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7話
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「おはよう」
「ひぅ!?」
おっとこの反応は傷つくぞ。
「あぁっと、怖くなーい怖くなーいよー」
俺が笑顔で話しかけると少女は恐る恐る目を開けて俺を見る。
「貴方様は!!…ここは?」
「起きたばかりですし、情報の整理をした後でお話しましょう」
少女は少し警戒しているのかビクビクしながら周りを見渡す。
まあ、さっきまで魔物に襲われて目が覚めたら知らない所で男がいたら怖いよな。それに多分意識を保つスレスレの所で俺と会ったからそこまで記憶は残ってないだろ。
「えっと…貴方様が私とメロア様を助けてくださった方でよろしいです…よね?」
「ええそうですよ。そして話し方も畏まらなくて大丈夫ですよ」
「本当か?それじゃ遠慮なく」
さっきまでのオドオド美少女がおっさん臭い残念少女に早変わり。胡座かいてるし。
「えっと貴殿の名前はなんじゃ?」
「私の名前は…名前」
(これが名前をつけるチュートリアルですか?)
『恐らく』
「どうしたのじゃ?」
「私の名前は、、、フォルター。フォルターです!!」
《名前をフォルターに変更されました。もし変更を希望されるのであれば今しかございません。これでよろしいですか?》
(はい)
《プレイヤーネームをフォルターに固定されました。チュートリアルクリアとして初期装備の配布を行います。アイテムボックスに贈られますので確認の程よろしくお願いします。ではこれにてチュートリアルの終了を報告します》
長かったなぁ。
『なぜフォルターなのですか?』
(堀田を少し文字変しただけですよ。フォリタ、フォルタ、フォルター。簡単な変更ですよ)
『なるほど』
「フォルター殿か。今回はよく助けてくれたのじゃ。あ奴らの追っ手がここまで強いとは思いもしなくてな。いやぁ失敗失敗」
「追っ手?ダンジョンから湧いたものじゃないんですか!?」
「ここら一帯にダンジョンは存在しない。存在していたらここの守り神である情龍様によって管理されておる」
そう言えば…。ガープさん自体この辺りの主って言ってたし、そんなダンジョンなんて異物を許しそうな人?龍には見えなかったし。
「ん?守り神?」
「あぁ、ここの森は通称神淵の森と言うんじゃ。耳を澄まして聞いてみろ」
俺は言われた通りにする。だが聞こえてくるのは風の音のみ。
「あれ?他の音が?」
「ここの主である情龍様はこよなく静寂を愛していたようでな。ここに住んでいる者はどんな強者だろうが弱者だろうが静寂を強いられているのだ。まあ、そのせいで冒険者殺しの森と言われているんだがな」
「へえ、そんな話が。えっと信じて貰えないと思うのですが先程情龍様に会いまして」
「それは真か!?」
「はっはい」
のじゃロリさんは俺に詰め寄ってくる。
「よくぞ生きていたな。情龍様は…荒々しい龍と聞いていたのだが…」
「荒々しいのに守り神なんですね」
「あれじゃ畏敬の念を込めてじゃ」
なるほど。
「あっと、話を遮ってすまぬ」
「あぁいえ、大丈夫です。それで会った時に昔情龍様を殺めようとした国があったみたいで、結果的に国を滅ぼして周りからは恐れられていると言っていたのですが。何となくわかりました」
「あぁそう言えばそんな話しじゃったな」
「…そう言えば聞くのを忘れてたのですがお名前は?」
のじゃロリさんはハッとして姿勢を正す。
「すまぬ。恩人の前でこんな無礼をしてしまい。私の名前はアイシャと申す。そしてこちらで寝ておるのはメロア様じゃ」
「…よく寝てますね」
「まあ、昔からよく寝る方じゃったからな」
アイシャさんは苦笑いしながらメロア様を見る。
「それにしてもよくメタルウルフをやっつけてくれたのじゃ。その装備でよく勝てたのぉ」
「あぁ、まだ入ったばかりでして」
