうだけど……
 よしっ、2人が頭を下げているうちに。

「ぐふぇ」
 
 自身ににクイックを掛けて、周囲にスロウを施しつつ本気で12発入れておいた。
 喜ぶ間もなく、悶絶してるが。
 少しだけ目が逝ってるのが、気持ち悪い。

 こいつは真性なのかもしれない。
 だからこそ、最初の世界の俺に惹かれたってことはないよな?

「2人からの謝罪は不要です。お二方に責任は「学園の生徒に対する責任も持てないなんて、教師として失格だ。だからそれ以上は言わなくもいい」」
「そうですよ、ジャストール。貴方に非は無いのですから……問題はありますが」

 ん?

「謝罪は本心ですが、言わないといけないことも多くありますからね?」

 んん?
 何やら不穏な流れなのだが。
 
「とりあえず、説教もあるので覚悟しておいてください。それからジェファード君の取り扱いに関する話も」

 おおう……
 今日は、長くなりそうだ。
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