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第三章:王都学園編~初年度後期~
第44話:トナリアーウ帝国王女 その名はリーナ!
「お母さま?」
王都の屋敷に戻ると、母があれこれとレジーナおばさまに指示を出している。
「リーナ、ちょっと待ってくれ」
おじいさまも慌てた様子だ。
テキパキと私とクリントの荷物がまとめられていく。
あっ、私の荷物はお母さまがまとめているけど。
「やはり、ジェームスでは頼りないですね。一度、里帰りして全員の頭を冷やしてもらいましょう」
いや、いま一番頭を冷やして欲しいのは、お母さまだ。
このままだと、私もクリントも王立高等学園を中退することになるんだけど。
というか、お母さまの実家がまさか、外国だったとは。
しかも、25年前まで小競り合いを仕掛けていた敵国とか。
「義父様、安心して下さい。他の方には言いませんが、娘の長期休暇の間だけですから」
「いやぁ、いくら知恵働きが苦手なわしでも、これは外交問題になるんじゃないか?」
「いえ、お父様には、普通の里帰りと伝えますのでご安心を。義父様と義母様には、ご迷惑をお掛けいたしませんので」
……セバスがこっそりと教えてくれたけど、お母様がトナリアーウ帝国の王女様だったなんてね。
いや、お父さまに嫁いだ当時の話であって、今は皇帝の腹違いの妹になっているらしいし。
うん、母方のおばあさまは、トナリアーウ帝国の皇帝の側妃だったとか。
私って……王国と帝国、両方の王族の血を引くサラブレッドだったのか。
母方のおじいさまも、おばあさまもほんわかとして、優しそうな方たちだったけど。
この国に来た時に、お母さまは伯爵家令嬢だったはず……
しかし、かなり複雑な内情のように見えて、意外と単純な話というか。
ああ、適当な伯爵家を立ち上げて、そこに養女としてとりあえず迎え入れた後にお父さまに嫁いだと。
うちに来ていた母方のおじいさまと、おばあさまは本当の親ではなかったのですね。
「あら、あの二人はお父さまとお母さまですよ」
「そうなのですね……というか、なんでそんな偉い人が、あの駄目親父と……」
「ふふ、昔はかっこよかったのですよ。それに王族の血を引く人ですから、問題は無かったのです」
お母さまにとって、あの駄目親父は命の恩人で白馬に乗った王子様だったらしい。
それで、猛アタックして半ば強引に、嫁いできたとか。
……隣国の王女を妻に貰いながら、その侍女にまで手を出したお父さまはよく殺されなかったと思う。
そこは、惚れた弱みというやつなのかな?
「なるほど……お嬢様が、トナリアーウ帝国をバックに付けて王国を攻めることが出来たのは、こういうからくりだったのですね」
ハルナは、お母さまを手伝いながら、しみじみとそんなことを言っているし。
いや、本当に意味が分からない。
私にそんな予定は無いのだけれども。
とりあえず、里帰りも兼ねてこの国といったん距離を置いて、王族に少しだけ釘をさす予定だとか。
トナリアーウ帝国まで、ダリウスが謝りにくれば及第点。
来なければ、学校の始業前に帰国はするけれども、婚約の件は一端保留にする予定だとか。
うーん、私としては別に問題ないんだけれどもね。
この国としては、問題になりそう。
あと……長期休暇、友達とお泊り会とかもしたかったんだけど?
「いいですね。ぜひ、エルザのお友達も招待いたしましょう」
お母さまにその話をしたら、ノリノリで帝国に招待する方向に。
いや……うん、結果は一緒だけど、いいのかな?
向こうの親御さんが、嫌がりそうだけれども。
「というか、お母さまって帝国出身だったんですね! ということは、バイリンガル?」
「バイリンガル?」
「帝国語と王国語の両方を使えるんですね!」
「まあ、基本的に周辺国の言葉は学んでますしね」
お母さまがとても優秀なことはよく分かった。
それと、お父さまがお母さまに対して、あまり強く出られない理由も。
実家の力関係はほぼ変わらないかもしれないけれど、お父さまは公爵家の子息だからか。
相手は、直の王族だもんね。
皇族か……いや、そんなことはどうでもいい。
このまま帝国に拉致されるのは非常に困る。
とりあえず、王都レオハート邸での、お泊り会の計画もあるし。
「私は行きませんよ」
「そんなに、あの王子が良いのですか?」
「いや、ダリウス殿下はどうでもよくて、友達とのお泊り会を計画してるので」
「……なるほど、本当に王都で羽を伸ばしているようですね」
お母さまが冷たい視線をこちらに向けてくる。
さっきのいまだから、やや怖い。
でも、この冷たい視線は、好き勝手やってる娘に仕方のない子ねぇといった感情で向けているものだからね。
うん、実の娘だからこそ、耐えることもできる。
「レイチェルやソフィアとも、遊びたいし……」
「まあ、貴女が楽しみにしているのは分かるけれど、本当はすぐにでもここを出た方が効果的なのに」
そうだろうね。
今頃、王城では上に下にの大騒動だろう。
すぐに使者が来て、また王城に招待されるだろうことは考えなくとも分かる。
というか、それをしなかったら……完全にこじれるだろうね。
王族とお母さまの仲が。
「というか、いきなり帰ったら向こうも困りませんか?」
「困らないわよ。お父さまは私に甘いし、お義兄さまも私には凄く優しいから」
侵略性国家でイケイケだったトナリアーウ帝国の前国王と、現国王が身内に甘い?
