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魔王編
4-38
しおりを挟む「送れ」
「うん」
風のが転移してくれるらしい。
海のの手を握って大丈夫だよってする。
「大丈夫、なんとかなるよ」
海のの答えを聞く前に転移した場所は寝室で荒い息を出してるのはアルナブなんだろうけど、周りに居た人達は最悪な事を口にする。
「「「「「“ユイ!”」」」」」
なんで?
なんで?ユイって名乗ってない…
5回目にユイなんて一言も使わなかった…
なんでネイサンもダグラスもエルもフィフィも居るの?
どうして国王はデズモンド様を睨んでるの?なんでこんな事になってるの?なにが、誰がなんの為に…
「ユイこちらへ来い」
ダグラスがデズモンド様を警戒して昔のように守ろうとする。
「ユイもう大丈夫ですよ」
ネイサンが“安全”な場所に来いって言う。
「ユイなにか施された?」
エルが私の心配をする。
「ユイ帰ろう?」
フィフィが帰ろうって言う。
「来い」
国王が私を信頼してる目で命令する。
訳分かんない…
分かんないけど…
「アルナブを殺すんですか?」
「こちらに来たら解毒する、問題ない」
海のの心配が手から伝わる。
「海のどうして風のが解毒出来なかったの?」
「ユイいいから」
「長い期間毒を飲み続けておる…蝕まれすぎてどうする事も出来んのじゃ」
「ユイ!」
ダグラスもネイサンも私に声をかける、ユイと呼ぶ意味はきっと…
「なんて呼んだらいいですか」
「名で呼べ」
ここで名前を呼んでもいいか分からなかったから聞いてみたけどいつもの返答が返ってきたからなんだか笑える。
「デズモンド様なら解毒出来ますか?」
「出来る」
「対価は払えますか?」
「決別しろ」
「…デズモンド様がなにかしたんですか?」
「…」
「ふえっ、ん、したん、ですね?」
「お前の記憶を渡した」
「全部?」
「それぞれに関する事だけだ」
「意地悪です」
デズモンド様が記憶を覗いたのはてっきり日本に居た時だけだと思ってた、だって風のも海のも断片的にしか分からなかったんだもん、そう思い込んでた。
「どこから見たんですか」
「1回目だ」
全部じゃん。
でもそれならどうしてここに…
「い゙っっ!?」
「「「「「ユイ!」」」」」
首輪を引っ張られてつま先立ちにされる。
「その名を呼ぶなよ」
「けほっ」
「忌々しい」
「な、んで」
「あれへの思いが強い」
「ころして、な」
「ない、あれには記憶も渡さない」
良かった。
「ひぐっ!」
「私を見ろと言ったはずだ」
「ごめ、なさ」
みんなが私を“助けよう”としてる。
だけどデズモンド様の前では近付く事も出来ないんだろうって思う。
だって一歩も動いてない。
みんなは全部見たんだ。
全部知ってるんだ。
それで取り戻しに来てくれたの?
海のまで利用して?
国王も随分馬鹿になった。
「デズモ、ンドさ、ま」
「…」
「そばに、いる、っていった、よ」
「…」
「だいじょーぶ、こわくな、いよ」
「…」
「みんながあぶな、いから、いってるん、じゃない、よ」
「…」
「なにがあって、も、もどら、ない」
「…」
「だけど、じょーかの、たびは、したい、です、いまでも、あいしてる、から」
「…」
「ごめんな、さい、でも、どこにも、いきま、せん」
「知られているのは分かってるが、お前の名をここで呼びたくない」
「はい」
「好きにしろ」
「げほっ!げほっ!ありがと、ございます」
首輪から鎖が消えた。
海のが支えてくれたから転ばなかった、えへへ
「んっ、海のごめんね私のせいで迷惑かけちゃったね」
「謝るでない!」
「デズモンド様解毒お願い出来ますか?」
「分かった」
「近寄るな!」
「国王!」
デズモンド様が解毒してくれたと思う。
動いてないから分からないけどしてくれた。
「ふざけないで下さい、海のを利用してまで得る者ではないでしょう!?」
「焦がれた相手だ!」
「ふざけんなよ!」
初めて国王に怒鳴ったかも、強くなりました。
「海のはずっと守ってきた!それを分からない馬鹿じゃないだろう!?この国が存続しているのは海のの力があるからだ!王として決断したのがこれなら今すぐやめちまえ!」
