異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

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第1章:仮冒険者と魔王様、冒険者になる!~エンの場合~

第26話:エピローグ~風と共に去りぬ~

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 その後口の周りをクリームやら、チョコレートというお菓子でベチョベチョにしたメルスさんと戦った。
 結果は3分でまず僕が全身を魔法で拘束され、喉元に赤い矢を突きつけられてリタイア。
 14分後にレイドが全力で放った居合を、メルスさんが片手で弾いたのち側頭部に掌底を叩き込まれ気絶。
 所謂惨敗という奴だ。

「まあ目標は達成できた訳だし、大幅にパワーアップも果たせたからいいだろう」

 カナタさんはちょっと満足そうに僕たちの頭を撫でると、メルスさんに向き直る。
 メルスさんがちょっとビクッとして身構えるが、カナタさんは僕と出会った時と同じような優しさを携えた表情で微笑みかけるとメルスさんの頭も優しく撫でた。
 なんて不遜な男だ。
 言っても英雄十傑に数えられ、人魔国交正常化の立役者であり、人生の大先輩である彼女の頭を撫でられるのは世界広しといえども彼ぐらいしか居ないだろう。
 まあ、見た目は可愛らしい女の子だからカナタさんの気持ちは分からないでもない。
 というか、羨ましい。

「お……お主とはやらぬぞ!」

 メルスさんがカナタさんを睨み付けて何やら情けない事を言っているが、ここにくるまでに大幅なパワーアップを果たした僕たちに、手加減しまくりで勝った彼女が怯える彼の正体のなぞは深まるばかりだ。
 それからいくつかの保存の利くお菓子を手渡す彼に対して、好きな魔道具を持って行っていいと言った彼女に対して。

「えっ? いらないけど?」
「はっ? なぜじゃ! 貰ってばかりではこっちの気がすまぬ!」
「だって、そこにある程度のものならいくらでも持ってるし」

 の一言で片づけてしまったカナタさん。
 これに関してはメルスさんがちょっと可哀想になってしまった。

 それからその部屋にある転移陣を使って地上に戻る。
 転移した場所は入り口の横にある小さな建物で、中には衛兵さんが3人程立って待っていてくれた。
 僕たちが現れると彼等は拍手で出迎えてくれ、ダンジョン踏破の証となる記念メダルを手渡してくれた。
 メダルの表面には、やはりかなり大人っぽく描かれた巨乳のメルスさんの肖像が掘ってあり、裏には僕たちの名前が掘ってあった。
 ダンジョン踏破をした者達は、全員この転移陣でここに飛ばされるらしく、その際にメルスさんが踏破の証のメダルを作って衛兵の元に送っているらしい。
 これをギルドに提出すればダンジョン踏破の証とみなされ、ランクも2階級特進となる。
 という事は、僕とカナタさんがD級……そして、レイドがC級冒険者となるわけだ。
 C級ともなればベテラン冒険者として扱われ、色々とギルドでも優遇をしてもらえる。
 他にも、パーティのメンバーとして引っ張りだこになるとの事だ。
 ただ……

「僕はエンさんとしか組まないし、もしメンバーを増やすならエンさんが決めた人じゃないと嫌かな」

 と彼女は言ってくれている。
 なんでそんなに好かれたのかは、僕には分からないが嬉しい気持ちになったのは言うまでも無い。

「ああ、お前ら2人ならきっと大丈夫だろ」

 2人? 

「えっ? カナタさんは?」
「師匠はどうされるのですか?」

 まるでここでお別れのような言い種だ。
 これからもきっと彼に憑りつかれて、無茶をやらされつつ冒険に出るとばかり思っていたからちょっと驚いた。
 そんな僕たちに対して彼は

「いや、目的の冒険者にもなれたし、今度は東に向かって旅に出ようかなと……その東の大陸ってのも気になるしな」

 ああ、やっぱり自分のルーツが気になるんだ。
 でもこれだけの事をされて、はいさようならってのはちょっと寂しい。
 付いて来て手伝えと言われても、断れないだけの恩はある……恨みもあるけど。
 現に冒険者になれたのも、強くなれたのも、ダンジョンを制覇出来たのも……そしてレイドというかけがえのない仲間を手に入れる事が出来たのも全部彼のお陰だ。
 今の自分の状況は彼が作り出してくれたものに、他ならない。

「それは違うぞ? お前に才能と根性があったから出来た事だ。ちょっと急ぎ過ぎたが、それでも身体だけは付いてこられたからな? あとは、その能力を上手く活かせるように、本当の意味で成長をすればいい……その時間を掛けても死なないだけの基盤は出来たんだからな」

 やっぱりこの人は僕を成長させようとして、こんな無茶をやらせていたんだろう。
 初めての出会いがあれだもんな……町を案内したり、色々とここの事を教えたりもしたが、彼からしたらよっぽど危なっかしく見えたのかもしれない。
 僕は知っている。
 やっていることは鬼畜の所業で、言葉も辛辣な事が多かったが根本は良い人だ。
 角ウサギもきっとこの人の事だから、角を治してから逃がしたに違いない。
 冒険者ギルドで僕に絡んで来た人達だって、本当なら一瞬でボコボコに出来るくらいの実力はあっただろう。
 だが彼はそれをしなかった。
 周りの冒険者を使って、彼等に反省を促したのだろう。
 フフッ……自分で魔王だなんて言っているけど、こんなお人好しの魔王なんて居る訳無いしね。