そんなことは、あるのだろうか?
「ほら、私って兄弟の仲でもだいぶ歳の離れた末っ子でしたし。おじいさまも、貴女には随分と優しかったでしょう?」
「うん……まさか、あののほほんとしたおじいさまが、前線で指揮を執って、この国に何度も戦争を仕掛けた方だったなんて……というか、父方も母方も、おじいさまが戦闘民族すぎる……」
「だから、あなたも……と言いたいところですが、ギルバートもクリスも腕は立ちますが、知恵も回りますからね」
「それは、わしとトナリアーウ帝国前皇帝の知恵が足りないみたいじゃないか」
お母さまのあまりな言い分に、おじいさまが眉を寄せている。
義父と義娘の仲は、良好なようだ。
こんな、冗談が言い合える程度には。
「あなたは……両方のおじいさまに似てしまったみたいね」
「似てしまったとは手厳しいな」
いや、まあ……そういうものなのかな?
「従兄にあたる帝国の皇子も、あなたのことはとても気にしているのですよ」
「そうなのですね……」
「ちなみにギルバートは、帝国に行ったことがあるので、向こうの親族とも会ってます。レオハート公爵家を継ぐにあたって、重要なことですからね」
あー……お兄さまは、確かに私やクリスお兄さま、クリントにとっても甘い。
そのことを考えると、帝国側の皇族も身内には甘いのかな?
「私の家族が特別なのですよ……皇族の地位を脅かさない上に、隣国に嫁いだ妹とその子ども達ですからね。利害関係や派閥のしがらみを越えた、純粋な血族としての家族と見てもらえるので」
そういうことか。
継承争いとは関係なく、さらにはヒュマノ王国の外交上の重要な駒であるわけだし。
そうであれば、普通の家族として親しくした方がメリットが多いもんね。
「それだけじゃないと思います……どう見ても、皆さんお嬢様にメロメロだったような」
いや、一度も帝国に行ったことのないハルナに、何が分かるのだろうか。
相変わらず、おかしなことを呟いている。
そして、声がでかいからお母さまにもおじいさまにも聞こえている。
お母さまがハルナの独り言に、うんうんと頷いているけど。
気にしなくていいよ。
とりあえず、どうしよう。
本音を言おう……外国、凄く興味あります。
行ってみたいのはやまやまなんだけど、レイチェルやカーラ達との約束も大事だし。
お母さまはすぐにでも、ここを起ちたいみたいだけれども。
うーん……ミッシェルに相談したら、レイチェルを帝国に招待できそうだけれども。
ソフィアは……無理だよね。
どうせ、数日したら実家を手伝うって言って、帰っていきそうだし。
カーラは家がねぇ……
というか、帝国の皇帝の妹の子供でした。
里帰りするので、皆も遊びに来てね! で済めばいいけど。
このことは、かなり重要な機密だろうし。
「えっ? 盛大にバラしてもいいかなって……貴女のためにも」
「私のためになりますか? 帝国の皇帝の姪って……国民に悪感情を持たれません?」
「いまは、国交も正常化してますし……お互いの国の架け橋的存在として」
「お母さま……それは、いくらなんでも楽観的過ぎますよ」
「さすが、学園で主席なだけありますね。そのような、難しい言葉が出てくるなんて」
「私のこと、馬鹿にしてます?」
なんだろう……確かに、今までの行動が荒れすぎた……アレすぎた……まあ、酷かったのは分かるけど。
そんなに、馬鹿っぽかったかな?
