化け物天使は常識知らず!

ユミグ

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「“ヒナノ”を知っているか」

まだ名乗った事のない私の名前を聞かれた。
どうして私に聞くんですか?なんて聞きたいけど、そんな想いをぎゅぅぎゅぅ仕舞って、彼に向き合う。

「まだ自己紹介してませんでした」
「…」
「ヒナノです」
「…」
「デズモンド様ですか?」
「…」

彼は困惑している。
でも、それは私も。

「デズ、モンド、さま、なら、嬉しい、です」
「…」
「ずっ、と、求めてまし、た、」
「…」
「探した、ん、です、よ?」

デズモンド様を取り込んだと知らなかった私は探し回った。どの世界に行っても探して、見つけられなくても…私自身が諦めてしまうまで探し続けていた。

「デズモンド様を、ぐすっ、殺した、のは、私、です」
「…」
「魂に、私の魂には、デズモンド様が、いて、」
「帰れ」
「っっ、………は、い、ごめんなさい」
「…」

ドスンッと音が鳴ったのは私が机に押し倒されたまま転移したせいで腰から落ちるように床へ転がったから。
天界に戻った私は泣いてた。
デズモンド様がどんな形であれ、記憶を持っていると確信した。確信した、けど……

「きらわれちゃ、った、かなぁ?」

あの頃のような愛を感じなかった。
なにも………感じなかったんだ。
彼からは「無」しか……。

「ママ?」
「メル……ごめ、どうしたの?」
「ママが泣いてたから」

今日はメルにとって幸福な日だったのに。
家族と会って、花火を見て、みんなで騒いで…
それなのに、私が台無しにしてしまった。
きっと世界から私の悲しみが伝わってしまったんだろう。

「もう悲しくないよ、おいで」
「ママは嘘つき」

私の腕の中に飛びついてきたメルはおかしな事を言う。

「ぐすっ、ふふ、未だに世界は悲しんでる?」
「………してない」
「そうでしょう?私の悲しみを感じて愛する我が子が来てくれたんだもの。悲しみよりも嬉しい気持ちが広がってる」
「……しょれならいーよ」
「ありがとう」

心配をかけてしまったと反省しつつも、正直に話す事にした。

「恋愛の悩みなの」
「デズモンド様だ」
「な、なんで知ってるのかな!?」
「本、読んだ」
「面白かった?」
「リクは死ねって思った」
「ふはっ!」
「でも、イセトは大好き」
「私はどちらも愛してる」

え!?まだ愛してるの!?あんな男を!?
みたいな顔してるから思わず笑っちゃった。
イセトも言ってたけど、リクってそんなに最低かな?

「メルもデズモンド様みたいな人の伴侶になりたい…」

肉球でぶにぶにと顔を隠しながら、そんな事を言う。
どうやらメルはデズモンド様に恋しているようだ。

「ライは頑張ってるでしょ」
「ふんっ!あんな男、一体いつになったらデズモンド様みたいになれるの!」
「でも、私がデズモンド様と出会うまで、デズモンド様は何万年って生きていたと思うの。その間に成長したんじゃないかなー?」
「………」

ライもメルも生まれたばかりの赤子。
たくさん勉強して人生を学んでいるけれど、まだ始まったばかり。

「パパといっちょにねりゅ…」

甘えたなお姫様は私がどこかに行ってしまうのかと不安がっているのか、胸からしがみついて離れない。

「ママもパパと一緒に寝たいと思ってたの」
「!早く!」
「ふふ、はあい」

アルフの元に戻れば、問答無用で露天風呂に入らされた私たち。

「「ん?」」「くせぇ」

なんだそれ。
お前のその本能で嗅ぐ臭さって別に匂いが移る訳じゃないだろ?
どうせワルワルが臭すぎたんでしょ?

「泣いたか」
「失恋ちゅー」
「ふんっ!」
「2人ともありがと」
「くふくふっ」

アルフの膝の上に座ってる私の腕の中にはメル。
今日はへにょんへにょんになるまで甘えたいらしい。
それならと、ぎゅぅぅぅっと抱きしめると、笑い声が聞こえてくるから、そのまま抱きしめていたら、アルフが私たちを囲むようにぎゅぅぎゅぅとしてくれるから、私まで笑い声が漏れる。
彼の事を諦めたとかそういうんじゃない。
でも、もし、彼がデズモンド様なら時間が必要だ。
話し合いたいけれど…今は嫌気が差してしまうだろうな。
うん、頑張るぞ!

