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第6章
決戦 5
しおりを挟む仁は電子ロックのボックスを開けて、暗証番号を押すとシャッターを開けた。そしてパティオを走って横切り、洋館に駆け込むと、茂が言ったとおり台所でうずくまるように倒れているかえでを見つけた。
「おい、かえで大丈夫か? 」
かえでは大きなお腹を押さえたまま反応がない。
ジュジュジュー…茹でていた素麺が吹き出す。
「やばっ」
咄嗟に火を止める仁。
「かえでしっかりしろ! 」
「うーん」
唸り声を上げるかえで、動けない。
胎児の霊力が母体に負荷をかけている。
それを必死になって耐えているのだ。
仁はかえでの姿に咄嗟に反応した。
「よし、そのままでいろ、俺がヒロ産婦人科まで連れていってやる」
仁はかえでを両腕で抱きかかえると、
「んがー」
お姫様抱っこをした。胎児と羊水の重さまで加えるとかなり重い。
「ぐぐぐ」
歯を食いしばって立ち上がる仁。
「畜生! おれの初恋の相手を見殺しにできるかってんだ」──仁とかえでは同級生である。
仁は渾身の力を込めて立ち上がると、お姫様抱っこのまま走りだし外に出た。
「んががが…」
そして、パティオの中を開いているシャッターに向かって駆け抜ける。
と、入口ビルの通りを伸がコンビニに行く途中でぷらぷら歩いていた。
そこに真っ赤な顔してかえでをお姫様抱っこした仁がやってきた。
「何やってんだ仁」
「伸、シャッターを閉めろ、緊急事態だ」
伸はビルの端からシャッターに来た。
「んがががが! 」
仁が開いているシャッターをくぐると、電子ロックのボックスにある『締める』赤いボタンを押した。
ゴゴゴ…シャッターがゆっくり閉まる。
「どうした! 」
「緊急事態だ、かえでをヒロ産婦人科まで連れてく」
仁は抱き上げる両腕に力を込めた。
ダダダ…かえでを抱きしめて精一杯の速度で走る仁。通りを右へ、『タヌキの散歩みち』とは反対方向へと出て行った。
伸もそんな仁の後を追う。
しかし妊婦は重い、それに意識を失いかけて全身の力が抜けている。
一歩一歩慎重に、早足で進む。
が、よろけそうになる。
──ゆら…
だん! ──なんとか耐える仁。
「くっそー」
と、伸が反対側に回り込むと同じようにお姫様抱っこで支えた。
「このまま二人で運ぶぞ」
「へっいいとこあるじゃねぇか」
「当たり前だ、俺は伸だぜ、世界中の女が追ってくるホストクラブ『SHI-N』の社長でナンバー1だ」
「酒が入るとだろ」
「ふん! 」
「ははは、まあいい、いくぞう」
「おー」
かえでを両方からお姫様抱っこしたまま、横歩きでヒロ産婦人科へと駆け出した。
『えいほ、えいほ、えいほ…』
掛け声とともに早足で横に横に、わっせわっせと進む。
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