とりあえず、お母さまが強行するまえに、王城から使者が来てくれるといいんだけど。
***
あとがき
長らく、お待たせしました
色々とありまして……
近日中に、この作品に関する何かしらの報告を活動報告にていたします……
それまで、お気に入り外さないで欲しいなと……
王都の屋敷に戻ると、母があれこれとレジーナおばさまに指示を出している。
「リーナ、ちょっと待ってくれ」
おじいさまも慌てた様子だ。
テキパキと私とクリントの荷物がまとめられていく。
あっ、私の荷物はお母さまがまとめているけど。
「やはり、ジェームスでは頼りないですね。一度、里帰りして全員の頭を冷やしてもらいましょう」
いや、いま一番頭を冷やして欲しいのは、お母さまだ。
このままだと、私もクリントも王立高等学園を中退することになるんだけど。
というか、お母さまの実家がまさか、外国だったとは。
しかも、25年前まで小競り合いを仕掛けていた敵国とか。
「義父様、安心して下さい。他の方には言いませんが、娘の長期休暇の間だけですから」
「いやぁ、いくら知恵働きが苦手なわしでも、これは外交問題になるんじゃないか?」
「いえ、お父様には、普通の里帰りと伝えますのでご安心を。義父様と義母様には、ご迷惑をお掛けいたしませんので」
……セバスがこっそりと教えてくれたけど、お母様がトナリアーウ帝国の王女様だったなんてね。
いや、お父さまに嫁いだ当時の話であって、今は皇帝の腹違いの妹になっているらしいし。
うん、母方のおばあさまは、トナリアーウ帝国の皇帝の側妃だったとか。
私って……王国と帝国、両方の王族の血を引くサラブレッドだったのか。
母方のおじいさまも、おばあさまもほんわかとして、優しそうな方たちだったけど。
この国に来た時に、お母さまは伯爵家令嬢だったはず……
しかし、かなり複雑な内情のように見えて、意外と単純な話というか。
ああ、適当な伯爵家を立ち上げて、そこに養女としてとりあえず迎え入れた後にお父さまに嫁いだと。
うちに来ていた母方のおじいさまと、おばあさまは本当の親ではなかったのですね。
「あら、あの二人はお父さまとお母さまですよ」
「そうなのですね……というか、なんでそんな偉い人が、あの駄目親父と……」
「ふふ、昔はかっこよかったのですよ。それに王族の血を引く人ですから、問題は無かったのです」
お母さまにとって、あの駄目親父は命の恩人で白馬に乗った王子様だったらしい。
それで、猛アタックして半ば強引に、嫁いできたとか。
……隣国の王女を妻に貰いながら、その侍女にまで手を出したお父さまはよく殺されなかったと思う。
そこは、惚れた弱みというやつなのかな?
「なるほど……お嬢様が、トナリアーウ帝国をバックに付けて王国を攻めることが出来たのは、こういうからくりだったのですね」
ハルナは、お母さまを手伝いながら、しみじみとそんなことを言っているし。
いや、本当に意味が分からない。
私にそんな予定は無いのだけれども。
とりあえず、里帰りも兼ねてこの国といったん距離を置いて、王族に少しだけ釘をさす予定だとか。
トナリアーウ帝国まで、ダリウスが謝りにくれば及第点。
来なければ、学校の始業前に帰国はするけれども、婚約の件は一端保留にする予定だとか。
うーん、私としては別に問題ないんだけれどもね。
この国としては、問題になりそう。
あと……長期休暇、友達とお泊り会とかもしたかったんだけど?
「いいですね。ぜひ、エルザのお友達も招待いたしましょう」
お母さまにその話をしたら、ノリノリで帝国に招待する方向に。
いや……うん、結果は一緒だけど、いいのかな?
