【完結】どうも、使い魔の人間です。~魔族しかいない世界でモフモフ魔族に溺愛されてます~

胡蝶乃夢

文字の大きさ
7 / 37

7.ワーウルフ・グレイとの決闘

しおりを挟む
 身振り手振りを交えながら説明すると、ノヴァはうろたえて不安そうに言う。

「まさか、そんなことで決闘に勝てるって言うのか?! 信じられない……他に方法はないのか? そんな聞いたこともないやり方で、一か八かの賭けにでるしかないなんて……」
「それこそ、戦闘じゃ僕はなんの役にも立てないけど、これは僕の得意分野、専売特許だから絶対に負けないよ」

 僕が力強く訴えれば、ノヴァは半信半疑といった表情で考え込む。
 思案と同時に視線が動き、僕が作った家具など部屋の中を見回している。

「もう、後戻りはできないな……わかった。お前に賭けよう」

 ノヴァは覚悟を決めた顔で呟き、頷いてくれた。

「大丈夫、大船に乗ったつもりで僕に任せて。あとは準備が必要だから、僕は一度スラムに戻って色々と用意してくるね」

 学園に着いて早々だけど、スラムへの戻り仕度を始める。
 ノヴァはせかせかとする僕に疑わしげな視線を向け、覗き込んできた。

「……お前、なんか楽しそうだな」
「え、そう?」
「顔がにやけてる」

 鼻歌が出そうなのを抑えていたのに、ワクワクしているのがバレてしまった。

 ようやく、僕の人間らしさをわからせられる機会がきたのだ。
 合法的に特技が披露できるのだと思うと、笑いが込み上げてきてしまう。

「そりゃあ、またスラムの可愛いみんなに会えるし、うちの子達をコケにするヤツをギャフンと言わせられるんだから、楽しみだよね。くっくっくっくっくっ」

 僕の含み笑いを不気味がって後ずさっていくノヴァが、毛を逆立てて『やんのかステップ』する愛猫みたいで可愛い。

「だから、その不気味な笑い方やめろって……もう、早く行け!」
「ぷふっ」

 そんなやり取りをしつつ、決闘に向けて準備を進めたのだった。


 ◆


 申請していた決闘の当日。
 学園のコロシアム(円形闘技場)には、劣等種と上位種の対戦を観戦しに、多くの魔族達が集まってきていた。

 観戦者が注目する中、まず初めに姿を現わしたのは、公正な決闘の審査員を務める、聖人学園が誇る教員達だ。
 職員筆頭、審美眼に富んだトロール(巨人)のビューティ、職人気質なドワーフ(小人)のマイスタ、洞察力に長けたピクシー(虫人)のグルーヴ、以上の三名が決闘の勝敗を審判する。

 審査員席に着いた憧れの教員の姿を見て、観戦者は各々に感嘆の声を上げる。

「はぁ、いつ見てもビューティ先生は隙のないお美しさだ」
「マイスタ先生のダンディーな横顔、シビれてしまいます」
「パフォーマンスや美声なら、グルーヴ先生がダントツです」
「先生方のお姿を拝見できるだけでも、見にきた甲斐がありました」

 観戦者席が色めき立っているところ、満を持して本日の主役が登場する。

「……わぁ、あれがダークエルフか。先生方を見たあとだと余計ショボいな。いや、劣等種だからそんなものか」
「あの横にひっついてるのはなんだ? 使い魔か? 人型の使い魔なら珍しいが、どうにも地味でパッとしないな。なんか小さいし」

 看過できぬ言葉が聞こえてきたので、僕は観戦者席をキッっと睨みつけて叫ぶ。

「今、小さいって言ったのどこのどいつだ?! 誰がチビだプチだ、ミニサイズ通りこしてマイクロミニサイズだ、コラー!」
「そこまで言ってない」

 ここは黙っているわけにはいかないなと、声を張って主張する。

「大体、ノヴァをショボいとか目が節穴なんじゃないの? 派手さを競う場じゃないのに、何言ってくれちゃってんの? どう見たって、控えめな装いでも隠しきれないこの美貌とか凛とした佇まいとか、うちの子が世界で一番可愛いじゃろがい、コノヤロー!!」
「なんだあの使い魔……親バカか?」
「おい、お前は何を言っているんだ。恥ずかしいから止めろ……」

