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昨今の亜人種は亜種的な外見要素を残しつつほぼ人族のそれと同様に進化している。しかしたまに原種返りというその亜人種族それぞれの原種となる性質が強く現れてしまうことがある。

ハーピィの原種返りは雌雄問わず卵を産むことで、基本的に原種返りと通常のハーピィの見た目は変わらない。だから本人にすら原種返りの自覚がなく、ある朝猛烈な排泄感を感じてそのまま卵を産んでしまったなんてことが起こるらしい。
…それが今まさにヒューイが直面している事態だった。

「え、おれが原種返り?嘘…」

しらなかった…どうしよ…

ヒューイはハーピィ種に多いピンク髪をぐしゃぐしゃにしながら翼腕で頭を抱えて悩むのも数秒、ぱっと名案が浮かぶ。

これ、もしかして異種族相手でも簡単に子どもができる?

異種族恋愛も一般的に認められているが、やはり子作りがハードルになることは多い。
しかしハーピィの原種返りの子作りは特殊で、確か少し股を擦り合わせるだけとかそんなだったはずだったと記憶を辿る。これならこっそり精をもらうにしても忌避感も少ないだろう。

もしとの子どもが出来たら…。
すっぱりと気持ちを諦め、故郷に戻り彼の子どもとのんびり暮らそう。
しかもそれなら親から結婚や子の予定を聞かれることもなくなるだろうし、かなり良い案じゃないか!
よしちゃちゃっと精液もらって消えよう。


即断即決即行動、ヒューイは職場である騎士団に出勤すると同時に所属部隊長室に駆け込み、一身上の都合により退職しますから!と告げて隊長室を後にした。ヒューイは騎士団で支援術士をしていた。支援術士は重宝されても重要とは言い難い役目で、特に引き止められなかったことに少し寂しく感じたが納得はしている。

しばらくは蓄えがあるから良いとして、やはり故郷に戻り家業を手伝うなり別の街で支援術士をしないとだな…。

今後の身の振り方を大雑把に決めて、計画の実行相手であるディオンをどうしたものかと考える。
ディオンは騎士団で2年以上ずっと二人でパーティを組んでいる相棒だ。ディオンが前衛の剣士でヒューイが後方支援。魔力の相性が良いのか、支援魔法の効き目も抜群で援助の攻撃魔法などは干渉なく放てる。頼りになる最高のパートナーだった。

それだけでなくディオンは天族という最強武力を有する種族だった。天族は有翼種で見た目は人族、腰あたりから真っ白な翼を持っている。ハーピィは腕が翼になっているが、天族の翼は出し入れ可能で全くの別種というより完全に格上の存在だ。
そして一番の問題は、天族が異種族間の恋愛が当たり前の地上ではなく、天空領という空に浮かぶ天族しかいない閉鎖的な土地に暮らしていることだった。つまり天族は強くて珍しい上に他種との交わりを嫌っている種族なのだ。その天族が天空領から出てくるのは天空領の不可侵条約に基づいた地上3年間の軍役のときだけだった。
ヒューイはそんな天族に恋をするなんて不毛だとわかってはいても、もう2年以上は思い続けていた。ディオンはあと半年も経てば地上から去ってしまう。それなら自分から離れた方がましだと思えたのだ。

ディオンを食事に誘い、そして酒で酔わす、或いは薬を盛るのは憚られるので、睡眠魔法で眠らせる計画を立てた。
よし、と方針を決め、早速ディオンのいる剣の訓練場を覗く。
滞空している真っ白な翼を生やす後ろ姿見えたので、聞こえるよう大きな声で呼びかける。

「ディーオーン!」

「ヒューイ!」

ヒューイの呼びかけに空中にいるディオンが振り返る。藍色の髪を後ろに流していて涼やか顔つきにとても似合っていて見慣れていてもドキッとする。
ディオンは訓練用の動く的を斬りつけさっさと片付けると、真っ白な翼を畳みながら地面に降り立った。ヒューイは歩み寄ってきたディオンの腰から翼はすっと消えていくのを眺めていた。ヒューイはできるだけ自然にディオンに触れて回復魔法をかけながら話しかけた。

「俺らこのあとは近場の巡回だったよな?」

「ああ今日は別部隊が掃討に出るから、俺たちは夕方で終わりだな」

ディオンがいつも通りにヒューイの頭を撫でながら、予定を話する。ディオンがヒューイに軽いスキンシップを取るのはいつものことなので、ヒューイは毎回過剰に反応しないように気をつけている。今回はそれに加えて、企てがバレないよう平静を装ってディオンを言う。

