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二話.悪役王妃
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鬱蒼とした薄暗い森に面した北門をくぐると、暗がりからカラスが飛び立ち、足元をネズミが駆け抜け、姿の見えない獣の目が不気味に光った。
広大な王城の端に位置するそこには、闇に覆われた禍々しい外観の離宮が聳え立っている。
日当たりが悪く、ひんやりと湿った空気が纏わりつく、いかにも悪役の根城といった雰囲気の場所だ。
苔むした石階段を上っていき、王妃の待つ部屋の前に辿り着く。
俺は深呼吸をし、邪悪な形相をしたガーゴイルのドアノッカーを叩き、重い扉を押し開ける。
「ただいま戻りました、王妃さま」
仄暗い部屋に入ると、明かりの灯る窓辺に座り、王妃は分厚い魔法書を読んでいた。
透き通るような雪花石膏の肌、真っ直ぐに伸びた濡れ羽色の髪、燃えるように咲き誇る紅蓮華の瞳。
それは、誰もが一目見て心を奪われる、目の覚めるような絶世の美貌だ。
王妃は顔を上げて俺を見やり、流麗な所作で立ち上がって歩み寄ってくる。
男のオメガである王妃は、俺よりも背が高く、一八五センチは超えているだろうか。
引き締まった身体はスーパーモデル並みの体型で、一分の隙もない完璧な美しさなのだ。
俺は目にするたび、その凛とした高貴な佇まいに見惚れ、ただただ見入ってしまう。
王妃はそんな惚けている俺を見て、微かに妖艶な笑みを浮かべ、口を開く。
「戻ったか。それで、首尾の方は?」
「は、はい……これが証拠の品です」
慌てて懐から小箱を取り出す。
王妃の前で膝を突き、蓋を開けて中に収めた物を見せ、恭しく差し出した。
「獲物の心臓でございます。どうぞ、お納めください」
「ほお……」
そこには、先ほど取ったばかりの新鮮な心臓が収められている。
狩猟で獲った猪の心臓を抜き取り、白雪の心臓の代わりに用意したのだ。
緊張で俺の心臓が早鐘を打つ中、王妃は小箱を受け取るとそれをじっと見つめた。
「よくやった。褒めてつかわす」
「……王妃さまのお役に立てて、これ以上の喜びはございません」
王妃は満足そうに頷くと、奥にある壁掛けの鏡の前へと向かい、問いかける。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だ?」
すると、鏡の表面が水面の波紋のように波打ち、人影を映し出す。
『世界で一番美しいのは――紅蓮王妃です』
人影が鮮明になれば、王妃の姿が映し出され、魔法の鏡はそう答えたのだ。
「ふふふふふ……これで私の美しさを脅かすものは誰もいなくなった」
王妃は嬉しそうに笑い、包みを取り出して俺に差し出す。
「それ、褒美だ。受け取るがよい」
「ありがとうございます」
ジャラリと音を立てて両手で受け取った重い包みには、大量の金貨が詰まっていた。
散財などしなければ、きっと一生悠々自適に暮らしていけるほどの大金だろう。
だが、ここでシナリオ通りに退場するわけにはいかない。
「何かご用向きの際は、このハンターになんなりとお申しつけください。これからも、誠心誠意お仕えさせていただきます。王妃さまのためなら、なんでもいたします」
何かきっかけはないかと精一杯に言い募る俺へ目を向け、王妃は頷いて見せた。
「ふむ、その心がけ実によい。重用してやるとしよう」
「ありがたき幸せでございます……」
用が済んでもなかなか立ち去ろうとしない俺に、王妃は訝しげな視線を向ける。
「……どうした? 今日はもう下がってよいぞ」
王妃が手に持ったままの小箱が気になり、俺は恐る恐る指差して訊いてみた。
「あの、つかぬことをお伺いしますが、それをどうされるのでしょうか?」
「これをどうするのか聞きたいのか? ふふふ……それはな、オオカミに食わせてやるのさ」
意味深な笑みを浮かべる王妃の表情を見ていると、背筋に冷たいものが走る。
「オ、オオカミに食わせるのですか?」
王妃は笑みを深めていき、強張る俺に語って聞かせた。
「ああ、そうだ。美人食いオオカミの名に相応しい、極上のものを食わせてやろうと思ってな。私が直々に手料理を振る舞ってやるのさ」
王妃の手に持つそれが本当に白雪の心臓だったならば、父親に我が子の肉を食わせるということになるのだ。
あまりにも悍ましく悪辣な所業に恐れおののく。
しかしながら、王妃の美しすぎる暗黒微笑に、俺の目は釘づけになってしまう。
