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本編
77.白豚王子の妙薬と献身
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身を寄せ固まる難民達に、大笑いする貴族が近付いていき話しかける。
「あっはっはっはっはっ、白豚王子にまで見捨てられてしまうとは! あぁ、お可哀想な難民の諸君。折角の世話役が逃げ出してしまうとは!! ……ぶっ、あっはっはっはっはっ」
貴族は笑いを抑えて憐れむように表情を繕うが、笑いが漏れ出て徒ならぬ不気味な笑みにしか見えない。
「やはり、我が領が受入先となり富有る私が世話役になる事が、諸君等にとって最良だったでしょう。『魔法の使えない獣』なんて厄介者の面倒を見たがる奇特な魔法使いなど、私くらいのものなのですから! ……まぁ、諸君等が、どうしてもと言う事であれば、王族の方々もご納得して下さる事でしょう! 富有る私には諸君等の面倒を見る事も吝かではないのですから!! ふっはっはっはっはっ」
獣人への侮蔑を隠しもしなくなった貴族は、芝居がかった身振り手振りで宣い、自画自賛しては自己陶酔している。
「また後日、差し入れを持参しましょう。それまでに、諸君等の意向を固めておく事です。……それでは、私はこれにて失礼しよう。難民の諸君、ごきげんよう! くっくっくっくっ、くっはっはっはっはっ」
そう言い残して、貴族は不敵な笑い声を響かせ立ち去っていった。
見物人達も難民達が城下町に居座り続ける事はないと高を括ったのだろう、人集りが少しづつ捌けていく。
その場に残された難民達は、やっと息ができる心地で肩の力を抜く。
一連のやり取りを苦々しい思いで見守っていた御供達が憤慨して小声で喚く。
「なんて鼻持ちならない貴族だ! まさか魔法使いの貴族はあんな下劣な者しかいないなんて事はないだろうな! 自惚れも甚だしい悪辣さだ!!」
「とてもじゃありませんが、あのような貴族に難民達を任せる事はできません! 難民達への待遇を改善してもらう為に、アイス・ランド国王に訴えて認識を改めて頂きましょう!!」
「そうだな。信用できる世話役と受入先が見つかるまでは、安易に難民達を任せる事もできない……」
ガトー王子達が話していると、難民達の方から咳き込む声が聞こえてくる。
難民達の中に、酷く衰弱し弱々しく咳きをしている老婆がいた。
老婆はいつ倒れても不思議ではない程、心身共に消耗して虚ろな目をしていた。
疲労だけではなく老齢で持病もあるのだろう、余命は長くないように見えた。
抱きかかえられていた先程の子供が、もぞもぞと身じろぎして腕から抜け出すと、老婆の所まで駆けて行き、持っていた包みを差し出して言う。
「……あ、あのね……これ、美味しいよ! すごく美味しくて、元気になれるよ! だから、お婆ちゃんも食べて!!」
周りの難民達は『家畜の飼料』や『獣の餌』と揶揄されていたそれを見て、困ったように怪訝な表情を浮かべる。
しかし、老婆は老い先短いと思った事と、優しい子供がせっかく差し出してくれた事もあったのだろう、そろりとそれに手を伸ばした。
そして、仄かに香る匂いを嗅いで、おずおずと口に含む――
ぱく、もぐもぐ……
――その瞬間、老婆の表情が変わる。
暗く翳っていた顔は驚きに明るく輝き、窶れていた目元は張りを取り戻していく。
虚ろに淀んでいた目は澄み渡っていき、潤いを取り戻した瞳には光りが宿る。
老婆はそれを噛みしめるように味わい呑み込むと、涙ぐみながら子供に言う。
「……本当だ、美味しい……すごく、美味しいね……身も心も癒されていくようだよ、元気になっていくよ……ありがとう、ありがとうね」
「うん、お婆ちゃんが元気になってくれて良かった! ……そうだ、みんなも食べて、みんなも元気になって!!」
