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魅惑の香り
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香水の蓋が外れリディオの手の中に蓋だけ残され、ルークと二人で同時に瓶を受け止める。だが、莉人が下から手のひらで受け、ルークが上から掴もうとした為にスプレーヘッドが押され香水が莉人の躰にふりかかる事となった。
「ばっ···」
この馬鹿!とルークに怒りの眼差しを向ける。
「わ、悪ぃ······」
ルークは申し訳なさそうに小さく呟いた。
「大丈夫···か?リヒト」
リディオが恐る恐る声をかける。ジョルジュが関わっているだけに、リディオもまた媚薬まがいの液体じゃないだろうな···と警戒していた。
ふわりとシトラス系の爽やかな甘酸っぱい香りが莉人の鼻を擽る。ルークをイメージした香り···と言われれば確かに、と思うかもしれない。
「ああ···だ··いじょうぶ···みたいだな···」
莉人の言葉にホッと胸を撫で下ろしたリディオは、自分の手に残ってしまった蓋を莉人の持つ香水にカチッとはめ、箱の中へと戻した。
「また変な液体が入ってんのかと思ったけど、結構いい香りかも···」
リディオが莉人の隊服に顔を近づけ香りを嗅いだ。
「まぁ···爽やかで嫌いじゃないけど···」
制作者の顔を思い浮かべると、どうしても香りを楽しむ気にはなれない。
「シャワー浴びたら落とせるかなぁ···。部屋へ戻って一度シャワーを浴びてくるか···」
溜め息を吐きながら呟き、莉人は自室へ向かおうとした。
「···リヒト」
名前を呼ばれ腕をルークに掴まれた莉人は足を止める。
「なんだよ、お前のイメージの香りでいろって言うつもりじゃねえよな」
笑いながら軽口を叩いた莉人だが、真っ直ぐ真剣な眼差しで見つめてくるルークの瞳にたじろいだ。
「······ルー··ク?」
こんなに真面目な表情をしている彼を今まで見たことがない。いつも人懐っこい笑みを浮かべ、冗談とも本気ともとれない態度で場を和ませている姿しか知らない。
「どう···したんだよ···」
「香り······」
「香り?」
ボソッとルークが呟き、莉人は聞き返す。
「さっきから···甘い匂いが···」
「甘い匂い?そんなのしないだろ···」
リディオも様子の違うルークに眉を顰め、爽やかな香りはするが決して甘い香りではないと莉人にかかった香水の香りを嗅いだ。
そんな香りはしない、とリディオは莉人と顔を見合わせる。
「ルーク、とりあえず手ぇ離せ···」
莉人は腕を掴んでいるルークの手を外させようと、空いている方の手で彼の手に触れようとした。だが、その手もルークに掴まれ、不穏な予感に胸がざわめく。
「ルー··ク···」
ルークは何かを耐えるような表情で莉人を見つめていた。
「リヒト···悪い···俺···」
ルークはそう言うと強い力で莉人を引き寄せ、その胸の中に抱きしめた。
首筋に吐息がかかるのを感じ、唇が肌に触れた。
「お前っ、悪ふざけならやめろよ」
笑えない冗談だ、と莉人はルークを押し退けようと腕の中で踠くが、自分の力では抱き竦められた腕を振り解く事が出来ない。
「俺にも分かんねぇんだけど···リヒトの甘い匂い···我慢出来ない···」
「はあ?我慢出来ないって何言って···」
莉人は自分の半身に当たる硬い存在に気づき、視線を下へ向けた。
欲情している事が分かるほどズボンの前が膨らみを見せている。
「······嘘だろ······」
莉人は引き攣った表情で呟くと、助けを求めるようにリディオに視線を向けた。
「俺は何も感じないから···香水の名前の奴を誘惑する術でもかけられてるのかも···」
莉人に欲情し抱きつくルークの姿に動揺を隠せないリディオは状況を整理しようと香水の効能について考察し始める。
「それ考えるの後でいいから、先にルーク何とかしてくれっ!」
「あ、ああ···」
莉人の声でハッと我に返ったリディオは、ルークを背後から羽交い締めにし、引き離そうと引っ張った。
「ルーク!香水の香りに惑わされるな!隊長にこんなとこ見られたら、ただじゃ済まないって!」
「···それ言ったら俺もなんだけど」
ルークを押し戻しながら、莉人はアシュレイにこの状況を見られたら···と思い浮かべる。「何を遊んでいる?」と笑みを浮かべながら瞳は怒りで冷やかに見つめるアシュレイの顔が脳裏に浮かび、莉人は絶対に不味い!と顔を引き攣らせた。嫉妬に駆られた感情を内に抑えきれない表情をしたアシュレイが自分に手を出さなかった事など、今までに一度もない。自分から求めるまで焦らされ、この身に存在を刻みつけるまで抱き尽くされる。
·····それだけは避けたい
「リディオ、なんとかルークを抑えてくれ···。離れればシャワーで香水落としてくるから」
「わかっ···てんだけど···」
騎士として躰を鍛えているとはいえ成長途中の小柄な少年の力では同じように鍛えているルークを抑え込むのは難しい。
