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第三章:王都学園編~初年度後期~
第38話:ピュアプリンス
後期の習熟度テストも終わり、今期の学生生活も残すところ1週間。
これから3日掛けて、前期、後期のテストを見ながらの総まとめだ。
前期でやったテストの内容どころか、後期のテスト内容すら詰め込み組には記憶に無いかもしれないけどさ。
そうして4日目に、1年間の成果発表を行うわけだ。
ちなみに剣術の成果発表は、学年別トーナメント戦で学年最強を決めるらしい。
1年生が全員、げんなりしていた。
学園の伝統方式で例外は認められないと、私も1年生組に組まれているからね。
いや、1年生なんだから当たり前のことではある。
先輩方の1番の注目のカードは、クリントとレイチェルらしい。
次に目立っているのが、テレサとフローラだけど……まあ、トーナメント表は先生が決めるわけだし。
当日まで、分からないけど。
他は、私たち以外の1年生同士のカードだってさ。
正直、私とクリントとカーラが、それ以外のメンバーと当たったら秒で終わるから、見どころすらないと言われた。
うーん……指導的な打ち合いでも、考えた方がいいかな?
あと、4日しかないけど。
このラスト1週間、私は色々と頭を悩ませることになった。
とりあえず授業の方は、前期後期満点合格の私とレイチェルは別に必要ないと言われてしまった。
ただ、学校に来ないとと欠席扱いになるから、他にやりたいことが無いかって私はブライト先生に聞かれた。
レイチェルも担任の先生に、同じことを言われたらしい。
そして、レイチェルが選んだのは、学園の食堂で花嫁修業。
……早い話が、料理教室ってこと。
生活の授業はあるけど、流石に貴族の子息令嬢が料理をすることはないだろうって。
うーん……騎士になって衛生班とかに回されたら、野営の時に料理することもありそうだけど。
あと、いくら貴族令嬢でも貧乏領地に嫁いだら、料理くらいできた方がいい気がするんだけどね。
レイチェルの場合は、完全に趣味だ。
私も付き合うことはやぶさかではないけど、他に何か無いかと悩んでいる。
そして、前期で落第して補習を受けていた身分至上主義派の子たちで、後期にきちんと合格した子たちが物凄く調子に乗っているのも悩ましい。
正直言って、うざい。
地獄の身分至上主義派閥と呼びたくなるレベルで。
「いや、全然勉強とかしてないけど、なんか余裕だったわ」
と自慢げに話してる子の多いこと、多いこと。
自慢してる相手は、試験で落ちた身分至上主義派閥の子。
めっちゃ悔しそうにしてるけど、身分至上主義派閥の鋼の結束にノミを打ち込んで罅を入れるような行為だよね?
喜んで自傷行為をしてるけど、それでいいのかな?
……まあ、普通の子たちはほぼ合格出来てるからね。
そっちには自慢できないよね。
たぶん、点数も彼らの方が上だろうし。
なんせ、地方の領地から来ている下級貴族の子たちは、この学園での頑張りが自分たちの未来を決めると言っても過言ではない。
他の貴族の家に嫁入りや、婿入りしようと思ったら自分たちの価値を高めて証明しないといけないからね。
商家に嫁いだり、婿入りするならまだいい。
下手したら、領地の有力氏族とかだ。
うん、町長や村長。
偉い人だけど、純然たる平民。
商家も平民だけど、貴族家にトラバーユできる可能性は0じゃない。
となれば、ここで頑張るしかない。
あとは、ここで色々な縁を繋ぐしかない。
必然、上を目指すことになるからさ。
「きっついわぁ。テスト週間とか、毎日一時間くらいしか寝てなかったわ。実質、寝てないのと一緒だよ。ん? 勉強じゃないぞ。せっかく学校が早く終わるんだから、遊ぶのに忙しくてさ」
うざい……
しかし、私を悩ませるのは、もっと違うことだ。
「エルザ! 今日も、一緒に食べよう」
うん、こいつ。
私の婚約者様。
そして、王子様。
冬の休暇は、2週間ほどこっちで友人と別れを惜しんで、私も領地に帰ることになったんだけどさ。
それを聞きつけたダリウスが、私と常に一緒に居たがるようになった。
そう、私の至福の天使を侍らせての、昼のモグモグタイムにまで……
しかも、カーラ達もダリウス相手だからか、二人きりにしようとしたりと余計な気を遣ってくる。
私はダリウスに気を遣ってもらいたい。
性質が悪いことに、本人は私に気を遣っているつもりらしいんだよね。
違うんだよ。
食堂に入るときに扉を開けてくれるだとか、座るときに椅子を引いてくれるだとか、私の好きな料理を分けてくれるだとか、そういうことじゃないんだよ。
友達と過ごしたいんだから、気を遣って遠慮しろってことなんだよ。
だから、「あーん」じゃねぇ! 調子乗んな!
