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ep.19 新しい街では素敵な出会いが待っていると勘違いする
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ピノキさんや家具たち(以降:ピノキファミリー)には森に帰ってもらって、いつでも召喚に応じられるように頼んでおいた。
少し落ち着いたところで、俺が切り出す。
「とはいえ、まずは魔王モールに誘拐されたルルドナを早く助けに行かないと」
「引き抜きだから手荒なことはされてないはずっすけど」スコリィが腕組みをして言う。
「でもブラックという噂ですよ」イゴラくん。
「いや、ああいう巨大組織は案外、経営上流はブラックではないはず。きっと彼女は賢いから上流に配属されるはず……」
俺はネットで知った知識を偉そうに語る。根拠はない。
思いついたようにスコリィが言う。
「いや、見た目が珍しいから展示されるんじゃないっすか。きっと着飾って、ファンクラブなんてできちゃって。ぜ、ぜひアタシも入会したいっす!」
まるでアイドルにスカウトされたような勘違いをしているスコリィは、よだれを垂らしながら頬を緩ませる。
「性格上、そんなことをされたら暴れまくるはずだけど。めちゃくちゃ強いんだよ、ルルドナ」
補助魔法の強いゴーレムくんが意見をしてくる。
「強力な結界に入れておけば、どんな物理的に強くても壊すのは無理かもしれません。俺の魔法も基本的には物理的な攻撃には強いです」
俺は崖の方へ近寄り、見上げて言う。
「この崖の高さから落とされた俺を、彼女は軽々と受け止めたんだ」
改めてみるとかなり高い。5階建ての建物くらいの高さがある。
イゴラくんが続ける。
「それでも結界の中じゃ厳しいかもしれません。ルルドナさん魔法は使えるんですか?」
「そこまではわからないなぁ。力のすべてを説明してもらったわけじゃないし。というか俺から離れたら動かなくなるんてことないよね?」
スコリィが説明する。
「もし召喚的な存在なら、魔力の供給源がなくなると、動けなくなるかもしれないっすね」
「それならひとまず安心なんだけどなあ。下手に暴れられる方がきっと危ない」
「……そういう考えもできるんすね」
意外とこういう自体に慣れてそうなペッカが突っ込む。
「恐ろしいほどの楽観性だな。そのくらいがいいかもしれんが」
「ともかく急いだほうが良さそうだね。進もう、みんな」
俺が少しリーダーらしく遠くの地を見つめる。
「……てんちょー、そっちにショッピングモールはないっす」
**
次の日。朝早くに出た俺達は、「ルルドナ取り戻しのための出張」にでかけていた。
スロウタウンの町から歩いて4時間の都市にきていた。広場の噴水の周りにあるベンチに座って作戦会議をしていた。
――都市の名前は『ミッドライフシティ』。
そこそこみんなが忙しそうな地方都市だ。
ちなみに瀬戸さんのお団子は、旅の選別としてもらっていた。60個をみんなで分けたら15個ずつ。昼食にちょうど良さそうな量だった。
出張メンバーは、ストーンピクシーのスコリィにゴーレムのイゴラくん、フォレストミニドラゴンのペッカだった。
一番やる気のあるペッカは珍しいフォレストドラゴンで目立つからといって、柴犬くらいのサイズに縮んでいた。さすがに異世界でもドラゴンは目立つらしい。
意外にもついてきたスコリィは一番ショッピングモールに詳しいということだったし、スコリィの爺さんも「孫を鍛えてくれ」と言って送り出した。
しかし異世界でも若い人はたいていショッピングモールが好きだ。なぜだろう。
さらになぜかついてきたイゴラくんは、そもそもどこかで修行するつもりだったようだ。
小さく見えて立派に成人(成ゴーレム?)しているらしい。レンガパンを大量に仕入れてくれる俺の店で直接パンを焼くことにしようとしていたらしい。
