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本編
28.怖ろしく巨大な暗黒色の獣
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「ガトー殿下! その方は!?」
「第一王子ですか! どうされたのです!?」
ガトー王子を追い遅れてやって来た御供達が、第一王子の様子に驚いて駆け寄る。
「意識が無くなった。呼吸が浅いようだ」
「それは大変です! うつ伏せだと胸を圧迫しますから横向きに……呼吸も脈も弱いですね、早く医師に見せましょう……」
「この身体を運ぶのは骨が折れそうだ、人を呼ぼう……誰か! 誰か来てくれ!!」
マカダミアが介抱し、アーモンドが人を呼ぼうと辺りを見回し声を張り上げる。
近くに人はいなかったが、遠く離れた場所からは様子を伺う従者達の姿が見えた。
御供達は従者達に手を振り主張する。
「第一王子が倒れているんだ! 手を貸してくれ!!」
「早く来てください! ここです!!」
だが、従者達は遠巻きに見て嘲り笑うように囁き合っているだけで、近付いて来ようとはしない。
声は届いている筈なのに、視線が合えば我関せずといった様子で立ち去って行く者までいた。
一大事だというのに、まるで取り合う様子がないのだ。
「なっ! ……なんだ彼奴等の態度は!? 獣人にだけではなく同胞にまで……」
「自国の王子でしょうに……問題児とされていても、あんまりです……」
誰も助けに来ない様子に、獣人一行は驚き憤慨する。
そして、何よりガトー王子が静かに怒っていた。
「……この国の者達は、心まで氷でできているのか……」
ガトー王子は意を決したように御供達に告げる。
「もういい…………俺が運ぶ、お前達も手伝え」
「ガトー殿下、よろしいのですか!?」
「このような人目に付く場所で、獣化を……」
人前で獣化する事を、その姿を晒す事を、ガトー王子は殊更避けて来た。
それを知っているからこそ、御供達は戸惑を隠せない。
「このまま放ってはおけまい――やるぞ」
ガトー王子はその場から数歩下がり、獣化を始める。
辺りの空気が変わる。
禍々しいオーラがガトー王子の周りを覆っていく。
鼻先が長く伸び、口が裂けるように広がり、鋭い牙と爪が生えてギラリと光る。
褐色の肌に漆黒の獣毛が生え、暗黒のように黒い毛が全身を覆い尽くしていく。
太く長くなっていく手足を地に着け、四つ足の獣型に姿を変える。
毛を逆立てるようにする背はどんどんと大きく膨れ上がり、元の身体の何倍にも巨大化していく。
ピリピリと張り詰めるような重圧が辺り一帯を支配していった。
先程まで嘲笑っていた従者達の顔は、ガトー王子の変貌と共にどんどんと青褪めていく。
獣化した恐ろしく禍々しいガトー王子の姿を目の当たりにして、従者達は悲鳴を上げる。
「……ひ……ひぃっ!?」
「……バ、バケモノだ!! ……」
慌てて逃げようとする従者達の前に、瞬時にして現れ立ちはだかる漆黒の闇。
従者達が見上げれば、それは、怖ろしく巨大な暗黒を纏う狼の姿だった。
暗黒の中から金色の目だけがギラギラと光り、獲物である従者達を見据えているようだ。
本能的に死を直感してしまう、死神を連想するような暗黒、恐ろしい容貌。
行く手を阻まれ退路を断たれた従者達は腰を抜かし、地べたに這いつくばり命乞いをする。
「ひっ……お、お助けを!!? ……」
「あばばばば、お許しください! い、命ばかりは!! ……」
ガタガタと震え上がる従者達に、ガトー王子は獣型特有の低い音で威圧するように、恐ろしく響く声で告げる。
『第一王子を寝所に運ぶ、場所を教えろ。直ぐにそこへ医師を呼べ……いいな』
竦み上がる従者達は、声も出なくガクガクと頷き、離宮の方角を指し示す。
