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しおりを挟むバーナビーとルーシャンは心優しい人たちだ。
天使様として存在している私に煩わしい事が降りかからないようにと、披露目以降なにか言う事もない。
だけど、天使様を一目見たい、そして天使様を我が国へと勧誘したい者達をせき止めるのには限界があるんだろう。
私は弱いから何も口出ししない、強欲に周りからの優しさを甘受している。
だけどそんな事は許さないと動き出しているのが公爵だ。
契約内容をきちんと把握した公爵は私を使い、煩い者達を一斉に黙らせようとしている。
主に籠もり期間が…いや、籠もり期間の事しか考えていない公爵はそんな動きを見せている。
これから私は城内を歩き、外を歩き、各国の王達に顔見せをする。
そう説明された。
「「…」」
目の前に座っている公爵から。
あれから9日後。
公爵はバーナビーを言いくるめ、私と城内の者達が見られる庭園でお茶会を開く事にした。仕事が早いのは良きかな良きかな。
権力があるけれど、頭脳も力も敵わないけれど、何事にも関心を示さなかった公爵と天使様のお茶会はいい抑止力になる。
「「…」」
元々この国は絶対王政というか、バーナビーと神アレスが絶対的だから不満や不平を言う者はあまり居ない。
騒がしいのは私があまりにも外へ出ないのと、天使様を使って儲けようとしている一部の貴族だから、私が賢くなくとも公爵の言われた通りに動けば自然と元通りというか、バーナビー達も休める。
「「…」」
公爵からの説明は理解した。
もし馬鹿なヒナノちゃんが理解出来ていなくとも、リンジーが聞いて理解しているから問題ない。
「「…」」
ほんの数十分で終わるお茶会なんて見せられないから、こうやって向かい合って座り続けておかなきゃならない。
伴侶は元気になったんだから連れてくればいいのに…
見せたくないんだろうなぁ。
あの光景が思い浮かぶ。
死なれたくなくて、一生懸命に手を繋ぎ、公爵が伴侶へとおでこに触れる手はとても優しくて、何も出来ない。何も解決出来ない歯がゆさと、愛情が…
「そろそろ」
「なあに?」
「…」
「…」
まだ1時間も経ってないよ?
もう少し居ようねぇ?
「婚約者は」
「興味ないの」
「把握した」
天使様の伴侶に…なんて、誰も彼もが画策する事だ。
勘弁してくれ。
頼むぞ、公爵。
「婚約者は必要ないと理解させる」
「うん」
「失礼する」
「“またね?”」
「……必ず」
伴侶になろうとする奴らを一掃するから、帰らせろとの圧がかかりました。
そんな公爵に向かって自分の胸を叩いておく。
「「…」」
飴をあげたのー。胸ポケットに仕舞ってあるからねー?伴侶の色味で出来た可愛い飴だよー。良かったら食べてねー?
またお茶しようね。
バーナビーの為にこれからも動いてね?
「ヒナノ、大丈夫?」
「どうして?」
公爵が去った後、そんな風にリンジーが声をかけてきた。
「怖かったでしょ」
え?怖かったのかな?
無邪気で馬鹿な人間って公爵の事怖がるっけ?
「んー…またお茶したいな?」
「そうなの?」
「だって知り合った人とは仲良くなってみたいもん!」
「ふふ、そうだね」
そうだ、そうしよう。
無邪気すぎて怖い事も分からない馬鹿さが丁度いいでしょ。
キラキラも分からない私にはいい感じだ。
「ヒナ」
「運んだ方が早ぇ」
「「…」」
リンジーが手を差し出してきたから乗せようとした手を……
なんでアルフが掻っ攫うように掴むかな!?
護衛ってそういう事じゃないのは、見て知ってるよ!
「歩く!リンジー手繋いで?」
「……うん」
「…」
離せよ!?
なんでそんな……嫉妬か!
公爵とお茶したのが気に食わないっていう本能だね!
仕方ないとは思うけど、見守る事にしたんだろ!?見守れよ!
「リンジー…」
「アルフ」
「………ああ」
分かってくれて良かったです!
