公爵一族の御令嬢に転生? 努力が報われる異世界で、可愛いもののために本気出します

へたまろ

文字の大きさ
96 / 123
第三章:王都学園編~初年度後期~

第44話:トナリアーウ帝国王女 その名はリーナ!

「お母さま?」

 王都の屋敷に戻ると、母があれこれとレジーナおばさまに指示を出している。

「リーナ、ちょっと待ってくれ」

 おじいさまも慌てた様子だ。
 テキパキと私とクリントの荷物がまとめられていく。
 あっ、私の荷物はお母さまがまとめているけど。

「やはり、ジェームスでは頼りないですね。一度、里帰りして全員の頭を冷やしてもらいましょう」

 いや、いま一番頭を冷やして欲しいのは、お母さまだ。
 このままだと、私もクリントも王立高等学園を中退することになるんだけど。
 というか、お母さまの実家がまさか、外国だったとは。
 しかも、25年前まで小競り合いを仕掛けていた敵国とか。

「義父様、安心して下さい。他の方には言いませんが、娘の長期休暇の間だけですから」
「いやぁ、いくら知恵働きが苦手なわしでも、これは外交問題になるんじゃないか?」
「いえ、お父様には、普通の里帰りと伝えますのでご安心を。義父様と義母様には、ご迷惑をお掛けいたしませんので」

 ……セバスがこっそりと教えてくれたけど、お母様がトナリアーウ帝国の王女様だったなんてね。
 いや、お父さまに嫁いだ当時の話であって、今は皇帝の腹違いの妹になっているらしいし。
 うん、母方のおばあさまは、トナリアーウ帝国の皇帝の側妃だったとか。

 私って……王国と帝国、両方の王族の血を引くサラブレッドだったのか。
 母方のおじいさまも、おばあさまもほんわかとして、優しそうな方たちだったけど。
 この国に来た時に、お母さまは伯爵家令嬢だったはず……
 しかし、かなり複雑な内情のように見えて、意外と単純な話というか。
 ああ、適当な伯爵家を立ち上げて、そこに養女としてとりあえず迎え入れた後にお父さまに嫁いだと。
 うちに来ていた母方のおじいさまと、おばあさまは本当の親ではなかったのですね。

「あら、あの二人はお父さまとお母さまですよ」
「そうなのですね……というか、なんでそんな偉い人が、あの駄目親父と……」
「ふふ、昔はかっこよかったのですよ。それに王族の血を引く人ですから、問題は無かったのです」

 お母さまにとって、あの駄目親父は命の恩人で白馬に乗った王子様だったらしい。
 それで、猛アタックして半ば強引に、嫁いできたとか。
 
 ……隣国の王女を妻に貰いながら、その侍女にまで手を出したお父さまはよく殺されなかったと思う。
 そこは、惚れた弱みというやつなのかな?

「なるほど……お嬢様が、トナリアーウ帝国をバックに付けて王国を攻めることが出来たのは、こういうからくりだったのですね」

 ハルナは、お母さまを手伝いながら、しみじみとそんなことを言っているし。
 いや、本当に意味が分からない。
 私にそんな予定は無いのだけれども。

 とりあえず、里帰りも兼ねてこの国といったん距離を置いて、王族に少しだけ釘をさす予定だとか。
 トナリアーウ帝国まで、ダリウスが謝りにくれば及第点。
 来なければ、学校の始業前に帰国はするけれども、婚約の件は一端保留にする予定だとか。
 うーん、私としては別に問題ないんだけれどもね。
 この国としては、問題になりそう。

 あと……長期休暇、友達とお泊り会とかもしたかったんだけど?

「いいですね。ぜひ、エルザのお友達も招待いたしましょう」

 お母さまにその話をしたら、ノリノリで帝国に招待する方向に。
 いや……うん、結果は一緒だけど、いいのかな?
 向こうの親御さんが、嫌がりそうだけれども。

「というか、お母さまって帝国出身だったんですね! ということは、バイリンガル?」
「バイリンガル?」
「帝国語と王国語の両方を使えるんですね!」
「まあ、基本的に周辺国の言葉は学んでますしね」