「…幻滅させたな」
アルナブもどうして止めないの…
海のは守ってきたんだよ、ずっとずっと守り続けてるんだよ…なんで傷つけるの…だから人間はって言われちゃうんだよ…
「ユイやり方は」
「やめて」
「ユイ?」
「やめてってば!」
4人が私を未だに取り戻そうとする。
「愛してるよ!愛してる、今までも今もこれからも愛してるよ!」
「ユイ…」
「だけどやっていい事と悪い事があるでしょう!?」
「ユイ…ごめ」
「誰を殺しても国を滅ぼしてもいいよ!だけど海のの事悲しませてまで私を取り戻そうなんてしないでよ!」
「じゃぁどうすればいい!」
「歩いてくればいいだろ!」
なんで傷つける事しか出来ないんだよ。
私だっていい奴じゃない、誰が死んだって構わないよ、でも傷つけられたくない人だっている。みんなも大切だけど海のだって大切で愛してるんだよ。
これが私の為だっていうならみんなは最悪な事をした。私が嫌がる事なんて見たんなら知ってるだろ。
「最期まで歩き続けろよ!こんな最悪な再会をするんじゃなくて普通に会いに来ればいいだろ!自分の力でなにも出来ねぇ奴らが口ばっか達者になって悪知恵働かせるんじゃねぇ!」
私はみんなを愛してる。
だからこそ愛する人が愛する人を傷付けるのは嫌だよ。
そんな人間にならないでよ。
私の愛した人でいてよ、お願いだから…
「愛してるよ、愛してるけど次アルナブを殺そうとしてみろよ!私がみんなを殺す!」
「「「「「っ」」」」」
「間に合わなくても子孫を探し出して殺してやる!海のを私欲で傷つけるな!私の大切な友達だ!みんなが居なくなっても傍に居てくれた大切な友達を悲しませるな!」
ふざけんな。
なんでこうなるんだよ…
幸せだって笑ってくれたじゃん…
なんでそんな事するんだよ…
確かにデズモンド様が記憶を渡したからだけど、そこからの行動はみんなの意思でしょ。
やめてよ…
愛したままでいさせてよ…いい思い出として愛させてよ…
「ユイ悪かった…だからお願いだ戻って来てくれ」
ダグラスは震えてる、いつだって気丈に振る舞ってたのに。
「ごめんなさい」
フィフィは分かってる、私が戻らない事を。
「ユイ帰ろう?ね?」
エルはちょっと変だ、そんな顔見たことない、笑顔が歪んでるよ?
「ユイ…私はもう心を病みません、ですから戻って来て下さい…私も愛しています」
ネイサンはもう病んでるよ、その顔を何年見たと思ってるの。
疲れてしまう。
私はみんなを愛しているのに、ここに居ると疲れてしまう。
疲弊し不甲斐なさを感じ罪悪感を背負うみんなを見ると疲れてしまう。
どうして…どうしてこんな事になっちゃったんだろう…
みんなのこれからを知ってしまったから?
私が私じゃなくて、1度目の私ならみんなは…
変わってしまったのは私。
その変化に…私が私でなくなっていくと思われている、それなら今の私はなんなんだろう…
今、もしも手を取ったとしても必ずみんなは何も出来ないと…私に及ばないと嘆く。
ああ…本当に…
疲れた。
最低だな。
私ほど最低な人間は見た事がない。
私は私がいつだって大切でデズモンド様の言う通り悪魔より傲慢な人間だ。
穏やかな、私の居場所は…
私が愛してる人達を傷つけたとしても居たいと、今側に居たいと思える居場所は…
リクと…
「私は私が幸せになる為にいつだって動いてる、私は私が幸せになりたいから…私が居たいと思える場所に行く」
「…」
「海の」
「すま、すまぬ、すまなかったっ…!」
「謝らないで、海のは巻き込まれただけでしょ?」
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「っっ、すまぬっ」
「謝らないで、海の大好き」
「余も大好きじゃっ!」
「今度は遊びに来てくれる?」
「…どこに戻るのじゃ」
「デズモンド様の側に決まってるじゃん」
「「「「ユイ!」」」」
顔色のいいアルナブが見えた、もう大丈夫だね。
「ヒナノ」
戻ってきたよ。
戻ってきた、魔国に…
デズモンド様の側に…
でもデズモンド様を選ばない。
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