「アルフちょっと怖いね」
「「…」」
リンジーにひそひそ声で話しかけます。
まるでアルフに聞こえてないかのように話しかけてみる。
バッチリ聞こえてるけどね!それが目的だけどね!
「城内見て回るの今じゃ駄目?」
「無理しなくていいの」
「違うよ!どんな仕事してるのか気になったの!」
「ふふ、少しだけね」
「ありがとうリンジー!」
早く天使様を見せびらかした方がいい!
笑顔で!楽しげな天使様を!
庭園から帰り道を少し変えて歩き出すリンジーから教えてもらう。
「ここは会議に使う場所」
「さっきもあったよ?」
「たくさんあるんだ」
退屈だね!
そんなに会議してたら会議だけで人生終わりそうだよ!
「あ」
「なあに?」
「この先に図書館があるんだ。別棟だけど、行ってみる?」
「行きたい!」
「ふふ、そう言うと思った」
「本好き!」
「知ってる」
結構歩くみたいだから……
あ!
「リンジー、抱っこ駄目?」
「「…」」
アルフに抱っこされたくない!そしてリンジーならいいと理解して欲しい!
「あ、ご、ごめんね、わがまま言っちゃった…」
なんとも言えない表情を作っているリンジーに合わせて、戸惑った表情を作る。
「違うよ、大丈夫だから」
だろうね!
アルフからの視線がなんともいたたまれないんだよね!
「でも…」
「もっとわがまま言って?」
「うん…」
「大丈夫、少し考え事してただけだから」
「ほんと?」
「本当」
「抱っこ!」
「ふふ、はい」
リンジーに抱っこされると、アルフの表情が強張るのが見える。
だってリンジーの肩に顎を乗せてるから、自然と後ろ向きになるし。
「アルフやっぱり怖いね?」
「「…」」
ひそひそ声だけど聞こえてるよね!
私、アルフが苦手だって2人には理解してもらっておこう!
大丈夫!仕事に影響が出ないように、2人にだけ聞こえる場所でしか言わないから!
安心して!
「恋人も欲しくないの?」
リンジーから純粋な疑問が飛んできた。
公爵との会話で思ったんだろう。
「うん」
「どうして?」
リンジーの“どうして?”は、きっと純粋な疑問なんだろうな。
リンジーも運命に出会いたいと思ってる事は気付いてる。
出会って恋をして、愛したいんだと。
だからこその“どうして?”だ。
「どうしてかな?本当に興味が沸かないの…うーん。あ!リンジーは建物作りたいと思う?」
「建物?ないよ?」
「そんな感じかな?作ろうとも思えない気持ちと同じ」
「「…」」
「今がとっても幸せなの。人と出会って、知り合って、仲良くなって遊ぶの。それが私の望み」
「うん……そっか」
「うん!」
「「…」」
運命とは特別だ。
望んで願っている者だけでなく、拒絶したい者にとっても特別になる。
ストン…と、心に落ちてきてしまう。
それが運命。
分かるよ。
アダムを愛してる気持ちは、出会って……再会して、ストン…って落ちてきたから。
抗えないよね。
でも、たくさんあるんだよ。
愛し方も。
どうかお願い。
私のわがままを叶えて。
伴侶は要らない。
そんな愛情は欲しくないんだよ。
だって、死んでしまって独りになった今がツライから。
「着いたよ」
「わあ!大きいね!」
「ヒナノには全部大きいでしょ」
「ぶぅっ…!」
「ふふ」
図書館に着いたら降ろしてもらって、見て回った。あ、歩きはね、出来るようになりましたよ。
本当に大きい。
空間を作って仕舞うような図書館ではなく、作られた建物通りの場所に本を埋めてあるから大きくて上にも高い。
そうだ。
「リンジー!凄い可愛い!」
「可愛い?」
「この場所好き!本読む時はここじゃ駄目かな?」
「それなら毎日だね」
「えへへー!」
図書館に居たら天使様の所在も、天使様が本好きだという噂も広まってくれるだろう。
そうだ、そのうち私だけの図書館を作ってもらおうかな?
そこに閉じ籠もってたら動き回るよりも本を読む事が好きな人間だと理解してもらえるだろうから。
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