思わず、ぶん殴りたくなったこと数知れず。
婚約者同士、仲良きは麗しきかなじゃない。
いまのところ、ダリウスからの一方通行だと気付け!
私は、あくまで政略結婚の相手という認識から、大きく離れていないんだけど?
というよりも、高校生とか中学生相手に恋してる、小学校低学年や幼稚園の子みたいな?
手の掛かる子ではあるけども、突き離せない感じの。
いや、ダリウスは突き放せるかもしれない。
日増しに調子に乗ってるからね。
放課後の予定も横入りして、平気で私を連れ回すし。
そして私たちを遠巻きに見ている友人たちが、恨めしい。
私もそっちの観客側になりたい。
ただ、レイチェルだけが、心配そうな表情に変わってきている。
私の我慢が限界突破寸前なのに気付いているのだろう。
うんうん、レイチェルだけだよ。
私のことを分かってくれてるのは。
他の子たちは、キャーキャーと女子らしく盛り上がるだけだもんね。
テレサとフローラは、お付き合いって感じで御座なりの反応だけどさ。
髪を触るな!
甘い言葉を囁くな!
お前はどこの王子様だよ! ここの王子様か……
とセルフ突っ込みするレベルで、行動がおかしい。
これは、きっと裏でダリウスに余計なことを吹き込んでるやつがいそうだ。
「エルザはつれないね、しばらく会えなくなるというのに」
「そんな1年や2年会えないわけでもないですし。そもそも、初めて会うまでに、婚約してから9年も経ってたのですし、学園に通うまでは数ヶ月会わないなんてざらだったじゃないですか。たかだか、2カ月弱くらいで何を大袈裟な」
「一緒にいる時間が増えれば増えるほど、離れがたくなるんだ。比翼の鳥のように、そなたの存在は私に必要なのだ! 私はそなたがいなくては先も見えぬし、この空を羽ばたけぬ身になってしまったのだ」
「メネス物語のオルヴァ王ですか?」
「古典でマイナーなうえに古い言葉だけじゃなく地方の言葉遣いも多く、難解だから流石に読んでないと思ったのに……本当に、嫌になるくらいに博識だね。そこも、エルザの魅力なんだけどさ」
知りませんよ。
異世界翻訳の注釈に、メネス物語、第3巻4章のオルヴァ王がメネスに愛を伝えるシーンって出たから、突っ込んだだけだよ。
そもそも、比翼の鳥って中国の伝説上の鳥だし、相変わらず斜め上の翻訳機能が発動している。
というか、この注釈は悪意を感じたよ……異世界翻訳さんも、ダリウスにイラっとしたのか?