「そ、そうでしたか……王妃さまの手料理ともなれば、さぞやお喜びになるでしょうね。は、ははは……」
王妃が悪役らしすぎて本当に軌道修正できるのかなと不安になりつつ、俺は内心で涙目になりながら、乾いた笑いをこぼした。
「ふふふ、そうだろうとも。他の誰かに目を向けることなど許さん……」
愉しげに笑う王妃の細められた切れ長な目には、剣吞な光が灯っているような気がした。
世界一の美貌の座を奪われることへの怒りなのか、国王が他の者に気を向けることへの嫉妬なのかはわからないが、とんでもなく怖い。
さすが、悪役王妃と言うべきか……俺はこのお方を悪役にはしたくないのだけど……前途多難だ……。
内心で俺が頭を抱えているのをよそに、王妃が得意げに言った。
「それに、私はこう見えて器用なのだ。魔法料理も錬金術も得意だからな」
それから、王妃はふと思いついた様子で俺を見る。
「ああ、そうだ。狩猟の獲物を持ってくれば、すべて買い取ってやろう。料理の食材や錬金の材料にもなるからな」
「ご厚意、感謝いたします。ではまた、後日すぐにお伺いさせていただきます」
なんとか約束を取りつけることに成功し、俺は頭を下げてその場を後にした。
◆
――翌朝、早朝から獲物を狩り、俺は早々に王妃の元を訪ねた。
「おはようございます、王妃さま。上等なキジが狩れましたので新鮮なうちにお持ちしました。どうぞ、お納めください」
朝早くから大釜で作業していた様子の王妃は、快く対応してくれた。
「よく来たな、ハンター。ほう、これは上等なキジだ。美しい羽根は素材に、脂の乗った肉は料理に使えるな。褒美はこれでよいか?」
「はい! こんなにいただけるなんて、十分すぎるくらいです。ありがとうございます!!」
予想以上の報酬に驚きつつ、深々と頭を下げてその場を辞した。
――昼時、再び獲物を狩ってきた俺は、離宮の扉を叩く。
「こんにちは、王妃さま。見事なシカが狩れましたのでお持ちしました。どうぞ、お納めください」
午前に続いての来訪に、王妃は僅かに眉を上げ、微かに驚きの色を浮かべた。
「おや、また来たのか、ハンター。見事な角シカが三頭か。丁度、角素材が欲しかったのだ。褒美はこれでよいか?」
「はい! 王妃さまのお役に立てて光栄です。褒美の金まで弾んでいただいて、ありがとうございます!!」
俺が満面の笑みでお礼を言うと、王妃は小さく頷いた。
――夕暮れ時、再び獲物を狩ってきた俺は、本日三度目の訪問をする。
「こんばんは、王妃さま。巨大なクマが狩れましたのでお持ちしました。どうぞ、お納めください」
王妃の表情に明らかな困惑が浮かんだ。
美しい眉が僅かに寄せられ、俺を見る目に疑問の色が宿る。
「日を置かずによく来るな、ハンター。約束通りすべて買い取りはするが、そんなに大量に持って来られても、消費も処理もしきれんぞ……それほど、急いで金が入用なのか?」
「あ……ええ、入用といえば入用なのですが……できるだけ早く目標金額を貯めたかったもので……忙しなくお呼び出ししてしまって申し訳ございません」
王妃の動向が知りたかったのと、目的のために金が必要だったとはいえ、立て続けに獲物を持って来るのはさすがに迷惑だったかなと反省し、俺は肩を落とした。
王妃は口元に手を当て、何か思案するような素振りを見せ、奥の部屋から大きな箱を持ってきて、俺に差し出す。
「まとまった金額を前払いしてやる。ほれ、受け取るがよい」
大金貨の詰まった大きな箱を手渡され、俺は思ったのだ。
王妃は誰に対しても冷酷で悪辣なわけではない。
やはり、配下の者には優しいお方なのだと。
嬉しくなって目元がじんわりと潤んでくる。
「ありがとうございます! このご恩は一生忘れません! 俺の生涯をかけて、王妃さまに恩返しさせていただきます!!」
俺が大げさに感激する姿に、王妃はくすりと笑みをこぼす。
「うむ、私のために粉骨砕身して励むがよい」
「はい、もちろんでございます。では早速、用事のためにしばらく王都を離れますが、要件を済ませ次第、また狩猟の獲物をお持ちいたします」
「そうか、わかった……何かと騒がしいお前が来なくなると、ここもしばらく静かになるな……」
王都から離れることを告げると、王妃の表情が僅かに沈んだ気がした。
まるで、また静寂が訪れることを惜しむような……。
王妃の姿が、俺の目には寂しげに映ったのだ。
「すぐに帰ってまいりますから! 早急かつ迅速に大至急、用事を済ませて戻ってまいりますから!!」
前のめりになって強く訴えると、王妃は少し驚いた顔をし、次いで呆れたように笑ってぼやく。
「騒々しいやつだな……いいから、早く用事を済ませてこい」