向こうの親御さんが、嫌がりそうだけれども。
「というか、お母さまって帝国出身だったんですね! ということは、バイリンガル?」
「バイリンガル?」
「帝国語と王国語の両方を使えるんですね!」
「まあ、基本的に周辺国の言葉は学んでますしね」
お母さまがとても優秀なことはよく分かった。
それと、お父さまがお母さまに対して、あまり強く出られない理由も。
実家の力関係はほぼ変わらないかもしれないけれど、お父さまは公爵家の子息だからか。
相手は、直の王族だもんね。
皇族か……いや、そんなことはどうでもいい。
このまま帝国に拉致されるのは非常に困る。
とりあえず、王都レオハート邸での、お泊り会の計画もあるし。
「私は行きませんよ」
「そんなに、あの王子が良いのですか?」
「いや、ダリウス殿下はどうでもよくて、友達とのお泊り会を計画してるので」
「……なるほど、本当に王都で羽を伸ばしているようですね」
お母さまが冷たい視線をこちらに向けてくる。
さっきのいまだから、やや怖い。
でも、この冷たい視線は、好き勝手やってる娘に仕方のない子ねぇといった感情で向けているものだからね。
うん、実の娘だからこそ、耐えることもできる。
「レイチェルやソフィアとも、遊びたいし……」
「まあ、貴女が楽しみにしているのは分かるけれど、本当はすぐにでもここを出た方が効果的なのに」
そうだろうね。
今頃、王城では上に下にの大騒動だろう。
すぐに使者が来て、また王城に招待されるだろうことは考えなくとも分かる。
というか、それをしなかったら……完全にこじれるだろうね。
王族とお母さまの仲が。
「というか、いきなり帰ったら向こうも困りませんか?」
「困らないわよ。お父さまは私に甘いし、お義兄さまも私には凄く優しいから」
侵略性国家でイケイケだったトナリアーウ帝国の前国王と、現国王が身内に甘い?
そんなことは、あるのだろうか?
「ほら、私って兄弟の仲でもだいぶ歳の離れた末っ子でしたし。おじいさまも、貴女には随分と優しかったでしょう?」
「うん……まさか、あののほほんとしたおじいさまが、前線で指揮を執って、この国に何度も戦争を仕掛けた方だったなんて……というか、父方も母方も、おじいさまが戦闘民族すぎる……」
「だから、あなたも……と言いたいところですが、ギルバートもクリスも腕は立ちますが、知恵も回りますからね」
「それは、わしとトナリアーウ帝国前皇帝の知恵が足りないみたいじゃないか」
お母さまのあまりな言い分に、おじいさまが眉を寄せている。
義父と義娘の仲は、良好なようだ。
こんな、冗談が言い合える程度には。
「あなたは……両方のおじいさまに似てしまったみたいね」
「似てしまったとは手厳しいな」
いや、まあ……そういうものなのかな?
「従兄にあたる帝国の皇子も、あなたのことはとても気にしているのですよ」
「そうなのですね……」
「ちなみにギルバートは、帝国に行ったことがあるので、向こうの親族とも会ってます。レオハート公爵家を継ぐにあたって、重要なことですからね」
あー……お兄さまは、確かに私やクリスお兄さま、クリントにとっても甘い。
そのことを考えると、帝国側の皇族も身内には甘いのかな?
「私の家族が特別なのですよ……皇族の地位を脅かさない上に、隣国に嫁いだ妹とその子ども達ですからね。利害関係や派閥のしがらみを越えた、純粋な血族としての家族と見てもらえるので」
そういうことか。
継承争いとは関係なく、さらにはヒュマノ王国の外交上の重要な駒であるわけだし。
そうであれば、普通の家族として親しくした方がメリットが多いもんね。
「それだけじゃないと思います……どう見ても、皆さんお嬢様にメロメロだったような」
いや、一度も帝国に行ったことのないハルナに、何が分かるのだろうか。
相変わらず、おかしなことを呟いている。
そして、声がでかいからお母さまにもおじいさまにも聞こえている。
お母さまがハルナの独り言に、うんうんと頷いているけど。
気にしなくていいよ。
とりあえず、どうしよう。
本音を言おう……外国、凄く興味あります。
行ってみたいのはやまやまなんだけど、レイチェルやカーラ達との約束も大事だし。
お母さまはすぐにでも、ここを起ちたいみたいだけれども。
うーん……ミッシェルに相談したら、レイチェルを帝国に招待できそうだけれども。
ソフィアは……無理だよね。
どうせ、数日したら実家を手伝うって言って、帰っていきそうだし。
カーラは家がねぇ……
というか、帝国の皇帝の妹の子供でした。
里帰りするので、皆も遊びに来てね! で済めばいいけど。
このことは、かなり重要な機密だろうし。
「えっ? 盛大にバラしてもいいかなって……貴女のためにも」
「私のためになりますか? 帝国の皇帝の姪って……国民に悪感情を持たれません?」
「いまは、国交も正常化してますし……お互いの国の架け橋的存在として」
「お母さま……それは、いくらなんでも楽観的過ぎますよ」
「さすが、学園で主席なだけありますね。そのような、難しい言葉が出てくるなんて」
「私のこと、馬鹿にしてます?」
なんだろう……確かに、今までの行動が荒れすぎた……アレすぎた……まあ、酷かったのは分かるけど。
そんなに、馬鹿っぽかったかな?
とりあえず、お母さまが強行するまえに、王城から使者が来てくれるといいんだけど。
***
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