子供は嬉しそうに微笑み、他の難民達にもその包みを差し出す。
老婆の表情を見ていた難民達は、半信半疑ながらも一人また一人と手を伸ばして、それを貰い口に含む。
「あぁ、優しい味がして、美味しい。不思議と癒されて、元気が出てくる……」
「確かに美味い……なんなんだこれは、本当に力が湧いてくるぞ?」
「すごく美味しい……あれ? 脚が痛かったのが、痛くなくなってきた……痛めていた脚が治ってきてる!?」
それを口にした難民達にも、次々と変化が現れる。
疲弊して衰弱していた身体は、見る見るうちに癒されて回復していく。
急激に回復していく難民達の姿を目撃した御供達は驚きの声を上げる。
「難民達の様子が、見る間に変わっていく……これは、尋常ではない速さで回復しているのか? なんて超回復だ、信じられない……」
「第一王子が与えたあれは何なのでしょう? 只の食物に回復効果や治癒効果なんてある筈がありません。あれ程の超回復は並みの回復薬などではありえませんよ……」
「あれは、病も傷も癒す『妙薬』だったのか……」
『妙薬』の考えに思い到ったガトー王子は、第一王子に思いを寄せる。
(……まさか……第一王子は、態とそうしたのか……態と『家畜の飼料』に見紛う状態にして、態と嫌われ者の役を演じて『白豚王子』などと侮らせておいて、その実は悪辣な者達の目を欺き、貴重な『妙薬』を難民達に与えてくれていたのか……どんなに悪し様に言われようとも構わずに、第一王子は獣人達を守ってくれたのだ……難民達を救ってくれたのだ……)
ガトー王子が考えていると、遠くから何かの音が聞こえてくる。
ド ドド ドドドド ドドドドドド ドドドドドドドド ドドドドドドドドドド
次第に轟く音が近付いてきて、慌てた御供達がガトー王子に告げる。
「ガトー殿下! 何やら群衆が近付いて来ています!!」
「あれは何でしょう!? こちらに向かって群勢が走って来ます!」
難民達のいる中央広場に向かって、足音を轟かせて大群が押し寄せて来たのだ。
「あっはっはっはっはっ、白豚王子にまで見捨てられてしまうとは! あぁ、お可哀想な難民の諸君。折角の世話役が逃げ出してしまうとは!! ……ぶっ、あっはっはっはっはっ」
貴族は笑いを抑えて憐れむように表情を繕うが、笑いが漏れ出て徒ならぬ不気味な笑みにしか見えない。
「やはり、我が領が受入先となり富有る私が世話役になる事が、諸君等にとって最良だったでしょう。『魔法の使えない獣』なんて厄介者の面倒を見たがる奇特な魔法使いなど、私くらいのものなのですから! ……まぁ、諸君等が、どうしてもと言う事であれば、王族の方々もご納得して下さる事でしょう! 富有る私には諸君等の面倒を見る事も吝かではないのですから!! ふっはっはっはっはっ」
獣人への侮蔑を隠しもしなくなった貴族は、芝居がかった身振り手振りで宣い、自画自賛しては自己陶酔している。
「また後日、差し入れを持参しましょう。それまでに、諸君等の意向を固めておく事です。……それでは、私はこれにて失礼しよう。難民の諸君、ごきげんよう! くっくっくっくっ、くっはっはっはっはっ」
そう言い残して、貴族は不敵な笑い声を響かせ立ち去っていった。
見物人達も難民達が城下町に居座り続ける事はないと高を括ったのだろう、人集りが少しづつ捌けていく。
その場に残された難民達は、やっと息ができる心地で肩の力を抜く。
一連のやり取りを苦々しい思いで見守っていた御供達が憤慨して小声で喚く。
「なんて鼻持ちならない貴族だ! まさか魔法使いの貴族はあんな下劣な者しかいないなんて事はないだろうな! 自惚れも甚だしい悪辣さだ!!」
「とてもじゃありませんが、あのような貴族に難民達を任せる事はできません! 難民達への待遇を改善してもらう為に、アイス・ランド国王に訴えて認識を改めて頂きましょう!!」