「やはりプレイヤーか」
何気なく言ったけどプレイヤーを認知しているんだな。
『この世界でのプレイヤー認識は外の世界から遊びのためにやってきた放浪人という認識です』
(こちらが考えてるプレイヤーと似たような感じなんですね)
『認識の齟齬で面倒事を増やすのは嫌ですので』
なるほど。確かに仕事を増やすようなことはしたくないよな。
「はい、初心者ですが」
「なるほど。ますます信じられんなそのような者がメタルウルフを倒すなど」
「まあ、外の世界の経験が生きたという感じですね」
アイシャさんは興味が湧いたのか目を輝かせながら立つ。こう見ると幼い少女なのにな。
「フォルター殿は外の世界でも強者なのか!?」
「いえいえ、私なんてまだまだ。ですが一般人よりかは強いと断言できますね」
ちなみに堀田の認識での一般人は表で活躍している人達のことを指す。つまりなにかのチャンピオンなども入る。
「フォルター殿よりも強い者は外にいるのか…」
「はい。そう言えば、追っ手がいるってことは対策を立てていた方が良さそうですね」
「ん?あぁそれならもう大丈夫だと思うぞ」
あっけらかんとアイシャさんが言う。
「どういうことですか?」
「恐らくもうこの世にはいないだろう」
自信満々に言う。
「その顔は信用しとらんな?」
「あぁ、いえいえ。そこまでの確固たる自信があるのはすごいなと思い」
「簡単に言えば情龍様によって片付けられただろう」
「情龍様が?」
アイシャさんは足を組みかえて俺を真っ直ぐに見る。
「先程言った通り情龍様は静寂を好む。それ故に無礼者は絶対に許さない。突然自分の領地に異物を放り込まれたのじゃ。簡単に逃がすわけがないのじゃ」
「……なんかずっと思ってたのですが…。情龍様に会ったことがあるような口振りですね」
アイシャさんはギクッと言いたげに肩を震わせる。
「そっそんなわけなかろう!?なっ!!何を言っておるのじゃ!!物語で知ってるのじゃ!!」
「そうですか…物語は物語ですからそこまで信用出来るものなんですね…」
俺は目を細くしてアイシャさんを見る。
「うっ……まあ、情龍様と会ったと言っておるしよいか」
なにか確認するように呟く。
「絶対に言いふらさないことを約束出来るか?」
「はい、約束は破りませんよ」
数秒間見つめ合う。
「よし、フォルター殿を信用しよう。試すようなことをして悪かったのじゃ
「出会って数分の人を信用するのは難しいですからね」
「フォルター殿は信用出来る。そう思っておる。それじゃ本題なのじゃが。私は情龍様が居るこの森で生まれ育ったのじゃ」
「ほう」
「この森には賢者猿という魔物が住んでおるのだが、その者達は賢く情龍様も気に入っている種族なのじゃ。そしてある時この森で捨てられた赤子がいての賢者猿達はその子を気まぐれで育てることにしたのじゃ。それが我、アイシャ。気まぐれだが確かに愛情を注いでくれた。魔法を教えてくれたり、武術を教えてもらったり、様々なことを教えて貰った」
悪い様にはされてないみたいだな。いい顔で話してる。
「まあ、情龍様が異変に気づかない訳もなく割れを見つけたのだ。最初は我のことを殺そうとしたが我の親代わりの者達が庇ってくれての。情龍様は最大の譲渡をしてくださって我が独り立ちできるまでこの森で育てて良いと言われての。そこから何回かあったことがある程度じゃな。だが、その数回でもわかるほど優しい方じゃった」
「で、この森に逃げてきたと?」
「そうじゃ…本来はもう国に帰れる時なのじゃが。襲われたのがこの森でな」
「あれ?この先の町に用事があるのでは?」
「この先の町?町などあるのか?」
うわお、全く関係の無い人達だった。
(ニナコ、話が噛み合わないです)
『取得したデータがもしや古い?そう言えば奥底に保管されていたデータ…申し訳ございませんフォルター様。どうやらはるか昔のデータだったようです。どうやらここは神の監視から抜け出たようです』
(監視?)
