巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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大精霊様はツンデレでした

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「寝室に行きましょう」
「うん…」

寝室に着いて行く私の頭の中はこれからの接し方を変えなきゃいけない事しか考えてなかった。

「ユイ様、先に話を」
「あ、うん…そうだよね、ごめん」
「いいえ、精霊について話が終わった後一緒に考えましょう」
「ん、ありがと、リク」
「何か分かったのですか?」
「うん、あのね居場所が分かったかもしれない」
「それは…私も気付きましたが、過去に行った事がある者も居るようです」
「うん、でもそれって場所が変わってるんじゃないかなぁって」
「変わる?移動しているという事ですか?」
「ううん、波で変わってると思うんだけど…」
「波…その発想はありませんでした」
「だよね」

神殿にある本だけでもかなりの数の精霊に関する本がある。

みんなが知っているような話からマニアックな話から神官が考えた話まで…

精霊が海で人間の女と出会って恋をした。

そこから所説あるけど、まず第一に人間と海で出会う事はない。
ここからは本の中の話と私の憶測が混じってしまうけど…

潜ってたり泳いでいたりする事もあるだろうけど、この世界の常識は歴史書を読む限り千年は変わっていないと思う。
そうすると、女が海で泳ぐのかって疑問が出てくる。
海に入り何かをしたとしてもそれは“お願い”された男の役目なんじゃないかって。
もし海に入る事を選択しても男が側に必ず着いていると思う。
そしてもし海から出て来た女が男を連れてたら流石に驚いて守ろうとすると思うんだよね。
だから前提がおかしいのだ。
女が精霊と出会う…そこに他の人間は居なかったのか。
そこについては正直分かってない。
みんな女と精霊についての記述しかしていなくて他の事柄に重きを置いていないから。

だから出会ったのは人間達と精霊なんだと思う、そこで恋をしたのかは定かではないけど、何かがあったんだと思う。

だけど、肝心の出会った場所が分からない。

ある本には北、ある本には東、そしてここではないと書かれている本もある。

でも、全部の本を繋ぎ合わせて方向を見てみると…

「私が国王と行った海がそうなんだと思う」
「そうですね、私も全ての本から書かれている“女の向いている方向”と“精霊が佇んだ向こう側の国”を全て照らし合わせると市場のある海かと…波は移動するものなのですか?」
「ん、とね」

私も詳しい訳じゃない。

だけど海には波があって引き潮やら満潮やらがあるし、嵐が吹いたりして波が大きく荒れる時もある。

けど、この世界の人達は知らない。
みんなかはどうか分からないけど、今を生きている人達はあまり海に馴染みがない、

まず第一に海がない。

水は魔法によって生み出されている国が多い。

限りはあるけれど…

淀みによって砂が降り積もり少しずつ水辺がなくなっていったと書かれている。
そして海があるウェイヤグルン国は加護があるから海に入らないし調べようとも思わない。
それをする事自体が罪だと思われている。

だから波が分からない。
海が荒れ狂えば精霊の怒り、凪いていれば恋焦がれた女に悲しんでいると…

「だからね?海ってそういうモノなんだよ、私からしたら」
「なるほど…大地がひび割れると同じくらい自然な現象だと…」
「そう!」
「であれば、居場所はますます分からないのでは?」
「そうなんだけどさ、絶対に海に居るって書いてあるじゃん?」
「ええ」
「だから海の中に居る可能性って高くない?」
「それはそ……ユイ様」
「えへへ」
「………バレたら大変な事になりますよ」
「バレないように神殿で固めちゃう?セイジョサマーって凄いんでしょ?」
「出来なくはありませんが…どこかで話が漏れる可能性があります」
「うん…でもね?やってみなければ分からないでしょ?」
「はぁ…本当にお守りするのが大変な方だ」
「んふふ、じゃぁまずはどうやって海に潜るか考えよー!」

海に入る事をしないこの国できっと潜ってまで探す人なんか居ない。
それに、場所が固定されてると思ってればそこしか探さないかもしれない。

可能性にしか過ぎないけど…やってみる価値はある。

でも、その前にフィフィに会わなくちゃ。

「フィフィ、帰って来るかな」
「帰って来ますよ、私は潜る方法を考えておきますので」
「あ!陣はね、作れるよ」
「陣?」
「水中呼吸と体に水をまとわせて早く移動出来るようになる陣があればいいと思うんだけど…………こんな感じ!どうかな?」
「………ユイ様」
「うん?」
「私が思ったよりも勉強のしすぎです、数日休みましょう」
「え?で、でも」
「いいですね?」
「あい…」

休みを強制的に取らされた私は縫い物でもしようと思ったけどそれも何故か取り上げられた…

解せぬ。

紅茶とお菓子を置かれて読書中のリクの膝の上でぼーっとしてます。

ああでも、あの陣だと10分が限界かも…長い時間海に潜らなきゃいけないから陣を変えて…あ、でもいくつか陣を持っておけば…いや、それだと魔力の限界が…
「ユイ様」

「ん?」
「何を考えていらしたんですか?」
「………え?」
「なにを、考えていらしたんですか?」
「え、えーっと、ん、と、えへへ」
「休む事も大切ですよ」
「分かった!頑張って休んでみるね!」
「偉いですね」

休む事を偉いと言われる世界線はどこだ。

あ、異世界だった。

目を閉じてリクの体温にだけ集中する。
ぽかぽかあったかい。
大好きな人の体温。

心地いいなぁ………





うとうとしてそのまま眠ってしまった。

目が覚めたらフィフィが私の横で眠って……たら良かったんだけどピンクの可愛い瞳をパチパチさせながら私をじーっと見つめてた。

「お、おはよう?」
「おはよ」

何がしたいのか分からない…
怒ってるよね…うん、ちゃんと謝って内緒にする期限を決めよう。

「あのね、フィフィが嫌な気持ちになってるのに気付かなくてごめんなさい……内緒にされたら嫌だよね…私も反対の立場なら嫌だって思うもん……だからね?国王と約束したい事があってその日帰って来たらみんなに…出来ればネイサンには内緒にして欲しいんだけど…」
「どうしてネイサンには内緒にしたいの?」
「ネイサンが苦しくなるから」
「ユイは時々そうやって先を知ってる言い方をするよね」
「……そういう事も話すから…ウェイヤグルン国に入ってから3つ目の神殿で国王から贈り物が届くはずなの、そこから2人で会ってお願いしたい事があるから…その話が終わったらみんなにちゃんと話すから…だから…もう少しだけ…もう少しでいいから待っていて欲しい」
「………約束?」
「うん!やくそ………くぅ?」
「くすくす、なあに?くぅって」
「え、っと…」

おかしいな?


フィフィが腹黒フィフィになってる気がする…

いやいやまだ早い。

こんなに早く腹黒が全面に出てくるはずがない、まだまだ後なはず…

「ユイ?」
「はい!」
「僕、拗ねちゃってごめんね?でも寂しかったの……」
「あ、う、うん、ごめんね、寂しい思いさせてるの気がつかなくて」
「ううん、もういいの、約束してくれたから」
「ん………うん?」
「ん?どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
「そっか、もう少しでご飯だよ」
「あ、うん」

ううん?フィフィからなんだか腹黒オーラを感じるんだけど…気のせい、かな?
話してる内容も普通だったし…
うん、きっと拗ねちゃって態度がおかしかったんだ。
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