化け物天使は常識知らず!

ユミグ

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アダムの気持ちがよく分かる。
私が居るだけで世界をぽんぽんと生み出してしまう魂になってから寝てしまえばなかなか起きないし、寝起きがすこぶるに悪い、生み出すってそういう事だ。

「うるさい…」

どうしてか悪態をついている誰かの声で目が覚める。

「ヒナノ、起きて」

何故か音の精霊が一緒に寝ているけれど、うー…うー…って言いながらもぞもぞしてる。
音の精霊なんて初めて見たけど、多分雑音というか、色々な音を拾ってしまうんだろうと推測した私はわざとらしくカーテンを閉めるように手を動かしたらリンジーが急いで閉めてくれた。
音のはまだ寝るみたいだから、そっとしておいて。という意味もカーテンで理解したらしく、私を抱き上げてから、そぉ…っと、寝室から出て………君、足音消すの上手だね…私も上手だったんだけどなぁ?歩く事あんまりないから忘れちゃったぁ…とかぼーっとしながら支度されている最中に起きた。

「おはよー」
「おはよ、着替えてきて?」
「はあい」

寝室に戻って、着替えてから少しだけ音ののの髪を撫でて部屋に戻る。
あ、この部屋には音が通らないようにしておこうかな。

「精霊様はいついらしたの?」
「知らない、いつから居たの?」
「5日前から居たよ」

どうやらお昼に起こすどころか数日寝かせておいてくれたみたい。
というか、炎のには気安い態度だったから精霊は敬うような存在ではないのかと思ってたけど、違うようだ。

「少し出てて」

中に入ってる二人の護衛を外に追い出したリンジーはアルフの事で話でもあるんだろう。

「あれからアルフの態度を改めるように伝えておいたんだ」
「うん、ありがとう」
「王様とも相談してね?」

うん?

「しばらく離れるけど、また戻って来る事になってるんだ……大丈夫?」
「なんでバーナビー?」
「うん、と…色々とね?話しておいたから」
「うん?」
「アルフは天使様に仕える事が出来た喜びで緊張してたみたいだから、ルーシャン様…王様が少し距離を離して落ち着かせようって事になったんだ」
「…」

今、ルーシャンって言ったよね?
ルーシャンは獣人、そしてバーナビーは魔人だ。
見るからにルーシャンの運命…というか、ツガイがバーナビーなんだよね?
それで王様に話って……
お前!バーナビー達にアルフが私の運命だと喋ったな!?
大体察してはいたと思うけどね!
ルーシャンは運命の側に居るから、嫌って程気持ちが分かるんだろ!?寄り添ったのかな!?
そしてそのルーシャンの気持ちをバーナビーが汲んであげた挙げ句!一度、気持ちの整理をしろだとかなんだかアルフに言ったんだな!?
なにしてくれてんの!?
ていうか、見守ろうとする気持ちを確固たるモノにする為に落ち着かせてるんだよね!?
間違ってもアタックしようとしてねぇよな!?

「戻って来るの?」
「必ず」

その強い意思を吐く言葉の意味をわかりたくありません。

「今日はなにするの?」

もういい!アルフの事を考えたくない!

「街歩きだよ」
「うん」
「なにか見たいところはある?」
「なにがあるか分かんないからお任せしてもいい?」
「もちろん」

そういえば街歩きの日が決まったとか言われてたっけ?
公爵は早く籠もり期間が欲しいんだろうなぁ…
各国との顔見せもすぐにやって来そうだよ。

「食事はどうする?」
「今はいらない」
「じゃぁ、紅茶を飲んだら行こう」
「うん」

街には既に護衛が待機しているんだって。
私はここから転移してもらって護衛が居る場所から周辺を歩き回るという事は既に通達済みだから、天使様を一目見ようと集まってきている人達もいるみたい。