「そうだな。信用できる世話役と受入先が見つかるまでは、安易に難民達を任せる事もできない……」
ガトー王子達が話していると、難民達の方から咳き込む声が聞こえてくる。
難民達の中に、酷く衰弱し弱々しく咳きをしている老婆がいた。
老婆はいつ倒れても不思議ではない程、心身共に消耗して虚ろな目をしていた。
疲労だけではなく老齢で持病もあるのだろう、余命は長くないように見えた。
抱きかかえられていた先程の子供が、もぞもぞと身じろぎして腕から抜け出すと、老婆の所まで駆けて行き、持っていた包みを差し出して言う。
「……あ、あのね……これ、美味しいよ! すごく美味しくて、元気になれるよ! だから、お婆ちゃんも食べて!!」
周りの難民達は『家畜の飼料』や『獣の餌』と揶揄されていたそれを見て、困ったように怪訝な表情を浮かべる。
しかし、老婆は老い先短いと思った事と、優しい子供がせっかく差し出してくれた事もあったのだろう、そろりとそれに手を伸ばした。
そして、仄かに香る匂いを嗅いで、おずおずと口に含む――
ぱく、もぐもぐ……
――その瞬間、老婆の表情が変わる。
暗く翳っていた顔は驚きに明るく輝き、窶れていた目元は張りを取り戻していく。
虚ろに淀んでいた目は澄み渡っていき、潤いを取り戻した瞳には光りが宿る。
老婆はそれを噛みしめるように味わい呑み込むと、涙ぐみながら子供に言う。
「……本当だ、美味しい……すごく、美味しいね……身も心も癒されていくようだよ、元気になっていくよ……ありがとう、ありがとうね」
「うん、お婆ちゃんが元気になってくれて良かった! ……そうだ、みんなも食べて、みんなも元気になって!!」
子供は嬉しそうに微笑み、他の難民達にもその包みを差し出す。
老婆の表情を見ていた難民達は、半信半疑ながらも一人また一人と手を伸ばして、それを貰い口に含む。
「あぁ、優しい味がして、美味しい。不思議と癒されて、元気が出てくる……」
「確かに美味い……なんなんだこれは、本当に力が湧いてくるぞ?」
「すごく美味しい……あれ? 脚が痛かったのが、痛くなくなってきた……痛めていた脚が治ってきてる!?」
それを口にした難民達にも、次々と変化が現れる。
疲弊して衰弱していた身体は、見る見るうちに癒されて回復していく。
急激に回復していく難民達の姿を目撃した御供達は驚きの声を上げる。
「難民達の様子が、見る間に変わっていく……これは、尋常ではない速さで回復しているのか? なんて超回復だ、信じられない……」
「第一王子が与えたあれは何なのでしょう? 只の食物に回復効果や治癒効果なんてある筈がありません。あれ程の超回復は並みの回復薬などではありえませんよ……」
「あれは、病も傷も癒す『妙薬』だったのか……」
『妙薬』の考えに思い到ったガトー王子は、第一王子に思いを寄せる。
(……まさか……第一王子は、態とそうしたのか……態と『家畜の飼料』に見紛う状態にして、態と嫌われ者の役を演じて『白豚王子』などと侮らせておいて、その実は悪辣な者達の目を欺き、貴重な『妙薬』を難民達に与えてくれていたのか……どんなに悪し様に言われようとも構わずに、第一王子は獣人達を守ってくれたのだ……難民達を救ってくれたのだ……)
ガトー王子が考えていると、遠くから何かの音が聞こえてくる。
ド ドド ドドドド ドドドドドド ドドドドドドドド ドドドドドドドドドド
次第に轟く音が近付いてきて、慌てた御供達がガトー王子に告げる。
「ガトー殿下! 何やら群衆が近付いて来ています!!」
「あれは何でしょう!? こちらに向かって群勢が走って来ます!」
難民達のいる中央広場に向かって、足音を轟かせて大群が押し寄せて来たのだ。
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