巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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魔王編

4-17

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あちこちに領地を任せている魔人が居るらしい。
爵位とかはないけど、魔王様らしく四天王が治めている街があるんだとナインとエイスに初めて叩き起こされて教えられた。

今日行く領地は海が大きく広がり海上を守っている屈強な者達が居る。
魔獣も多い魔国では討伐するのも領地を守る者としての重大な役目であり、血の気が多い魔人を抑え込む為の力も必要なのだとか。
その為四天王と呼ばれる1人に任せている。

四天王に選ばれる基準は強いか否か。
それだけだ。

ちなみにラグウダ様も四天王の1人らしい。

今から行く領地にはコンヴェラ様という方が治めているトレックス領という名前で私が食べている物もここから持ってきているのも多いみたいだ。
なぜか魔王様の居る場所より栄えていて街も整備されているし娯楽も多いところで賭け事も盛んだと聞く。
なんでもあるのがトレックス領という謳い文句があるくらいなんだとか。



「血気盛んな奴らが多い」
「………」

ちなみにこの台詞を吐くデズモンド様は10回目だ。
行く前に片す書類があるからと少しだけ待つように言われたいつもの席で何度も言われる。

「血気盛んな奴らが多い」
「………」

11回目記念です。

「海には行かないから心配するな」
「そうなんですか?」
「畑の方に行く」
「はい」

どうやら畑の視察に行くらしい。
デズモンド様の側を離れなきゃ大丈夫だと思うし、ナインもエイスも着いてきてくれるから私はそんなに心配してないんだ。

「血気盛んな奴らが多い」
「………」

早く書類が片付くのを待つばかりです。

「私に掴まっていろ」
「どこに…?」
「…」

魔王様の身長は177センチだとエイスから聞いた。
普通は腕に掴まればいいんだろうけど、掴まっていろと言われて腕を組むほど親しい気もしていない。

「どこでもいい」
「はい」

とりあえず魔王様らしくマントみたいなのを羽織ったので端を掴んでおく。

「「…」」

その降ろされてる腕に掴まる勇気もない。

「ふあ…」
「浮く」
「はい」

忘れられる時もあるけど何をするか言ってくれる時も増えた。

転移でどこまで来たのか知らないけど目の前に広がる緑に目が奪われる。
3メートルはありそうな緑の葉っぱが大量に茂ってるのを見ると魔法なしじゃ手入れも出来なさそうだ。

だって道がない。
どこまでも緑ばかりの畑は水も道もない、魔国ビックリだ。

後ろに着いているナインとエイスはくるくると回って暇そうにしてる。

「凄いですね」
「…」
「綺麗です、こんな風に綺麗な土地ばっかりなら私はあまり役に立てませんね」
「…」
「良かった」
「…」

淀みなんてない方がいい。
この世界にもこんなに緑豊かで空気が綺麗な場所があるんだな。

「魔王様」
「なぜ来た」
「案内に」
「必要ない」

コンヴェラ様だと思う、聞いていた特徴と同じだもん。
黒目に紫髪、顔色が悪いと思えるほどに真っ白な肌と聞いた時には海の近くに住んでるのに?と思ったけど確かに病的な白さだ。
綺麗なお姉さんにも見えるけど性別は男だと聞く。

「それが」
「はじめまして、ヒナノと言います。トレックス領にお邪魔しています」
「ふんっ!人間如きが」
「やめろ」
「…はっ」

悪意は久しぶりだなぁ。
でもここまで軽蔑するような目線もなかなかお目にかかれない。
魔人ってストレートな性格が多いのかな。
友達になれるといいなぁ…

「収穫は」
「じきに」
「色が変わる毎に持って来い」
「…魔王様が手を出されるのは珍しいですね、理由を伺っても?」
「戻れ」
「っ、この人間の為ですか!?」
「へ?」
「戻れと言っている」
「っっ失礼します!」