『成長のために様々な情報を事細かく取得するために私達の生みの親…のまた上に存在するAIの素である存在がいろんな所を監視、つまり観察をしているのです。ですがスペックは私達の親よりも少しだけ良いと言うレベルなので全世界を見て記録するとパンクするのです』
(それって総括みたいな役割ですよね?スペック的に大丈夫なのですか?)
『その点は大丈夫です。成長の点が重視されており、成長の限界がなく無限のスペックを持っております。そのうち全世界を見通すことができるようになりますでしょうけど…現実世界での100年以上先でしょう』
(なるほど)
「えっとはるか昔に存在していたようです」
「あ、もしかして情龍様によって消された国に属していた街じゃろ。もう今では、知ってる者は極小数じゃろ」
「そこに向かってたのですが…戻りますか?」
「……いや、このままその街に進もう。戻っても味方は極わずか。ならば生きながらえる可能性のある所に向かうのが吉じゃろ。それで無礼なのは承知なのだが…どうかその街までの警護依頼してもよかろうか」
目の前にタブが出現する。
------------------
※緊急依頼
「アイシャとメロアの護衛」
内容
名も無き廃退した街までの護衛。
成功条件
アイシャとメロアを無事に街まで護衛する。
失敗条件
アイシャとメロア、どちらかの死亡、または身体の欠損。
報酬
特殊スキルの取得条件の開示。
特別報酬(※両者を無傷で護衛完了)
特殊スキルの継承
------------------
こんな感じなのか。下の方にもう一つのタブがあり「Yes or No」と出てきている。まあ、ここで無理ですって言って見捨てるのもあれだしな。
「ダメかの?」
「大丈夫ですよ。受けますよ」
Yesが選択される。
「どうします?メロア様が起きてから出発しますか?」
「いや、セーフティもそろそろ切れるであろうし…私が背負っていこう」
「私の仲間に乗せてもらいますか?」
「フォルター殿はテイマーなのか?」
「まあ、似たようなものです。おーい!!そろそろ帰ってこーい!!」
叫んで数秒経ったら爆速で走る音が聞こえる。
「「「ウォン!!」」」
アンドロスが大きなイノシシの死体を持って戻ってきて褒めてほしそうにこちらを見てくる。とりあえず頭を撫でる。
「ただいま戻りました!!」
白葉が敬礼をして飛んでくる。それだけならいいのだが周りに魔石の様なのを浮かべながら戻ってきた。そういう魔物に見える。精霊にも見えるかも。
「わふ!!」
モルドレッドは大きな5mは超えてるであろう蛇を引きずりながら来た。首が絞られていた。もしかして無理やり首を回転させてやったの?怖。
褒めてほしそうに見てるから一応撫でる。
「な!!な!!こやつらは!?」
「仲間ですよ」
「もしやお主はネクロマンサー!!」
アイシャさんが風の玉をこちらに向けて警戒をする。
「いえ、死霊術士です。まあ、何が違うかは分かりませんが」
「…初心者というのは嘘か?」
「いえ、本当ですよ」
「だが、そのような強力な死霊共を味方にしているということは相当腕が立つ者じゃ」
警戒心がもっと上がった気がする。
「えっと、魔物の素材を合成させてるんですよ。それで強い子達が作れたんです…ご納得してくれました?」
「………はぁ、わかった。一応信じよう」
「有難いです」
「そこで提案なのじゃが。ここで死霊術というのを見せてはくれぬか?」
「いいですけど。タダで、ですか」
アイシャさんは苦虫を噛み潰したような顔で渋々提案してくる。
「わかったのじゃ。護衛の報酬をもう1つ追加するというのはどうじゃ?」
------------------
※緊急依頼
「アイシャに死霊術を見せる」
内容
アイシャに死霊術を使用している所を見せよう。
成功条件
アイシャに死霊術を見せる
失敗条件
死霊術の失敗、または見せない。
報酬
護衛の報酬に新たに報酬が追加される。
------------------
「契約成立です」
俺はアンドロスとモルドレッドから死体を受け取る。白葉からも魔石を大量に貰う。凄くアイシャさん達の方を見てる。
ってあれ?ドロップアイテムになってない?
