騎士隊長と黒髪の青年

朔弥

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騎士隊長と黒髪の青年

 夜も更け、人通りもまばらな通りを高橋莉人たかはしりひとは足早に歩いていた。
 

 就職先、間違ったよなぁ·····


 深い溜息が漏れる。
 入社して5年になるが、人で賑わう時間帯に家路につけたのは数える程度しかない。終電さえ逃し、駅2つ分を歩く羽目になる事も多々あった莉人にとって、今日は終電に間に合っただけマシな帰宅時間だ。
 超過残業など当たり前。上司の機嫌によって罵倒されるパワハラさえ、日常的すぎて何も感じない。多少の苦痛を感じている事といえば、取引先の人間にセクハラ紛いの行為をされる事だが、男の自分相手によく性欲を向けれるものだと呆れる。最初の頃は嫌悪の念が強かったが、5年もブラック企業に身を沈めていると、人間したたかに生きる術を身につけるようだ。最近では相手の欲につけ込み、自分が優位に立てるよう主導権を握る。
 歩道の信号が赤に変わったのを確認し、莉人は足を止めた。

 俺、何のために働いてんだろ·····

 人の温もりのない夜の街を歩いていると、時折虚しい気持ちになった。


 ───── この虚しさを埋めたい


 ぼんやりとそんな事を考えながら信号が青に変わる時を待つ莉人の横を、一人の女性がスッと通り過ぎた。

 ──── え?

 信号はまだ赤の筈だ。
 女性は手元のスマホに視線を落としたまま歩いている。この時間帯はほとんど車が通らない事に気を緩め、周囲をまったく気にしていないようだ。
 彼女が渡り始めた横断歩道に一台の大型トラックが近づいてきた。トラックはスピードを緩める気配がなく、ヘッドライトが眩しく彼女を照らす。その光に気づいた彼女は足を止め、立ち尽くしてしまった。
「おい!止まるな!!」
 莉人は思わず彼女の方へと駆け出していた。

 ────── 間に合わない

 眩く目を開けていられない程の光に包まれ、莉人は死を覚悟した。


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