ただ、比翼の鳥もこの世界なら実在してそうだよね。
なんせ、ファンタジーだし。
魔物として。
しかし、ここまで来たら、悲しいかなダリウスのことが色々と分かってしまった。
そう、この子は王族として純粋すぎるほどに、純粋なんだ。
うん、良くも悪くも。
王子として公務には真面目で、国民に対する責任感も強く人情にも篤い。
優しく穏やかで、王族らしい気持ちの余裕もある。
王族たらんとする心構えも。
それと同時に、王族としての傲慢さも同じくらいにある。
自分が優先されるのは当たり前だ。
自分が何かしてあげたのだから、喜んで当然だ。
人は自分の意見に従うものだ。
そういった感覚が、隠すことなく見える。
それはそうなんだけど、本当に腹の探り合いが苦手というか。
人が何故、自分を持ち上げるのか。
その本質を理解していない。
王子に敬意を払うのは当然だが、別に感謝や畏敬の念を抱いているわけじゃない。
偉いのは王様だからだ。
それも、為政者として国民が尊敬に値するほどの実績があってこそだ。
王子に周りが付き従ったり忖度や遠慮したりするのは、彼が将来国王になるからだ。
特に第二王子というライバルもいないダリウスなら、間違いなく国王になれる……はず。
スペアステージアのクーデターが上手くいかない限り。
だから取り入って、将来の自分のポジションを少しでも良くしようと持ち上げているだけなのに。
そのことに気付くと同時に、なぜスペアステージアの周りに人が集まっているかがなんとなく見えてきたよ。
ダリウスの王としての資質を疑っているか、もしくはスペアステージアを上手く利用すればダリウス程度どうにかなると侮っているのか。
そういうことだろう。
だって……人を疑ったり、言葉遊びや、上手く言い回しを使ってあしらったりってのが苦手だもんね。
この子は……
だからこそ、私がなぜ彼を尊重しないかを彼は分かっていないのだろう。
ただ、そこも含めて好意的に受け止められているのは、困ったもんだけど。
癇癪を起したりしないのは、やはり王族としての自覚がそうさせるんだろうけどさ。
私は別にダリウスに取り入らなくても、婚約者だから……必然的に王妃という立場になるわけで。
であれば、遠慮する必要はない。
夫婦は対等な立場でこそ、上手くいくのだから。
あと、別に王族の威光がなくとも、私は好きに生きられるだけの材料を揃えてるからね。
婚約破棄されたところで、痛くもかゆくもない。
だから、ダリウスに遠慮する必要もない。
とりあえず、天使ちゃん成分が足りないから、そろそろ解放して欲しいんだけど。
これは、相当に大量に摂取する必要があるから、ダリウスと別れた後でハルナを連れて孤児院巡りでもしようかな?
おやつをいっぱい持って。
「今日は、一緒に夕食でもどうかな?」
また、思い付きで勝手なことを言いだす。
「忙しいので、お断りします」
「……そうか。私よりも優先すべきことがあるのか」
「はい!」
「それならば、仕方ない……か」
美少年のしょんぼりと項垂れた姿は可哀そうに見えるけど、ただの自己中の我がままだからね。
同情はしないし、できない。
夕飯を一緒に食べたければ、事前にアポを取って来い。
その辺の常識が全然ないことは、ミレニア王妃殿下にも伝えたはずなのに。
これから3日掛けて、前期、後期のテストを見ながらの総まとめだ。
前期でやったテストの内容どころか、後期のテスト内容すら詰め込み組には記憶に無いかもしれないけどさ。
そうして4日目に、1年間の成果発表を行うわけだ。
ちなみに剣術の成果発表は、学年別トーナメント戦で学年最強を決めるらしい。
1年生が全員、げんなりしていた。
学園の伝統方式で例外は認められないと、私も1年生組に組まれているからね。
いや、1年生なんだから当たり前のことではある。
先輩方の1番の注目のカードは、クリントとレイチェルらしい。
次に目立っているのが、テレサとフローラだけど……まあ、トーナメント表は先生が決めるわけだし。
当日まで、分からないけど。
他は、私たち以外の1年生同士のカードだってさ。
正直、私とクリントとカーラが、それ以外のメンバーと当たったら秒で終わるから、見どころすらないと言われた。
うーん……指導的な打ち合いでも、考えた方がいいかな?
あと、4日しかないけど。
このラスト1週間、私は色々と頭を悩ませることになった。
とりあえず授業の方は、前期後期満点合格の私とレイチェルは別に必要ないと言われてしまった。
ただ、学校に来ないとと欠席扱いになるから、他にやりたいことが無いかって私はブライト先生に聞かれた。
レイチェルも担任の先生に、同じことを言われたらしい。
そして、レイチェルが選んだのは、学園の食堂で花嫁修業。
……早い話が、料理教室ってこと。
生活の授業はあるけど、流石に貴族の子息令嬢が料理をすることはないだろうって。
うーん……騎士になって衛生班とかに回されたら、野営の時に料理することもありそうだけど。
あと、いくら貴族令嬢でも貧乏領地に嫁いだら、料理くらいできた方がいい気がするんだけどね。
レイチェルの場合は、完全に趣味だ。
私も付き合うことはやぶさかではないけど、他に何か無いかと悩んでいる。
そして、前期で落第して補習を受けていた身分至上主義派の子たちで、後期にきちんと合格した子たちが物凄く調子に乗っているのも悩ましい。
正直言って、うざい。
地獄の身分至上主義派閥と呼びたくなるレベルで。
「いや、全然勉強とかしてないけど、なんか余裕だったわ」
と自慢げに話してる子の多いこと、多いこと。
自慢してる相手は、試験で落ちた身分至上主義派閥の子。
めっちゃ悔しそうにしてるけど、身分至上主義派閥の鋼の結束にノミを打ち込んで罅を入れるような行為だよね?
