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淫魔編
5-9
しおりを挟む「海!海!海だあぁぁぁっ!」
「走るな!」
「ヒナノ様!」
「ヒナノー!」
最終地点にした海のが居る場所の神殿には、しばらく滞在する事になっている。
3国全ての浄化を終え、これから先を考えるまでの休憩のような感じ。
ネイサンから1度手紙が届いたけど、情勢がまだ落ち着かなく、調べも滞ってると書かれてた。
謝罪ばかりの文にげんなりしながら、こちらでも動くからしばらくは国に専念しなさいと返しておいた。
ちなみにブリットの突撃はまだない。
なんでかなぁ?と思った事をリクに伝えたら、落ち着くタイミングで私の案を渡していると言われた。
ううん、さすがですリク様。
というより、全ては渡してないんですね。
ほんと策士!好き!
市場近くに着いたのは7日ほど前。
そして今日、突然市場に行きたいと言った聖女の無茶振りに応えてくれた神殿の皆さんにも感謝です、あ!
「みなさん今日もよろしくお願いしま、うおう?」
「危ないと言っていますよ?」
「抱っこ!やっぱ歩く!」
「くすっ、はい」
みんなは見た事ないだろうからゆっくり進みつつ海に、あ…
「あのお店入りたい!」
「珍しいですね」
「なんか可愛いから!」
「ヒナノ」
「んー?むぐっ…もぐもぐ、今日は駄目!魚食べるの!」
「ふふ、絶対?」
「絶対絶対ぜえったい!」
「分かった」
アーヴァのお店があったから入ってみる。
うーん、居ないよねぇ。
どうせあの時も国王からの命令で居たんだろうし…
ま、いいか。
奥のキラキラ空間に入れられる前にドレスが見たいとお願いして見てみるけど…
「ん?」
「どうしたの?」
「んー…」
「どうした」
「…洋服屋って入った事なかったんだけど、全部がおっきいねぇ」
「「「…」」」
時期が違うからか黄色のドレスはなかった。
あれ欲しかったのに…
染め布も欲しいけど、まだ空間収納は習得してないから…というかなにも習得してないから諦めよ。
あ、私の商品が……多いな!
店頭はこんな感じかぁ。
エロエロはここでは扱ってないのかも?
「なにも買わないで出たら迷惑かな?」
ヒソヒソとリクにお伺いを立てる。
「大丈夫ですよ、聖女様がお入りになったというだけで宣伝になりますから」
「じゃぁ出よ!失礼しましたー!」
アーヴァも黄色のドレスもないお店に用はない!
また街歩きに戻ったけど、あの広場が見えて嬉しくなった。
「さかな!さかな!塩焼き!そのまま!」
「ふふ、分かった分かった」
「すぐに買って来る」
「さかな!」
「くすくす、落ち着いて下さい」
「無理!さかなぁ!」
「そんなに好きなの?」
はっ!魚好きだと思われちゃう、それは嫌!
「違うよ、加護がある海は美味しいのかなって期待してます!」
「ふふ、美味しいといいね」
「うん!」
ダグラスが買ってきてくれた塩焼きの魚は国王と食事をした場所でもあり、海のとデートした広場でもあった。
「食べていい?」
「お待ち下さい」
「うん…」
「ふふ」
「ふはっ、楽しみだな」
ソワソワソワソワしながらきっと熱いだろう塩焼きが冷めるまで待った。
うう、美味しいのは知ってるからヨダレが出るぅぅぅっ!
「どうぞ」
「自分で食べる!」
「「「!」」」
「あー……んんーっ!美味しい!美味しすぎるよ!海の…海バンザイ!加護バンザイ!大精霊サマーありがとー、もぐもぐっ、んんーっ!」
私の声が民にも聞こえたのか涙を流す人も、口々に神の遣いだとかの声もするから大丈夫でしょう。
精霊と聖女は別物で敵対するなんてばっかみたい!