『報告を忘れてました。魔物同士、またはNPCが倒した場合ドロップアイテムには変換されません。プレイヤー本人が倒した場合にのみアイテムに変換されます。放っておいたら数分後に死体は消滅します。ドロップアイテムも同様です。もし死体をドロップアイテムに変換させたければ《解体》というスキルを身につけなければいけません。ですが手に入れるには動物の解体術を知っておかなければ手に入れることはできません。そして《解体》スキルのレベルは高いと無駄なく解体できますが低ければアイテムは少なく、品質も悪くなります』
なるほど。猟師みたいな動物の解体知識ある人でないと手に入らないのか…でもこのゲームでハズレスキルがあるとは考えにくい。
後で検証してみるか。
とりあえず死霊術。さてさて候補は、と。
生屍蛇
綺麗な状態の死体から作り出されるゾンビ。生前の能力を発揮することが可能。魔蛇の《八百万の毒》を使用可能。魔石を大量に使用することで特殊個体に進化する可能性がある。デメリットは存在しない。
必要素材
・魔蛇の死体:破損率50%以下×1
・魔石×∞
生屍猪
綺麗な状態の死体から作り出されるゾンビ。生前の能力を発揮することが可能。クレーターボアの《メテオストライク》が使用可能。魔石を大量に使用することで特殊個体に進化する可能性がある。デメリットは存在しない。
必要素材
・クレーターボアの死体:破損率50%以下×1
・魔石×∞
…普通に化け物でしかないと思う。これ作っていいタイプ?普通に心配になるんだけど。そしてまだ進化するのね。
デメリットは存在しないって言葉強すぎない?
頭おかしい。
…でも作らないと依頼が。
仕方ない。2体とも作るか。今ある魔石は特殊な魔石が6個、普通の魔石が46個。
使うのは、そうだな。1体に特殊な魔石を2個と普通の魔石20個を使用してみるか。やっぱりロマンを求めるべきだと思った。それに簡単にやられて欲しくないし。やるしかないよね。
とりあえず蛇から行くか。魔石を指定して召喚っと。
うわぁ。迫力すげぇ。全長4mぐらいかな。小さくなったけどそこまでなってないと思ってしまう。頭には4本の青黒い角があるし、目も青く深海のようだ。太さもなかなか。1番太い所で50cmはあるのでは?
ステータス等々は後ででいいか。次の召喚っと。
イノシシを指定して魔石も指定して召喚。
出てきたのは全身ゴツゴツとした岩みたいな巨大なイノシシだ。背中の盛り上がってる所が1番高くて4mはあるな。目は赤くマグマみたいに何か液体が流動している。牙は金色で物凄く太い。ボディービルダーの二の腕の辺りぐらいかな。それも物凄くゴツイ人の。
「…………」
アイシャさんが静かだと思ったら気絶していた。
やっぱりダメなやつだったな。
魔物図鑑NO.5
生屍シリーズ
生きた姿とそこまで変わりない形を保ったゾンビ。個体差はあるものの、生前の能力値とそこまで変わることは無い。それどころかゾンビ特有の無限の体力を得ているため、厄介さが増している。自然に出現することは滅多にない。だが、闇の魔力が濃い場所に行けば会える可能性がある。どの個体も成長すれば国1つ破壊することが容易い存在になる。好物は魔石で、グルメな個体だと決まった魔物の決まった魔石しか食べない者もいる。もちろん肉も食べる。
攻撃行動
・生前による
ドロップアイテム
・生前のドロップアイテム
・魔石
レアドロップ
・銘が刻まれた武器防具
・巨大な魔石
・属性が付与された魔石
・金属の魔石
・魔力玉
「ひぅ!?」
おっとこの反応は傷つくぞ。
「あぁっと、怖くなーい怖くなーいよー」
俺が笑顔で話しかけると少女は恐る恐る目を開けて俺を見る。
「貴方様は!!…ここは?」
「起きたばかりですし、情報の整理をした後でお話しましょう」
少女は少し警戒しているのかビクビクしながら周りを見渡す。
まあ、さっきまで魔物に襲われて目が覚めたら知らない所で男がいたら怖いよな。それに多分意識を保つスレスレの所で俺と会ったからそこまで記憶は残ってないだろ。
「えっと…貴方様が私とメロア様を助けてくださった方でよろしいです…よね?」
「ええそうですよ。そして話し方も畏まらなくて大丈夫ですよ」
「本当か?それじゃ遠慮なく」
さっきまでのオドオド美少女がおっさん臭い残念少女に早変わり。胡座かいてるし。
「えっと貴殿の名前はなんじゃ?」
「私の名前は…名前」
(これが名前をつけるチュートリアルですか?)