喜んで自傷行為をしてるけど、それでいいのかな?
……まあ、普通の子たちはほぼ合格出来てるからね。
そっちには自慢できないよね。
たぶん、点数も彼らの方が上だろうし。
なんせ、地方の領地から来ている下級貴族の子たちは、この学園での頑張りが自分たちの未来を決めると言っても過言ではない。
他の貴族の家に嫁入りや、婿入りしようと思ったら自分たちの価値を高めて証明しないといけないからね。
商家に嫁いだり、婿入りするならまだいい。
下手したら、領地の有力氏族とかだ。
うん、町長や村長。
偉い人だけど、純然たる平民。
商家も平民だけど、貴族家にトラバーユできる可能性は0じゃない。
となれば、ここで頑張るしかない。
あとは、ここで色々な縁を繋ぐしかない。
必然、上を目指すことになるからさ。
「きっついわぁ。テスト週間とか、毎日一時間くらいしか寝てなかったわ。実質、寝てないのと一緒だよ。ん? 勉強じゃないぞ。せっかく学校が早く終わるんだから、遊ぶのに忙しくてさ」
うざい……
しかし、私を悩ませるのは、もっと違うことだ。
「エルザ! 今日も、一緒に食べよう」
うん、こいつ。
私の婚約者様。
そして、王子様。
冬の休暇は、2週間ほどこっちで友人と別れを惜しんで、私も領地に帰ることになったんだけどさ。
それを聞きつけたダリウスが、私と常に一緒に居たがるようになった。
そう、私の至福の天使を侍らせての、昼のモグモグタイムにまで……
しかも、カーラ達もダリウス相手だからか、二人きりにしようとしたりと余計な気を遣ってくる。
私はダリウスに気を遣ってもらいたい。
性質が悪いことに、本人は私に気を遣っているつもりらしいんだよね。
違うんだよ。
食堂に入るときに扉を開けてくれるだとか、座るときに椅子を引いてくれるだとか、私の好きな料理を分けてくれるだとか、そういうことじゃないんだよ。
友達と過ごしたいんだから、気を遣って遠慮しろってことなんだよ。
だから、「あーん」じゃねぇ! 調子乗んな!
思わず、ぶん殴りたくなったこと数知れず。
婚約者同士、仲良きは麗しきかなじゃない。
いまのところ、ダリウスからの一方通行だと気付け!
私は、あくまで政略結婚の相手という認識から、大きく離れていないんだけど?
というよりも、高校生とか中学生相手に恋してる、小学校低学年や幼稚園の子みたいな?
手の掛かる子ではあるけども、突き離せない感じの。
いや、ダリウスは突き放せるかもしれない。
日増しに調子に乗ってるからね。
放課後の予定も横入りして、平気で私を連れ回すし。
そして私たちを遠巻きに見ている友人たちが、恨めしい。
私もそっちの観客側になりたい。
ただ、レイチェルだけが、心配そうな表情に変わってきている。
私の我慢が限界突破寸前なのに気付いているのだろう。
うんうん、レイチェルだけだよ。
私のことを分かってくれてるのは。
他の子たちは、キャーキャーと女子らしく盛り上がるだけだもんね。
テレサとフローラは、お付き合いって感じで御座なりの反応だけどさ。
髪を触るな!
甘い言葉を囁くな!