 お母さまがとても優秀なことはよく分かった。
 それと、お父さまがお母さまに対して、あまり強く出られない理由も。
 実家の力関係はほぼ変わらないかもしれないけれど、お父さまは公爵家の子息だからか。
 相手は、直の王族だもんね。
 皇族か……いや、そんなことはどうでもいい。
 このまま帝国に拉致されるのは非常に困る。
 とりあえず、王都レオハート邸での、お泊り会の計画もあるし。
 
「私は行きませんよ」
「そんなに、あの王子が良いのですか?」
「いや、ダリウス殿下はどうでもよくて、友達とのお泊り会を計画してるので」
「……なるほど、本当に王都で羽を伸ばしているようですね」

 お母さまが冷たい視線をこちらに向けてくる。
 さっきのいまだから、やや怖い。
 でも、この冷たい視線は、好き勝手やってる娘に仕方のない子ねぇといった感情で向けているものだからね。
 うん、実の娘だからこそ、耐えることもできる。

「レイチェルやソフィアとも、遊びたいし……」
「まあ、貴女が楽しみにしているのは分かるけれど、本当はすぐにでもここを出た方が効果的なのに」

 そうだろうね。
 今頃、王城では上に下にの大騒動だろう。
 すぐに使者が来て、また王城に招待されるだろうことは考えなくとも分かる。
 というか、それをしなかったら……完全にこじれるだろうね。
 王族とお母さまの仲が。

「というか、いきなり帰ったら向こうも困りませんか?」
「困らないわよ。お父さまは私に甘いし、お義兄さまも私には凄く優しいから」

 侵略性国家でイケイケだったトナリアーウ帝国の前国王と、現国王が身内に甘い?
 そんなことは、あるのだろうか?

「ほら、私って兄弟の仲でもだいぶ歳の離れた末っ子でしたし。おじいさまも、貴女には随分と優しかったでしょう?」
「うん……まさか、あののほほんとしたおじいさまが、前線で指揮を執って、この国に何度も戦争を仕掛けた方だったなんて……というか、父方も母方も、おじいさまが戦闘民族すぎる……」
「だから、あなたも……と言いたいところですが、ギルバートもクリスも腕は立ちますが、知恵も回りますからね」
「それは、わしとトナリアーウ帝国前皇帝の知恵が足りないみたいじゃないか」

 お母さまのあまりな言い分に、おじいさまが眉を寄せている。
 義父と義娘の仲は、良好なようだ。
 こんな、冗談が言い合える程度には。

「あなたは……両方のおじいさまに似てしまったみたいね」
「似てしまったとは手厳しいな」

 いや、まあ……そういうものなのかな?

「従兄にあたる帝国の皇子も、あなたのことはとても気にしているのですよ」
「そうなのですね……」
「ちなみにギルバートは、帝国に行ったことがあるので、向こうの親族とも会ってます。レオハート公爵家を継ぐにあたって、重要なことですからね」

 あー……お兄さまは、確かに私やクリスお兄さま、クリントにとっても甘い。
 そのことを考えると、帝国側の皇族も身内には甘いのかな?

「私の家族が特別なのですよ……皇族の地位を脅かさない上に、隣国に嫁いだ妹とその子ども達ですからね。利害関係や派閥のしがらみを越えた、純粋な血族としての家族と見てもらえるので」

 そういうことか。
 継承争いとは関係なく、さらにはヒュマノ王国の外交上の重要な駒であるわけだし。
 そうであれば、普通の家族として親しくした方がメリットが多いもんね。

「それだけじゃないと思います……どう見ても、皆さんお嬢様にメロメロだったような」

 いや、一度も帝国に行ったことのないハルナに、何が分かるのだろうか。
 相変わらず、おかしなことを呟いている。 
 そして、声がでかいからお母さまにもおじいさまにも聞こえている。
 お母さまがハルナの独り言に、うんうんと頷いているけど。
 気にしなくていいよ。

 とりあえず、どうしよう。
 本音を言おう……外国、凄く興味あります。
 行ってみたいのはやまやまなんだけど、レイチェルやカーラ達との約束も大事だし。
 お母さまはすぐにでも、ここを起ちたいみたいだけれども。
 うーん……ミッシェルに相談したら、レイチェルを帝国に招待できそうだけれども。
 ソフィアは……無理だよね。
 どうせ、数日したら実家を手伝うって言って、帰っていきそうだし。
 カーラは家がねぇ……