補助魔法が強力な助っ人が来てくれるのは嬉しいが。
危ないから断ろうとしたが、熱意に負けた。
「ボクもお供させてください!」
「危険なことに巻き込めないよ」
「いえ、魔王モールはパン屋、もとい自営業者共通の敵です!」
意外にもライバル心むき出しのイゴラくん。
「倒しに行くわけんじゃないんだけど……」
――という感じの流れだった。
「とにかく、あまり目立たないように移動しよう」
ペッカは体のサイズを小さくして、犬のように四つ足で歩いてついてくる。
「どうしてっすか?」
普段通りの格好でついてきたヤンキー娘、もといスコリィが首を傾げる。
「家具たちがいないとはいえ、戦闘の意思ありと思われかねない」
「え、ケンカはしないんすか?」
力こぶを作り一番強力な魔法を使えるであろうスコリィは乗り気だ。
しかしオタク女子である彼女には体力がない。魔力もあまりないようだが。俺は冷静に返事をする。
「ケンカなんてしたら確実に負けるでしょ」
「いやあ、わかんないっすよ。召喚術の使えるドラゴンと闇魔法の付ける家具たち、防御魔法使えるゴーレム、そして超強力な攻撃魔法の使えるストーンピクシー、ついでに体当たりのできる異世界人……」
トーンを落として、最後に同情するような目で俺をみるスコリィ。
俺は専門家のように指を立て結論を言った。
「できる限り戦闘は避けよう!」
「……ッスね」
優しい目をするな。
咳払いして俺は続ける。
「とにかく実際にどのような経営をしているか、街の人の印象とか聞いて、強さとかも知っている人がいないか、聞き込みをして。主に三号店の副店長の情報を集めて」
俺はネットで聞きかじった知識をフル活用するためにも、情報が欲しかった。
イゴラくんが手を上げて質問する。
「思い出せないんですけど、誘拐犯、もとい副店長の名前、何でしたっけ?」
柴犬サイズになったペッカが応える。
「確か、シュワルツと言っていたような」
そのとき、後ろの噴水の中から、何者かが勢いよく飛び出した。
「はあーーー!?」
少し落ち着いたところで、俺が切り出す。
「とはいえ、まずは魔王モールに誘拐されたルルドナを早く助けに行かないと」
「引き抜きだから手荒なことはされてないはずっすけど」スコリィが腕組みをして言う。
「でもブラックという噂ですよ」イゴラくん。
「いや、ああいう巨大組織は案外、経営上流はブラックではないはず。きっと彼女は賢いから上流に配属されるはず……」
俺はネットで知った知識を偉そうに語る。根拠はない。
思いついたようにスコリィが言う。
「いや、見た目が珍しいから展示されるんじゃないっすか。きっと着飾って、ファンクラブなんてできちゃって。ぜ、ぜひアタシも入会したいっす!」
まるでアイドルにスカウトされたような勘違いをしているスコリィは、よだれを垂らしながら頬を緩ませる。
「性格上、そんなことをされたら暴れまくるはずだけど。めちゃくちゃ強いんだよ、ルルドナ」
補助魔法の強いゴーレムくんが意見をしてくる。
「強力な結界に入れておけば、どんな物理的に強くても壊すのは無理かもしれません。俺の魔法も基本的には物理的な攻撃には強いです」
俺は崖の方へ近寄り、見上げて言う。
「この崖の高さから落とされた俺を、彼女は軽々と受け止めたんだ」
改めてみるとかなり高い。5階建ての建物くらいの高さがある。
イゴラくんが続ける。
「それでも結界の中じゃ厳しいかもしれません。ルルドナさん魔法は使えるんですか?」
「そこまではわからないなぁ。力のすべてを説明してもらったわけじゃないし。というか俺から離れたら動かなくなるんてことないよね?」
スコリィが説明する。
「もし召喚的な存在なら、魔力の供給源がなくなると、動けなくなるかもしれないっすね」
「それならひとまず安心なんだけどなあ。下手に暴れられる方がきっと危ない」
「……そういう考えもできるんすね」
