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ep.28 女医が美人だと心拍数が上がりすぎて検査にならない(イゴラくん、倒れる)
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「クラフルナティ商会、ゴーレムが作ってドラゴンが焼いたレンガパン割引販売中です! 看板注文も受け付けますー」
ガディの必死な声。
新しい需要を見つけたものの、意外と大変になったのはガディだ。
宣伝文句がだんだんと増えているし、『陶器看板作ります』のタイルもかけて、首から3キロくらいかけているようなものだ。
社会人デビューとしてはきついかもしれない。
負担を減らすため、スコリィと交代で販売とビラ配りをさせる。
「世界一のレンガパンっすよー。ずっしりしっとりシナモンとオレンジの香りのレンガパン! 世界一のゴーレムが作ったレンガパンをどうぞー」
背の高いスコリィは異世界の中でも目立つけど、イゴラくんのそばにいないとだんだんと身が入らなくなってくる。
いや、イゴラくんの近くにいるとやる気が倍増するのか。
しかしあの元気は何なのだろう。推し活のパワーだろうか。
広場に戻った俺は、気分よく皆を見て回り――異変に気が付いた。
「イゴラくん、どうした!?」
休憩していたイゴラが、うなだれて倒れるようにそばのベンチでぐったりとしていたのだ。
**
「過労ね」
近くの病院の女医さん(美人の耳のとがったエルフ)に診てもらったら、そう診断された。
ベッドに横たわってぐっすりと寝ているイゴラ。
ゴーレムは表情が読み取りにくいから気が付かなかった。
――そういえば、体力がないことを気にしていたのに、すっかりと忘れていた。
「どうすればいいっすか!?」
スコリィがエルフの女医に詰め寄る。
「落ち着いて。大丈夫。しっかり水分とって、消化にいいもの食べて、ゴーレムだからミネラルとかたくさん取って、しっかりと月明りを浴びて寝ていれば大丈夫よ。明日の朝には回復しているわ」
女医さんは俺たちに何度も「大丈夫大丈夫」と声をかけて病室に出て行った。
スコリィはちゃっかりイゴラの手を握っている。
「大丈夫っす。私が一晩中看病するっす」
しかし、スコリィの行動にツッコむ元気がないほど、俺は大きなショックを受けていた。
――なんてことだ。俺は絶対にブラック企業のように社員をいたぶるような真似はしないって誓っていたのに……。
こんな数人の体調管理すらできないなんて。
やっていることは……ブラック企業と同じじゃないか。
「ごめん。……ほんとに、ごめん……」
俺はどうにか涙をこぼさないように、二人の手にさらに手を添える。
「……スコリィ、……イゴラくんのこと、あとは任せる。広場のほうはあとは俺がなんとかするから」
俺が涙ぐみながら言うと、スコリィも神妙になり、そして笑顔を作ってくれる。
「てんちょー……。まかせるっす! 推し活の力は無限っす!」
にかっと笑って、またピースサインをしてくれる。
こういうとき、女性というのは頼もしい。いや、スコリィが頼もしいのか。
「スコリィが仲間でよかったよ。もちろん、イゴラくんも」
そう言って病室を出る。
「クタニ、優しすぎよ」
病室を出たとたん、胸ポケットに入っていた小ルルドナが話しかけてくる。どうも皆の前では話したくないようだ。
「仕方ないよ、こればっかりは」
「そういうところ、嫌いじゃないわ」
「ああ……」
俺は一日分の入院費を病院の受付へ支払って、広場へと向かった。
どうすればいいかアイデアもないまま。
ガディの必死な声。
新しい需要を見つけたものの、意外と大変になったのはガディだ。
宣伝文句がだんだんと増えているし、『陶器看板作ります』のタイルもかけて、首から3キロくらいかけているようなものだ。
社会人デビューとしてはきついかもしれない。
負担を減らすため、スコリィと交代で販売とビラ配りをさせる。
「世界一のレンガパンっすよー。ずっしりしっとりシナモンとオレンジの香りのレンガパン! 世界一のゴーレムが作ったレンガパンをどうぞー」
背の高いスコリィは異世界の中でも目立つけど、イゴラくんのそばにいないとだんだんと身が入らなくなってくる。
いや、イゴラくんの近くにいるとやる気が倍増するのか。
しかしあの元気は何なのだろう。推し活のパワーだろうか。
広場に戻った俺は、気分よく皆を見て回り――異変に気が付いた。
「イゴラくん、どうした!?」
休憩していたイゴラが、うなだれて倒れるようにそばのベンチでぐったりとしていたのだ。
**
「過労ね」
近くの病院の女医さん(美人の耳のとがったエルフ)に診てもらったら、そう診断された。
ベッドに横たわってぐっすりと寝ているイゴラ。
ゴーレムは表情が読み取りにくいから気が付かなかった。
――そういえば、体力がないことを気にしていたのに、すっかりと忘れていた。
「どうすればいいっすか!?」
スコリィがエルフの女医に詰め寄る。
「落ち着いて。大丈夫。しっかり水分とって、消化にいいもの食べて、ゴーレムだからミネラルとかたくさん取って、しっかりと月明りを浴びて寝ていれば大丈夫よ。明日の朝には回復しているわ」
女医さんは俺たちに何度も「大丈夫大丈夫」と声をかけて病室に出て行った。
スコリィはちゃっかりイゴラの手を握っている。
「大丈夫っす。私が一晩中看病するっす」
しかし、スコリィの行動にツッコむ元気がないほど、俺は大きなショックを受けていた。
――なんてことだ。俺は絶対にブラック企業のように社員をいたぶるような真似はしないって誓っていたのに……。
こんな数人の体調管理すらできないなんて。
やっていることは……ブラック企業と同じじゃないか。
「ごめん。……ほんとに、ごめん……」
俺はどうにか涙をこぼさないように、二人の手にさらに手を添える。
「……スコリィ、……イゴラくんのこと、あとは任せる。広場のほうはあとは俺がなんとかするから」
俺が涙ぐみながら言うと、スコリィも神妙になり、そして笑顔を作ってくれる。
「てんちょー……。まかせるっす! 推し活の力は無限っす!」
にかっと笑って、またピースサインをしてくれる。
こういうとき、女性というのは頼もしい。いや、スコリィが頼もしいのか。
「スコリィが仲間でよかったよ。もちろん、イゴラくんも」
そう言って病室を出る。
「クタニ、優しすぎよ」
病室を出たとたん、胸ポケットに入っていた小ルルドナが話しかけてくる。どうも皆の前では話したくないようだ。
「仕方ないよ、こればっかりは」
「そういうところ、嫌いじゃないわ」
「ああ……」
俺は一日分の入院費を病院の受付へ支払って、広場へと向かった。
どうすればいいかアイデアもないまま。
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