「その後さ、一緒に飲みに行かないか?少し話したくてさ」

「…ああ、わかった。」


巡回では何も起きず、無事定時の上がりになった。
他の騎士団員に会うのを避けたかったので寮からは少し離れた店を選び、そこで話の邪魔にならないよう最初にまとめて注文をする。
食事をしながら街の情勢やら近隣のモンスターの話など他愛のない話題で盛り上がる。ヒューイは内心、計画をいつ実行に移そうか、とそわそわしてしまい、その度に落ち着こうと酒を口に含んだ。食事が済むとお互い少し黙っていて次は何を話そうかと考えている時だった。

「ヒューイは騎士団を辞めたいのか?」

ぽつりとディオンが言う。直球すぎて言い訳も特に思い浮かばなかったので素直なってしまう。

「ディオンのいない団には居たくないんだ…。俺、ディオンとは特別相性の良いパートナーだと思ってるから他の人と組める気しないんだよな。」

これなら変に思われないだろうか。

ふとディオンに目を向けると、彼はキツく目を閉じて手で顔を覆っている。ヒューイはこれ以上会話を続けてしまうと、好きだという気持ちやら計画までもがバレてしまわないかと焦っていた。そんな緊張のせいで喉がからからに渇いていたのを潤すべく両翼でジョッキの酒を一気に呷る。

あれ?と思ったときにはくらり目が回り、計画を実行に移す前にうっかり酔い潰れてしまっていた。



ヒューイが目を覚ますと、まだ夜で、どこかの宿屋に移動したようだった。ディオンが酔い潰れたヒューイをここへ運び酔っ払いの介抱までしてくれたのだろう。
ヒューイの腰に鍛えられた腕がある。見慣れたディオンの腕だった。ベッドがひとつしかない部屋だから一緒に寝たらしい。
ヒューイは野営時に暖を取ろうとくっついて過ごしたことを思い出した。
目覚めた瞬間は失敗してしまったと焦ったが、少し落ち着きを取り戻すと、なんだかんだうまく事が運べそうだと思い直す。とりあえず予定通りに睡眠魔法をディオンに使ってから腕を抜け出しディオンの顔を見る。
さっきまで後ろに流して整えられていた藍色の髪は少し乱れている。涼やかな瞳は瞼の向こうにある。あの瞳を見たい、と思いつつ今は起こすわけにはいかないので、ディオンの身体にそっと跨がって唇を奪い満足する。そしてハーピィの求愛行動である歌を魔法で深く眠っている相手に送る。

「ディオン…好きだよ」

そう呟いた途端、ぐるんと視界が回った。
混乱と驚きで理解が追いつかない。
眠っているはずのディオンが何故かヒューイを押し倒して見下ろしていた。

「へ…なんで!?」

唖然と言葉を漏らす。

「それはこっちの台詞だ。」

ディオンの声は怒りと熱を孕んでいた。

我に返ったヒューイが逃げようと暴れると、ディオンは捕縛魔法の縄で上腕と胴体をぐるぐる巻に拘束し、下半身に乗り翼を抑えられては動けないようにした。
こんなときですら翼を傷つけないようにするディオンの優しさに、ヒューイは嬉しくなってしまうと同時に負けたようで悔しくもなる。

「寝込みを襲おうなんて悪かったって!そもそもなんで起きてるんだよ!」

「これな」

以前ヒューイがディオンに渡したアクセサリーが主張するように揺れる。
そのアクセサリー動けなくなるのはヤバいから、と硬直減少やら抗睡眠と抗麻が付与されたものだ。

「お前にもらったものは常に身につけてるから。それと天族は精神系魔法効きにくいんだ」

「うぐぐ…」

「それで?こんなことをする理由は言ってくれるんだろう?」

大好きなディオンの優しい声で問われたらヒューイは完敗を認めるしかなかった。しかし折角ここまで来て引くわけにもいかない。

もう気持ちはバレてしまったんだ。無断でやろうとしたことだ、その優しさにつけ込んで許可を得てやってやる。

開き直ったヒューイはディオンに思い切って告げることにした。

「最後の思い出にディオンの精液をもらおうかなと思ったんだよ…ちょっとだけでいいから精液くれないか?」

気まずさで少し視線を反らせてしまったか言いたいことは伝えた。

「わかった…好きなだけやるよ」

深く息を吐いたディオンがゆっくりと何かを抑えたような声で言う。

「いいの!?俺ずっとディオン大好きだったからさ、最後に子どもだけでもほしかったんだ!!」

急浮上した気分でぺらぺら気持ちを話してディオンを見上げるとギラギラと熱を帯びた目で見つめられた。

あれ?なんか間違った…?




