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大精霊様はツンデレでした
2-10
しおりを挟む“リックウェルばっかりずるい”と何故かエルの方が長く一緒に居るのに、そう言われたのでいちゃいちゃしてました。
跡が凄いってそういう事か…
確かに凄いけど、エルもまぁまぁ凄いんだからね!?
今してる以上の事これから先するからね!?
私はまだ遠慮してる事知ってるからね!?
「ユイ!」
「んひゃい!」
「起きたか?」
「お、起きてます」
ダグラスが寝室の扉を壊す勢いで入って来た。
後ろにはフィフィとネイサンも居る。
「お帰りなさい!お仕事終わったの?」
「終わってはおりませんが、とりあえず話を聞こうと1度戻っただけですが…楽しそうですね」
「ひっ!」
「なに殺気出してるの?ユイは俺とくっつきたいから2人仲良くしてただけだよ?ね?」
その言葉に返事をするとあとが大変になる事を知って…
「ね?」
「あい…」
「僕もユイとくっつきたい!」
「ズルいぞ」
「ユイは俺が好きだもんねー?」
「エル意地悪な顔してる…そんな顔も好きだけど」
「ふふ、ちゅ」
「ん、じゃなくて!私も好きだよ!でもみんな好きなんだから!」
「「「ユイ」」」
あ、まずそう。
「話!話あるって言ってる!ネイサンが!聞きます!なんでしょう!」
「……そうですね、紅茶を淹れますからこちらへ」
「はい!」
みんなソファに集まってお茶をする。
リクは今居ないけど、幸せな空間だ。
リクの事、渡された文言について先にエルに話してたからお任せしてエルが伝えてくれる。
その間に私も口を挟んだり、リクと仲良くして欲しい事も伝えた。
みんな納得してくれた、と思う…思ってないかも。
「ん、1人ずつ聞くね…ダグラスはどうしたの?何が疑問?」
「俺は平民だ」
「私も平民だけどね」
「っ、だが、この国では……!」
平民だというだけで後ろ指さされてたもんね。
守護神官になれば尚更そんな環境に置かれてしまう。
ダグラスが馬鹿正直にお金の為と宣言してるからっていうのもある…そんなダグラスが私は好きなんだけどね。
「この国でのダグラスは…この世界でのダグラスは私の…聖女の夫だよ」
「そうだが…」
「何が悪いの?私だって平民だったのに聖女って名前を使って自由にしてる」
「ユイは当然だ!浄化をし異なる世界からやって来たのにも関わらず過酷な旅を強いられているんだ」
「その過酷な旅を私はダグラスに強いているけど?」
「そっ!」
「“浄化をする旅は過酷で休まる時も与えてあげられない”」
「っそうだ!」
「そうなの?」
「は?」
「ダグラスだって同じじゃん」
「俺はそんな事思わない!」
「私だって思わないよ!!!」
「ユ、ユイ?」
「馬鹿じゃん!ほんっと馬鹿!なんでそんな風に思うのよ!私は大好きな旦那様達とのんびり旅してる時が一番心穏やかだよ!神殿に居る時はみんな忙しそうにしてるけど、旅は一緒に居られる時間が長いから私は大好きだよ!」
「ユ、ユイ、すま」
「過酷ってなによ!?ふかふかな馬車の椅子だかソファに乗って眠くなれば眠って、夜はみんなに私の手料理を食べてもらえて嬉しそうな顔してるのを見るのが大好きなの!私の気持ちをいつまでも勘違いしないで!私は!私はみんなと居られる快適な旅が大好きなんだ!!!」
「「「「………」」」」
はぁはぁと荒い息を整えながら思う。
やっちまったって。
前回だってこんなに怒鳴った事なんてなかったのに…
ああ、駄目だ。
いつまでたっても私を別方向で心配し出すのにも、ダグラスが平民だからと自分の強さを分かっていないのもムカついて仕方がない!