「ママぁ」
「ん?」
「パパとちゅーちて」
「?うん」

アルフとちゅーすると、くふくふとした笑い声が聞こえてくる。
そしてなぜかアルフの顔が気色悪くなる。なぜだ。

「メルにもちゅーしたいなー?」
「くふっ♪」

ほっぺにちゅーちゅーたくさんする。
ああ、幸せだ。

「アルフ」
「ん?」

あまあまぁ…

「愛してる」
「俺も愛してる」
「メルもー!」



*********************************



「大丈夫だ」
「…うん」
「…」
「…」

もうすぐ籠もり期間が終わる。
ルーシャンの子どもは魔力暴走する事もなく育っているから問題なくアルフに甘えるだけの生活を送っている。
いや、送りすぎたのかも?

「ヒナノ」
「うん」
「ちゅーするか?」
「うん」

夜ご飯の準備をしていた私の不安を読み取ったアルフは私を抱き上げてちゅーちゅーしてる。
別に籠もり期間が終了する事に不満を抱いている訳じゃない。

「ここにいんだろ」
「うん」

どうやら私はアルフ自身に不安を抱いてしまっているらしいのだ。
アルフはアダムじゃない。
でも、アダムのように無気力になったり、アダムが私を手に入れたら、早々に飽きて手放す未来が見える私は不安を感じている。
アルフがいつか飽きちゃうんじゃないかと。
どこかに行っちゃうんじゃないかって。
でもどこに?

「お前しかいらねぇよ」
「うん」
「…」
「…」

勝手に不安がって、勝手にもぞもぞしてる私を宥めてくれるんだけど………
あまり効果は発揮していない。

「アルフ…」
「行かねぇ」

どうしたらこの勝手に湧き出る不安を解消できるかも悩んでいる。
一つの悩みができると、それに付随して様々な事に対して悩み出す性格みたいだ。
とっても。うじうじと。

「ママ!パパ!ただいま!」
「おかえりぃぃぃ!今日も頑張ったね!」
「うん!パパぁ!」
「おかえり」

どうしてかメルやニウが居ると、そんな不安はなくなっていく。
でも………



「ヒナノ」
「うん…」

朝、メルが仕事に行くとまた不安になる私は一体どうしてしまったんだろうか。

「おい」
「うん」
「ヘラクレスはもう抱かねぇよ」

ヘラクレスはアダムの伴侶。
抱かないと言わなくてもいいからね。元々、君が抱いた訳でもないですから。

「うん、いないからね」
「そうじゃねぇ、お前が気にしてんのはヘラクレスに似た奴が出てきたら俺が抱くと思ってんだろ」
「………そうなの?」
「そうだ」

そうなの?うーん。ヘラクレスがもしアルフの前に現れたら…?ヘラクレスがアルフが好き!妾の!なんて言ったらアルフはなびく……

「おお!そうみたいだ!」
「そう言ってんだろ」
「でもなんでだろ?」
「あん?」
「愛する者が増えるのはいい事だよ?」
「ヘラクレス以外はな」
「そうなの?」
「お前の場合はそうだ。ヘラクレスに奪われるとか思ってんだろ」
「おっぱいぷるるんだからかな?」
「お前が愛してるからだろ」

そうなのかな?
でも、アルフがそう言うならそうか。

「俺がヘラクレス以外を愛した想像でもしとけ」
「………ふへへ」
「もう不安がるんじゃねぇよ」
「うん!」

そういう想像をしたら幸せになりました。

「ありがと」
「ふん」

どうやら友達と勝手に伴侶になる想像をして、勝手に不安がってたみたい。
そんな面倒臭い私に向き合い続けるアルフは、

「おお!」
「んだよ」
「アルフがいい男だと思った!」
「あ゙!?元からだ!」
「どこがだ?」
「全部だよ!」
「ふっ」
「あ゙あ゙!?」

タイプじゃなくともかっこいい男性だと思う事ができました。
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