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魔王編
4-54
しおりを挟む四天王かもしれないとデズモンド様に連絡が来たのでナインとエイスが遊びがてら偵察に行ってくれた、そして連れ帰ってきた赤子が…
「名は」
「ございません」
「荒地になっておりました」
四天王は力が強い。
産まれる事が出来ても腹に収める事が出来ても魔力暴走のように力を放出してしまう人も居ると、珍しい事じゃないとデズモンド様は言ってた。
「フランシェロ」
名前もデズモンド様が決めるらしい。
「部屋に」
「あ、待って」
「…」
「抱いてもいいですか?」
「いい」
「ナイン」
「危ない」
「大丈夫だよ守りがあるでしょ」
「…」
「そうだな」
フランシェロをナインから受け取る。
血まみれだったのに誰かが綺麗にしてくれたらしい、デズモンド様が子育てをすると聞いていたから子育ての本は読んだ。
知識はある。
だけどあまりにも小さくてやっぱり本だけじゃ分からないと感じた。
「服はないんですか?」
「…」
「寒くないですか?」
「ない」
「魔力は与えてくれたんですか?」
もちろんミルクも飲むけど魔力を与える事も重要なのだ、栄養になるから。
でもその理論って人間にも当てはまりそうだよね。
「与えた」
「もう少し抱いていていいですか?」
「いい」
服を着せるって考えがないのかな?
私を浮かせてアルゼドの居るソファに座らせてくれた。
「アルゼド」
「良き名前ですなぁ」
「抱いてみますか?」
「では失礼して」
アルゼドは経験があるのか手慣れている。
「デズモンド様、フランシェロって夜どうするんですか?」
「…」
どうやら考えてなかったらしい。
シないでいられるか?答えはいいえ。
私も無理。
「私が見ましょう」
「…」
「いいんですか?」
「魔王様も見守って下さりますから問題ありませんよ」
「…」
そういえばデズモンド様は赤子を抱いた事はなかったな、同じ空間にいるフランシェロも大人しいし…
「抱いてみますか?」
「…」
「アルゼド、フランシェロの様子がおかしくなったら転移してくれますか?」
「ほっほっほっ、お任せ下され」
アルゼドがデズモンド様へとフランシェロを渡す、しばらく直立してたけど握手するように手を差し出したデズモンド様にアルゼドが支えるように持ちながら少しだけ触れた
「これくらいでしょうな」
「そうですか、ソファは平気ですか?」
「大丈夫なようですよ」
「部屋に分けるのって他に意味がありますか?」
「ない」
「しばらく執務室に置いてもいいですか?」
「いい」
「ナイン、エイスお願いね」
「りょーかい」
「ほっほっほっ、賑やかになりますなぁ」
「…」
私を執務椅子にぷかぷか浮かせて戻す。
ナインとエイスも子育てはお手の物らしい。
「私は離れると分からないので近くで見てもいいですか」
「…」
「デズモンド様の子育て手伝ってみたいです」
「分かった」
ソファに寝かさずぷかぷか浮いてるフランシェロは大人しい、よく寝てる。
「んー…」
「どうした」
「成長日記でも作るべきか悩んでいます」
「…」
「次からの子育てに役立てればと思うんですけど1人1人異なると言いますし…」
「悩むならやれ」
「そうですね!そうしてみます」
「…」
そういえば今はアルゼドが居るけど次の子育てはどうするんだろう?
私、赤い目じゃないと寂しいし…
「なにを考えている」
「今はいいけど次からどうしようかなぁって」
「…」
「赤い目じゃないと好きじゃなくなったのか不安になるし寂しいけどここは堪えるべきなんでしょうか」
「嫌だ」
無理じゃなくて嫌なんだ…えへへ
「どっちですか?」
「どちらも」
どうやら我慢するのも赤い目にならないようにするのも嫌らしい。
「♪」
「…」
それはまた考えよう。
ナインとエイスも居るし、デズモンド様の事だ。
なにかあれば気付くだろうし、他力本願だけどそこはしゃーなし!やれる事だけ考えよう!