「はい、行ってまいります!」
力強く返事し、俺は急いで戻って来ようと決意したのだった。
◆
通常なら一月以上は要する用事を、気合いと根性で早々に済ませ、結果的に十日余りで帰って来た。
「ただいま戻りました、王妃さま」
「戻ったか、ハンター――」
背中と両脇に山盛りの荷物を抱えている俺の姿を見て、王妃が唖然とした顔をする。
「――それで、なんだその大荷物は?」
「王妃さまへの貢ぎ物でございます。どうぞ、お納めください」
俺はニコニコしながら荷物を広げて見せた。
次々と取り出される品物の数々に、王妃の目が驚きに見開かれていく。
「……これ全部、私のために用意したのか?」
「はい。王妃さまの美貌を一層引き立てるため、各地から選りすぐりの美容品や宝飾品を掻き集めてきました」
王妃は呆然とした表情で品々を眺め、やがて額に手を当てて呟いた。
「ハンター……お前は馬鹿なのか?」
突然の言葉に俺はきょとんとしてしまう。
「藪から棒に何をおっしゃるんですか、王妃さま。知能は人並みだと思いますけど……お気に召さない品でもございましたか?」
王妃は大きな溜息をつき、俺を見つめる目に困惑の色を浮かべる。
「はぁ……そうではない。急いで用立てた爵位を買えるほどの大金の使い道が、私への貢ぎ物というのは馬鹿げているだろう。それも、こんな貴重で高価な品ばかり……これでは、お前の取り分がまるでないではないか」
王妃が心配してくれている様子に、俺は安心させようと思い、あっけらかんと笑って見せた。
「俺は森林を所有していますので、細々と生活する分には狩猟や野草で賄えますから、大して金は必要ないんです。それに、王妃さまを彩り飾り立てること以上に価値ある金の使い道などございません」
王妃は俺の言葉を聞くと、再び額に手を当てて首を振った。
「ハンター、お前……欲がないのを通り越して、よもや馬鹿だな……」
「王妃さまが一層美しく輝いてくださるなら、俺は馬鹿でもいいです」
俺の屈託のない笑顔を見て、王妃は思うところがあるような複雑な表情を浮かべる。
「ふむ、お前はベータだろう。アルファでもないのに、随分と私の美貌に心酔しているようだが……ベータまでも虜にして狂わせてしまうとは、やはり私の美しさは罪作りだな。ふふふふふ」
「はい、王妃さまは大変に罪作りな美しさでございます……」
妖しげな王妃の微笑みに見惚れ、俺は頬を赤らめながら頷いた。
王妃は非常に上機嫌になった様子で、俺の側まで歩み寄って来て囁く。
「ふふふ、実に気分がよい。その献身の褒美として、今回は特別に私に触れることを許してやろう。一か所だけ、好きな場所を選べ」
予想外の言葉に、俺は目を丸くして固まる。
「!? ……お、俺のような者が王妃さまに触れてしまっても、よろしいのですか?」
「ああ、特別に許してやろう。お前はどこに触れたい?」
妖艶な笑みを浮かべる王妃は、自らの身体に白い指先を滑らせながら、俺を誘惑するように囁く。
「よく目を奪われているこの紅い唇か? それとも平たい胸でも触ってみるか? 大胆に尻を撫でてみてもよいぞ?」
王妃の婀娜っぽい仕草や声音に心臓が跳ね、俺は顔を真っ赤にして思わず生唾を呑み込んだ。
「ごくり……あ、あの、その白くて美しいお手に触れさせていただいても、よろしいでしょうか?」
意を決してそう訊くと、王妃は拍子抜けしたような顔をし、次いでくすりと笑う。
「ふふ、つくづく欲のないやつだな。ほら、好きに触れるがよい」
差し出された王妃の白い手を凝視し、俺は荷物から美容品を取り出す。
「ありがとうございます! では早速、用意した美容品でお手入れさせてください!!」
「うむ……ん? お手入れ?」
今度は王妃が目を丸くした。
俺は王妃の手を引いてイスに座らせ、テーブルに美容品の数々をズラリと並べ、意気揚々と美容施術を始める。
「まずは美容液でお肌を整え、保湿クリームを塗り込んで潤いを維持、血行促進のマッサージもしましょう。あ、ここのツボ肩こりに効くんですよ。最後の仕上げに、爪に今流行の爪紅を塗りましょう」
――俺は考えたのだ。
世界一の美貌の座を白雪に奪われることで、王妃が悪役になってしまうのなら、王妃が世界一の美貌を維持し続ければ良いのだと。
莫大な金が必要だったのも、国中から魅力を向上させるバフアイテムを掻き集めるためだった。
本来なら、後々に白雪が入手する予定だった貴重な宝飾品・一点物の魅力アップアイテムも、俺がゲーム知識を駆使して先に入手してしまえば、王妃が世界一の美貌を維持することも可能になるはず!
