巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

文字の大きさ
60 / 247
大精霊様はツンデレでした

2-10

しおりを挟む

“リックウェルばっかりずるい”と何故かエルの方が長く一緒に居るのに、そう言われたのでいちゃいちゃしてました。

跡が凄いってそういう事か…

確かに凄いけど、エルもまぁまぁ凄いんだからね!?
今してる以上の事これから先するからね!?
私はまだ遠慮してる事知ってるからね!?

「ユイ!」
「んひゃい!」
「起きたか?」
「お、起きてます」

ダグラスが寝室の扉を壊す勢いで入って来た。
後ろにはフィフィとネイサンも居る。

「お帰りなさい!お仕事終わったの?」
「終わってはおりませんが、とりあえず話を聞こうと1度戻っただけですが…楽しそうですね」
「ひっ!」
「なに殺気出してるの?ユイは俺とくっつきたいから2人仲良くしてただけだよ?ね?」

その言葉に返事をするとあとが大変になる事を知って…

「ね?」
「あい…」
「僕もユイとくっつきたい!」
「ズルいぞ」
「ユイは俺が好きだもんねー?」
「エル意地悪な顔してる…そんな顔も好きだけど」
「ふふ、ちゅ」
「ん、じゃなくて!私も好きだよ!でもみんな好きなんだから!」
「「「ユイ」」」

あ、まずそう。

「話!話あるって言ってる!ネイサンが!聞きます!なんでしょう!」
「……そうですね、紅茶を淹れますからこちらへ」
「はい!」

みんなソファに集まってお茶をする。

リクは今居ないけど、幸せな空間だ。

リクの事、渡された文言について先にエルに話してたからお任せしてエルが伝えてくれる。

その間に私も口を挟んだり、リクと仲良くして欲しい事も伝えた。

みんな納得してくれた、と思う…思ってないかも。

「ん、1人ずつ聞くね…ダグラスはどうしたの?何が疑問?」
「俺は平民だ」
「私も平民だけどね」
「っ、だが、この国では……!」

平民だというだけで後ろ指さされてたもんね。
守護神官になれば尚更そんな環境に置かれてしまう。
ダグラスが馬鹿正直にお金の為と宣言してるからっていうのもある…そんなダグラスが私は好きなんだけどね。

「この国でのダグラスは…この世界でのダグラスは私の…聖女の夫だよ」
「そうだが…」
「何が悪いの?私だって平民だったのに聖女って名前を使って自由にしてる」
「ユイは当然だ!浄化をし異なる世界からやって来たのにも関わらず過酷な旅を強いられているんだ」
「その過酷な旅を私はダグラスに強いているけど?」
「そっ!」
「“浄化をする旅は過酷で休まる時も与えてあげられない”」
「っそうだ!」
「そうなの?」
「は?」
「ダグラスだって同じじゃん」
「俺はそんな事思わない!」
「私だって思わないよ!!!」
「ユ、ユイ?」

「馬鹿じゃん!ほんっと馬鹿!なんでそんな風に思うのよ!私は大好きな旦那様達とのんびり旅してる時が一番心穏やかだよ!神殿に居る時はみんな忙しそうにしてるけど、旅は一緒に居られる時間が長いから私は大好きだよ!」

「ユ、ユイ、すま」
「過酷ってなによ!?ふかふかな馬車の椅子だかソファに乗って眠くなれば眠って、夜はみんなに私の手料理を食べてもらえて嬉しそうな顔してるのを見るのが大好きなの!私の気持ちをいつまでも勘違いしないで!私は!私はみんなと居られる快適な旅が大好きなんだ!!!」
「「「「………」」」」

はぁはぁと荒い息を整えながら思う。

やっちまったって。

前回だってこんなに怒鳴った事なんてなかったのに…

ああ、駄目だ。

いつまでたっても私を別方向で心配し出すのにも、ダグラスが平民だからと自分の強さを分かっていないのもムカついて仕方がない!