『恐らく』
「どうしたのじゃ?」
「私の名前は、、、フォルター。フォルターです!!」
《名前をフォルターに変更されました。もし変更を希望されるのであれば今しかございません。これでよろしいですか?》
(はい)
《プレイヤーネームをフォルターに固定されました。チュートリアルクリアとして初期装備の配布を行います。アイテムボックスに贈られますので確認の程よろしくお願いします。ではこれにてチュートリアルの終了を報告します》
長かったなぁ。
『なぜフォルターなのですか?』
(堀田を少し文字変しただけですよ。フォリタ、フォルタ、フォルター。簡単な変更ですよ)
『なるほど』
「フォルター殿か。今回はよく助けてくれたのじゃ。あ奴らの追っ手がここまで強いとは思いもしなくてな。いやぁ失敗失敗」
「追っ手?ダンジョンから湧いたものじゃないんですか!?」
「ここら一帯にダンジョンは存在しない。存在していたらここの守り神である情龍様によって管理されておる」
そう言えば…。ガープさん自体この辺りの主って言ってたし、そんなダンジョンなんて異物を許しそうな人?龍には見えなかったし。
「ん?守り神?」
「あぁ、ここの森は通称神淵の森と言うんじゃ。耳を澄まして聞いてみろ」
俺は言われた通りにする。だが聞こえてくるのは風の音のみ。
「あれ?他の音が?」
「ここの主である情龍様はこよなく静寂を愛していたようでな。ここに住んでいる者はどんな強者だろうが弱者だろうが静寂を強いられているのだ。まあ、そのせいで冒険者殺しの森と言われているんだがな」
「へえ、そんな話が。えっと信じて貰えないと思うのですが先程情龍様に会いまして」
「それは真か!?」
「はっはい」
のじゃロリさんは俺に詰め寄ってくる。
「よくぞ生きていたな。情龍様は…荒々しい龍と聞いていたのだが…」
「荒々しいのに守り神なんですね」
「あれじゃ畏敬の念を込めてじゃ」
なるほど。
「あっと、話を遮ってすまぬ」
「あぁいえ、大丈夫です。それで会った時に昔情龍様を殺めようとした国があったみたいで、結果的に国を滅ぼして周りからは恐れられていると言っていたのですが。何となくわかりました」
「あぁそう言えばそんな話しじゃったな」
「…そう言えば聞くのを忘れてたのですがお名前は?」
のじゃロリさんはハッとして姿勢を正す。
「すまぬ。恩人の前でこんな無礼をしてしまい。私の名前はアイシャと申す。そしてこちらで寝ておるのはメロア様じゃ」
「…よく寝てますね」
「まあ、昔からよく寝る方じゃったからな」
アイシャさんは苦笑いしながらメロア様を見る。
「それにしてもよくメタルウルフをやっつけてくれたのじゃ。その装備でよく勝てたのぉ」
「あぁ、まだ入ったばかりでして」
「やはりプレイヤーか」
何気なく言ったけどプレイヤーを認知しているんだな。
『この世界でのプレイヤー認識は外の世界から遊びのためにやってきた放浪人という認識です』
(こちらが考えてるプレイヤーと似たような感じなんですね)
『認識の齟齬で面倒事を増やすのは嫌ですので』
なるほど。確かに仕事を増やすようなことはしたくないよな。
「はい、初心者ですが」
「なるほど。ますます信じられんなそのような者がメタルウルフを倒すなど」
「まあ、外の世界の経験が生きたという感じですね」