そう、俺は王妃を悪役にしないため、さらに美しく磨き上げることにしたのだ!!
「ハンター、この私がせっかく触れることを許しているのだぞ?」
一心不乱に美容施術に集中していると、王妃は退屈そうにぼやき、俺にちょっかいをかけてくる。
「もう少し面白い反応をしたらどうだ……」
王妃が長い脚を組み替え、足の指先で俺の脚を摩ってくるものだから、俺は手元が狂いそうになって声を上げる。
「悪戯はお止めください! 爪紅がよじれてしまいます! お望みでしたら、足にもお手入れさせていただきますから!!」
俺の言い草が気に入らなかったのか、王妃は目を眇めて胡乱な視線を向けてくる。
「お前……この私にその反応というのはどうなのだ?」
俺は顔を上げ、真摯な眼差しで王妃を見つめる。
「王妃さまだからこその大真面目な反応です」
そう告げると、王妃はなんともいえない表情で嘆息する。
「ふぅ……まあ、よい。お前の手は暖かくて心地がよい。足にも頼むとしよう」
「はい、喜んでお手入れさせていただきます!」
王妃から頼りにされることが嬉しくて、王妃をより美しくできることも楽しくて、俺は精一杯に磨き上げた。
「――ふう、完成です。我ながらいい仕事をしました」
施術が終われば、丁寧に手入れした王妃の手足はさらに美しい輝きを放っていた。
美容術を習得してきた甲斐があったと、渾身の出来栄えに自画自賛する。俺は大満足だ。
「ほう、これはなかなか美しいな」
王妃も綺麗に仕上げられた指先を眺め、瞳を輝かせている。
「今の流行は淡い色なのですが、やはり王妃さまには艶やかな色がお似合いです。真紅を選んで大正解でした」
「うむ、気に入ったぞ」
「お気に召していただけて何よりです」
「まったく、特別に私に触れることを褒美にしたはずなのに、これではまた褒美を増やさねばならないではないか」
そう言いながら王妃は身体を寄せ、爪紅を塗った綺麗な指先で俺の顎を擽り、妖しげな視線で誘う。
「あ……あの、わざわざ色仕掛けのようなことをして篭絡されなくても、俺は始めから王妃さまの味方です。王妃さまのためなら、なんでもしますから、お身体はもっと大事になさってください」
擽る手を取って俺が身体を離すと、王妃は眉を顰めて俺を見つめた。
「む……金を渡しても貢ぎ物を買ってきそうだし、お前は一体何を望むのだ? なんだったら褒美になる?」
「王妃さまが美しく健やかであることが、俺にとって何よりの褒美になります」
本心からそう告げれば、王妃は困り果てた顔をしてぼやく。
「まったく……何も欲さず、私の美貌が褒美になるなんて、お前は本当に変なやつだ」
「王妃さまが少しでも喜んでくださるなら、俺は変でもいいです」
本当にそうなのだから仕方ないのだ。俺は開き直って笑って見せた。
すると、王妃は魔法の鏡の前に立ち、いつものように問いかける。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だ?」
『世界で一番美しいのは――紅蓮王妃です』
当然、魔法の鏡には王妃の姿が映し出された。
王妃は俺の方へと振り返り、自慢げに綺麗な指先で頬を撫で、胸を張って艶やかに笑って見せる。
「喜べ、ハンター。お前が丹念に手入れをし、一層輝く私は他の追随など許さない美しさだ。まぁ、当然のことではあるが。ふふふふふ」
「はい、王妃さまの美貌は何者にも勝る至高の美しさでございます」
まさに輝かんばかりの美しさで、楽しげに笑う王妃の姿が嬉しくて、俺は胸がいっぱいになる思いで見惚れていたのだった。
◆
広大な王城の端に位置するそこには、闇に覆われた禍々しい外観の離宮が聳え立っている。
日当たりが悪く、ひんやりと湿った空気が纏わりつく、いかにも悪役の根城といった雰囲気の場所だ。
苔むした石階段を上っていき、王妃の待つ部屋の前に辿り着く。
俺は深呼吸をし、邪悪な形相をしたガーゴイルのドアノッカーを叩き、重い扉を押し開ける。
「ただいま戻りました、王妃さま」
仄暗い部屋に入ると、明かりの灯る窓辺に座り、王妃は分厚い魔法書を読んでいた。
透き通るような雪花石膏の肌、真っ直ぐに伸びた濡れ羽色の髪、燃えるように咲き誇る紅蓮華の瞳。
