巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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召喚されたけど引きこもっててもいいですか?

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体をネイサンに預け足をフィフィに触られながら国王の話を聞く…

ほ、本当にこれが合ってるの?

女帝って感じだよ?もしかしてみんなこうなの?女帝なの?大きな扇子とか持った方がいいんじゃないかな?

扇子…ありそうで怖いです。

「聖女様が通った跡も少しではありますが、浄化されており民らも奇跡を肌で感じ偉業を称えております。ですが浄化しない場所が出てきてしまうと奇跡を拝む事も出来ず苦しい生活を強いられてしまいます、国として召喚の際お力を渡さずに何を……と思われるかもしれませんが、どうか国全体を浄化しては下さりませんか?もちろんそれ相応の支援やお好きな物をご用意致しましょう」
「……………………………………」

お好きな物でしたら、今すぐに私の格好をどうにかするよう命令してはくれませんか?

リク!なんでそんな事するの!?

「そうですね……ああ、夫もそれだけでは足りぬでしょうからお選びになられるように夜会を開きましょう」

いえ、いっぱいいっぱいです。
心の底からいっぱいです。

「神官服だけではつまらないでしょうからドレスを国一番の者に作らせましょう」

ドレスで旅はちょっと……

「各地に夫を派遣しておくのはいかがでしょうか、探すのが面倒ならばこちらで選定致します」

現地妻ならぬ現地夫…ちょっと、いやだいぶ遠慮したい。

「宝石も化粧品も望むだけ全てを与えましょう」

そんなにいらないなぁ…みんなで仲良く森の中をお散歩するのが私の贅沢なんです。

「夫達では叶えられない事でも私なら叶えて差し上げる事が出来ますよ」

もうぼーっとする事しか出来ない私にリクが目くばせしてくる。
あ、あれをやるのか……しないと駄目、ああ、駄目ですか。

「はぁ………疲れちゃった。」

確かに疲れたよ!心からの声です!

「聖女様がお疲れのご様子ですので戻ります」

ネイサンがそう国王に言うとさすがに焦ったのか止めに入る。

「お、お待ち下さい!何か気に入らぬ事がありましたか!?」
「ふあぁーあ……なんだか国王っていうからかっこいい人かと思って期待したけど…」

チラッと顔を見てあからさまにため息を吐く。

ごめんなさい!

「はぁーっ………好みじゃないなぁ、ねぇ私この国の人の為に浄化したくなくなっちゃったぁ」

え?もっと?いやいやネイサン、もう不躾な態度は合格では?え?ああ、駄目?甘い!?これが!?

や、やめて…みんなして目で訴えてこないで…

「そっ!なっ!?」
「でしたらそのように致しましょう」
「お、お待ち下さい聖女様!どうかお考えな」

や、やれる!私は女帝!

「嫌なら顔見せないで、あ、もちろん夫達にもね?なんか神殿に来ると忙しそうにするからもう神殿も嫌になりそうだったの、ついでにうるさいのも黙らせておいてよ」
「……………………………………」

く、く、く、首にキスしないでリク!な、な、なにっ、なにしてるの!?

「わたっ…んっ…私は私の気まぐれでしか誰にも会いたくないし、夫をどこかに連れて行かれるのも嫌だから、大人しく従ってくれるならそこそこは浄化してあげてもいいよ?」
「っっっ」

はう…!フィフィ!足にキスしないで!
もう帰りたい!凄く帰りたいです!

「ダグラス」
「はい、聖女様」

ダグラスに抱き抱えながらその場を去り、早急に部屋に向かってくれる。


もう駄目…

もう無理だよぉ…

「お疲れ様でした」

部屋に戻るとリクが労ってくれるけど…君が1番スパルタでしたよ!?

「うぅぅぅぅーっ………………」
「大丈夫だよ!ちゃんと出来てたよ!」
「そうだよ、恥ずかしがらなくても大丈夫」
「よく出来たな」
「本当に、ありがとうございます」

ちゃんと出来てたの?あれが?
だとしたらおかしいよ…私が言うのもあれだけど、おかしいよ…
もう少し普通な態度を取れないのか…

「ぅぅ………もう無理もう恥ずかしいもう……ぅぅ………」

女性はこういう態度なのは普通らしいんだけど、国王だけは妃の座を狙う女の人が多いからか、しおらしかったり意見を黙って聞く人ばっかりらしい。
ネイサンも次期国王候補だったらしいからそういう人も多かったって言ってた。
だから私がふんぞり返ってるのはさすがに我慢ならないらしい………ていうけど普通にあの態度は人としてどうなんだろうね、ほんと…はぁ…

私が気を遣ってるとか、ワガママを言わないとか、よく言われるけど確かにこういう女の人ばっかりだったらそりゃそう思うよね。日本人だから、とかじゃなく人として私の世界であんな事早々許されないし頭のおかしい人に見られちゃう。

「ユイ様、とてもお上手でしたよ。これで聖女の意向も聖女の性格も知れ渡りますからこの国の貴族は大人しくなるでしょう。ありがとうございます」
「う、うん………え?ま、待って、ていう事は他の国に行ったらまたこうなるかもしれないって事?」

ニコっと笑うリクと目を反らす私の夫達………

「あ、う、……うん!あと2回って思えばなんとかなる!うん、大丈夫!うん、うん」

あと2回!これからを考えたら2回は少ない方だと思うよ!

