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召喚されたけど引きこもっててもいいですか?
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しおりを挟むはぁはぁと息が荒くなる。
熱が出たのかと憂鬱な気分になりながら起き上がろうとするけど体が動かない。
「はぁ、はぁ、………なんでぇ?」
体の重さに救急車を呼ぼうかと悩んでいると遠くから男の声がした。
「だれ?」
「起きられましたか!?」
慌てた声と足音が近寄って来て私の額に手をかざす。
「やはり召喚に使う魔力が足らなかったか、聖女様のお体に支障が出ている」
「……………はぁ?」
なに?頭のおかしい人に絡まれてるんだけど……………あれ?記憶がないんだけど…もしかして昨日飲みに出かけたっけ?いやバイトから真っすぐ帰って来てちゃんと寝たはずだし、なんなら今日もバイトなのに。
「失礼致します聖女様、お体を起こしますね」
「キモいからやだぁっ」
「キモ?なんです?」
目だってちゃんと開けられないからどんな男か分からないし、どうせ頭のおかしい奴だから近寄っても欲しくないのに背中を支えられながら起こされる。
体が動かないから振り払う事も出来ないし、なにされるか分かんないしもうやだ死にたい…
「ふっふぇぇっ、うわあああん!キモすぎ熱すぎうざすぎ!やだああぁぁぁ!」
「聖女様落ち着いて下さい!少しだけ魔力を流してお体を楽に」
「キモいぃぃぃ!私だってオタクだけど他人に強要するほど迷惑なオタクじゃないんだけど!もう死にたいぃぃぃっ!」
「死っ!?ど、どうか落ち着かれて下さい!」
「無理に決まってんじゃん!熱いし目も碌に開けられないし生理前だしバ先に連絡しなきゃなんないしマジ無理!ていうかきもすぎる!離してよ!怖すぎるよおおぉぉぉ!」
もう意味分かんないし訳分かんないから喚きに喚いてる間にもその人は召喚だか娼館の話をしながら丁寧すぎる言葉で私に話しかけるから余計パニックになる、まだタメ語のが安心するんだけど!
そんな風に口で撃退しようと躍起になってたら多くの足音が聞こえてきてビビった。
「聖女様が目覚められたのですか!?」
「体調は戻りましたか?」
「やはり魔力を削るべきではないとあれだけ進言したというのに…!」
正直1人だけだと思って油断したっていうかどうにかなると思ったけど大人数は無理、ていうか大人数苦手だし今の状況もおかしいしなんなの。
「もうやだ死にたい」
ちっちゃな声でほんとにちっちゃな声でボソっと言っただけなのに私の声をみんな拾ったのか一斉に言葉が止んだ。
「死ぬなどと……………!?」
「精神にまで影響されているのではないか?」
「どうか落ち着いて下さい!」
「ご不安でしょうが、お体がよくなりましたら説明させて頂きますので………!」
もうやだ、ナニこの人達……………私変な酔っ払いにでも絡まれてんの!?
その時体にふわっと何かが入り込む感覚がして涙も引っ込んだ後熱も引いた。
「へ?」
「良かった……………魔力が効くならしばらくはこうして交代に魔力を分け与えましょう」
私をいつまでも起き上がらせてる人がそんな事を言う。
体が楽になったのは間違いなさそう……なので手を動かしてみると容易く可動するので手の平でごしごしと目を擦って涙を拭く。
「ああ!聖女様!そんなに擦っては目を傷めてしまいます!」
「む……そんなに擦ると目を痛めるぞ」
「今、氷を出しますね!」
「布を持ってこなければ氷だけ出しても意味がないでしょう」
手から氷が湧き出た後、コロコロと地面に落ちたのを見て流石にフリーズした…
いや、正直に言うとあたふたしているその人達を見てフリーズした。
だって、西洋イケメン万歳だったから。
私を未だに支えてる男は背中まで伸びているサラサラの金髪を後ろで一括りにしていて、鼻は高いし唇は薄いし目なんか緑だし、それに顔が近いし長い眉はへにょってなって綺麗な顔が可愛くなってるし。
その後ろでウロウロしてる人は短めのっていっても襟足まではあるこれまたサラサラの茶髪に鋭い紫の瞳に右目の下のホクロは色気爆発だし。
この中で一番ガタイが良くて焼けている人は短髪の銀の色に赤目はもうウルフって感じ、眉間のシワも三白眼も少し厚い唇もすげぇウルフって感じ。
手からポロポロと氷を出した人は唯一青年って感じ、感じっていうかもうBLの総愛されの主人公って感じの可愛い感じ、ピンクの髪にピンクの大きな瞳にここに居る誰よりも小さな鼻と小さな口はキュートアグレッションを起こしそう。
で、そんなイケメン万歳共に囲まれてる私はただのフリーター24歳彼氏とは1週間前破局済み、唯一自慢出来るのは3日前にブリーチした後にアッシュグレーに綺麗に染めてもらった髪色と艶くらい、寝てたはずだから化粧もカラコンもしてない私の前にこんなイケメンを並べられて恥ずかしさで早く化粧がしたくて俯く。
てか何がどうなったらこうなんだよ…
「聖女様はまだ具合が悪いのではないか?」
「いえ、私の魔力で楽にはなったはずなんですが…」
「布!持って来ましたよ!」
「ありがとう!これ、聖女様に当ててあげなきゃ!きっと目が熱くて顔をふせちゃってるんだよ」
いいえ、恥ずかしさで顔が上げられないだけです。
「聖女様、どこかお体の不調が残っておりますか?」
そう言われて体が全回復、どころか疲労もなくなって元気いっぱいで今なら朝から海でも行けそうなくらいの体に内心びっくりした。
ていうか今更だけど聖女って私の事で合ってるよね?