それは、誰もが一目見て心を奪われる、目の覚めるような絶世の美貌だ。
王妃は顔を上げて俺を見やり、流麗な所作で立ち上がって歩み寄ってくる。
男のオメガである王妃は、俺よりも背が高く、一八五センチは超えているだろうか。
引き締まった身体はスーパーモデル並みの体型で、一分の隙もない完璧な美しさなのだ。
俺は目にするたび、その凛とした高貴な佇まいに見惚れ、ただただ見入ってしまう。
王妃はそんな惚けている俺を見て、微かに妖艶な笑みを浮かべ、口を開く。
「戻ったか。それで、首尾の方は?」
「は、はい……これが証拠の品です」
慌てて懐から小箱を取り出す。
王妃の前で膝を突き、蓋を開けて中に収めた物を見せ、恭しく差し出した。
「獲物の心臓でございます。どうぞ、お納めください」
「ほお……」
そこには、先ほど取ったばかりの新鮮な心臓が収められている。
狩猟で獲った猪の心臓を抜き取り、白雪の心臓の代わりに用意したのだ。
緊張で俺の心臓が早鐘を打つ中、王妃は小箱を受け取るとそれをじっと見つめた。
「よくやった。褒めてつかわす」
「……王妃さまのお役に立てて、これ以上の喜びはございません」
王妃は満足そうに頷くと、奥にある壁掛けの鏡の前へと向かい、問いかける。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だ?」
すると、鏡の表面が水面の波紋のように波打ち、人影を映し出す。
『世界で一番美しいのは――紅蓮王妃です』
人影が鮮明になれば、王妃の姿が映し出され、魔法の鏡はそう答えたのだ。
「ふふふふふ……これで私の美しさを脅かすものは誰もいなくなった」
王妃は嬉しそうに笑い、包みを取り出して俺に差し出す。
「それ、褒美だ。受け取るがよい」
「ありがとうございます」
ジャラリと音を立てて両手で受け取った重い包みには、大量の金貨が詰まっていた。
散財などしなければ、きっと一生悠々自適に暮らしていけるほどの大金だろう。
だが、ここでシナリオ通りに退場するわけにはいかない。
「何かご用向きの際は、このハンターになんなりとお申しつけください。これからも、誠心誠意お仕えさせていただきます。王妃さまのためなら、なんでもいたします」
何かきっかけはないかと精一杯に言い募る俺へ目を向け、王妃は頷いて見せた。
「ふむ、その心がけ実によい。重用してやるとしよう」
「ありがたき幸せでございます……」
用が済んでもなかなか立ち去ろうとしない俺に、王妃は訝しげな視線を向ける。
「……どうした? 今日はもう下がってよいぞ」
王妃が手に持ったままの小箱が気になり、俺は恐る恐る指差して訊いてみた。
「あの、つかぬことをお伺いしますが、それをどうされるのでしょうか?」
「これをどうするのか聞きたいのか? ふふふ……それはな、オオカミに食わせてやるのさ」
意味深な笑みを浮かべる王妃の表情を見ていると、背筋に冷たいものが走る。
「オ、オオカミに食わせるのですか?」
王妃は笑みを深めていき、強張る俺に語って聞かせた。
「ああ、そうだ。美人食いオオカミの名に相応しい、極上のものを食わせてやろうと思ってな。私が直々に手料理を振る舞ってやるのさ」
王妃の手に持つそれが本当に白雪の心臓だったならば、父親に我が子の肉を食わせるということになるのだ。
あまりにも悍ましく悪辣な所業に恐れおののく。
しかしながら、王妃の美しすぎる暗黒微笑に、俺の目は釘づけになってしまう。
「そ、そうでしたか……王妃さまの手料理ともなれば、さぞやお喜びになるでしょうね。は、ははは……」
王妃が悪役らしすぎて本当に軌道修正できるのかなと不安になりつつ、俺は内心で涙目になりながら、乾いた笑いをこぼした。
「ふふふ、そうだろうとも。他の誰かに目を向けることなど許さん……」
愉しげに笑う王妃の細められた切れ長な目には、剣吞な光が灯っているような気がした。
世界一の美貌の座を奪われることへの怒りなのか、国王が他の者に気を向けることへの嫉妬なのかはわからないが、とんでもなく怖い。
さすが、悪役王妃と言うべきか……俺はこのお方を悪役にはしたくないのだけど……前途多難だ……。
内心で俺が頭を抱えているのをよそに、王妃が得意げに言った。