ガトー王子は第一王子と御供達をその背に乗せて、離宮へと向かって走った。
「第一王子ですか! どうされたのです!?」
ガトー王子を追い遅れてやって来た御供達が、第一王子の様子に驚いて駆け寄る。
「意識が無くなった。呼吸が浅いようだ」
「それは大変です! うつ伏せだと胸を圧迫しますから横向きに……呼吸も脈も弱いですね、早く医師に見せましょう……」
「この身体を運ぶのは骨が折れそうだ、人を呼ぼう……誰か! 誰か来てくれ!!」
マカダミアが介抱し、アーモンドが人を呼ぼうと辺りを見回し声を張り上げる。
近くに人はいなかったが、遠く離れた場所からは様子を伺う従者達の姿が見えた。
御供達は従者達に手を振り主張する。
「第一王子が倒れているんだ! 手を貸してくれ!!」
「早く来てください! ここです!!」
だが、従者達は遠巻きに見て嘲り笑うように囁き合っているだけで、近付いて来ようとはしない。
声は届いている筈なのに、視線が合えば我関せずといった様子で立ち去って行く者までいた。
一大事だというのに、まるで取り合う様子がないのだ。
「なっ! ……なんだ彼奴等の態度は!? 獣人にだけではなく同胞にまで……」
「自国の王子でしょうに……問題児とされていても、あんまりです……」
誰も助けに来ない様子に、獣人一行は驚き憤慨する。
そして、何よりガトー王子が静かに怒っていた。
「……この国の者達は、心まで氷でできているのか……」
ガトー王子は意を決したように御供達に告げる。
「もういい…………俺が運ぶ、お前達も手伝え」
「ガトー殿下、よろしいのですか!?」
「このような人目に付く場所で、獣化を……」
人前で獣化する事を、その姿を晒す事を、ガトー王子は殊更避けて来た。
それを知っているからこそ、御供達は戸惑を隠せない。
「このまま放ってはおけまい――やるぞ」
ガトー王子はその場から数歩下がり、獣化を始める。
辺りの空気が変わる。
禍々しいオーラがガトー王子の周りを覆っていく。
鼻先が長く伸び、口が裂けるように広がり、鋭い牙と爪が生えてギラリと光る。
褐色の肌に漆黒の獣毛が生え、暗黒のように黒い毛が全身を覆い尽くしていく。
太く長くなっていく手足を地に着け、四つ足の獣型に姿を変える。
毛を逆立てるようにする背はどんどんと大きく膨れ上がり、元の身体の何倍にも巨大化していく。
ピリピリと張り詰めるような重圧が辺り一帯を支配していった。
先程まで嘲笑っていた従者達の顔は、ガトー王子の変貌と共にどんどんと青褪めていく。
獣化した恐ろしく禍々しいガトー王子の姿を目の当たりにして、従者達は悲鳴を上げる。
「……ひ……ひぃっ!?」
「……バ、バケモノだ!! ……」
慌てて逃げようとする従者達の前に、瞬時にして現れ立ちはだかる漆黒の闇。
従者達が見上げれば、それは、怖ろしく巨大な暗黒を纏う狼の姿だった。
暗黒の中から金色の目だけがギラギラと光り、獲物である従者達を見据えているようだ。
本能的に死を直感してしまう、死神を連想するような暗黒、恐ろしい容貌。
行く手を阻まれ退路を断たれた従者達は腰を抜かし、地べたに這いつくばり命乞いをする。
「ひっ……お、お助けを!!? ……」
「あばばばば、お許しください! い、命ばかりは!! ……」
ガタガタと震え上がる従者達に、ガトー王子は獣型特有の低い音で威圧するように、恐ろしく響く声で告げる。
『第一王子を寝所に運ぶ、場所を教えろ。直ぐにそこへ医師を呼べ……いいな』
竦み上がる従者達は、声も出なくガクガクと頷き、離宮の方角を指し示す。
ガトー王子は第一王子と御供達をその背に乗せて、離宮へと向かって走った。
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