もう何が起こってるか分かんないしここはどこ状態だけど、こんなに大勢に見られて言葉待ちみたいな事されるとどんどん萎縮するんだけど…
「聖女様は混乱なさっているようです」
「まだ説明してあげてないの!?」
「落ち着かせている間にあなた達が来たのですよ」
「聖女様、怖がってるのかな」
「む……なら出て行った方がいいか?」
「私がもう1度話してみますから表で待っていてもらえますか?」
え!?待つの!?私の事待ってるつもりなの!?いや、それもそれで気使うんだけど………
心の声はうるさいくせに微動だに動かない私の前で次々と決まっていく会話に入り込める訳もなく、結局後から来た3人は出て行く事になり長髪さらさら金髪緑目の男が残る事になった。
「聖女様」
私大人数は苦手だけど1on1は大丈夫なんだよね、分かってくれるかなこの気持ち。
だけどね?今まで伏していた顔をすぐ上げられるほどの勇気もないから頭を振る事で意思の疎通を図ろうと図々しくも考えた。
「お体の調子は大丈夫でしょうか?」
コクッ
「目元は熱くないですか?」
コクッ
「………触っていても問題ありませんか?」
コクッ
「ご説明してもよろしいでしょうか」
コクッ
これが恭しさというやつか…
執事喫茶にでも行って体感しておけば良かった…なんかむずむずするよ。
「その前に自己紹介ですね、申し遅れました。私はオルレインガル神殿の神官長を務めておりますネイサン・ミラ・ブルームフィールド、どうかネイサンとお呼び下さい聖女様」
コクッ
呼べるかぁ!お前誰だよ!?
「と言ってもどこから説明したら良いのか………そうですね、この世界にある3国のうち1つの国でも淀みが溢れると必ず現れるという聖女の存在が長きに渡り顕現せず昔は1国の問題だった淀みが3国に広がり続けこのままでは3国全て滅び、やがて世界まで消えてしまう、そこでオルレインガル神殿に伝わる召喚を行おうという話になったのですが………………」
それって…
「申し訳ございません、本来召喚には多大なる魔力が必要とする為、神殿内だけでは補えず3国にも協力を仰いだのですが今はどこもピリピリとしていて少しでも均衡が崩れると戦争が起こってしまう、そんな事を危惧した3国は魔力の譲渡を拒絶した。けれど、世界には淀みが広がり続ける………そこで少ない魔力でも決行し召喚には成功したのですが、魔力が少なかった為か聖女様のお体に負担がかかってしまったのです。」
聖女様…もしかして私って…
「3国の協力がなかったとはいえ無理にでも強行しようと最終的に決断を下したのはこの私です、ですからどうか罰は全て私に………そしてどうかお願いです私達が住まうこの世界を救っては下さいませんか?」
ゆっくりと顔を上げると真剣な顔のネイサン、でいいのかな?ネイサンの翠眼と目が合った。
そこで驚愕の顔を浮かべたネイサンを無視してキョロキョロと周りを見渡す。
物凄くだだっ広い部屋に天蓋付きベッドがデカデカと置いてありそこに私が寝ているらしい。
壁には直接彫ってあるのか色々な模様が見えるけど全体的に白い。
そしてネイサンの服、THE神官服って感じの服装に整った造形美、ちょっと失礼だけどまじまじと顔を見させてもらった。
化粧してるようには見えないしまさか加工した映像がここにあるって訳でもないし、説明を聞いたところ私は世界を救う勇者のような存在って事…
つまり、異世界転移だ。
わー、やったぁ!異世界じゃん!なんて真剣な顔をしたネイサンの前では口が裂けても………………言えなかったよねー。
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