「それに、私はこう見えて器用なのだ。魔法料理も錬金術も得意だからな」
それから、王妃はふと思いついた様子で俺を見る。
「ああ、そうだ。狩猟の獲物を持ってくれば、すべて買い取ってやろう。料理の食材や錬金の材料にもなるからな」
「ご厚意、感謝いたします。ではまた、後日すぐにお伺いさせていただきます」
なんとか約束を取りつけることに成功し、俺は頭を下げてその場を後にした。
◆
――翌朝、早朝から獲物を狩り、俺は早々に王妃の元を訪ねた。
「おはようございます、王妃さま。上等なキジが狩れましたので新鮮なうちにお持ちしました。どうぞ、お納めください」
朝早くから大釜で作業していた様子の王妃は、快く対応してくれた。
「よく来たな、ハンター。ほう、これは上等なキジだ。美しい羽根は素材に、脂の乗った肉は料理に使えるな。褒美はこれでよいか?」
「はい! こんなにいただけるなんて、十分すぎるくらいです。ありがとうございます!!」
予想以上の報酬に驚きつつ、深々と頭を下げてその場を辞した。
――昼時、再び獲物を狩ってきた俺は、離宮の扉を叩く。
「こんにちは、王妃さま。見事なシカが狩れましたのでお持ちしました。どうぞ、お納めください」
午前に続いての来訪に、王妃は僅かに眉を上げ、微かに驚きの色を浮かべた。
「おや、また来たのか、ハンター。見事な角シカが三頭か。丁度、角素材が欲しかったのだ。褒美はこれでよいか?」
「はい! 王妃さまのお役に立てて光栄です。褒美の金まで弾んでいただいて、ありがとうございます!!」
俺が満面の笑みでお礼を言うと、王妃は小さく頷いた。
――夕暮れ時、再び獲物を狩ってきた俺は、本日三度目の訪問をする。
「こんばんは、王妃さま。巨大なクマが狩れましたのでお持ちしました。どうぞ、お納めください」
王妃の表情に明らかな困惑が浮かんだ。
美しい眉が僅かに寄せられ、俺を見る目に疑問の色が宿る。
「日を置かずによく来るな、ハンター。約束通りすべて買い取りはするが、そんなに大量に持って来られても、消費も処理もしきれんぞ……それほど、急いで金が入用なのか?」
「あ……ええ、入用といえば入用なのですが……できるだけ早く目標金額を貯めたかったもので……忙しなくお呼び出ししてしまって申し訳ございません」
王妃の動向が知りたかったのと、目的のために金が必要だったとはいえ、立て続けに獲物を持って来るのはさすがに迷惑だったかなと反省し、俺は肩を落とした。
王妃は口元に手を当て、何か思案するような素振りを見せ、奥の部屋から大きな箱を持ってきて、俺に差し出す。
「まとまった金額を前払いしてやる。ほれ、受け取るがよい」
大金貨の詰まった大きな箱を手渡され、俺は思ったのだ。
王妃は誰に対しても冷酷で悪辣なわけではない。
やはり、配下の者には優しいお方なのだと。
嬉しくなって目元がじんわりと潤んでくる。
「ありがとうございます! このご恩は一生忘れません! 俺の生涯をかけて、王妃さまに恩返しさせていただきます!!」
俺が大げさに感激する姿に、王妃はくすりと笑みをこぼす。
「うむ、私のために粉骨砕身して励むがよい」
「はい、もちろんでございます。では早速、用事のためにしばらく王都を離れますが、要件を済ませ次第、また狩猟の獲物をお持ちいたします」
「そうか、わかった……何かと騒がしいお前が来なくなると、ここもしばらく静かになるな……」
王都から離れることを告げると、王妃の表情が僅かに沈んだ気がした。
まるで、また静寂が訪れることを惜しむような……。
王妃の姿が、俺の目には寂しげに映ったのだ。
「すぐに帰ってまいりますから! 早急かつ迅速に大至急、用事を済ませて戻ってまいりますから!!」
前のめりになって強く訴えると、王妃は少し驚いた顔をし、次いで呆れたように笑ってぼやく。
「騒々しいやつだな……いいから、早く用事を済ませてこい」
「はい、行ってまいります!」
力強く返事し、俺は急いで戻って来ようと決意したのだった。
◆
通常なら一月以上は要する用事を、気合いと根性で早々に済ませ、結果的に十日余りで帰って来た。
「ただいま戻りました、王妃さま」
「戻ったか、ハンター――」