 というか、帝国の皇帝の妹の子供でした。
 里帰りするので、皆も遊びに来てね! で済めばいいけど。
 このことは、かなり重要な機密だろうし。

「えっ? 盛大にバラしてもいいかなって……貴女のためにも」
「私のためになりますか? 帝国の皇帝の姪って……国民に悪感情を持たれません?」
「いまは、国交も正常化してますし……お互いの国の架け橋的存在として」
「お母さま……それは、いくらなんでも楽観的過ぎますよ」
「さすが、学園で主席なだけありますね。そのような、難しい言葉が出てくるなんて」
「私のこと、馬鹿にしてます?」

 なんだろう……確かに、今までの行動が荒れすぎた……アレすぎた……まあ、酷かったのは分かるけど。
 そんなに、馬鹿っぽかったかな?
 とりあえず、お母さまが強行するまえに、王城から使者が来てくれるといいんだけど。

***

あとがき

 長らく、お待たせしました
 色々とありまして……
 近日中に、この作品に関する何かしらの報告を活動報告にていたします……
 それまで、お気に入り外さないで欲しいなと……
感想 35

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

拾ってないのに、最上位が毎日“帰る”んですがーー飼い主じゃありません!ただの受付係です!

星乃和花
恋愛
王都ギルド受付係リナは、今日も平和に働く予定だった。 ……のに。 「お腹すいた」 そう言って現れたのは、最上位の英雄レオン。 強いのに生活力ゼロ、距離感ゼロ、甘え方だけは一流。 手当てすれば「危ない」と囲い込み、 看病すれば抱きしめて離さず、 ついには―― 「君が、俺の帰る場所」 拾ってない。飼ってない。 ただ世話を焼いただけなのに、英雄が毎日“帰ってくる”ようになりました。 無自覚世話焼き受付嬢 × 甘えた天然英雄の 距離感バグ甘々ラブコメ、開幕! ⭐︎火木土21:20更新ー本編8話+後日談9話⭐︎

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

悪役令嬢の私が育てた義息子が天使すぎる~子は親の鏡というけれど~

放浪人
恋愛
社交界で高慢、冷酷、傲慢と嫌われ、“悪役令嬢”の汚名を着せられた侯爵令嬢ヴィオレッタ・アシュベリー。婚約破棄と断罪の末、彼女は厄介払い同然に北方辺境のヴァレンティス公爵家へ嫁がされることになる。夫となるのは、寡黙で苛烈な北方公爵レオンハルト。そしてその家には、亡き前妻の忘れ形見である七歳の嫡男ルカがいた。 初対面のルカは、あまりにも完璧だった。 礼儀正しく、利発で、聞き分けがよく、誰の手も煩わせない。まるで天使のような子ども――けれどヴィオレッタはすぐに気づく。この子は、“いい子”なのではない。“いい子でいなければ、捨てられると思い込んでいる”のだと。 人の本心を映す希少な鏡魔法を持ち、その力ゆえに王都で疎まれたヴィオレッタは、ルカの笑顔の奥にある不安と諦めを見抜く。最初は継母としても公爵夫人としても歓迎されず、夫には疑われ、使用人たちには警戒される。だが彼女は、ただ一つだけ決める。 ――この子だけは、大人の都合で傷つけさせない。 温かな食卓。雪の日の散歩。夜更けの絵本。熱を出した夜の震える手。少しずつ、ほんの少しずつ、ルカはヴィオレッタの前でだけ“子ども”になっていく。やがてその変化は、公爵家の空気を変え、父であるレオンハルトの後悔を呼び起こし、閉ざされていた家族の時間を動かし始める。 だが、ヴィオレッタを悪役令嬢に仕立て上げた王都の陰謀はまだ終わっていなかった。北方を守る古代の大鏡、ルカに宿る特別な祝福、公爵家を操ろうとする王家の思惑。すべてが交錯するなか、ヴィオレッタはついに知る。ルカが“いい子”をやめられなかった本当の理由を。そして、自分自身もまた、誰かに正しく愛されたことがなかったのだと。 これは、悪役令嬢と呼ばれた不器用な女が、義息子の母となり、夫の家族となり、ひとつの家を、ひとりの子どもの未来を、そして自分自身の幸せを取り戻していく物語。