巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

文字の大きさ
215 / 247
間違いの章

6-3

しおりを挟む

アンテロスは世界が古いと言った。
古くなるのはいつ頃からなのか。
この世界が既に何千年も経っているのは風のの話を聞いて知ってはいる。
けれど、正確な年数は分からない。
精霊は時間も、日も、気にしない。そして、私が今のような状況になっていなかったら日にちなど気にしないだろう。

だって必要ないでしょう?

世界の、大地に広がる魔力を確認してみた。
綺麗な場所になったのは浄化したからだと思ってたけど、もしかしたら浄化が必要なのは大地の魔力が枯渇し、なくなるからかもとは思ったけど違うだろう。
それなら“浄化が出来る者”は存在しなくていい事になる。
大地に魔力を流せばいいだけの事。
どの世界でも、淀んでいる、または淀んでいた事実があるのは体感し理解しているし、大地を潤す詠唱をしたとしても淀みは消えないと実際に経験して知っている。
そして浄化が出来る者が稀有な存在だとも分かっている今、やはり世界が古くなる事と、浄化が必要な事は別物なんだろう。

「ヒナノ様あちらはヒナノ様の魔力ですが…混じり合っておりますね」
「ほんとだ…リクは器用だねぇ」

大地を潤してみた。
土のが寝床にしている場所を。
気付かれる訳にはいかないから空から詠唱をして潤した。

「ブレスレットのお陰で魔力を目で見れるからですよ、よく頑張りましたね」
「うへへー」

大地には魔力がある、いや、敷き詰められている事は知っていた。
そしてその事実を重要視していなかったけれど、これこそが答えに近づくのかもしれないと考えた私はリクと魔力質の違いを確認する為、浮いて見ている。

魔力は人それぞれ異なる、それは神でも同じなのはアンテロスの魔力を盗み見て知った。
そして大地に、見えない壁が広がる天にも魔力が広がっている。
アンテロスの魔力じゃない。
父様の魔力で世界は出来るとアンテロスは言っていた。

それなら他の世界も全て父親の魔力なんだと私は知っている。

「土地を潤すのは止めた方がいいかな?」
「…どうされたいですか?」
「なにが?」
「世界が消滅したら死ねる可能性があるのでしょう?私もそう思います」
「今はまだ、確定になるまでは」
「そうですね、でしたら1度止めましょう」 
「うん」

もし私の魔力で潤し、古くならない世界となってしまったら…

今は全て憶測だ。
でも、答えはある。

アンテロスの父親が知らなくとも。

デズモンド様を殺してしまったあの時。

私の腕を掴んだ奴が確実に知っている。

ナインとエイスに出会えた今、確実に答えに近づいていると確信している心はあるんだ。

私は必ずリクと死ぬ。

リクが死んでしまう苦しさなど…

私の人生にはもう必要ない。

あ。

「リク!魚なくなった!」
「買いに行きましょうか」
「泳ごうよ!」
「くすっ、はい」

空に漂っていた私達は海の中を漂う。
手を繋いでくるくる回ってちゅーちゅーして、魚と泳いで捕まえて、
うん、思考の渦にばかりいては駄目。
だってリクとのデート中だもん!

『たのしー!』
『気持ちがいいですね』
『ほんと!?』
『本当ですよ』

リクも好きならもっと好き!
海のへは大好きはじゃぶじゃぶと溢れちゃうけど、海は好きくらいだった私はこの瞬間、大好きに変わった。

狩りすぎないように気を付けながら海デートを楽しみました!



*********************************



私は私の記憶を取り出したい。
それは記憶を失くしたい訳じゃなく、全てを確認してみたいんだ。
今見たら何処かに違和感があるかもしれない。
なにか掴めるかもと、可能性はいつだって私の頭の中にあると信じている。

「ヒナノ様」
「……ん?」
「気絶なさっておりましたよ」
「やったー!」
「くすくす」

どれだけ心を委ねても安心しても中々気絶しないんだ。
もっともっとってなるから気絶しないのかと思ってたけど出来たあああ!