「行けるよ!」
「ふふ、ちゃんと手を繋いでおくんだよ?」
「はあい」

リンジーの手を繋いだら転移してもらって…

「「「「「「「「うおおおおおー!!」」」」」」」」

わあー、凄い。

野太い声で一斉にはしゃぐ人達に耳がズーンてするよぉ……
でも一瞬で護衛に囲まれた私の姿はもう見れないだろう。
みんなよりは小さいし。

「リンジー、やっぱり抱っこ」
「ふふ、かしこまりました」

リンジーに持ち上げられた方がまだ見えるだろう。
せっかくだから手をふりふりしてニコニコしておくか。

「「「「「「「「「天使様あああああ!!」」」」」」」」」

行きたいところある?とは聞かれたけど、ここまで熱狂的なら何処にも入れなさそうだ。
浮いて移動するのが当たり前だと聞いていたけど、今日は禁止されているのか頭上に浮かぶ人達は見当たらない。

ゆっくりと歩くリンジーは、目の前にある……

「嫌!」
「天使様?」

どうやら籠だか馬車だかに乗って移動するようだ。
魔法陣で全て動かしているから画期的なんだろうけど。

「あれに乗るのは嫌!」
「……分かりました」
「ぅぅ……」
「大丈夫ですよ」

思わずリンジーにしがみついて、パニックになりそうな息を意地でも整える。
こんなところで天使様がパニックになんてなったら全てが台無しだ。
動いてくれている公爵も、バーナビー達の頑張りを無駄にしたくない。
私は馬車が嫌いになった。
狭い箱に入れられるような造りになっている全てが嫌い。
遠い昔の、私の初めての旅や、何もかもを思い出すと嫌になる。
ツライ思い出ばかりじゃないのは理解しているけれど……

「はふ……」
「大丈夫ですよ」

どうしても気分が悪くなる。
色々な事を思い出しそうになる頭と心を無理矢理遮断して街並みに蝶々を放った。
もちろん誰にも分からないように。
過去を見る為じゃなく、今を見る為に。
蝶々が戻ってきて今の街並みを映し出す。
これで嫌でも集中出来る。

「リンジー!あっちに行ってみたい!」
「……あとで紅茶をお淹れしますね」
「うん!」

ご褒美をくれる甘々なリンジーにどっぷりと甘えておこう。
私が指差した方向は路地裏だから、護衛達が先に行って調べてくれている道をリンジーが後から歩くのだ。
なんて厳重なんでしょう。
天使様は凄いねぇ。

「少しお待ち下さい」

うん、どちらかというと“その子”に用があるからこっちに来たのだよ。
ひょいっとリンジーから降りて、もちろん手を繋いでから無理矢理護衛の合間を潜って歩いて行くと……

「天使様だ!」
「こんにちは!」

竜人の子どもがいた。
3歳くらいかな?
私の胸までの高さはもうあるけど…
たくさんの花を持って路地裏であたふたしてるのを見て“使える”と思ったから会いに来てみた。

「天使様!お待ち下さい!」
「大丈夫だよー!ねー?」
「ねー?」

どんな人でも危険だ、天使様に近付ける者も僅かなんだろう。
護衛達の仕事を邪魔しちゃうのは申し訳ないけど。

「どうしてここにいるの?」
「天使様に会いに来たんだ!」
「どうやって?」
「飛んで!」
「親はいるの?」
「居るよ!こっそり出て来た!」

どうやらおてんばな子らしい。

「花はなあに?」
「せっかく王都に来たんだからお金がないと遊べないだろ?」
「そうだねぇ」
「だから庭に咲いてる花を持って来て売ろうと思ったんだ!」

この国で花を売る子どもなんて居ないんだろうなぁ。
発想は可愛いし、目的が天使様に会いに行くというよりも王都で楽しみたい!が主になっちゃってそうだけどね。

「いくらで売るの?」
「いくらかな?」
「売るなら値段を決めなくちゃ」
「うーん………花はじーさんが一生懸命育ててるから安いのは駄目だけど…いくらになるんだろう?うーん…うーん…」

答えを出すのには時間がかかりそうだなと思ったから、路地裏で座って竜人の男の子を膝に乗せて待ってみた。

「おお!天使様のいす!」

椅子じゃないけどねぇ。
この子と遊べば天使様の心象も良くなるかなぁ?と思ってね?ちょっとパニックになりそうだった私はもしかしたら見る人によってツラそうに見えちゃったかもしれないと思ってね?元気よく遊べば、そう見えちゃった人達にも問題ないと分かってくれるかな?と思ってね?