「ルーク!他の隊に飛ばされたいのかよ!」
リディオがそう叫ぶのと同時に、
「ほお?飛ばされるような事をしたのか?」
と、聞き馴染んだ声が聞こえた。
「ばっ···」
この馬鹿!とルークに怒りの眼差しを向ける。
「わ、悪ぃ······」
ルークは申し訳なさそうに小さく呟いた。
「大丈夫···か?リヒト」
リディオが恐る恐る声をかける。ジョルジュが関わっているだけに、リディオもまた媚薬まがいの液体じゃないだろうな···と警戒していた。
ふわりとシトラス系の爽やかな甘酸っぱい香りが莉人の鼻を擽る。ルークをイメージした香り···と言われれば確かに、と思うかもしれない。
「ああ···だ··いじょうぶ···みたいだな···」
莉人の言葉にホッと胸を撫で下ろしたリディオは、自分の手に残ってしまった蓋を莉人の持つ香水にカチッとはめ、箱の中へと戻した。
「また変な液体が入ってんのかと思ったけど、結構いい香りかも···」
リディオが莉人の隊服に顔を近づけ香りを嗅いだ。
「まぁ···爽やかで嫌いじゃないけど···」
制作者の顔を思い浮かべると、どうしても香りを楽しむ気にはなれない。
「シャワー浴びたら落とせるかなぁ···。部屋へ戻って一度シャワーを浴びてくるか···」
溜め息を吐きながら呟き、莉人は自室へ向かおうとした。
「···リヒト」
名前を呼ばれ腕をルークに掴まれた莉人は足を止める。
「なんだよ、お前のイメージの香りでいろって言うつもりじゃねえよな」
笑いながら軽口を叩いた莉人だが、真っ直ぐ真剣な眼差しで見つめてくるルークの瞳にたじろいだ。
「······ルー··ク?」
こんなに真面目な表情をしている彼を今まで見たことがない。いつも人懐っこい笑みを浮かべ、冗談とも本気ともとれない態度で場を和ませている姿しか知らない。
「どう···したんだよ···」
「香り······」
「香り?」
ボソッとルークが呟き、莉人は聞き返す。
「さっきから···甘い匂いが···」
「甘い匂い?そんなのしないだろ···」
リディオも様子の違うルークに眉を顰め、爽やかな香りはするが決して甘い香りではないと莉人にかかった香水の香りを嗅いだ。
そんな香りはしない、とリディオは莉人と顔を見合わせる。
「ルーク、とりあえず手ぇ離せ···」
莉人は腕を掴んでいるルークの手を外させようと、空いている方の手で彼の手に触れようとした。だが、その手もルークに掴まれ、不穏な予感に胸がざわめく。
「ルー··ク···」
ルークは何かを耐えるような表情で莉人を見つめていた。
「リヒト···悪い···俺···」
ルークはそう言うと強い力で莉人を引き寄せ、その胸の中に抱きしめた。
首筋に吐息がかかるのを感じ、唇が肌に触れた。
「お前っ、悪ふざけならやめろよ」
笑えない冗談だ、と莉人はルークを押し退けようと腕の中で踠くが、自分の力では抱き竦められた腕を振り解く事が出来ない。
「俺にも分かんねぇんだけど···リヒトの甘い匂い···我慢出来ない···」
「はあ?我慢出来ないって何言って···」
莉人は自分の半身に当たる硬い存在に気づき、視線を下へ向けた。
欲情している事が分かるほどズボンの前が膨らみを見せている。
「······嘘だろ······」
莉人は引き攣った表情で呟くと、助けを求めるようにリディオに視線を向けた。
「俺は何も感じないから···香水の名前の奴を誘惑する術でもかけられてるのかも···」
莉人に欲情し抱きつくルークの姿に動揺を隠せないリディオは状況を整理しようと香水の効能について考察し始める。
「それ考えるの後でいいから、先にルーク何とかしてくれっ!」
「あ、ああ···」
莉人の声でハッと我に返ったリディオは、ルークを背後から羽交い締めにし、引き離そうと引っ張った。
「ルーク!香水の香りに惑わされるな!隊長にこんなとこ見られたら、ただじゃ済まないって!」
「···それ言ったら俺もなんだけど」
ルークを押し戻しながら、莉人はアシュレイにこの状況を見られたら···と思い浮かべる。「何を遊んでいる?」と笑みを浮かべながら瞳は怒りで冷やかに見つめるアシュレイの顔が脳裏に浮かび、莉人は絶対に不味い!と顔を引き攣らせた。嫉妬に駆られた感情を内に抑えきれない表情をしたアシュレイが自分に手を出さなかった事など、今までに一度もない。自分から求めるまで焦らされ、この身に存在を刻みつけるまで抱き尽くされる。
·····それだけは避けたい
「リディオ、なんとかルークを抑えてくれ···。離れればシャワーで香水落としてくるから」
「わかっ···てんだけど···」
騎士として躰を鍛えているとはいえ成長途中の小柄な少年の力では同じように鍛えているルークを抑え込むのは難しい。
「ルーク!他の隊に飛ばされたいのかよ!」
リディオがそう叫ぶのと同時に、
「ほお?飛ばされるような事をしたのか?」
と、聞き馴染んだ声が聞こえた。
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