 僕がうちの子の可愛さを熱弁していると、もう一方の主役・グレイが姿を現わす。
 カースト順位・七位であるワーウルフの登場に、会場全体がワッと湧き立つ。

「おう、逃げずに来たじゃねぇか」
「当然だ。お前に勝って俺達は這い上がる」
「ははっ、いいねぇ。ねじ伏せがいがあるぜ」

 グレイはノヴァと僕を見下ろし、舌舐めずりしながら笑った。

「それで、どんな勝負をするんだ?」
「は? 決闘申請した内容を確認していないのか?」
「ああ、どんな勝負だろうとオレが勝つに決まってんだからなぁ。この場で確認すりゃ済む話だろ?」
「この野郎、舐め腐りやがって!」

 軽く見られ怒りに震えるノヴァをよそに、グレイは飄々と訊く。

「で、勝負内容は?」

 ノヴァの代わりに僕が一歩前へ出て、勝負内容を告げる。

「ペットのトリミング対決だよ」

 グレイの目が点になり、きょとんとした表情で訊き返す。

「……トリミング? なんだそれは? 聞いたこともないぜ?」
「トリミングは人間の歴史をさかのぼれば、古代文献にもわずかに残っている技術だ」

 ノヴァが古代文献に残っているのを確認し、決闘申請してくれた。
 この世界には、ペットをトリミングする文化がないらしい。

「全知全能な人間たるもの、飼っているペットの管理も完璧にできて然るべき。ペットの健康管理や躾だけではなく、美容メンテナンスも重要ということだよ。よって、どちらがペットをより美しく健やかにトリミングできるかを競う対決だ」
「ペットの美容メンテナンス……?」

 首を傾げて唸っているグレイに、さらに付け加えて伝える。

「あと、決闘申請でも提出していたけど、こちらにはペットと呼べる魔獣がいないから、そちらの魔犬をトリミングさせてもらうルールにしたから。グレイの魔犬を僕とグレイでそれぞれ一匹ずつトリミングする」
「僕? ……はぁっ?! まさかダークエルフじゃなくて、この小せぇ使い魔の方がオレの対戦相手だって言うのか?!!」

 予想外だったのか、困惑するグレイは大声で喚いた。

「当然、使い魔の能力も主人の実力の内だからね。僕が対戦相手でも、何の問題もないはずだよ」

 言葉を詰まらせるグレイは、たじろいで頷く。

「うぐっ、それはたしかにそうだが……」
「じゃあ、改めてルールを説明するね。トリミングに使う道具はこちらで用意したから、制限時間内に各々でペットのトリミングをする。主にブラッシング・シャンプー・ドライング・耳そうじ・爪切りといった内容だ。ペットの負担が少ないように手際よくこなせるかも評価点になる。最終的な審判は審査員がして勝敗を決める。以上だよ」
「何かと思えば、ペットを風呂に入れて磨けばいいのか……ははっ、それなら楽勝じゃねぇか!」

 具体的な内容を聞いて簡単だと思ったのか、グレイは自信満々に鼻を鳴らした。

「それじゃあ、一匹お借りするね」
「ああ、いいぜ。ほら、行ってこい、オルトロス」

 グレイは一方の魔犬の背を叩いて、こちらへと送り出す。
 僕は満面の笑みを浮かべ、両腕を広げて待機する。

「おいで、オルトロス♡」
「ガルルルルル! ガウゥッ、ガウガウッ!」

 魔犬は不承不承といった様子で唸りつつも、僕のところまで来てくれた。

「ふわぁ~♡ それぞれの頭で違う鳴き方するんだねぇ~! 間近で見るとやっぱり大っきい~! 大きなモフモフ、可愛い~♡♡♡」
「おい、そんな無防備に手を出したら噛まれ――」

 ガチンッ!

