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大精霊様はツンデレでした
2-4
しおりを挟む気絶した後、勝手に体を調べてしまったというネイサンは私のお願いに従って4人を夫にし、数日かけて体がよくなるまで抱いてくれた。
その時の私はとても複雑な心境だったな。
触り方が違う、見つめる目が違う、何もかもが違うと違和感を感じずにはいられなかった。
それでも私を抱いてくれているのは間違いなく愛している旦那様なのだと、何度も何度も言い聞かせたけど…体を繋げると私の動揺も伝わってしまうのか心配させてしまった。
『聖女様、お辛いですか?』
『大丈夫、だよ、大丈夫、私の名前はユイ、みんな私の事はユイって呼んでくれると嬉しいな』
誤魔化せた自信はない。
でも、そんな私に追及してくる旦那様も今は居ない。
まるで他人に抱かれているような感覚が襲ってきてしまったけど、それは今の私を見てくれているみんなに失礼だと思ってなるべく今を見ようと心掛けた。
大丈夫だよ。
私は大丈夫。
そんな数日を経て体が動くようになった頃に今一度話をしたいとネイサンに言われた。
「お体は大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ!みんなのお陰!ありがとう、それと迷惑かけちゃってごめんね」
「いいえ、迷惑などかけられておりません。浄化も進んでおり皆喜んでおります」
「そっか」
「お体は体質なのですか?」
「うん」
「それは……」
ネイサンは私の体を調べたって言ってた。
起きるまできっと体についても召喚についても調べたんだろう。
疑っているのだ、本当は召喚によって体が変化したんじゃないかって。
でも絶対に言わない。
もし、死ぬのが失敗してもネイサンが幸せな気持ちのまま死んで欲しいから。
「何故私達の名前を知っていたのですか?」
「多分寝てる間に聞いてたんだと思うよ」
「そう、ですか」
「うん!それで浄化の」
「私に笑っていてと、愛しているとおっしゃったのは」
「あれはつい!凄く眉間に皺が寄ってたのと旦那様になって欲しいなって気持ちが暴走しただけ!ごめんね?」
「いえ、謝る事などなさらないで下さい……」
「浄化!浄化について話す?」
「………ええ、浄化については……」
前回と同じだった。
魔力をくれなかった3国全ての浄化をせず神殿がある場所だけ浄化すると。
私は頷いた。
そうした方がいいのを私は知っているから。
でも、エルとダグラスの実家は浄化したいと言ったら了承を得たので安心した。
前回と違う動きをする予定の私にきっとネイサン達も違う動きをする。
だからまずはこの願いが通って安心した。
そしてこれから私はまたお願いをする。
「リックウェルについてお聞きしたい事がございます」
「うん?なにかな」
「何故リックウェルを知っているのですか?」
「あ…そ、それは…」
だって私の旦那様だったから…
お慕いしておりますって私に愛を伝えてくれる人。
「夢で、見たの」
「夢?」
「うんうん、夢でね?水の属性はこの人です!って、あ!もしかしたら神様が見せてくれたのかも!」
「そう、ですか」
「うん!そんな事より私図書室に行きたいの」
「本が読みたいのですか?それでしたらお持ち致しますのでどのような本がいいか伺ってもよろしいですか?」
「自分で選びたいの」
今まで見た事のない本が欲しい、なんて言っても分からないから。
「駄目、かな?」
「いえ、聖女様が行けない場所などございません」
「ありがとう、ね、私の事ユイって呼んで欲しいな」
「ユイ様」
「様もいらないの、ユイってみんなには呼んで欲しいな!」
「……あなたは……いえ、ではこれからユイと呼ばせて頂きますね」
「ありがとうネイサン!」
「神官達への顔見せがございますので、その後でもよろしいでしょうか」
「うん!」
「私は準備がありますので、エマニュエルとフィフィアンを呼んで来ます」
「ありがとう」
「いえ……」
困惑した顔のまま出て行くネイサンと入れ違いにフィフィとエルが来てくれた。
今のフィフィが何を思っているか分からないけど、エルとダグラスは最初の頃と変わらない態度を見せてくれるから安心した。
