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22.カースト最下位から最上位へ
「これなら、俺らしいだろう?」
「うん、ノヴァは人間ができてるよ」
僕がそう褒めると、ノヴァはきょとんとした顔をし、次いでフハッっと噴き出して笑う。
「前にもそんなこと言ってたな」
「そうだっけ? ノヴァは良くできた人間だって褒めてるんだよ」
照れたように頬を掻き、ノヴァははにかみながら言う。
「劣等種と呼ばれていた俺が、全知全能な人間みたいだと褒められるのは、こそばゆいものがあるな」
僕だけじゃない、仲間達も集まってきてノヴァを称える。
「カースト順位・一位だぜ? 快挙を成し遂げたんだ。もっと自信持って喜べよ」
「そうでござる。己こそがもっとも人間に近い魔族なのだと、胸を張れば良いのでござる」
「さあさあ、勝利を盛大に祝い、宴を開こう。この大勝利を祝わずして、どうするんじゃ!」
仲間達が声を上げて呼びかけると、他の魔族達も歓声を上げ、宴がはじまる。
急遽、開かれた祝賀会。魔族達はとても興奮した状態で、飲めや歌えやの大騒ぎをしながら、ノヴァの勝利を祝った。
おのおの得意な料理を持ち寄って振る舞ったり、歌や踊りを披露したりと、どんどん宴は大きく賑わっていく。
そこかしこから、ノヴァを褒め称える声が聞こえる。
「まさか並み居る上位魔族だけではなく、最強種のエルフをも凌駕する能力をお持ちとは、敬服いたしました」
「並の魔族では到底できないことを実現してしまうのですから、我々魔族の頂点に相応しいお方だ」
「わたしは最初から並々ならぬ才覚をお持ちのお方だと思っていたんですよ。鼻持ちならないエルフをいずれ倒してくれると信じていたんです。いやいや、ホント!」
これまでノヴァを劣等種だと見下していた魔族や、遠巻きにして避けていた魔族まで、褒めそやして媚びへつらってくる姿を目の当たりにすると、なんともいえない気持ちになるもので。
「なんというか……見事な手のひら返しだな」
「たしかに、ここまで露骨だとむしろ清々しいまであるね」
苦笑いしてノヴァと顔を見合わせていると、グレイがそんな僕達を見て笑う。
「ははっ、何を変な顔してんだよ。魔族の縦社会はカースト順位が本幹だからなぁ。こんなもんじゃねぇ? 追従するのが普通なんだぜ」
「基本的には上位種に逆らうなんてことはしないもんじゃからのう。上に楯突く気概のあるワレらは相当に珍しい部類じゃ」
「なおかつ、最下位から最上位へとのし上がり、見事な下克上を成して見せたのでござるから、そなたらを認めない魔族などいないでござろう」
その場にいる魔族達は、生徒も教員も皆がノヴァに好意的な視線を向ける。
頂点に君臨していたエルフに勝利したことで、ノヴァを見る目が一変したのだ。
「そうか、俺はやったんだな……」
周りを見回し、ようやく実感が湧いてきたのか、ノブァは噛みしめるようにして呟いた。
「仲間達が……混ざり者が劣等種と蔑まれ、虐げられることはもう、なくなるんだな……」
感慨深い思いに瞳を揺らめかせ、ノヴァは僕の方へと振り返った。
縦長な瞳孔が丸くなり、僕の姿が映っているのがよくわかる。
「これは俺一人の力では成し遂げられなかった。お前が俺の使い魔だったからできたことだ」
ノヴァは僕を真っ直ぐに見すえて言う。
「ありがとう。お前が居てくれたおかげだ」
その瞳から、声音から、表情から、心からの感謝が伝わってくる。
じんわりと心に染みて、色々と込み上げくるものがあった。
気を抜いたら涙が溢れてしまいそうだけど、そこは年長者の見栄でぐっと堪える。
「うん、どういたしまして」
満面の笑みを向け、ノヴァをハグする。
「……マナト……」
ノヴァも小さく僕の名前を呼んで、抱きしめ返してくれた。
僅かに打ち震えているノヴァの体温を感じていると、今度こそ泣きそうになってしまう。
「でもね――」
僕は誤魔化し半分にバッと顔を上げ、ノヴァの鼻先に指先を突きつけ、言ってやる。