あ、いや、みんなに前回ウェイヤグルン国王を夫にするのかって聞かれて怒鳴ったわ。

うん、喉元過ぎれば熱さをなんとやらだ…

「ご、ごめんなさい…言いすぎました…で、でも、ダグラスはとっても強くて私をいつだって守る為に一生懸命なのを知ってるから…卑下する言い方にちょっと腹立っただけで…ご、ごめんなさい」
「ユイ!!!」
「うひゃい!」

そうだった、俊敏にもなれるんだったダグラスは…

いつの間にか私の膝元に居るダグラスを見て思い出す。

「すまなかった!俺は、俺は言われた事を気にしすぎていた…そんな事ないと言ってくれたユイの言葉は無視して周りの言葉を受け止めてしまった………だが!!!」
「うひゃい!」
「旅が楽しいと、大好きだといつも言っているユイの言葉を思い出したんだ…表情だって本当に楽しそうにしているユイに勝手に負い目を感じて過酷な旅だと言い続けてしまった…」
「ダグラス…」
ってそんなに一気に喋れたんだ……

「すまない、今度からはユイの言葉だけを信じる」
「い、いや、それも時とば」
「ユイ」
「あい…」
「気付かせてくれてありがとう、気付かなくてすまなかった」
「あ、ううん、いいの…私は幸せだってちゃんと分かってくれたんだよね?」
「ああ」
「ん、ならいいの」

尻尾があればブンブンと振っていただろう。
そんな上機嫌なダグラスの膝の上に乗せられてお菓子を食べて…
あれ?エルの膝の上に居なかったっけ?

「僕も分かってなかったかも…女の子には大変だって、窮屈な思いさせてるって思い込んでた」
「あ、うん」
「ごめんね?ユイは違うんだよね、ごめんなさい」
「ん-…ちょっと違う、かも?」
「え?」
「私が違うんじゃなくって私はそうなだけだよ」
「どういう意味?」
「女が全員そう思うって思ってるならまだフィフィはそう思い込んでるよ」
「で、でも、女の子はみんな幸せにならなくちゃ駄目なんだよ?」
「だからだよ」
「へ?」
「幸せにっていう定義をフィフィが決めていい事じゃない」
「っ」
「女は馬車の旅なんて過酷だ…女は夫が居なければならない…そんな事を押し付けて、幸せを押し付けてるのは男…だけじゃなくてこの世界の常識がそうやって押し付けて女を閉じ込めてるよ」
「そ、そんな事…」
「ないって思うなら証明してみせて」
「っ」
「大丈夫、私はおじいちゃんになっても傍に居るから」
「え?」
「証明するのはずっともっと、後でもいいんだって事!ふふ、それこそ70歳までだって待てるんだから…だからね?ゆっくり考えてみて欲しいな?」
「わ、分かった」
「ありがとう、フィフィは偉いね」
「え?」
「常識って中々変えられないんだよ、なのにそれを考えてくれるのは凄く嬉しいし偉いね、フィフィは頑張り屋さんだね」
「っっ」

ちょっと言い過ぎたかもって思ってます、はい
早すぎたよねぇ……
せめて何年か経たないとって思ってたのに…ちょっと暴走しました。

誰か私を叱って下さい…

「ユイ」
「叱ってくれるの!?」
「は?…ふふ、叱る要素などありませんよ」

ないのか…いや、あるだろう…生意気にも程がある。

「聖女としてのお言葉は理解しました、正直私達も聖女の夫という事で色々な所から言われる事もありましたので助かります。勝手に召喚し守ると言いながらユイに守ってもらってばかりでとても情けない…」
「そんな事」
「ない、と言ってくれるのでしょう?ふふ、その心はとても清らかで愛らしい…ですが、私達にも守らせてくれませんか?ユイが何を抱え何を考えているのか時々分からなくなる時があります」
「………」
「疑問もあります…それを伝えてくれる時を私達は待ちます」
「そ、それは…!」

伝えたらまた…

「大丈夫です」
「んえ?」
「私だって70歳になるまでだって待てますから、だから大丈夫」
「っ、あ……っっ」

まだ何も分かってない。
解決策は見つかってない。
だけど絶対に見つけるから…
だからその時になったら必ず…!

「言うっ、ね?私がっ、絶対っ……!」

絶対に幸せにするんだから!

「はい、いつまでもお傍で待っていますよ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...