化け物天使は常識知らず!

ユミグ

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街歩きを終えたら婚礼式。

「うぜぇ」
「…」

婚礼式まではもう少し時間がある。
天使様と天使様の子というのはどの国でも重要な出来事。

「笑うな」
「笑わないで」
「…」

重要視していなくとも、重要視しなければならない。
神の行いを、奇跡を、享受したいと願わない者などいないと言われているからだ。

「顔隠す」「顔隠せ」
「…」

街歩きがある今日、ニウをイセトの両親に預けたはずなんだけどね?

「あう、あう、」

どうしてかイセトに抱かれて楽しそうなニウと、不機嫌を隠さないイセトと、アルフに抱かれている私に命令してる。

「ママ!あれ……パパあれなあに?」
「武器屋だ」
「みちゃい!」
「いいぞ」

気遣い屋なメルはアルフにだけ話しかける事に決めたらしい、多分、ニウの声しか聞こえないからいまいち分かりづらいけど、顔をアルフの肩にぐいぐいと押されてるから、さっきまで手を振ってニコニコしてた私はもうなんにも見えないけどね。
イセトは周りから見えないのをいい事に?聞こえないのをいい事に?命令?嫉妬?………とにかく嫉妬しながら時々私の頭を撫でる。

「「…」」
「…」

どうやら私の頭を撫でてるイセトとアルフの手が当たったらしく、今にも仲良く喧嘩しそうだ。

「パパ!これぇ!」
「欲しいのか?」
「ほちぃ!」
「いいぞ」
「わーい!あちょこりぇもー」
「いいぞ」
「パパもだいしゅき!」
「俺も好きだ」

メルの“パパも”には、イセトも含まれてるんだろう。
不可視化をしていてもニウとメルには分かるようにしたから。

「僕も好きだよ」
「くふっ、くふくふ♪」

たくさんの護衛と、民達が溢れかえってる街を歩いてる私はもう顔を上げてない。
なんなら声すら発していない、今はなにか行動を起こしたら2人に怒られそうなので。
メルが街歩きを楽しみにしてたからはしゃいでる姿を見たい気持ちはあるんだけど……うん、我慢しようかな。
二人も我慢して天使様のお仕事を邪魔しないようにはしてくれてるし?一応?ギリギリだけど?
いや?こういう考え方は違うのかも?

「あの…ぶっ!」
「「喋るな」」

アルフが教えてくれたんだよ。

「子どもと初めての街歩きしたい」
「「…」」

別に二人だけならいいのだ。
アルフとイセトの独占欲が湧き出たならすぐに退散したい、仕事以外なら。
今も仕事だけど、メルが楽しみにしていた街歩きを…私達と歩ける楽しみと、メルと歩きたい私のわがままを伝えるのも大切だって教えてくれたでしょ?

「「………」」

アルフがのっっっそりと私を降ろした瞬間、イセトが私の手を繋いでくれた。

「ありがとう」
「「…」」

とっても気に食わなさそうな2人。

「メルがね?ちゃんと親子で過ごしたいと思ってるからそれも先に叶えてあげたい」
「………悪かったな」
「んーん、忙しいんだからしょうがないってメルも分かってるよ」

アルフが浮いてるメルを持って肩に乗せる。

「悪かった、時間作る」
「………うん!」

いいのかな?なんて表情をしたメルは、やっぱり一緒にいたかったのか嬉しそうに返事した。

「ヒナ」
「…」
「僕も時間作る」
「ん」
「ごめんね、ヒナも寂しがってるの気付けなかった」

いいんだよ。
だってそんなの些細な事だ。
今を生きて、楽しそうに仕事をしている2人が本当に大好きなんだから。
全然気にしてないよ。
でも、なにを思ってるのか想定したり観察したりする事じゃなくて、話をするのが大切だと教わったから伝えただけ。
だから気にしないでね。
なんて、イセトへの言葉を伝えられないから握ってる手を強くする。

「ママー!あしょこ!」
「ふふ、どこがいいの?」
「あしょこ!ちっちゃいの!」
「行くぞ」
「うん!」

アルフが護衛の配置を変えてくれた。
私の右にはイセト、左にはアルフ。
二人とも子どもを抱えて、私と手を繋ぐ。
私としては?私としても?こんなに見られてるような場所じゃなくて、森の中を散歩したい。

「んふふー」
「くふくふっ♪」
「きゃー!」

愛する伴侶達からはやっぱりおどろおどろしい雰囲気を感じるけど…

「………どこが見てぇ」
「ちっちゃいのー、それからあっち!」
「んふふー」
「ヒナ、もう少し笑顔を抑えようね」
「……んふ」
「「…」」
「たのちー!」
「きゃー!」
「「…」」