あ、いや、みんなに前回ウェイヤグルン国王を夫にするのかって聞かれて怒鳴ったわ。
うん、喉元過ぎれば熱さをなんとやらだ…
「ご、ごめんなさい…言いすぎました…で、でも、ダグラスはとっても強くて私をいつだって守る為に一生懸命なのを知ってるから…卑下する言い方にちょっと腹立っただけで…ご、ごめんなさい」
「ユイ!!!」
「うひゃい!」
そうだった、俊敏にもなれるんだったダグラスは…
いつの間にか私の膝元に居るダグラスを見て思い出す。
「すまなかった!俺は、俺は言われた事を気にしすぎていた…そんな事ないと言ってくれたユイの言葉は無視して周りの言葉を受け止めてしまった………だが!!!」
「うひゃい!」
「旅が楽しいと、大好きだといつも言っているユイの言葉を思い出したんだ…表情だって本当に楽しそうにしているユイに勝手に負い目を感じて過酷な旅だと言い続けてしまった…」
「ダグラス…」
ってそんなに一気に喋れたんだ……
「すまない、今度からはユイの言葉だけを信じる」
「い、いや、それも時とば」
「ユイ」
「あい…」
「気付かせてくれてありがとう、気付かなくてすまなかった」
「あ、ううん、いいの…私は幸せだってちゃんと分かってくれたんだよね?」
「ああ」
「ん、ならいいの」
尻尾があればブンブンと振っていただろう。
そんな上機嫌なダグラスの膝の上に乗せられてお菓子を食べて…
あれ?エルの膝の上に居なかったっけ?
「僕も分かってなかったかも…女の子には大変だって、窮屈な思いさせてるって思い込んでた」
「あ、うん」
「ごめんね?ユイは違うんだよね、ごめんなさい」
「ん-…ちょっと違う、かも?」
「え?」
「私が違うんじゃなくって私はそうなだけだよ」
「どういう意味?」
「女が全員そう思うって思ってるならまだフィフィはそう思い込んでるよ」
「で、でも、女の子はみんな幸せにならなくちゃ駄目なんだよ?」
「だからだよ」
「へ?」
「幸せにっていう定義をフィフィが決めていい事じゃない」
「っ」
「女は馬車の旅なんて過酷だ…女は夫が居なければならない…そんな事を押し付けて、幸せを押し付けてるのは男…だけじゃなくてこの世界の常識がそうやって押し付けて女を閉じ込めてるよ」
「そ、そんな事…」
「ないって思うなら証明してみせて」
「っ」
「大丈夫、私はおじいちゃんになっても傍に居るから」
「え?」
「証明するのはずっともっと、後でもいいんだって事!ふふ、それこそ70歳までだって待てるんだから…だからね?ゆっくり考えてみて欲しいな?」
「わ、分かった」
「ありがとう、フィフィは偉いね」
「え?」
「常識って中々変えられないんだよ、なのにそれを考えてくれるのは凄く嬉しいし偉いね、フィフィは頑張り屋さんだね」
「っっ」
ちょっと言い過ぎたかもって思ってます、はい
早すぎたよねぇ……
せめて何年か経たないとって思ってたのに…ちょっと暴走しました。
誰か私を叱って下さい…
「ユイ」
「叱ってくれるの!?」
「は?…ふふ、叱る要素などありませんよ」
ないのか…いや、あるだろう…生意気にも程がある。
「聖女としてのお言葉は理解しました、正直私達も聖女の夫という事で色々な所から言われる事もありましたので助かります。勝手に召喚し守ると言いながらユイに守ってもらってばかりでとても情けない…」
「そんな事」
「ない、と言ってくれるのでしょう?ふふ、その心はとても清らかで愛らしい…ですが、私達にも守らせてくれませんか?ユイが何を抱え何を考えているのか時々分からなくなる時があります」
「………」
「疑問もあります…それを伝えてくれる時を私達は待ちます」
「そ、それは…!」
伝えたらまた…
「大丈夫です」
「んえ?」
「私だって70歳になるまでだって待てますから、だから大丈夫」
「っ、あ……っっ」
まだ何も分かってない。
解決策は見つかってない。
だけど絶対に見つけるから…
だからその時になったら必ず…!
「言うっ、ね?私がっ、絶対っ……!」
絶対に幸せにするんだから!
「はい、いつまでもお傍で待っていますよ」
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