アイシャさんは興味が湧いたのか目を輝かせながら立つ。こう見ると幼い少女なのにな。
「フォルター殿は外の世界でも強者なのか!?」
「いえいえ、私なんてまだまだ。ですが一般人よりかは強いと断言できますね」
ちなみに堀田の認識での一般人は表で活躍している人達のことを指す。つまりなにかのチャンピオンなども入る。
「フォルター殿よりも強い者は外にいるのか…」
「はい。そう言えば、追っ手がいるってことは対策を立てていた方が良さそうですね」
「ん?あぁそれならもう大丈夫だと思うぞ」
あっけらかんとアイシャさんが言う。
「どういうことですか?」
「恐らくもうこの世にはいないだろう」
自信満々に言う。
「その顔は信用しとらんな?」
「あぁ、いえいえ。そこまでの確固たる自信があるのはすごいなと思い」
「簡単に言えば情龍様によって片付けられただろう」
「情龍様が?」
アイシャさんは足を組みかえて俺を真っ直ぐに見る。
「先程言った通り情龍様は静寂を好む。それ故に無礼者は絶対に許さない。突然自分の領地に異物を放り込まれたのじゃ。簡単に逃がすわけがないのじゃ」
「……なんかずっと思ってたのですが…。情龍様に会ったことがあるような口振りですね」
アイシャさんはギクッと言いたげに肩を震わせる。
「そっそんなわけなかろう!?なっ!!何を言っておるのじゃ!!物語で知ってるのじゃ!!」
「そうですか…物語は物語ですからそこまで信用出来るものなんですね…」
俺は目を細くしてアイシャさんを見る。
「うっ……まあ、情龍様と会ったと言っておるしよいか」
なにか確認するように呟く。
「絶対に言いふらさないことを約束出来るか?」
「はい、約束は破りませんよ」
数秒間見つめ合う。
「よし、フォルター殿を信用しよう。試すようなことをして悪かったのじゃ
「出会って数分の人を信用するのは難しいですからね」
「フォルター殿は信用出来る。そう思っておる。それじゃ本題なのじゃが。私は情龍様が居るこの森で生まれ育ったのじゃ」
「ほう」
「この森には賢者猿という魔物が住んでおるのだが、その者達は賢く情龍様も気に入っている種族なのじゃ。そしてある時この森で捨てられた赤子がいての賢者猿達はその子を気まぐれで育てることにしたのじゃ。それが我、アイシャ。気まぐれだが確かに愛情を注いでくれた。魔法を教えてくれたり、武術を教えてもらったり、様々なことを教えて貰った」
悪い様にはされてないみたいだな。いい顔で話してる。
「まあ、情龍様が異変に気づかない訳もなく割れを見つけたのだ。最初は我のことを殺そうとしたが我の親代わりの者達が庇ってくれての。情龍様は最大の譲渡をしてくださって我が独り立ちできるまでこの森で育てて良いと言われての。そこから何回かあったことがある程度じゃな。だが、その数回でもわかるほど優しい方じゃった」
「で、この森に逃げてきたと?」
「そうじゃ…本来はもう国に帰れる時なのじゃが。襲われたのがこの森でな」
「あれ?この先の町に用事があるのでは?」
「この先の町?町などあるのか?」
うわお、全く関係の無い人達だった。
(ニナコ、話が噛み合わないです)
『取得したデータがもしや古い?そう言えば奥底に保管されていたデータ…申し訳ございませんフォルター様。どうやらはるか昔のデータだったようです。どうやらここは神の監視から抜け出たようです』
(監視?)
