世の兄姉はズルいのか！？

世の兄姉はズルいのか！？

かれこれ半世紀は「姉」なるものをやっている。
私には二歳下と十歳下の妹がいる。
ご想像通り、全員が昭和生まれの所謂ババアである。

更年期突入と共に、１ヶ月近くの入院を二度繰り返した。
日頃の不摂生(酒とか酒とか酒とか)もあるが、体力の衰えは潜在的な病を一気に青天下に引き出す。
もはや自分は若くないのだ、無理は利かない身体なのだな、と思い知らされたわけで。

１回目の入院の際、これは良いタイミングと思い、ガラケーからスマホに機種変更した。
入院先の規則でパソコンは持ち込み禁止だったのだ。
院内コンビニにフリーのWi-Fiはあるが、残念ながら病室はエリア外で階層も離れている。
そこで個人契約のモバイルルーターの出番だ。もうつなぎ放題である。
そうして私は出会ったのだ。「Web小説」に。
そもそも私達の世代には「コバルト系小説」と呼ばれるものが既に存在していた。
松本清張や宇能鴻一郎を読みながら、氷室冴子や新井素子を平行して読んでいたものだ。懐に余裕がある時は「ジュネ」も買って読んでいた。
ガンダムはファースト世代。楽しい青春時代だった。
なので「何でもあり」のWeb小説も、あまり抵抗なく読めた。

そして冒頭に戻る。
私は半世紀「姉」をやっている。
Web小説を読んでいて、
「兄上ズルい！」「姉様ズルい！」
てな話が非常に多いことに気づいてしまったのである。
…それって本当にそうなのか？
Web小説の世界観は、現世異世界問わず「格差のある社会」が中心になっている。
身分の差、年長の差、嫡庶の差、男女の差、いろいろである。
(群像劇より話が作りやすいもんね！)
まあリアルもそんなもんだが、「身分」と「嫡庶」に限れば一般人とはかけ離れているかも知れない。

昭和と云う時代は64年まで。
平成のおおよそ倍の長さである。
そして戦前・戦中・戦後でざっくり分かれる。
私の両親は、戦中二桁世代だ。
同級生の親には戦前一桁世代も混ざっている。
総じて親は「産めよ増やせよ」で、兄弟姉妹が多い世代なのだ。(戦後のベビーブーマーには及ばぬが)
私の両親はどちらも五人きょうだい。父親は長男。
末っ子との年の差は十歳。
しかし母親は末っ子。長兄は予科練出身なので、十歳以上離れていた。
そうなると、何が起こるか。
先に結婚した伯父伯母らの家から
「従兄姉からのお古」がに回ってくるのである。うちの母親の元に。

「SDGs」だ何だと騒々しい昨今だが、戦後間もなくな物資不足を体験している方々は、本当に物を大切にしていた。
ヘビーユーズの肌着類はどうしようも無いが、上物の洋服類や書籍類は、かなりの量を贈られた。
書籍はまだいい。内容の古さは地元や学校の図書館で補完すればいい。
しかし洋服は違う。
私が腕を通すより先に、最低でも「いとこ２人」の腕が通っている。
なぜ「最低」か？「いとこ２人」の前に、「伯父伯母ご近所」のお子さんが着ている場合があった。
うちの母親いわく
「『女の子２人』にしては、服の傷みがね…」
と、云うことらしい。
まだキャラ物が少ない時代でもあり、あからさまに世代差は分からないが、素材の傷みは隠しようがない。よって『最終走者』は私になった。
二歳下の妹には使い物にならないので、彼女はいつも新品の服を着ていた。
十歳下の妹にいたっては、もはや大量消費の時代。
『姉達と年の離れた妹』には、ジジババの財布の紐がユルッユルで、全てが新品だった。

「長子」は、両親も『親初心者』。
子育てはやることなすこと全てが実験だ。
ここでジジババ同居だと子育て環境がまた変わる。更に私が生まれた頃は、当時高校生の叔母が居た。
(上の妹が生まれた年に県外就職)
そして十歳下の妹は、叔母の子と同い年生まれ。
ジジババとは妹の誕生から二年後に別居。下の妹には困った時に逃げこめる『別宅』が、園児時代から既に存在したのである。
中学を出るまで子供部屋すら無かった私とは、もう何もかも違う。

こんな経験をすると『姉さんズルい』とか、もう完全にハナホジ状態だ。

でもフィクションだし！

エンタメだし！

美しくても、そうでなくても
金持ちでも、貧しくても
異能があっても、無くても
持てる力を尽くして幸せをつかもうと頑張る主人公が、私は好きだから。
まだまだWeb小説が止められない。