「8時間でした」
「そんなに!?私最強かも…」

8時間シて気絶ってそれもう…

「眠かったのかもしれませんね」
「なんだろう、とっても複雑ぅ」
「私は幸せですよ」
「それならヒナノもしあわせぇぇぇぇっ」
「おや、それでしたら遠慮は」
「まだゆっくりだよ?」
「くすっ、愛しております」
「ヒナノも愛してるぅぅぅっ!」

リクへの想いがたくさん溢れてるからなのかヒナノって自分で言うようになった。
なんでか分からないけど、なんだか嬉し嬉し。

「もう少し続きを読んでもよろしいですか?」
「許可なんていらないよ」
「左様でございましたか」
「薬?薬草の見分け方か」
「はい」

私は書物を暗記出来てから自分の国に様々な知識をばら撒いた事がある。
魔法でスバババッて書けるから、リクが欲しそうな本を書き上げたのだ。
もちろん今は枯れて存在しない薬草も、ない技術も乗っている本だけど楽しそうに読んでくれる。
私だけの人生ではなく、リク自身を豊かにする為に知識を吸収している今のリクを昔よりもっともっと好きになった。

まだページ数はある。
速読出来る眼鏡も渡してあるけど、ゆっくり読むのが好きなんだって、私もだよ!同じ!えへへー。

「じゃぁさ、ブリットの所行ってもいい?」
「駄目と言ったら行かないのですか?」
「もちろん!」

私が答えた瞬間、驚いた顔しているリクに驚いた。

「譲れない事もあるけどリクの嫌がる事はしたくない!もちろん嫉妬も大好きだけどおおお!」
「くすくす、行きましょう」
「うん!」

どこまでも私ファーストだ。
ああ、久しぶりに思ったなぁ。

2人とも着替えてブリットの元へ転移する。

あ。

テントの中だったから夜なのか昼なのか分からなかった。
お邪魔じゃないかな?

「「「「「「「「!」」」」」」」」

大丈夫みたい。
エロエロしてないし、なんならお昼時なのかお茶時なのか庭で優雅にティータイム中なブリットは相変わらず黒が好きなのか夫の色味は全員暗め。

「ブリットー、遊びに来ーたよー」
「せ、せ、くろっ、くろっ、本当にっ、はきゅっ、はきゅっ、」

ううん、身構えてなかったみたい。
今回もフィフィアンに伝えたのにな?

「はきゅ!………退きなさい、すぐに用意を」

ブリットが命令するとそそくさと後ろに回る者と、お茶を用意しようとしている者が目に入る。
席が空いたからリクがスタスタ歩いて、当然のようにリクが座る上に乗せられた。

「邪魔じゃない?」
「幸せですよ」

それならいいのかな?本読むのに邪魔だと思うんだけど…えへへ。

「あ、お菓子作って来たよー、あと紅茶もあるよー、これ退けてー」

テーブルの上の物を浮かして片付けてもらう。あ、用意してもらってるけどそれも大丈夫だよー。こっちの方が美味しい茶葉だし、手作りお菓子は自信作です!

「紅茶淹れるから待っててね」
「うん!」

変わらない。
変わらないブリットがここに居るよおおおお。
無言で居続けられる友達がやっぱり好きだ!

紅茶を淹れてる間も、紅茶を飲むように促しても私を見つめ続けてるブリットは可愛い。
美しいとか、麗しいとか、清廉だとかの言葉が似合う見た目だけれど、それだからこそ、私の前で可愛くなってくれるブリットが大好き。

「あら?」
「どうしたの?」
「なんだか甘い香りがしますわ」
「「…」」

なくなれーって思った。
内心恐ろしく焦りながらなくなれーって無詠唱したよ。

「どう?」
「あら?消えましたわ」
「「…」」

良かったです!