『成長のために様々な情報を事細かく取得するために私達の生みの親…のまた上に存在するAIの素である存在がいろんな所を監視、つまり観察をしているのです。ですがスペックは私達の親よりも少しだけ良いと言うレベルなので全世界を見て記録するとパンクするのです』
(それって総括みたいな役割ですよね?スペック的に大丈夫なのですか?)
『その点は大丈夫です。成長の点が重視されており、成長の限界がなく無限のスペックを持っております。そのうち全世界を見通すことができるようになりますでしょうけど…現実世界での100年以上先でしょう』
(なるほど)
「えっとはるか昔に存在していたようです」
「あ、もしかして情龍様によって消された国に属していた街じゃろ。もう今では、知ってる者は極小数じゃろ」
「そこに向かってたのですが…戻りますか?」
「……いや、このままその街に進もう。戻っても味方は極わずか。ならば生きながらえる可能性のある所に向かうのが吉じゃろ。それで無礼なのは承知なのだが…どうかその街までの警護依頼してもよかろうか」
目の前にタブが出現する。
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※緊急依頼
「アイシャとメロアの護衛」
内容
名も無き廃退した街までの護衛。
成功条件
アイシャとメロアを無事に街まで護衛する。
失敗条件
アイシャとメロア、どちらかの死亡、または身体の欠損。
報酬
特殊スキルの取得条件の開示。
特別報酬(※両者を無傷で護衛完了)
特殊スキルの継承
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こんな感じなのか。下の方にもう一つのタブがあり「Yes or No」と出てきている。まあ、ここで無理ですって言って見捨てるのもあれだしな。
「ダメかの?」
「大丈夫ですよ。受けますよ」
Yesが選択される。
「どうします?メロア様が起きてから出発しますか?」
「いや、セーフティもそろそろ切れるであろうし…私が背負っていこう」
「私の仲間に乗せてもらいますか?」
「フォルター殿はテイマーなのか?」
「まあ、似たようなものです。おーい!!そろそろ帰ってこーい!!」
叫んで数秒経ったら爆速で走る音が聞こえる。
「「「ウォン!!」」」
アンドロスが大きなイノシシの死体を持って戻ってきて褒めてほしそうにこちらを見てくる。とりあえず頭を撫でる。
「ただいま戻りました!!」
白葉が敬礼をして飛んでくる。それだけならいいのだが周りに魔石の様なのを浮かべながら戻ってきた。そういう魔物に見える。精霊にも見えるかも。
「わふ!!」
モルドレッドは大きな5mは超えてるであろう蛇を引きずりながら来た。首が絞られていた。もしかして無理やり首を回転させてやったの?怖。
褒めてほしそうに見てるから一応撫でる。
「な!!な!!こやつらは!?」
「仲間ですよ」
「もしやお主はネクロマンサー!!」
アイシャさんが風の玉をこちらに向けて警戒をする。
「いえ、死霊術士です。まあ、何が違うかは分かりませんが」
「…初心者というのは嘘か?」
「いえ、本当ですよ」
「だが、そのような強力な死霊共を味方にしているということは相当腕が立つ者じゃ」
警戒心がもっと上がった気がする。
「えっと、魔物の素材を合成させてるんですよ。それで強い子達が作れたんです…ご納得してくれました?」
「………はぁ、わかった。一応信じよう」
「有難いです」
「そこで提案なのじゃが。ここで死霊術というのを見せてはくれぬか?」
「いいですけど。タダで、ですか」
アイシャさんは苦虫を噛み潰したような顔で渋々提案してくる。
「わかったのじゃ。護衛の報酬をもう1つ追加するというのはどうじゃ?」
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※緊急依頼
「アイシャに死霊術を見せる」
内容
アイシャに死霊術を使用している所を見せよう。
成功条件
アイシャに死霊術を見せる
失敗条件
死霊術の失敗、または見せない。
報酬
護衛の報酬に新たに報酬が追加される。
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「契約成立です」
俺はアンドロスとモルドレッドから死体を受け取る。白葉からも魔石を大量に貰う。凄くアイシャさん達の方を見てる。
ってあれ?ドロップアイテムになってない?