メルの笑顔も見れた街歩きは当初の時間より短くなっちゃったけど、満足だ。










「メルお散歩しゅる!」
「いいぞ」
「パパのおうちー、ママぁ」
「はあい」

その日からやらなくてもいい仕事…というより無理矢理してた仕事はやめて早く帰って来たアルフとメルとニウで夜の森を散歩するようになりました。

「ただいま」
「「イセト!」」
「きゃー!」

イセトもたまに来てくれる。
こんな日常が今の私にとっては当たり前。



*********************************



しばらく設計図の彼と会えなくなるから行ってもいい?と二人に聞いてみた。

「いいぞ、メルは俺と居ろ」
「あい!ママかえってきたらおしゃんぽー」
「うん、寂しくなったら来ていいからね?」
「くふっ」

メルは本気でバーナビーを守りたいらしく、今日から猛特訓をするんだって。
手加減と、守るという事の意味を教わる為に。

『声かけたら来て?必ずだよ?』
『うん、イセトとの時間も大切』
『いってらっしゃい、愛してるよ』
『いってきます、私も愛してる』

こんな感じで許可が出たのはいいけれど、肝心の彼にはまだ連絡していないから行けるか分からないけどね。
ニウが眠っている時は箱庭で寝かせている。
イセトが見たいと言ってくれたから、私が天界や、イセトの家に居ない時はこれからも箱庭で眠っている。

『行きますね?』
『…』

困るよね。この無言がどういう意味なのか分からないから動けな…

『まだか』

そうですよね!失礼しました!
今ニウは起きてるから私の腕の中。
一緒に転移すると、気にならないのか設計図から目を離さない。

「ええ!?」
「煩い」

彼の手元にはダイニングだけ書いてある設計図?設計図ともいえない図案だけど多分…っていうか間違いなく私用に作られた設計図だ。
ダイニングしか書かれてないのはダイニングにいる私しか知らないから。
キッチンでせかせかと動く私しか知らないからダイニングしか書かれてないんだろうけど、私好みのダイニングはとても広くて、キッチンとの隔たりがなくて、みんなとご飯が出来るような場所。

「なにがいい」
「ええ!?」
「煩い」
「あ、え、と、ど、どうしよ」
「…」
「あ、これ」
「…」

手のひらから溢れるくらいの宝石を出して渡す、これじゃ足らないか?相場が分からない!

「いらない」
「は、はい、ありがとうございます」
「なにがいい」

どうやら無償で書いてくれるらしい!

「玄関はいらないです、彫金に裁縫に鍛冶に機械に…あらゆる物を手作りしたいのでそういう場所が必要で、え、と、屋根なんかもいらないです。外が全て見えるように窓ガラスを一面に、上を見ると斜めになってるような造りでだけど月が必ず見えるように」
「言っていけ」
「は、はい!」
「次は追い出す」
「…」

煩かったらしい。
彼がいつもより丁寧に何度も手を止めては書いていく私の理想の家は彼の好みも入り込んだ図になるだろう、だって私は彼の設計図が大好きだから。
まだ言える事もないから、ニウが眠ったら転移させて、起きたら腕の中に転移させるを何度も繰り返していた。









「あれ?まだ居たの」
「はい」
「出来た?」
「ああ」

どうやら恋人?は仕事仲間でもあるみたいで、設計図を手に取って確認してる。
その間に彼は寝るらしく、そうだよね。何日も書いててくれたんだもん。
きっと寝室だろう部屋に入って行ったから食事を作って、起きたら渡して…うん、その後は帰ろうかな?なんて思いながらキッチンに向かった。

「君」
「はい」

恋人の確認が終わったみたいだ。

「料理作ってるけど彼なら食べないよ?」

え?食べてるけど…
とってももりもり、なんの文句も言わず平らげてるけど?衛生的に潔癖とか?

「そうですか」
「好きなの?彼の事」

表情は軽蔑と嫉妬?

「はい」
「ふぅん、抱かれてるの?」
「いいえ」
「淫魔なのに?」

あ、これは馬鹿にされてるな。

「はい」
「半端者のどこがいいの?」
「半端者の意味が分かりません」
「成長だって止まったし、仕事も満足に出来ていないでしょ?」

ううん?恋人の感情が難しいな。

「私は小さいので彼程の大きさがちょうどいいと思っています、仕事に関しては惚れて弟子入りを頼んだのはこちらの方なので」
「淫魔には分かんないか」

あ、なるほど。
彼の仕事が評価されない事に怒ってるんだ。
だって直されているって言ってた、イセトも噂で聞いて紹介はしたけど、それもマニアックな人間に聞いたと言っていた。
彼は書き上げた先を知らないんだろう。
恋人は私にだけではなく、彼にも怒ってる。
もっと声を高らかにしなよって、こんなに綺麗に書くのにって。
同志よ!分かる!分かるよぉ!

「美しさを理解して欲しいとは思いますが、押し付けたいとも思っていません。ですが…それを彼が望むなら力になりたい」
「君達は無欲だね」

わあ、お怒りぃ。
広めたいんだろうな、彼の技術。

「余計な事を話すな」

起きてきた?きっと話し声が聞こえてたんだろう。彼はさっきから不機嫌な魔力を漂わせてたもんね。

「邪魔だ」
「はい、渡した事のない料理を置いておきますね」
「…」

まだ見ていたかったんだけどなぁ…
彼が描く私があった。
私では絶対に分からない私も書いてくれている。
そんな設計図だった。
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