私の匂いは元々香しいかぐわのは獣人と接して知っていた。
襲いたくて堪らない程ではないけれど、誘わいざなわれているような匂いは元々持ち得ていた。
いつからか知らないけど、獣人のおじいさんがもしかしたらそんな匂いを持ってたのかもしれないけど。真相なんて謎のままさ。
うん、そんな私は今、あの女の魂を取り込んでしまってから益々いい匂いになってしまった。
リクは甘い匂いがするって言ってたけどね?いつだってエロエロな私たちだからね?てっきり興奮すると匂いが放たれると思ってたんだけどね?そうでもないみたいだね!
本当にあの女!やっかいだな!

「「「…」」」

あ、そうだそうだ。フィフィアンの補助を…いらないかなぁ?まぁ、いいか。どうにかするでしょ。自分の国だし。

「「「…」」」

3国の淀みは既に浄化を終え、今は違う場所を転々としてるし、バーズリー国は元から綺麗だから今居る庭園も花がそよそよしてる。

「あ、あの花いいよリク」
「少し摘んできますね、ちゅ」
「うん」

リクが手錠を外して…見なくても外せるんですか。
とっても慣れてるねぇ。
恥ずかし嬉し!

「そうだ、ブリットと話があるの」
「下がっていなさい」

心配そうに、だけどすぐ退いた夫達は教育ばっちりですね!流石だよブリット!可愛いね!

「いかがなさいました?」
「ふふ、実は私ね?神に会ったの」
「え!?き、聞きたい!」
「ブリットびっくりするよー?」
「聞きたいの!」
「あのねー、金髪金目だったよー」
「う、うそ…」
「ほんとー」

ブツブツ言い出したブリットに長くなるなぁ…と思ってリクを見て…たっぷり視姦するぜ。
薬草が好きというより、研究気質らしいリクは新しい発見だ。
知らない事を知りたいと、暴いてみたいという欲求があるのは今回が初めてだと思う。
それも当然だ。
貴族や商人、私の側仕えを必要だからやっていた人生だったから自分自身のやりたい事も知らなかったんだもん。
ふふ、可愛い。

「どのような方でした?」

意識が戻ったブリットの目はキラキラしてて可愛くて、どんな話なら幻滅しないでくれるか考えながら口に出す。

「子どもみたい、人と関わった事がないから何も知らないの」
「関わらない…そう、そうよね!」
「困った事があってね?どこを歩いたらいいかも分からないから真っ直ぐ進むのよ。建物を壊しながらそれでも真っ直ぐ歩くの。はぁ…あれは困ったわ」
「ふふ、可愛いですわ」

可愛い…あれを可愛いと思えるのか?
幻滅はしなかったようだけど…可愛い?
いや、確かに可愛らしさはあるよ?もちろん学び、吸収しながら私の前でうろちょろとしてる我が子はかわ…………うん、すっかり子育て脳になっている!
あの子は私の子どもだって認識しちゃってるな!

「会った事はないけど他にも神がたくさん居るんだって。だからきっと金だけじゃなくて、たくさんの色味を持ってると思うよー」
「そう、そうよね…1つじゃないものね。きっと」
「戻りました」
「おかえりなさいのちゅー!」
「ちゅ」

またまたブツブツ言ってるブリットをしばらく放置しておくと、独り言も聞こえなくなったので夫達においでおいでーって手をちょいちょいしておいた。

「「「…」」」

神の色は金だと理解したのに、どうやら黒は相変わらず好きみたい。
キラキラな目で私を観察してる。

ふふ、変わらないなぁブリットは。

「帰りましょう」
「うん!ブリット」
「うん!」
「ブリットの事好きなのー、友達になってくれる?」
「はきゅぅぅぅっ…!」
「またねー」

帰って数時間すると匂いがまた出て来たらしい…研究の為にいちゃいちゃするのやめてたけどスパン短いな!?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

処理中です...