お前はどこの王子様だよ! ここの王子様か……
とセルフ突っ込みするレベルで、行動がおかしい。
これは、きっと裏でダリウスに余計なことを吹き込んでるやつがいそうだ。
「エルザはつれないね、しばらく会えなくなるというのに」
「そんな1年や2年会えないわけでもないですし。そもそも、初めて会うまでに、婚約してから9年も経ってたのですし、学園に通うまでは数ヶ月会わないなんてざらだったじゃないですか。たかだか、2カ月弱くらいで何を大袈裟な」
「一緒にいる時間が増えれば増えるほど、離れがたくなるんだ。比翼の鳥のように、そなたの存在は私に必要なのだ! 私はそなたがいなくては先も見えぬし、この空を羽ばたけぬ身になってしまったのだ」
「メネス物語のオルヴァ王ですか?」
「古典でマイナーなうえに古い言葉だけじゃなく地方の言葉遣いも多く、難解だから流石に読んでないと思ったのに……本当に、嫌になるくらいに博識だね。そこも、エルザの魅力なんだけどさ」
知りませんよ。
異世界翻訳の注釈に、メネス物語、第3巻4章のオルヴァ王がメネスに愛を伝えるシーンって出たから、突っ込んだだけだよ。
そもそも、比翼の鳥って中国の伝説上の鳥だし、相変わらず斜め上の翻訳機能が発動している。
というか、この注釈は悪意を感じたよ……異世界翻訳さんも、ダリウスにイラっとしたのか?
ただ、比翼の鳥もこの世界なら実在してそうだよね。
なんせ、ファンタジーだし。
魔物として。
しかし、ここまで来たら、悲しいかなダリウスのことが色々と分かってしまった。
そう、この子は王族として純粋すぎるほどに、純粋なんだ。
うん、良くも悪くも。
王子として公務には真面目で、国民に対する責任感も強く人情にも篤い。
優しく穏やかで、王族らしい気持ちの余裕もある。
王族たらんとする心構えも。
それと同時に、王族としての傲慢さも同じくらいにある。
自分が優先されるのは当たり前だ。
自分が何かしてあげたのだから、喜んで当然だ。
人は自分の意見に従うものだ。
そういった感覚が、隠すことなく見える。
それはそうなんだけど、本当に腹の探り合いが苦手というか。
人が何故、自分を持ち上げるのか。
その本質を理解していない。
王子に敬意を払うのは当然だが、別に感謝や畏敬の念を抱いているわけじゃない。
偉いのは王様だからだ。
それも、為政者として国民が尊敬に値するほどの実績があってこそだ。
王子に周りが付き従ったり忖度や遠慮したりするのは、彼が将来国王になるからだ。
特に第二王子というライバルもいないダリウスなら、間違いなく国王になれる……はず。
スペアステージアのクーデターが上手くいかない限り。
だから取り入って、将来の自分のポジションを少しでも良くしようと持ち上げているだけなのに。
そのことに気付くと同時に、なぜスペアステージアの周りに人が集まっているかがなんとなく見えてきたよ。
ダリウスの王としての資質を疑っているか、もしくはスペアステージアを上手く利用すればダリウス程度どうにかなると侮っているのか。
そういうことだろう。
だって……人を疑ったり、言葉遊びや、上手く言い回しを使ってあしらったりってのが苦手だもんね。
この子は……
だからこそ、私がなぜ彼を尊重しないかを彼は分かっていないのだろう。
ただ、そこも含めて好意的に受け止められているのは、困ったもんだけど。
癇癪を起したりしないのは、やはり王族としての自覚がそうさせるんだろうけどさ。
私は別にダリウスに取り入らなくても、婚約者だから……必然的に王妃という立場になるわけで。
であれば、遠慮する必要はない。
夫婦は対等な立場でこそ、上手くいくのだから。
あと、別に王族の威光がなくとも、私は好きに生きられるだけの材料を揃えてるからね。
婚約破棄されたところで、痛くもかゆくもない。
だから、ダリウスに遠慮する必要もない。
とりあえず、天使ちゃん成分が足りないから、そろそろ解放して欲しいんだけど。
これは、相当に大量に摂取する必要があるから、ダリウスと別れた後でハルナを連れて孤児院巡りでもしようかな?
おやつをいっぱい持って。
「今日は、一緒に夕食でもどうかな?」
また、思い付きで勝手なことを言いだす。
「忙しいので、お断りします」
「……そうか。私よりも優先すべきことがあるのか」
「はい!」
「それならば、仕方ない……か」
美少年のしょんぼりと項垂れた姿は可哀そうに見えるけど、ただの自己中の我がままだからね。
同情はしないし、できない。
夕飯を一緒に食べたければ、事前にアポを取って来い。
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