「だったらもうちょっと練習しないとねー!」
「え!?」

もう充分スパルタでした!

「そうだな、態度が柔らかすぎる」
「ええ!?」

どこが!?あんなに失礼な態度のどこが柔らかい!?

「蹴ってみるとかどう?」
「えええ!?」

それはもう暴行だよ!逮捕されちゃう…うん?

………聖女って誰が捕まえるんだろう?そ…う、うん…変な事考えないようにしよう…うん。

「視線が柔らかすぎましたね」
「ええええ!?」

話を聞けば聞くほど頭が痛くなってくる……





その日から少しだけバタバタしてたけど、ある日からぴたっと大人しくなり随分動きやすくなったと、みんなから感謝されればもう私に言う事はない。
初めはリクに対して疑心暗鬼だったみんなも、どんどん態度が軟化していって今では上手く付き合っていけているみたい。


それ以降騒がしい事も私の耳には入って来ないし、多分嫌な事もされてないと思う。
残りの神殿も周り終えて隣国へと向かう時には既に2年の月日が経ってた。
その間も変わらず仲良くしながら、神殿での顔見せで夫を見つける事もなく私的には楽しいのんびり旅が続いた。




「もうすぐ国境?」
「そうだ」
「すでにユイの話は3国に広まっておりますから歓迎はされますが大人しくしてくれるかと思います」
「……………………………………」

女帝ユイですか…

「なあに?まだ慣れない?」
「な、慣れない………」
「まぁ、着いて来ている守護神官達にはバレてるから分かる人には分かるだろうけどね」

国王と話した内容が神殿内に広まり、それが他国まで届いているのは聞いてる。
だからか私の機嫌を損ねないよう目も合わなかったり、顔見せの時も私の好みがどう伝わってるのか知らないけど、好まれそうにない顔は省いているらしい……どんな顔だ。
聖女の夫は同等の立場だという事も広まっているらしく、恭しかったり時にはワイロとして何かを手渡される事もあるみたい。それをされた時、ダグラスは誰にでも分かるくらい不機嫌になったらしくそれ以降私達は腫れ物扱いになってる。
まぁ、関りがないのが一番いいけど。

「ユイ様、3つ先の神殿は海に隣接しておりますからもしかしたら海の市場も覗けるかもしれませんよ」
「本当!?」

市場!異世界!馬車の旅も立派な異世界だけど!市場はやっぱり異世界っぽいからわくわくしちゃう!

「海が好きなのですか?」
「どうだろ…でも市場って聞くとちょっとワクワクするよね」
「それなら今度から市場があれば寄ろう」
「いいの?」
「もちろん、ユイが行きたいところに行こう」
「嬉しい…ありがとう」
「「「「「可愛い(です)!」」」」」
「………」

最近はちょこちょこと料理も教えてもらいながら作ったりしてる。
それがまた楽しいし、みんな過剰に喜んでくれるから作り甲斐がある、けど美味しいしか言わないから神殿で出てくる味を密かに研究してみんなの口に合うように頑張ってるところ。

「そろそろウェイヤグルン国に入ります」
「うん、なんか淀みが違うね」

より一層暗くなっていくから夜なのか昼なのか…分かるけども、分かりにくい。
そんな天候に見える。

「ここは始まりの国と呼ばれてるからね」
「あ、淀みが最初に起こったところ?」
「そうだよー!だからまた一層濃いでしょ」
「うん、なんか霧みたい」

1人で歩いたら迷子になりそうだ。

「ユイ様、もしも喉が痛くなるようでしたらすぐに仰って下さいね」
「うん」
「砂埃もあるからな」

砂埃も魔法で取り払ってくれているみたいだけど、全てじゃないんだ。
私には魔法が使えないから、なにがどれほど効いているのか分からない。
本当旦那様達には頼りきりなのだ。

「それなのに海はあるんだ」
「ウェイヤグルン国は水だけは無事なのですよ、昔そういう加護を頂いたと言われています」
「あ、えっと精霊だよね?今は怒って居なくなっちゃったけど」
「その通りだよ、唯一まだ加護が残っている国とも呼ばれてるんだ」
「へぇ…」

昔は精霊がたくさん居て人間とも協力的だったらしいんだけど、昔女の人が精霊王と恋に落ち一緒に愛を育んでいたけれど人間がある時飽きて捨ててしまい、別れに精霊王は酷く嘆き悲しんだ。
徐々にそれが怒りに変わり、精霊達に二度と人間の前に姿を現さないよう命令を出してから数千年経つと言われてる。
けれど、愛した人間と出会ったウェイヤグルン国の海だけはまだ加護を残している。
という話だったはず…

「出迎えか?」

ダグラスが外も見ずに何かを感じたらしい。

「ああ、本当ですね」
「あれって国王じゃない?」
「え!?」

国境沿いにウェイヤグルン国王がわざわざ出迎えに来ているらしい…

ご遠慮願いたい。



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