背中と両脇に山盛りの荷物を抱えている俺の姿を見て、王妃が唖然とした顔をする。
「――それで、なんだその大荷物は?」
「王妃さまへの貢ぎ物でございます。どうぞ、お納めください」
俺はニコニコしながら荷物を広げて見せた。
次々と取り出される品物の数々に、王妃の目が驚きに見開かれていく。
「……これ全部、私のために用意したのか?」
「はい。王妃さまの美貌を一層引き立てるため、各地から選りすぐりの美容品や宝飾品を掻き集めてきました」
王妃は呆然とした表情で品々を眺め、やがて額に手を当てて呟いた。
「ハンター……お前は馬鹿なのか?」
突然の言葉に俺はきょとんとしてしまう。
「藪から棒に何をおっしゃるんですか、王妃さま。知能は人並みだと思いますけど……お気に召さない品でもございましたか?」
王妃は大きな溜息をつき、俺を見つめる目に困惑の色を浮かべる。
「はぁ……そうではない。急いで用立てた爵位を買えるほどの大金の使い道が、私への貢ぎ物というのは馬鹿げているだろう。それも、こんな貴重で高価な品ばかり……これでは、お前の取り分がまるでないではないか」
王妃が心配してくれている様子に、俺は安心させようと思い、あっけらかんと笑って見せた。
「俺は森林を所有していますので、細々と生活する分には狩猟や野草で賄えますから、大して金は必要ないんです。それに、王妃さまを彩り飾り立てること以上に価値ある金の使い道などございません」
王妃は俺の言葉を聞くと、再び額に手を当てて首を振った。
「ハンター、お前……欲がないのを通り越して、よもや馬鹿だな……」
「王妃さまが一層美しく輝いてくださるなら、俺は馬鹿でもいいです」
俺の屈託のない笑顔を見て、王妃は思うところがあるような複雑な表情を浮かべる。
「ふむ、お前はベータだろう。アルファでもないのに、随分と私の美貌に心酔しているようだが……ベータまでも虜にして狂わせてしまうとは、やはり私の美しさは罪作りだな。ふふふふふ」
「はい、王妃さまは大変に罪作りな美しさでございます……」
妖しげな王妃の微笑みに見惚れ、俺は頬を赤らめながら頷いた。
王妃は非常に上機嫌になった様子で、俺の側まで歩み寄って来て囁く。
「ふふふ、実に気分がよい。その献身の褒美として、今回は特別に私に触れることを許してやろう。一か所だけ、好きな場所を選べ」
予想外の言葉に、俺は目を丸くして固まる。
「!? ……お、俺のような者が王妃さまに触れてしまっても、よろしいのですか?」
「ああ、特別に許してやろう。お前はどこに触れたい?」
妖艶な笑みを浮かべる王妃は、自らの身体に白い指先を滑らせながら、俺を誘惑するように囁く。
「よく目を奪われているこの紅い唇か? それとも平たい胸でも触ってみるか? 大胆に尻を撫でてみてもよいぞ?」
王妃の婀娜っぽい仕草や声音に心臓が跳ね、俺は顔を真っ赤にして思わず生唾を呑み込んだ。
「ごくり……あ、あの、その白くて美しいお手に触れさせていただいても、よろしいでしょうか?」
意を決してそう訊くと、王妃は拍子抜けしたような顔をし、次いでくすりと笑う。
「ふふ、つくづく欲のないやつだな。ほら、好きに触れるがよい」
差し出された王妃の白い手を凝視し、俺は荷物から美容品を取り出す。
「ありがとうございます! では早速、用意した美容品でお手入れさせてください!!」
「うむ……ん? お手入れ?」
今度は王妃が目を丸くした。
俺は王妃の手を引いてイスに座らせ、テーブルに美容品の数々をズラリと並べ、意気揚々と美容施術を始める。
「まずは美容液でお肌を整え、保湿クリームを塗り込んで潤いを維持、血行促進のマッサージもしましょう。あ、ここのツボ肩こりに効くんですよ。最後の仕上げに、爪に今流行の爪紅を塗りましょう」
――俺は考えたのだ。
世界一の美貌の座を白雪に奪われることで、王妃が悪役になってしまうのなら、王妃が世界一の美貌を維持し続ければ良いのだと。
莫大な金が必要だったのも、国中から魅力を向上させるバフアイテムを掻き集めるためだった。
本来なら、後々に白雪が入手する予定だった貴重な宝飾品・一点物の魅力アップアイテムも、俺がゲーム知識を駆使して先に入手してしまえば、王妃が世界一の美貌を維持することも可能になるはず!