「じゃあ、師匠とはここでお別れですか?」
「ん? ああそうだな。だが、今生の別れという事もないだろう。俺はいつでも会いに来られるし、本当に困った事があれば呼べばいい……きっとすぐに駆け付けるさ」

 遠くに行くつもりらしいのに、そんな事無理に決まってるじゃん……
 でも……この人が言うと本当に出来そうで怖い。

「何を泣いているのだお前は……」
「あれっ?」

 気が付いたら僕の頬を一筋の涙が流れている。
 あれっ? おかしいな……2~3日一緒に居ただけなのに……
 思った以上にカナタさんを受け入れていたのかな? 
 冒険者をやっていたらこんな事、よくある事なのに。

「じじょぉぉぉぉ……」

 横を見るとレイドが号泣していて、僕の涙はピタリと止まってしまった。
 ああ、人見知りの彼女からすれば数少ない気を許せる相手だもんね。
 というか、たったの3日で彼女にここまで懐かれるカナタさんはやっぱり良い人なんだろうな。

「ふふっ……お前達はまだ若い。この先きっと色々な困難や、挫折が待っている。でもな……このダンジョンで過ごしたことを忘れるな。ここでの冒険に比べたらきっと大した事ないさ! だって、エンなんかきっと10回以上死んでいたからな」

 確かに……
 死ぬ気どころか、何度走馬灯を眺めた事か。
 お陰で、自分の人生を何度も見返す事が出来た。

「そうだ、お前が1人で突っ走ってる間に集めたダンジョンのドロップ品だ。全部やるから、お前がお世話になってる人とやらに恩返しでもするといい」

 そう言っていつの間にか拾って来たであろう、ダンジョン内での宝物の数々や僕が倒した魔物達の素材を渡してくる。

「いや……受け取れないですよ。逆にこれから旅に出るカナタさんにこそ「必要だと思うか?」

 彼はそういうと、またいつの間にか袋を取り出して宝石やら金貨の数々を見せてくる。
 チッ! ブルジョアめ! 
 折角の感動が台無しだよ。

「その恩人とやらも楽は出来ていないんだろ? それに、お前に続く者達が居るかもしれないなら、少しでも良い環境を与えてやれよ」

 カナタさんの言葉に思わず詰まる。

「な……なんでそれを……」
「フッ……俺だからだ」

 まあ、確かにカナタさんならそうですよね。
 でもズルいですよ……最後の最後にこんな……

「エンさんって……教会の孤児院の出身でしたよね? だったら、必要なんじゃないですか?」

 レイドには前に話した事があったが、僕は赤ん坊の頃に教会に捨てられていた子供だ。
 周りの同じくらいの子達が仕事を決めていく中で、僕は冒険者を目指しいつまでも教会にお世話になっている。
 1つは僕の両親が冒険者で……僕を育てると冒険に出られず収入を得る事が出来ないから教会に預けられたらしい。
 3年くらいは教会に定期的に寄付がされていたようだが……ある時寄付がピタリと止まった。
 神父さんは何も語らないし、その後も同じように育ててくれたがきっとそういう事だろう。
 冒険者なんてやっていると、よくあることだ。
 両親は僕を引き取っても暮らしていけるよう、一生懸命お金を貯めていたらしく……それから2ヶ月くらいしてギルドの人がある程度のまとまったお金を持ってきてくれたらしい。
 僕が冒険者になりたいと言った時に、神父さんが教えてくれた。
 そのお金には一切手を付けられておらず、全て僕に渡された。
 最初は固辞していたが、そのお金は君の両親が君と暮らす為に貯めたお金だ。
 君の為に使わないと両親が浮かばれないだろ? 
 どうしても寄付をしたいというなら一流の冒険者になって、ずっとお金を持ってこい! 
 ずっと金を持ってこいなんてとんでもないことを言う神父だが、これは彼なりの死ぬことは許さないという激励だ。
 冒険者になる事が、唯一の両親との繋がりのような気がしてがむしゃらに頑張ってきたが……結局自分の力ではなく、カナタさんのお陰で冒険者になる事が出来た。

「これから冒険者に相応しく生きればいいだろう」

 本当にこの人は……
 最後の最後まで……

「あ"りがどぉございまずぅぅぅ」
「ふっ……汚いな」

 酷い……
 酷いけど……本当に有難うございます。

 こうしてカナタさんという嵐は、あっという間に去ってい……かなかった。
 実際はこんな感動的なやり取りをしたあと、高級クルーザーで街まで一緒に帰ったんだけどね。
 船内ではずっとカナタさんにニヤニヤと見られて気まずかったけどさ。
 でも町に着いて、取りあえずギルドに向かっている。
 そしてようやくギルドに着いた。

「これで本当にお別れですね」

 僕がそう言って振り返る。

「えっ? あれっ?」

 しかしそこには誰も居ない。

「カ……カナタさん?」
「し……師匠?」

 レイドもキョロキョロとしている。
 う……そでしょ? 
 だけれども、周囲をどれだけ探しても彼の姿はない。
 全く、あの人と来たら……

「ははっ……あの人らしいといえば、あの人らしいか……」
「えっ?」
「いや、最初っから最後まで自由で、身勝手な人だったなと……」

 僕はそう言って空を見上げる。
 困ったら容赦なく呼んであげますから、カナタさんも困ったら僕を呼んでくださいね。

(フフッ……エンの癖に偉そうに。だが、その時は期待しないで待ってるさ)

 頭の中にカナタさんの、カナタさんらしい声が聞こえた気がした。
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