「♪」
「…」
*********************************
フランシェロはアルゼドが連れてきて夜になれば連れて帰るという事にした。
ミルクの時間以外は気にしなくていいし、ミルクもナインとエイスが与えるから一部屋貸しているだけだと言われた。
初めて会った時とは違いフランシェロはよく泣きよくグズる、その度に抱きに行く私を最近見なかった観察の目で見るようになった。
子育てといっても特にやる事がない、だって大人が5人もいる。
フランシェロが泣けばナインとエイスは子守唄代わりに拷問の教えや体験談を話してるし、アルゼドは魔王様の素晴らしいところを上げていったりたまに飛ばしたりしてる。
赤子でも四天王は強いらしく今から鍛えれば強くなるでしょうと言ってた。
1歳にもなれば好きに動くみたいだし…
私は気まぐれに抱いたり観察して日記にフランシェロの成長を書き残した。
デズモンド様が1番動いてる。
魔力もミルクも監視もあるから、フランシェロが3歳になるまで眠る姿を見れた事はない。
ちなみに服は買ってきてくれた。
3歳になったフランシェロは女の子。
黄色の髪に黒の瞳は海のが羨む妖艶美女になるに違いない。
「妃」
「フランシェロどうしました?」
「…」
「妃」
「…」
デズモンド様が私を浮かせてソファに座らせてくれる、フランシェロは執務机までは来れないけど毎日近付けるようにぐぬぬっ!と一歩足を前に出そうと頑張っているけどまだ進めた事はない、そういう時のデズモンド様はフランシェロを絶対に見ないようにしている。デズモンド様は配慮の鬼でもあるのだ、心優しい魔王様だ。
「妃」
「来ましたよ」
「…」
「本読んで」
「いいですよ」
「…」
「お膝の上」
「いいですよ」
「…」
生後3ヶ月くらいでフランシェロに弱いと認定されたらしい最弱の私は気を使われてる。
私に魔法を放ったり力いっぱい叩こうとしなくなった魔人の賢さにビックリだよ。
最弱な私は本を読むくらいしか出来ないからよくせがまれる、魔王様に話しかける事は出来ないらしい。そんなもんだとラグウダが言っていた。
ちなみにフランシェロはどこかへ行ったりしてるのであんまり魔王城には居ない。
数日滞在してまたどこかへと遊びに行く。
「妃」
「なんですか」
「…」
「魔王様にぎゅぅしたい」
「そうですね、魔王様も同じ気持ちですよ」
「…」
「ほんと!?」
「本当です」
「…」
「いつかな」
「アルゼドはいつだと言っていましたか?」
「…」
「100年後!」
「ではそれくらいでしょう」
「…」
「魔王様はあったかい?つめたい?」
「熱くて気持ちがいいですよ」
「…」
「熱い!きゃぁぁ!じゃぁじゃぁマグマに行ってくる!」
「そこまで熱くは……消えました」
「…」
フランシェロが居なくなると私を戻してくれるデズモンド様にお礼を伝えてから成長日記に今日の出来事を書いていく、どれくらいの熱さとか正しく教えた方がいいのかな?
「…」
フランシェロは領地経営が出来そうなほどに頭が良く勤勉だ、これならデズモンド様の邪魔をする事もないだろう。
「♪」
「…」
四天王はその名の通り4人。
つまりルールーリリは死んだんだ。
予想はしてたけど…
アルゼドが亡くなれば代わりがどこからか産まれるのかな?
「なにを考えている」
「代々の四天王って似ていますか?」
「似ていない」
「なるほど」
生まれ変わりという事でもなさそう。
そういえばフランシェロは翼が生えているけどそのうち消せるようになるのかな?
「言え」
頬を撫でられて命令された、悲しい気持ちに気づかれのだ。
「翼のないフランシェロは少しだけ物足りないなと」
「…」
「でもフランシェロは美人ですからおしゃれをする時に邪魔になる事もあります」
「…どちらも見れる」
「それもそうですね!そう考えたら楽しみが増えました」
「チョキチョ」
「わあ…!いただきます!」
なでなでと髪を撫でて手で梳いていくデズモンド様は満足そうだ。
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