「1日のご飯代にする!」
「お金の数え方は分かる?」
「それくらい分かる!馬鹿にすんなよ!」
「じゃぁ、1日のご飯代はいくらだと思う?」
「む………」

また考え込んじゃった男の子は手で数えようとするから、花をリンジーに預けて手が使えるようにした。

「んー!5000ルト!」

そんなにかからないと思うなー?天使様の食事代でも5日分くらいかなぁ?

「リンジー」
「はい」

今日の為にお金をバーナビーから預かってくれてたのか、5000ルトを出してくれた。

「はい、この花が気に入ったから買わせて下さいな」
「おお!いいのか!」
「いいよー」
「遊んでくる!」
「一緒にあーそーぼー」
「いいのか!?」
「いいよー、両親の名前教えてー」
「ん?……分かんないな!」
「じゃぁ、じーさんにお父さん達はなんて呼ばれてるー?」
「ラトリッジはくしゃくか、あるじさまだな!」
「ありがとー、あそぼー!」
「なにする?」
「お腹減ってる?」
「減った!」
「じゃぁ、ご飯だ!」
「おお!ご飯!屋台か!?屋台だな?」
「屋台だねぇ」

リンジーと男の子と手を繋いで街中に戻ってみたけど、男の子も護衛に囲まれてるから周りが見渡せないし、私を観衆に見せる事も出来ない。

「護衛の人にこの子抱っこしてもらっちゃ駄目?」
「構いませんよ」
「リンジーは私の事を抱っこするの」
「ふふ、もちろんです」
「お?おお!ありがとな!おっさん!」
「…」

おっさんと言われた護衛の人は男の子を抱き上げながら複雑な顔をしてる。

「連絡するように頼みました」
「ありがとう」

私を見てすぐに天使様だと言った男の子は姿形を親から教わってると思った。
そして、私の姿形を知ってるのは一部の人だけ。
だから、貴族の子だと思ったし、服も上等だからね。

「天使様!あれなんだ!」
「分かんない」
「なんで?」
「外出たの初めてだもん」
「うえぇー…退屈そうだ」
「えー?私は何千年でも部屋の中から一歩も動かなくても平気ー」
「天使様は変だ!」
「どうしてだろうねぇ?部屋でぬくぬくする楽しみを分かってくれない人ばっかりー」
「ウズウズする!」
「君はそうだろうねぇ」

部屋にいたらリンジーは気を抜いてる。なんて事はないけど、こんなに張り詰めた空気を出さない。
いつだって私の気分に合わせた飲み物を置いてくれて、気になった本をいくつも置いてくれる。
側にいてくれる人達のあたたかな気遣いや、たまに訪れる精霊達とのほっとする環境が大好き。

「あ!あれが屋台か?」
「リンジー、あれって屋台?」
「違いますよ」
「リンジー!屋台はまだか?」
「もう少し先ですよ」
「浮いちゃ駄目なのか?」
「今日は禁止されていますので」
「そうなのか?」
「そうなの?」
「そうですよ」

やっぱり今日は駄目な日らしい。
天使様が外に出るのは大変だな。

ん?
ライとお出かけした事、怒られなかったけどいいのかな?

「こちらですよ」
「おお!くれ!お金を持って来た!」
「私も2つ下さい」
「は、はい!あ、あり、ありがひょっ……ありがてー……ありがとうございます!」

リンジーの分と私の分を買ったけど、護衛の人達の分も必要かな?

「リンジー、護衛の人達も食べる?」
「いいえ」

どうやら街歩き中に食べるのは駄目らしい。
護衛も大変だ。

「あっちもいい匂いがする!」
「じゃぁ、次はあそこー」
「かしこまりました」

こんな調子で屋台の物を買って、広場がある場所で食べたいとわがままを言ったから、草が瑞々しく生えてる大きな広場でご飯を食べる事になった。
護衛としては、こんな開放的な場所で寛がれたら大変なんだろうけど、天使様の事を見せるのならこれくらい人目に付く方がいい。

「あむっ!………うまい!」
「そうだねぇ、リンジーの分も買ったんだよー」
「はい、ありがとうございます。失礼しますね」

リンジーが敷いてくれたラグに3人で座って屋台のご飯を食べ始めた。
毒の検査やらをして、なんなら一口食べる毒見役なんかも居るのを見て、本当に大変なんだなぁ。と改めて心の中でお疲れ様を言ってみた。
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