意外とこういう自体に慣れてそうなペッカが突っ込む。
「恐ろしいほどの楽観性だな。そのくらいがいいかもしれんが」
「ともかく急いだほうが良さそうだね。進もう、みんな」
俺が少しリーダーらしく遠くの地を見つめる。
「……てんちょー、そっちにショッピングモールはないっす」
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次の日。朝早くに出た俺達は、「ルルドナ取り戻しのための出張」にでかけていた。
スロウタウンの町から歩いて4時間の都市にきていた。広場の噴水の周りにあるベンチに座って作戦会議をしていた。
――都市の名前は『ミッドライフシティ』。
そこそこみんなが忙しそうな地方都市だ。
ちなみに瀬戸さんのお団子は、旅の選別としてもらっていた。60個をみんなで分けたら15個ずつ。昼食にちょうど良さそうな量だった。
出張メンバーは、ストーンピクシーのスコリィにゴーレムのイゴラくん、フォレストミニドラゴンのペッカだった。
一番やる気のあるペッカは珍しいフォレストドラゴンで目立つからといって、柴犬くらいのサイズに縮んでいた。さすがに異世界でもドラゴンは目立つらしい。
意外にもついてきたスコリィは一番ショッピングモールに詳しいということだったし、スコリィの爺さんも「孫を鍛えてくれ」と言って送り出した。
しかし異世界でも若い人はたいていショッピングモールが好きだ。なぜだろう。
さらになぜかついてきたイゴラくんは、そもそもどこかで修行するつもりだったようだ。
小さく見えて立派に成人(成ゴーレム?)しているらしい。レンガパンを大量に仕入れてくれる俺の店で直接パンを焼くことにしようとしていたらしい。
補助魔法が強力な助っ人が来てくれるのは嬉しいが。
危ないから断ろうとしたが、熱意に負けた。
「ボクもお供させてください!」
「危険なことに巻き込めないよ」
「いえ、魔王モールはパン屋、もとい自営業者共通の敵です!」
意外にもライバル心むき出しのイゴラくん。
「倒しに行くわけんじゃないんだけど……」
――という感じの流れだった。
「とにかく、あまり目立たないように移動しよう」
ペッカは体のサイズを小さくして、犬のように四つ足で歩いてついてくる。
「どうしてっすか?」
普段通りの格好でついてきたヤンキー娘、もといスコリィが首を傾げる。
「家具たちがいないとはいえ、戦闘の意思ありと思われかねない」
「え、ケンカはしないんすか?」
力こぶを作り一番強力な魔法を使えるであろうスコリィは乗り気だ。
しかしオタク女子である彼女には体力がない。魔力もあまりないようだが。俺は冷静に返事をする。
「ケンカなんてしたら確実に負けるでしょ」
「いやあ、わかんないっすよ。召喚術の使えるドラゴンと闇魔法の付ける家具たち、防御魔法使えるゴーレム、そして超強力な攻撃魔法の使えるストーンピクシー、ついでに体当たりのできる異世界人……」
トーンを落として、最後に同情するような目で俺をみるスコリィ。
俺は専門家のように指を立て結論を言った。
「できる限り戦闘は避けよう!」
「……ッスね」
優しい目をするな。
咳払いして俺は続ける。
「とにかく実際にどのような経営をしているか、街の人の印象とか聞いて、強さとかも知っている人がいないか、聞き込みをして。主に三号店の副店長の情報を集めて」
俺はネットで聞きかじった知識をフル活用するためにも、情報が欲しかった。
イゴラくんが手を上げて質問する。
「思い出せないんですけど、誘拐犯、もとい副店長の名前、何でしたっけ?」
柴犬サイズになったペッカが応える。
「確か、シュワルツと言っていたような」
そのとき、後ろの噴水の中から、何者かが勢いよく飛び出した。
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