私は愛しているけど、みんながまた愛してくれるとは限らない。
だからまたみんなに愛してもらえるように精一杯頑張りたい、自分自身の為に。
「エル!フィフィ!」
ソファからお出迎えをする。
「わ!ユイ」
「んへへー」
「転んだりしたら危ないよ」
「大丈夫、どんなに遠くてもどんなに隔たれた場所でもダグラスが私を支えてくれるもん!」
「俺も支えるからね」
「ありがとう!」
「ユイ着替えよう!ユイの為に作った神官服だよ!気に入ってくれると嬉しいな!」
「楽しみ!」
フィフィとエルが着替えさせてくれるけど、これくらい自分で出来るからとささっと支度した。
「わ!可愛い!私ターコイズブルーが大好きなんだよ!とっても気に入ったありがとう!」
「どういたしまして」
「気に入ったなら良かった!ユイが可愛いからとっても似合ってるよ!」
「…うん、ありがとう」
エルが髪の毛を整えてくれる、とっても気持ち良くて私はこの時間が大好き。
「エル大好き」
「ふふ、俺も好きだよ。本当にユイは面白いね」
「面白いの?」
「うん、ユイがこんなに可愛いって知られたらみんなきっとメロメロになっちゃうね」
「そっかぁ、聖女って凄いねぇ」
「僕も!僕も大好きだよ!」
「…私もフィフィが大好きだよ」
「ユイ、準備出来たか?」
「ダグラス!」
エルの膝の上から降りてダグラスの元に向かう。
ぽすっと腕の中に入ればここが一番安全だと伝えてくれる大きな体。
「ね、神官服似合うかな?」
「………っ綺麗だ」
「良かったぁ」
「っっ、だ、だが転んだらどうする、俺が行くまで待っていればいい」
「大丈夫、ダグラスはどんなところに居たって私を守ってくれるんでしょう?」
「ああ」
「うん、だから大丈夫!大好きダグラス!」
「あ、お、俺もだ」
「んふふ」
「時間だから行くよ」
「あ、うん」
エルに促されて部屋を出る。
久しぶりの神殿はやっぱり慣れない。
頭を下げる人達も、私を一目見ようとしてここに居る人達も。
でも、3人が私を囲うようにして守ってくれてるから、いつもみたいにみんなの後頭部を眺めるようにしてる。
顔見せの場所に行き壇上に立っているネイサンの傍に立つ。
やっぱり大袈裟に私の事を崇めるような事を言う。
前回は余裕がなかったからいっぱいいっぱいだったけど、ネイサンの晴れ舞台を見てる気分になってきたから存分にネイサンの姿を堪能した。
みんなの前で堂々と宣言してる姿は上に立つ者として相応しい風格がある。
うん、とっても格好いい。
私は連れ出されるまでネイサンの姿を堪能した。
「んふふー」
「ご機嫌ですね」
「ネイサンがすっごくすっごく恰好良かった!」
「っ、な、何を言い出すのですか!」
「ええー、だって本当の事だもん、キリリっとしてたから惚れ直しちゃった」
「っっ」
図書室までの移動中そんな事を話してた。
のろけを聞いてくれる人は居ないからね!本人に言わなきゃね!
「こちらです」
神殿には図書室がある、同じような本が神殿中にはあるけど、そこにしかない本も存在する。
私達は浄化が終わってだいぶ経った頃に探し始めた。
だから全ての本を手に入れられたかというとそうでもない。
神殿から送ってもらう事にしたけど、やっぱり自分の足で見つけた方が効率的だけれど、みんな私から離れられなかったから神殿に赴く事は出来なかった。
でも、今回は違う。
「どのような本をお探しですか?」
「ん…まずは自分で見てみたいから」
「…かしこまりました」
本を1つ1つ確認していく。
魔法に関する本、陣に関する本、精霊について書かれてる本、そして魔王の事も…
魔王はおとぎ話で存在しない。
だけど最後の方でネイサンは魔王について調べていた。
そしてリクは精霊について。
魔王について乗っている記述は全ておとぎ話、空想のモノ。
そういうものにでも縋っていないと駄目だったんだろう。
大丈夫、私が引き継ぐ。
みんなより頭はよくないし、私よりずっとこの世界に詳しいみんなの方が先を行っていた。
けど、今は私の方が先を行っている。
大丈夫、最期が幸福で溢れていれば問題ない。
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