騎士隊長と黒髪の青年

朔弥

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眠れない夜

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 莉人は薄暗い部屋の中で一人、ベッドに横になっていた。窓から差し込む月明かりが青白く輝いている。
 ここはアシュレイの部屋だが、今、部屋の主はいない。
 第一部隊の中でも特に腕の立つアシュレイ、ルーク、クラウスの3名は今、他の隊からの要請で魔物討伐の為に1ヶ月程、遠征に出ていた。留守を預かる副隊長のグレースからは明日、アシュレイ達が帰還すると聞いていた。

 明日か······

 莉人はアシュレイの香りがまとうシーツを撫でた。
 アシュレイが遠征に出て暫くは自室で過ごしていたが、次第に躰がアシュレイに触れてもらえない寂しさから、アシュレイのベッドで彼を感じながら眠るようになった。それでも、実際に触れられない寂しさは埋められる事なく、眠れない夜が続いた。

 それも今日で終わる····。

 莉人はシャツを掻き抱いた。
 明日、アシュレイに会えると思うと、彼の声を···躰に触れる指の感触を莉人は強く感じ、躰を抱きしめる腕に力を込める。
「····アシュレイ·····」
 彼の名を切なげに囁く。
 莉人はシャツの上から自分の指で胸の辺りを探るように滑らせた。指に胸の突起が引っかかり、円を描くように撫でていく。
「···んっ······」
 莉人の鼻腔から甘い声が洩れる。

 ──── リヒト

 アシュレイの名を呼ぶ声が耳の奥に響いた。
 彼の触れる指や唇の感覚を躰は覚えていて、見えない彼の指が莉人の躰を愛撫していくかのような錯覚を覚える。
「····あっ·····ふぅっ······」
 躰の奥に淫靡な熱が灯り、甘い疼きが莉人の指を半身へと導いた。ズボンの前をくつろがせ、頭をもたげ始めていた陰茎に指を絡ませる。彼が動かす指の動きを思い出しながら、淫らに快楽を高まらせていく。静かすぎる部屋に莉人の快楽に浮かされた甘い喘ぎ声だけが響き、余計に莉人の欲情を煽った。
「ぁあっ····もう····イかせ······」
 何時ものように彼に強請ねだるように囁く。それだけで言いようのない快感が走り抜けた。
「は、あっ······んうっ·······」
 肩を震わせ、莉人は手の中で果てる。
 乱れた呼吸を整えるまでの間、莉人はぼんやりと虚空を見つめていた。
 前をなぐさめるだけでは、散々、後ろで彼を受け入れ教え込まれた躰を鎮める事が出来ない。

 冷たいシャワーでも浴びるか······

 莉人は燻る熱を冷まそうと、シャワー室へと向かった。

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