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本編
63.闇夜に光る金色の瞳
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僕は赤鬼に向かって魔法を放った。
『水の精霊よ、我が魔力を以てこの火に水を放て。【水球発射】』
巨大な赤鬼の顔に小さな水球が当たり、直ぐに消えて無くなってしまう。
『水の精霊よ、我が魔力を以てこの火に水を放て。【水弾連射】』
『水の精霊よ、我が魔力を以てこの場に大雨を降らせよ。【集中豪雨】』
『水の精霊よ、我が魔力を以てこの場に霧雨の壁を作れ。【霧雨防壁】』
僕は水系の魔法を手当たりしだいに赤鬼に向けて放っていく。
(このままじゃ、やられちゃう! どうにかして赤鬼に放させないと!!)
僕の魔法攻撃を受けている間も赤鬼はじわりじわりと黒狼を締め上げていく。
黒狼の身体から軋む音がして、煙が立ち上り焼け焦げる異臭まで漂ってくる。
(水が赤鬼の弱点だと思うけど、僕の魔法じゃ弱すぎて全然効いてないし、うわー、どうしよう、どうしよう……あ、でもなんか赤鬼怒ってる? イライラしてきてる?)
微弱な水魔法が赤鬼の顔面に当たっては消えを繰り返していると、赤鬼の顔が強張り更に赤味を増していく。
(もっと怒らせたら僕の方に引きつけられるかな? それで泉に誘い込めればいいんだけど)
執拗に顔面への攻撃を続け、僕は最後の一押しにと赤鬼に向かって大声で叫んだ。
「こ、この、ゴツゴツでゴリゴリの超絶ブサイクー! 絶世の汚ブスー!! 顔面汚物ー!!!」
(どうだ、ブサイクな白豚王子にブサイク呼ばわりされたら怒るんじゃないかな? ……あ、これ、やばいやつだ。逃げよう……)
不気味な笑みを浮かべていた赤鬼の顔は正に鬼の形相へと変わっていき、僕は身の危険を感じて早々に走り出す。
赤鬼は怒り心頭の様子でわなわなと震え出し、何かを呟いている。
「……アタシが……この、アタシが……ブサイク? ……ブス? ……おぶ、つ? ……」
赤鬼が小刻みに震えていると、何かが切れる音がする。
ブチンッ
激怒した赤鬼は黒狼を放り投げた。
既に限界だった黒狼の身体は煙が上るまま地面に倒れ伏す。
正に鬼気迫るといった勢いで赤鬼は僕の方へと向かい突進して来る。
「こおぉぉぉぉのっ、糞豚野郎があぁぁぁぁっ! ずたずたのぐっちゃぐちゃに引き裂いて磨り潰して、ぶっ殺おぉぉぉぉすっっっ!!」
「うわぁぁぁぁ! 顔面凶器怖いよぉぉぉぉぉぉ!!」
僕は怖過ぎる赤鬼の形相に涙目になりながら、バシャバシャと音を立て泉の中へと入って行く。
泉の水を使って水魔法を放とうと僕が振り返ると、目前にはもう既に赤鬼が迫って来ていた。
魔法詠唱をする余裕もない程、間近にその鬼面はあったのだ。
命の瀬戸際に見る走馬灯の如くスローモーションで見える。
僕を轢き潰そうとする大岩のような拳が振り下ろされる近付いてくる。
僕は魔法を放つ余裕もなく、拳を除ける隙もなく、ただ見つめる事しかできない。
そして、赤鬼の拳が目と鼻の先まで迫り、殺されると覚悟した瞬間――視界の端で金色の目が光り、漆黒の疾風が赤鬼の首に食らい付いた。
赤と黒、二つの巨体が僕の身体を飛び越えて泉の中へと落ちていく。
バシャアアアアアアアアン バッシャンバシャンッ バシャンッバシャッ
「……ぶはっ、なっ、なにこれ? ……瘴気が、消え……がはっ……身体が、溶けてく……なんで!? くそっ、離せっ……ばっ……ぶくっ……ぶくぶくっ……」
『……外道が、沈め……』
浮上しようと水上に手を伸ばす赤鬼と水中に引きずり込もうとする黒狼、二つの巨体が水を撒き散らし藻掻き暴れる。
しばし大きな音を立てながら暴れていた二つの影は、やがて泉の底の方へと沈んでいく。
ぶくぶくぶくぶく、ぶくぶく、ぶく……ぶく……ぶく…………ぶく………………
二つの影が沈んでいった場所を僕は不安な気持ちで見つめ続けていた。
水面の波が落ち着いても、影が浮上してくる気配はない。
「……そんな、嫌だ……ダーク、戻って来て……」
僕は黒い影を探し、目に涙を溜めて呟いていた。
『水の精霊よ、我が魔力を以てこの火に水を放て。【水球発射】』
巨大な赤鬼の顔に小さな水球が当たり、直ぐに消えて無くなってしまう。
『水の精霊よ、我が魔力を以てこの火に水を放て。【水弾連射】』
『水の精霊よ、我が魔力を以てこの場に大雨を降らせよ。【集中豪雨】』
『水の精霊よ、我が魔力を以てこの場に霧雨の壁を作れ。【霧雨防壁】』
僕は水系の魔法を手当たりしだいに赤鬼に向けて放っていく。
(このままじゃ、やられちゃう! どうにかして赤鬼に放させないと!!)