「――勝って一位になったからって、それで終わりじゃないよ。下位魔族が苦しい生活をしなくていいようにするには、体制を少しずつ変えないといけないし、やらないといけないことはいっぱいあるんだからね」
「……お、おう」
きょとん顔をするノヴァに、僕はそれっぽく説いて聞かせる。
「人々を導く者、先駆者たるもの仕事は山積みなのだよ。新生――ノヴァ」
名前の意味も相まって難しく考え始めたノヴァに、僕はわかりやすく補足する。
「要は何が言いたいかというと……これからも一緒に頑張ろうね」
僕が笑いかければ、ノヴァも微笑み返し、おでこをくっつけて言う。
「ああ、これからもよろしくな、俺の相棒――マナト」
こうして、僕達は誓い合ったのだ。
どんなことがあっても、二人でなら立ち向かえる、支え合い歩んでいけると信じて――。
「おっほん!」
近くでリュウが大きな咳払いをし、ブラッドが声を大にして主張する。
「おうおう、ワシらのことを忘れてもらっちゃ困るのう? 配下の力を使いこなせてこその最上位じゃからのう」
「まったくだぜ。二人の世界に浸って周りが見えてないようじゃ、先が思いやられるぜ。やっぱり、オレ達がいないとてんでダメなんじゃねぇの?」
「配下として拙者がマナト殿をお守りし支えるゆえ、心配することはござらんが、それでも己だけでどうにかできると慢心するのは危険でござる」
仲間達に窘められ、たしかにそうだなと思う。
今回の決闘は、仲間達が協力して精気を限界まで分けてくれたおかげで、エルフに打ち勝つだけの強力な魔力を集められたのだ。
ノヴァは仲間達に向き直り、真摯に言葉をかける。
「ああ、そうだな。協力してくれたこと感謝している」
「みんなもありがとう。これからもよろしくね」
「この先も頼りにさせてもらう」
ノヴァの言葉に仲間達は得意げに笑って答える。
「おうよ、任せとけ。なんたってオレが一番の配下だからなぁ」
「仕方ないのう。これからワレらがどう変えていくのか見るのも楽しみじゃしのう」
「マナト殿の頼みとあらば、拙者は全身全霊をかけて尽力するでござる」
僕達はみんなで力を合わせ、魔族の世界をよりよくしていこうと誓い合ったのだった。
◆
「うん、ノヴァは人間ができてるよ」
僕がそう褒めると、ノヴァはきょとんとした顔をし、次いでフハッっと噴き出して笑う。
「前にもそんなこと言ってたな」
「そうだっけ? ノヴァは良くできた人間だって褒めてるんだよ」
照れたように頬を掻き、ノヴァははにかみながら言う。
「劣等種と呼ばれていた俺が、全知全能な人間みたいだと褒められるのは、こそばゆいものがあるな」
僕だけじゃない、仲間達も集まってきてノヴァを称える。
「カースト順位・一位だぜ? 快挙を成し遂げたんだ。もっと自信持って喜べよ」
「そうでござる。己こそがもっとも人間に近い魔族なのだと、胸を張れば良いのでござる」
「さあさあ、勝利を盛大に祝い、宴を開こう。この大勝利を祝わずして、どうするんじゃ!」
仲間達が声を上げて呼びかけると、他の魔族達も歓声を上げ、宴がはじまる。
急遽、開かれた祝賀会。魔族達はとても興奮した状態で、飲めや歌えやの大騒ぎをしながら、ノヴァの勝利を祝った。
おのおの得意な料理を持ち寄って振る舞ったり、歌や踊りを披露したりと、どんどん宴は大きく賑わっていく。
そこかしこから、ノヴァを褒め称える声が聞こえる。
「まさか並み居る上位魔族だけではなく、最強種のエルフをも凌駕する能力をお持ちとは、敬服いたしました」
「並の魔族では到底できないことを実現してしまうのですから、我々魔族の頂点に相応しいお方だ」
「わたしは最初から並々ならぬ才覚をお持ちのお方だと思っていたんですよ。鼻持ちならないエルフをいずれ倒してくれると信じていたんです。いやいや、ホント!」
これまでノヴァを劣等種だと見下していた魔族や、遠巻きにして避けていた魔族まで、褒めそやして媚びへつらってくる姿を目の当たりにすると、なんともいえない気持ちになるもので。
「なんというか……見事な手のひら返しだな」
「たしかに、ここまで露骨だとむしろ清々しいまであるね」
苦笑いしてノヴァと顔を見合わせていると、グレイがそんな僕達を見て笑う。