そう、俺は王妃を悪役にしないため、さらに美しく磨き上げることにしたのだ!!
「ハンター、この私がせっかく触れることを許しているのだぞ?」
一心不乱に美容施術に集中していると、王妃は退屈そうにぼやき、俺にちょっかいをかけてくる。
「もう少し面白い反応をしたらどうだ……」
王妃が長い脚を組み替え、足の指先で俺の脚を摩ってくるものだから、俺は手元が狂いそうになって声を上げる。
「悪戯はお止めください! 爪紅がよじれてしまいます! お望みでしたら、足にもお手入れさせていただきますから!!」
俺の言い草が気に入らなかったのか、王妃は目を眇めて胡乱な視線を向けてくる。
「お前……この私にその反応というのはどうなのだ?」
俺は顔を上げ、真摯な眼差しで王妃を見つめる。
「王妃さまだからこその大真面目な反応です」
そう告げると、王妃はなんともいえない表情で嘆息する。
「ふぅ……まあ、よい。お前の手は暖かくて心地がよい。足にも頼むとしよう」
「はい、喜んでお手入れさせていただきます!」
王妃から頼りにされることが嬉しくて、王妃をより美しくできることも楽しくて、俺は精一杯に磨き上げた。
「――ふう、完成です。我ながらいい仕事をしました」
施術が終われば、丁寧に手入れした王妃の手足はさらに美しい輝きを放っていた。
美容術を習得してきた甲斐があったと、渾身の出来栄えに自画自賛する。俺は大満足だ。
「ほう、これはなかなか美しいな」
王妃も綺麗に仕上げられた指先を眺め、瞳を輝かせている。
「今の流行は淡い色なのですが、やはり王妃さまには艶やかな色がお似合いです。真紅を選んで大正解でした」
「うむ、気に入ったぞ」
「お気に召していただけて何よりです」
「まったく、特別に私に触れることを褒美にしたはずなのに、これではまた褒美を増やさねばならないではないか」
そう言いながら王妃は身体を寄せ、爪紅を塗った綺麗な指先で俺の顎を擽り、妖しげな視線で誘う。
「あ……あの、わざわざ色仕掛けのようなことをして篭絡されなくても、俺は始めから王妃さまの味方です。王妃さまのためなら、なんでもしますから、お身体はもっと大事になさってください」
擽る手を取って俺が身体を離すと、王妃は眉を顰めて俺を見つめた。
「む……金を渡しても貢ぎ物を買ってきそうだし、お前は一体何を望むのだ? なんだったら褒美になる?」
「王妃さまが美しく健やかであることが、俺にとって何よりの褒美になります」
本心からそう告げれば、王妃は困り果てた顔をしてぼやく。
「まったく……何も欲さず、私の美貌が褒美になるなんて、お前は本当に変なやつだ」
「王妃さまが少しでも喜んでくださるなら、俺は変でもいいです」
本当にそうなのだから仕方ないのだ。俺は開き直って笑って見せた。
すると、王妃は魔法の鏡の前に立ち、いつものように問いかける。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だ?」
『世界で一番美しいのは――紅蓮王妃です』
当然、魔法の鏡には王妃の姿が映し出された。
王妃は俺の方へと振り返り、自慢げに綺麗な指先で頬を撫で、胸を張って艶やかに笑って見せる。
「喜べ、ハンター。お前が丹念に手入れをし、一層輝く私は他の追随など許さない美しさだ。まぁ、当然のことではあるが。ふふふふふ」
「はい、王妃さまの美貌は何者にも勝る至高の美しさでございます」
まさに輝かんばかりの美しさで、楽しげに笑う王妃の姿が嬉しくて、俺は胸がいっぱいになる思いで見惚れていたのだった。
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