僕の魔法攻撃を受けている間も赤鬼はじわりじわりと黒狼を締め上げていく。
黒狼の身体から軋む音がして、煙が立ち上り焼け焦げる異臭まで漂ってくる。
(水が赤鬼の弱点だと思うけど、僕の魔法じゃ弱すぎて全然効いてないし、うわー、どうしよう、どうしよう……あ、でもなんか赤鬼怒ってる? イライラしてきてる?)
微弱な水魔法が赤鬼の顔面に当たっては消えを繰り返していると、赤鬼の顔が強張り更に赤味を増していく。
(もっと怒らせたら僕の方に引きつけられるかな? それで泉に誘い込めればいいんだけど)
執拗に顔面への攻撃を続け、僕は最後の一押しにと赤鬼に向かって大声で叫んだ。
「こ、この、ゴツゴツでゴリゴリの超絶ブサイクー! 絶世の汚ブスー!! 顔面汚物ー!!!」
(どうだ、ブサイクな白豚王子にブサイク呼ばわりされたら怒るんじゃないかな? ……あ、これ、やばいやつだ。逃げよう……)
不気味な笑みを浮かべていた赤鬼の顔は正に鬼の形相へと変わっていき、僕は身の危険を感じて早々に走り出す。
赤鬼は怒り心頭の様子でわなわなと震え出し、何かを呟いている。
「……アタシが……この、アタシが……ブサイク? ……ブス? ……おぶ、つ? ……」
赤鬼が小刻みに震えていると、何かが切れる音がする。
ブチンッ
激怒した赤鬼は黒狼を放り投げた。
既に限界だった黒狼の身体は煙が上るまま地面に倒れ伏す。
正に鬼気迫るといった勢いで赤鬼は僕の方へと向かい突進して来る。
「こおぉぉぉぉのっ、糞豚野郎があぁぁぁぁっ! ずたずたのぐっちゃぐちゃに引き裂いて磨り潰して、ぶっ殺おぉぉぉぉすっっっ!!」
「うわぁぁぁぁ! 顔面凶器怖いよぉぉぉぉぉぉ!!」
僕は怖過ぎる赤鬼の形相に涙目になりながら、バシャバシャと音を立て泉の中へと入って行く。
泉の水を使って水魔法を放とうと僕が振り返ると、目前にはもう既に赤鬼が迫って来ていた。
魔法詠唱をする余裕もない程、間近にその鬼面はあったのだ。
命の瀬戸際に見る走馬灯の如くスローモーションで見える。
僕を轢き潰そうとする大岩のような拳が振り下ろされる近付いてくる。
僕は魔法を放つ余裕もなく、拳を除ける隙もなく、ただ見つめる事しかできない。
そして、赤鬼の拳が目と鼻の先まで迫り、殺されると覚悟した瞬間――視界の端で金色の目が光り、漆黒の疾風が赤鬼の首に食らい付いた。
赤と黒、二つの巨体が僕の身体を飛び越えて泉の中へと落ちていく。
バシャアアアアアアアアン バッシャンバシャンッ バシャンッバシャッ
「……ぶはっ、なっ、なにこれ? ……瘴気が、消え……がはっ……身体が、溶けてく……なんで!? くそっ、離せっ……ばっ……ぶくっ……ぶくぶくっ……」
『……外道が、沈め……』
浮上しようと水上に手を伸ばす赤鬼と水中に引きずり込もうとする黒狼、二つの巨体が水を撒き散らし藻掻き暴れる。
しばし大きな音を立てながら暴れていた二つの影は、やがて泉の底の方へと沈んでいく。
ぶくぶくぶくぶく、ぶくぶく、ぶく……ぶく……ぶく…………ぶく………………
二つの影が沈んでいった場所を僕は不安な気持ちで見つめ続けていた。
水面の波が落ち着いても、影が浮上してくる気配はない。
「……そんな、嫌だ……ダーク、戻って来て……」
僕は黒い影を探し、目に涙を溜めて呟いていた。
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