私と海のはらぶらぶなの!
大好きなんだから!
「んー…!美味しい!この世界でこんなに美味しい食べ物は初めて!みんなも食べよ!」
「あ、ああ」
「そう、だね」
「ゆっくり召し上がって下さい」
「ふあい、もぐもぐ」
久しぶりの美味しいご飯!美味しい…危ない危ない。
「…飲み物なにがあるかな?あ!やっぱりお水がいいな」
「それでしたらこちらに」
「ありがとうリク!」
『美味しいご飯!』
『変わらない』
『美味しい緑茶!』
『変わらない』
駄目駄目、全部は後でいい。
ふぅ………
あれだけ泣いて暴れたのに、まだ心の中では暴れてる。
大丈夫、全部終わった後に暴れよう!
それにどうせ国王が来る!
弱みなんか見せたくないからね!
「はふ…ぅー…」
「お腹いっぱい?凄い食べたね」
「まだ食べたいのにぃぃぃ…!」
「しばらく滞在するから毎日持って来よう」
「ほんと!?」
「本当ですよ、それだけ食べて下さるならいくらでもお持ち致します」
「やったー!大精霊サマーありがとうございます!とっても美味しいお魚を頂きました!」
なんとなく天を仰いで言葉を吐く。
ふんふん…
『今こそ和解の時!』
ふんふん、その通り
『聖女様も崇めておられる…!わ、私はなんと寂寥な心を…!』
ふんふん、いい感じいい感じ!
『あんなに小さなお体で無茶な旅路を…!』
小さくない!
「?どうされました」
「なんでもなーい、美味しいご飯楽しいなぁって思ってただけぇ」
「そうですか」
「美味しい?」
「美味い」
「本当に美味しいね、全然違う」
「美味しいですよ」
それにしても本当に周りの声が聞こえないんだなぁ。
私って本当、びっくり人間だ。
みんなが食べ終わるのを待って海のに会いに!……間違えた、海を見に!
歩いて海まで来た私は砂をジャリジャリ踏みながら、海の手前まで行ってストンと腰を降ろした。
「「「…」」」
はぁ…海のに会いたいなぁ…
いつ起きてくるんだろ?
あの2人ものんびりだからあと千年…1万年くらいかな?
体育座りを久しぶりにして、海を眺める。
「海は私にとって身近だったんだ」
「そうなんだね」
「だから少しだけ故郷の事思い出しちゃった、いい?」
「もちろん、離れ離れは寂しいね」
「うん、でも離れなきゃみんなとも会えなかったから」
「もうっ…!」
「ぐえっ…!な、なんで、エルが…」
「ご、ごめん」
「ゆっくりなさって下さい、ここまで急ぎ足でしたから」
「ああ、そうだな…なんなら毎日来よう」
「ありがとう」
しばらく海をぼーっと眺めてた。
きっと声をかけられなければ何日も張り付いてたとも思うよ。
それだけ綺麗な友人を見続けてた。
のに、ガヤガヤと煩いなぁ…
みんなは聞こえてないみたいだけど、どうやら国王の登場らしい。
「抱っこ!」
「くすくす、喜んで」
リクに抱き着いて耳を澄ます。
『必要はないだろ』
『顔を見たい!』
『聖女は用済みだ』
『にしてはブルームフィールド国がうるさい』
なるほどね、今回は予習復習ばっちりらしい。
でも煩いだけか。
相変わらず口が硬いね神殿は!
「んふふー!ちゅー!」
「くすくす、ちゅ」
「えへへ、エルもダグラスもちゅー!」
「ふふ、ちゅ」
「っ、ちゅ」
もう1回リクとちゅーちゅーしてたらみんなも気付いたらしい。
久しぶり!相変わらずだね!
ああ、でもちょっと老けてるね!当たり前か!そうだ!子ども出来たんだって?おめでとう!
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