「ははっ、何を変な顔してんだよ。魔族の縦社会はカースト順位が本幹だからなぁ。こんなもんじゃねぇ? 追従するのが普通なんだぜ」
「基本的には上位種に逆らうなんてことはしないもんじゃからのう。上に楯突く気概のあるワレらは相当に珍しい部類じゃ」
「なおかつ、最下位から最上位へとのし上がり、見事な下克上を成して見せたのでござるから、そなたらを認めない魔族などいないでござろう」
その場にいる魔族達は、生徒も教員も皆がノヴァに好意的な視線を向ける。
頂点に君臨していたエルフに勝利したことで、ノヴァを見る目が一変したのだ。
「そうか、俺はやったんだな……」
周りを見回し、ようやく実感が湧いてきたのか、ノブァは噛みしめるようにして呟いた。
「仲間達が……混ざり者が劣等種と蔑まれ、虐げられることはもう、なくなるんだな……」
感慨深い思いに瞳を揺らめかせ、ノヴァは僕の方へと振り返った。
縦長な瞳孔が丸くなり、僕の姿が映っているのがよくわかる。
「これは俺一人の力では成し遂げられなかった。お前が俺の使い魔だったからできたことだ」
ノヴァは僕を真っ直ぐに見すえて言う。
「ありがとう。お前が居てくれたおかげだ」
その瞳から、声音から、表情から、心からの感謝が伝わってくる。
じんわりと心に染みて、色々と込み上げくるものがあった。
気を抜いたら涙が溢れてしまいそうだけど、そこは年長者の見栄でぐっと堪える。
「うん、どういたしまして」
満面の笑みを向け、ノヴァをハグする。
「……マナト……」
ノヴァも小さく僕の名前を呼んで、抱きしめ返してくれた。
僅かに打ち震えているノヴァの体温を感じていると、今度こそ泣きそうになってしまう。
「でもね――」
僕は誤魔化し半分にバッと顔を上げ、ノヴァの鼻先に指先を突きつけ、言ってやる。
「――勝って一位になったからって、それで終わりじゃないよ。下位魔族が苦しい生活をしなくていいようにするには、体制を少しずつ変えないといけないし、やらないといけないことはいっぱいあるんだからね」
「……お、おう」
きょとん顔をするノヴァに、僕はそれっぽく説いて聞かせる。
「人々を導く者、先駆者たるもの仕事は山積みなのだよ。新生――ノヴァ」
名前の意味も相まって難しく考え始めたノヴァに、僕はわかりやすく補足する。
「要は何が言いたいかというと……これからも一緒に頑張ろうね」
僕が笑いかければ、ノヴァも微笑み返し、おでこをくっつけて言う。
「ああ、これからもよろしくな、俺の相棒――マナト」
こうして、僕達は誓い合ったのだ。
どんなことがあっても、二人でなら立ち向かえる、支え合い歩んでいけると信じて――。
「おっほん!」
近くでリュウが大きな咳払いをし、ブラッドが声を大にして主張する。
「おうおう、ワシらのことを忘れてもらっちゃ困るのう? 配下の力を使いこなせてこその最上位じゃからのう」
「まったくだぜ。二人の世界に浸って周りが見えてないようじゃ、先が思いやられるぜ。やっぱり、オレ達がいないとてんでダメなんじゃねぇの?」
「配下として拙者がマナト殿をお守りし支えるゆえ、心配することはござらんが、それでも己だけでどうにかできると慢心するのは危険でござる」
仲間達に窘められ、たしかにそうだなと思う。
今回の決闘は、仲間達が協力して精気を限界まで分けてくれたおかげで、エルフに打ち勝つだけの強力な魔力を集められたのだ。
ノヴァは仲間達に向き直り、真摯に言葉をかける。
「ああ、そうだな。協力してくれたこと感謝している」
「みんなもありがとう。これからもよろしくね」
「この先も頼りにさせてもらう」
ノヴァの言葉に仲間達は得意げに笑って答える。
「おうよ、任せとけ。なんたってオレが一番の配下だからなぁ」
「仕方ないのう。これからワレらがどう変えていくのか見るのも楽しみじゃしのう」
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僕達はみんなで力を合わせ、魔族の世界をよりよくしていこうと誓い合ったのだった。
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