陽あたりのいいパティオ 〜ももとさくらは人類最強です〜

あかぎ さわと

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第5章

嵐の後の学校公開 9

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 四年一組の教室。朝の会も終わった頃、保護者や地域の人々が教室の後ろに入ってくる。
 キーンコーンカーンコーン…授業開始のベルがスピーカーから流れた、これから一時間目が始まる。

「きりーつれー」

 ももの元気な声が教室中に響いた。
 今日は日直なのだ。教室の後ろには、茂もかえでもすみれもごんちゃんも、さくらもいる。みんな教室に来て、授業風景を見ている。

『よろしくお願いします』

 子どもたちは、立ち上がり声を揃えた。
 白鳥小百合先生もみんなを笑顔で見つめた。普段の姿を見せるという趣旨から、この頃の学校公開は先生たちも畏まった服を着ない。今日の白鳥先生は、淡いピンクのブラウスに、細身のジーンズといった何気ない装いだが、スタイルの良さと育ちの良さから清潔感が滲み出ていた。

「よろしくお願いします」
 優しい笑顔でそう言った。
「着席」
 ももの号令でみんなが座った。

 そんな白鳥先生を廊下から見つめる男が一人。
 白い三つ揃いのスーツでびっちりと決めている──三上 伸だ。
 教壇が見える開け放っている前ドアから、白鳥先生に見とれている。

「ああー女神だ」


 そんな頃、盗っ人三人衆も校門にやってきた。彼らにしてみれば目立たない服装──黒いジャージの上下で揃えてきたが、逆に目立ちすぎだ。
 親分は腹が出ていてボテボテだし、二はひょろひょろもやしっ子だ、唯一一は建築現場で働いていただけあってしまった体をしているが、三人が揃うとなんの集団だか正体不明だ。
 校門には今日も李さんが、防犯協会のジャンパーを着て立っていた。
 そんな李さんに親分が声をかける。
「えっと学校公開の会場はここでしょうか? 」
「えっ会場? 」
 李さんは中華料理の名コックだが蟷螂拳とうろうけんの名手でもある。蟷螂拳とは中国拳法の一つで、メスカマキリの動きを模した実践的な拳法だ。
 親分はその威圧的なオーラにビビりつつも続けた。
「へぇ、ふぇ、子どもたちの授業風景を見せて頂きにまいりやした、な、一」
 親分の後ろに隠れるようにしていた一に振り返る。
「へい、な、二」
 そのまた後ろにいる二に振り返る。
「へい、へい、へい」
 と、李さんは横に置いてある机の上の児童名簿を手に取った。
「お子様は何年何組ですか? 」
「お子様ですか? 」
「はい、名簿でチェックする事になってるね」
「お、お、お子様はいません」
「では、親戚か何かで…」
「親戚でも…ねぇな…」
 変なところで正直な親分だ。
「では、地域の方ですか? 」
「ち、地域の方です」
「分かりました、じゃあ、名簿に住所と名前と職業を記入して頂きます」
 危ない人間が紛れこまないようにチェックは厳重だ。李さんは別の書類を取り出す。
「じゅ、住所、なんて…ここどこだ」
 振り返ってヒソヒソ一に聞く。
「おい、二、廃墟の住所は…」
 ヒソヒソ二に聞く。
「…そんなことも知らないんですか!!!…えー駄目だなぁ………俺も知りません! 」
「住所と名前わぁ? 」
 三人のジャージ姿から、不審な匂いを嗅ぎつけた李さんが、カマキリのような目に変わる。シャー…実践オーラが漂いだす。
 蟷螂拳はいつだって使用可能だ。

『ウヘェ、またきまーす』

 三人衆はあたふたと鳥居の方へと走り出した。
「なんだあいつら…」
 走り去るジャージ姿を見ながら李さんが呟いた。
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