憎悪って感じ。
友達になるには時間がかかりそう。

「ふあっ!?」
「…」

畑を浮いてたのに今度は街中だ、一つ一つが大きい家に大きいお店。
カラフルだし地面も塗装されてとっても綺麗。

でも1番は大勢の魔人だ。
翼があったり角があったり体が異様に大きかったり爬虫類のような目の人もいる。
ここでもやっぱり黒は珍しいのか黒は見かけない。
それどころかお店にもどこにも黒がない。

浮くのが当たり前なのかぷかぷかと浮いている魔人も多い、私も浮かせてもらってるけど。

それでも頭を下げて魔王様を見ないようにしている姿で埋め尽くされてる。
中にはどこかへと逃げるように消えていく者も居た。


「魔王様あれなんですか?」

ひときわカラフルな外観のお店が可愛くて目を引いた。

お菓子の家みたい。

「…」

喋りかけちゃ駄目だったらしい。
大人しくしてよ。

「名で呼べ」
「………」

気になったのはそこらしい。

「デズモンド様あそこはなんですか?」
「…」
「あ、寄らなくても!時間は大丈夫ですか?」
「…」

どうやら大丈夫らしい。

お店の前に立つと中が見える。
パンとケーキが売ってるお店みたい。

「ナイン、エイス」
「「お任せ下さい」」
「え?」

上へと浮いていくデズモンド様はそこで止まった、掴んでいた手は宙ぶらりん。
ナインとエイスに背中を押されて中に入る。

「いら……」

しゃいませと言いたかったんだろうと思う。
私ってどんな立場だと思われてるんだろ?妃なのかな?

「どれがいい」
「選べ」
「ううん?」
「早くしろ」
「魔王様がお待ちだ」
「う、うん」

そういえば魔王様は近付くと気持ち悪くなるんだった。
行動を制限されないのは嬉しいけどこういう時くらい制限してくれてもいいのに…

「「遅い」」
「ごめん!」

お店の人に人気な物を包んでもらおう。

「あの、人気な物をいくつか買いたいです」
「………」

この反応は一体どっちなんだろう。

「早くしろ」
「魔王様をお待たせする気か」
「っ、申し訳ございません!」

手早くいくつか可愛い袋に包んでもらってお会計をナインがする。

「可愛い袋ですね、いきなり来てごめんなさい美味しく頂きます」
「………」

なんだろう、喋る人間が怖いっていうより弱いから喋りかけるのも死にそうに思われていそうだ。

「出る」
「う、うん」

パタパタと背中を押されてお店を出る。

「あ、持ちたい」
「変だな」
「変な行動は慎め」
「どこが変だった?」
「「…」」

ふわっと浮いて上で待ってる魔王様の横に並ぶ、私が服を掴んだら出発だ。

「見て下さい、可愛い袋です」
「…」
「お店の中もカラフルでした、可愛かったです!見せてくれてありがとうございます」
「…」
「お会計ありがとうございます」
「…」
「あとで一緒に食べましょうね」
「…」
「きっと美味しいです!」
「…」

ゆっくりと浮いているのは視察してるのかも。
せっかくだから町並みを堪能しておこうと私も下を見ておく。

動きが止まってる魔人たちもきっと普段は和気あいあいとしてるんだろうな。

「楽しいですね」
「…」

町外れのような一軒家に降り立ったデズモンド様は気にせず中に入っていく。

「見せろ」
「魔王様!こ、こちらです」

なんだろ?茶器かな?くすんだ緑が可愛い、デズモンド様って可愛いのが好きなのかな。

「いいか?」
「え?」
「…」

え?なにがいいの?色?注ぎ口?蓋?カップ?え?

「…」

意図を説明して欲しい…

「使用用途が分からないので使い勝手についてはなんとも言えませんが色味は好みです」
「これを」
「はいっ!」

どうしよう…視察って私の意見も反映されるの?いやいや、そんな事ないだろ。
ないからこそ意味が分からないです!
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