「――って、危なっ!!」

 噛まれそうになった瞬間、ノヴァが僕を抱きかかえて後退し、間一髪で避けた。

「あ、そうだそうだ。言い忘れてたが、オレ以外には懐かねぇから、言うこときかねぇと思うぜ。片方は噛み癖があるから、せいぜい噛み千切られねぇように気ぃつけろよぉ」
「それを早く言え、クソ野郎が!」

 ノヴァがグレイに悪態を吐き、僕に注意を促し振り返る。

「危ないぞ、うかつに手を出すな……って」

 だがしかし、僕はすでにノヴァの腕を抜け出し、魔犬に夢中なのである。

「あは~♡ 毛質硬いねぇ~、ケモノくっさ♡ くっさ、くっさぁ~♡ すーーーー、はーーーー、ん~くっさぁ~い♡ 今からキレイにトリミングしてあげるからねぇ~♡ んふふふふ♡」
「お前は何をしているんだ、何を?」

 胡乱な視線を向けるノヴァに睨まれ、ハッとした僕はキリリと表情を引き締める。

「おほん。気を取り直して……制限時間は二時間、先に仕上げた方から審査してもらう。では、決闘を開始する。レディー・ゴー!」

 一世一代の大勝負。僕はノヴァに代って、混ざり者達の命運を賭けた決闘に挑む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

りゆき
BL
俺の部屋の天井から降って来た超絶美形の男。 そいつはいきなり俺の唇を奪った。 その男いわく俺は『運命の相手』なのだと。 いや、意味分からんわ!! どうやら異世界からやって来たイケメン。 元の世界に戻るには運命の相手と結ばれないといけないらしい。 そんなこと俺には関係ねー!!と、思っていたのに… 平凡サラリーマンだった俺の人生、異世界人への嫁入りに!? そんなことある!?俺は男ですが!? イケメンたちとのわちゃわちゃに巻き込まれ、愛やら嫉妬やら友情やら…平凡生活からの一転!? スパダリ超絶美形×平凡サラリーマンとの嫁入りラブコメ!! メインの二人以外に、 ・腹黒×俺様 ・ワンコ×ツンデレインテリ眼鏡 が登場予定。 ※R18シーンに印は入れていないのでお気をつけください。 ※前半は日本舞台、後半は異世界が舞台になります。 ※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載中。 ※完結保証。 ※ムーンさん用に一話あたりの文字数が多いため分割して掲載。 初日のみ4話、毎日6話更新します。 本編56話×分割2話+おまけの1話、合計113話。

触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?

雪 いつき
BL
 仕事帰りにマンホールに落ちた森川 碧葉(もりかわ あおば)は、気付けばヌメヌメの触手生物に宙吊りにされていた。 「ちょっとそこのお兄さん! 助けて!」  通りすがりの銀髪美青年に助けを求めたことから、回らなくてもいい運命の歯車が回り始めてしまう。  異世界からきた聖女……ではなく聖者として、神聖力を目覚めさせるためにドラゴン討伐へと向かうことに。王様は胡散臭い。討伐仲間の騎士様たちはいい奴。そして触手生物には、愛されすぎて喘がされる日々。  どうしてこんなに触手生物に愛されるのか。ピィピィ鳴いて懐く触手が、ちょっと可愛い……?  更には国家的に深刻な問題まで起こってしまって……。異世界に来たなら悠々自適に過ごしたかったのに!  異色の触手と氷の(天然)騎士様に溺愛されすぎる生活が、今、始まる――― ※昔書いていたものを加筆修正して、小説家になろうサイト様にも上げているお話です。

【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」 最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。 そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。 亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。 「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」 ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。 彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。 悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。 ※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。   ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

処理中です...