巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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召喚されたけど引きこもっててもいいですか?

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淀みが酷いウェイヤグルン国での滞在は5年もの月日を要した。

ブルームフィールド国とは違って外に遊びに出る事もたまにしていたので、目新しい事やこの世界の事をもっとよく知れた5年だった。けど、1番よく知れたのは旦那様達の事だと思う。

1人1人の時間が長くなりみんなの事を知って、知られる…そんな5年間だった。

そうやって心も体も丸裸にされるから飽きられないかちょっと心配だったけど、変わらず…むしろ増しているくらいの愛情を注がれて寂しいと思える事もなかった。それから夫の数は増えなかった、というよりそんなに増えても困る………

今はウェイヤグルン国を離れ、実はもうバーズリー国に足を踏み入れている。

途中で知ったんだけど、フィフィはバーズリー国の王子様だったらしい………

知らぬ間に2人も王子様を夫にしちゃって問題ないのか聞いてみた事があるけど、特に問題ないと言われた。

それならそれでいいんだけど、普通王子様って婚約者とか居ないのかなぁ?とか思ったりするけど、そういう事を言うと飽きたの?とか王子って肩書きが邪魔なら平民になりましょう。とか言われるので口に出すのをやめました。

フィフィの家?お城?は神殿と近いみたいなので、今回は神殿だけ巡る事となった。
それにバーズリー国の貴族と神殿は距離がとても近いみたいだから、むやみに出歩くと危険だとも言われたので、今回は神殿と野宿の旅だけになる。

ごめんね。と謝られたけど私は変わらずおうち大好き人間なので何も気にならない。

むしろ私が居るせいで行動を制限されているみんなに申し訳ないって言ったら……言ったら…………
………………うん、もう言わないでおこうと思う。

私が召喚されて7年、バーズリー国は待ちに待ったらしく馬車で神殿に向かっている途中、街の人達が出て来ては、馬車に向かって頭を下げてくるから怖くなってカーテンを閉めっぱなしにした。
そう思うとウェイヤグルン国は本当に静かにしてくれてたんだな、と今更ながらに配慮を感じたので国がある方に手を合わせて拝んでおいた。

「なにしてる?」
「うん、ちょっとありがたみを感じてたの」
「「「「?????」」」」
「この国ではフィフィアンがエスコート役になるから覚えておきなさい」
「あ、うん…フィフィお願いします」
「お願いされます!ずっとエスコートしたかったんだあ!嬉しい!」
「フィフィがエスコートする日もあるでしょ?」
「野宿とかはね?でも、みんなの前で僕の可愛い妻だよー!って出来るのがいいの!」
「そ、そっかぁ……」

フィフィが恥かかないように最近習ったお澄まし顔を頑張ろう……!
あ、それとネイサンは敬語が取れたんだよ、と言っても半々くらいだけど。

「ユイ様、御髪を整えておきましょう」
「うん、あ!リクのは私がやりたい!」
「お願いします」

柔らかな笑みを私にだけ浮かべるリクからはたくさんの愛を感じる。

「長くなったね」
「うん、そろそろ腰までになるかなぁ」
「綺麗だ」
「あ、ありがと…綺麗なのはみんながお手入れしてくれるからだよ」
「俺も、ユイが梳いてくれるから綺麗になってるよ?」
「エルは…エルもだけどみんなは最初からサラサラ艶々だもん」

みんな常識が違う私に合わせてくれるようになったのか、色々させてくれるようになったんだ。と言っても身支度くらいだけど…

野宿飯はダグラスが得意だから教えてもらってるけど、ちょっとずつ上達してきた気もしなくはない……

みんな変わらず美味しいしか言わないから分からないけど…………

ちなみに私は髪の毛の長さにこだわりはないんだけど、邪魔だからそろそろ切りたいって言うと、みんな顔面蒼白になるから今は前髪だけ揃えてもらってる。

それとみんなの足首にはミサンガもどきが巻き付けてある、ウェイヤグルン国王と屋台を歩いた時に見つけた糸が、ミサンガにちょうどいいサイズだったから。

内緒でみんなに作ってたんだけど、2個目を製作中に国王からまた贈り物が届いて見てみると、その店にあった黒い糸だった。

『いらぬ世話かもしれぬが、夫への贈り物ならば聖女の色も合わせた方がいい』

という文と共に届いた贈り物にみんなから質問攻めに合い、内緒の贈り物にはなれなかったけど、みんなも私の色を入れて欲しいと言われたので、ありがたく使う事にした。
最初は腕につけようとしていたのを断固拒否して、せめてアンクレットにして欲しい……という私の言葉を渋々受け入れてくれた。
拙い私のミサンガもどきを見えるところにつけられたら申し訳なさで死ぬ。

「着きましたよ」
「うん………分かる………」

神殿に近くなったところで外の騒がしい声に嫌でも気付く。

ツアー中のアイドルってこんな感じなのかな………

「聖女様、お手を」

キラキラした顔で言うフィフィに手を重ねる。

ため息をぐっと堪えて馬車から降りると周りからの声が何倍にも膨れ上がる。
聖女様!聖女様!という声にビビりながら手を振ると、割れんばかりの歓声が沸き上がり、ああ、もうすみませんって気持ちになりながらフィフィに誘導されて歩く。

「フィフィアン様!」

なんて声も聞こえるから失礼だけど驚いてしまった。

フィフィも手を振ると歓声が上がるのを見て、バーズリー国にとってフィフィが大切な存在なんだって気付く。

階段を登り切っても、神殿内に入っても、続く大きな声に忘れていた聖女の偉大さを感じた。

その後も一緒だと思ってた、今まで通りみんなで仲良く楽しく過ごせると思ってたけど、そんな風に暮らせなかった。その時貴族の厄介さが身に染みた………そして女の怖さも体感した。


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