ベッドの際に転がされ、長い時間をかけて解された穴をぐずぐずで指3本が混ぜては良いところを掠め出ていくかと思いきやまた突かれる。

「ごめっ…あ、あっ…やら…あやまるから…ゆるしっ…ひぃっひあ…ああああ!」

ディオンはあれから何も言葉を発せずヒューイの身体を隅々まで溶かした。

「許す?ヒューイが欲しがったんだろ」

「ぁ…これ…ちがっ…ぁう…!」

止めようとしても左の脚はディオンの肩に担がれ反対の脚は翼ごと腿を抑えられて逃げられない。与えられる快感に頭の中が真っ白になり自然と腰が浮き芯をじわりと漏らしたような濡れた感覚して生理的に出た涙で視界が霞む。
もう呂律も回らなくて許しを請いたくても言わせもらえず、息が上がるのと気持ち善さで何も考えられなくなっていく。

「最後だとか、子どもだけなんて言われて許すわけないだろっ!」

「っあ…ぁあ…っ!!」

口から勝手に意味をなさない喘ぎを零していると、ずるりと穴から指が出ていきその排泄感にぶるりと身を捩る。好き勝手に弄られた穴は感覚がじんじんと麻痺している。
はあはあと熱く上がった息を整えようとしていると、捕縛魔法の縄が緩んだ。解放された腕をシーツに投げ出し力を抜くと、肩に担がれた脚を降ろされディオンの手がそれぞれの両足膝裏にかかり、穴にひたりとディオンの熱くて硬いものが触れた。穴が欲しがるようにひくひくと疼く。

「いれるぞ、好きなだけ受け取れ」

「…まって…ぁ…」

解された穴の中をごりごりとこじ開けるようにディオンの硬い熱埋まっていく。

「くっ…ちから…少し抜けっ」

ディオンの片手が膝から離れヒューイの芯を包みこむように優しく握って上下に動かすとヒューイは堪らず快楽に身を委ねる。

「…んぅ!…ぁあああぅっ!」

ディオンの物の太いところが奥まで届くと今度は激しく揺さぶられた。
中を混ぜられ勝手に身体が反応してしまうところを熱が擦ると再び、芯の先からぴゅっと漏らしてしまう。酷い圧迫感で息をするのも苦しいはずなのにそれすらも快楽に変わる。
ディオンの動きが止まり潤む視界で見上げると、繋がったままキスをされた。
つい身体に力が入り体内に埋まる熱をまざまざと感じる。

「ヒューイ…っ…出すからな」

「…ディオンっディオン!」

嬉しさと混乱と気持ちよさで何も言葉が浮かばずひたすらにディオンの名前を呼んだ。
じわりと中の温かさに喜びを感じながら意識が途切れた。




もう随分日が昇っている。
布団が剥がされたベッドに寝かされていたようで布団の代わりに最高の触り心地の暖かい羽がお腹に乗っていた。
天族の貴重な羽をこんな布団代わりにしてくれて笑ってしまう。

「あのさ…ディオンもほしいって言ってもいい…?」

もう色々致したあとで、今更のようなことでもどうしても確認したかった。さすがに馬鹿でも返事はわかっていた。

「ああ…」

身体は軋むような違和感があっても、嬉しくて起き上がって羽繕いをした。有翼種に唯一共通する愛情表現のひとつだった。

「俺さ、ディオンが好きだよ」

「俺もヒューイが好きだ」

優しい目をしたディオンに見つめられてヒューイはようやく素直になれた。

「あと俺さ…原種返りなんだ」

「…知ってる」

「えっなんで!?俺昨日気づいたのに!」

「身体の特徴と…あとお前が何度か卵産んでるの見た」

「えーー!?」

驚きたかったが、それよりもディオンも羽繕いをしてくれて、嬉しさでなんだかムズムズする気分を抱えていたら、再び強い排泄感を感じてイキんだ末に卵を産んでしまった。
産卵をまじまじと見られたことを恥ずかしがっていると、ディオンが産みたての卵を取り上げて無精卵だな、と言うので少しがっかりした。
どうやら昨日1日ディオンのことを考えていたせいで発情してしまっていたらしい。

職場の退職云々の方はディオンがなんとかしてくれた。というよりヒューイに押しかけられた上司の部隊長が意味不明な退職願をその場で保留にして、パートナーであり保護者扱いのディオンに相談していたらしい。
ディオンもディオンでヒューイと結婚するので退職は半年後にしてほしいと上司に頼んでいたのである。
結局二人はディオンの軍役が終わると同時に一緒に退団してヒューイはディオンに連れられ天空領に行きそのまま結婚したのだった。
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