『報告を忘れてました。魔物同士、またはNPCが倒した場合ドロップアイテムには変換されません。プレイヤー本人が倒した場合にのみアイテムに変換されます。放っておいたら数分後に死体は消滅します。ドロップアイテムも同様です。もし死体をドロップアイテムに変換させたければ《解体》というスキルを身につけなければいけません。ですが手に入れるには動物の解体術を知っておかなければ手に入れることはできません。そして《解体》スキルのレベルは高いと無駄なく解体できますが低ければアイテムは少なく、品質も悪くなります』
なるほど。猟師みたいな動物の解体知識ある人でないと手に入らないのか…でもこのゲームでハズレスキルがあるとは考えにくい。
後で検証してみるか。
とりあえず死霊術。さてさて候補は、と。
生屍蛇
綺麗な状態の死体から作り出されるゾンビ。生前の能力を発揮することが可能。魔蛇の《八百万の毒》を使用可能。魔石を大量に使用することで特殊個体に進化する可能性がある。デメリットは存在しない。
必要素材
・魔蛇の死体:破損率50%以下×1
・魔石×∞
生屍猪
綺麗な状態の死体から作り出されるゾンビ。生前の能力を発揮することが可能。クレーターボアの《メテオストライク》が使用可能。魔石を大量に使用することで特殊個体に進化する可能性がある。デメリットは存在しない。
必要素材
・クレーターボアの死体:破損率50%以下×1
・魔石×∞
…普通に化け物でしかないと思う。これ作っていいタイプ?普通に心配になるんだけど。そしてまだ進化するのね。
デメリットは存在しないって言葉強すぎない?
頭おかしい。
…でも作らないと依頼が。
仕方ない。2体とも作るか。今ある魔石は特殊な魔石が6個、普通の魔石が46個。
使うのは、そうだな。1体に特殊な魔石を2個と普通の魔石20個を使用してみるか。やっぱりロマンを求めるべきだと思った。それに簡単にやられて欲しくないし。やるしかないよね。
とりあえず蛇から行くか。魔石を指定して召喚っと。
うわぁ。迫力すげぇ。全長4mぐらいかな。小さくなったけどそこまでなってないと思ってしまう。頭には4本の青黒い角があるし、目も青く深海のようだ。太さもなかなか。1番太い所で50cmはあるのでは?
ステータス等々は後ででいいか。次の召喚っと。
イノシシを指定して魔石も指定して召喚。
出てきたのは全身ゴツゴツとした岩みたいな巨大なイノシシだ。背中の盛り上がってる所が1番高くて4mはあるな。目は赤くマグマみたいに何か液体が流動している。牙は金色で物凄く太い。ボディービルダーの二の腕の辺りぐらいかな。それも物凄くゴツイ人の。
「…………」
アイシャさんが静かだと思ったら気絶していた。
やっぱりダメなやつだったな。
魔物図鑑NO.5
生屍シリーズ
生きた姿とそこまで変わりない形を保ったゾンビ。個体差はあるものの、生前の能力値とそこまで変わることは無い。それどころかゾンビ特有の無限の体力を得ているため、厄介さが増している。自然に出現することは滅多にない。だが、闇の魔力が濃い場所に行けば会える可能性がある。どの個体も成長すれば国1つ破壊することが容易い存在になる。好物は魔石で、グルメな個体だと決まった魔物の決まった魔石しか食べない者もいる。もちろん肉も食べる。
攻撃行動
・生前による
ドロップアイテム
・生前のドロップアイテム
・魔石
レアドロップ
・銘が刻まれた武器防具
・巨大な魔石
・属性が付与された魔石
・金属の魔石
・魔力玉
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