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第1章
ヒナという少女
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近畿南部の山の中にあるとある児童施設があった。
ここに子供がたくさんいて、18歳まで住むことが出来るという。この施設にいるある少女は行く宛てもなく、就職先も決まらぬままここを出ることとなっていた。
少女の名前は『猫屋敷日奈凛(ねこやしき・ひなりん)』という。愛称はヒナである。
「ヒナ、ここを出ても大丈夫か?」
職員の男性が心配そうに声をかけてきた。しかしヒナは優しい笑みで彼に言った。
「大丈夫ですよ!なんとかなりますから!!」
ヒナの自信を秘めた強い言葉に職員は安堵しつつも不安を隠せなかったのである。
ヒナは生まれたときから家族がいなかった。気がついた時には施設の入口の前に置かれたダンボールの中に居たのであった。そのダンボールの中には彼女の戸籍と少しばかりの金一封が入れられていたという。
そのダンボールを見つけたのは施設の園長である息長儀房(おきなが・のりふさ)である。夜に出張から帰ってくるとたまたま置かれていたダンボールに気づき、中を開けるとまだ一歳にも満たないヒナが弱った状態で横にぐったりしていたのである。
「やばい、このままでは死んでしまう……!」
不安を募らせた息長はすぐに空き部屋へと連れていき、そこでミルクを飲ませて風呂に入れてあげた。その時の息長の表情からは「助けたい」という必死さが滲み出ていたのだ。
息長の看護が実り、ヒナは体調を回復させることが出来たのであった。安堵したのか息長の目から少し涙が出ていたという。
その後、彼女は健康に育ったためか他の子供たちよりたくましくなってきたのであった。明るい性格で何事にも最前線に立ち、周りを引っ張ってきた。学校でも成績優秀でスポーツ万能で人気者となっていた。
ヒナの通った小、中学校は木造校舎であった。しかし彼女はこの校舎で夜中に施設を抜け出して一人で肝試しをしたり、校舎内で秘密の地下室の噂を聞き付けては探しに行き、途中で居眠りしてしまい夜に発見されたこともあった。教師の一人は苦笑いしながら彼女をこう表現した。
「男の子以上に男の子だよあいつは。」
高校に入ると通学に時間がかかるようになったが、それでも相変わらず好奇心だけは収まらず、誰もいかないような洞窟を見つけてはそこに入って財宝探しをしたりしていたのである。鉄砲水に襲われたこともあったが、それすらスリリングに楽しい思い出と笑顔で振り替えるほどである。
高校1年時のある日、トロッコのレール跡らしきものを発見したヒナはレールの上を移動するととある山中にやってきてそこで光る石を見つけたのである。石を見つけたヒナは光を見てえらく感動していたがその石こそ後に彼女の人生を変えるものであった。
そんなヒナを大切に見守っていたのが施設の料理長だった猫屋敷尚徳(ねこやしき・ひさのり)だった。東日本の出身で20代からこの施設に勤めている人物である。彼には子供はいたが、彼女の話を息長から聞いて心を痛め、親代わりになろうと決意したのであった。ヒナが2歳の頃に養子縁組を組み、正式に彼女の養父となったのであった。だが、家庭のこともあり引き取るまでは出来なかったのだ。しかし食事は他の子供以上に盛り付けたり、休みの日にはヒナに会いに遊びに来たりしていた。その尚徳に対してヒナも『父親がわり』として接するようになったのであった。
しかし尚徳は一方で彼女の戸籍から実の親を探そうと行動し、隣の県にある家へとやって来たのであった。
「ちょっと大原さん、居てますでしょうか?」
ヒナの実家を突き止めた尚徳の元に出てきたのは大原活蕗(おおはら・かつふき)である。仕事につかず、両親からお金をもらっているだけという情けない男であった。そんな活蕗に尚徳は睨み付けるような表情で問いかけた。
「あんたは子供を施設に残したまま一体何をしているんだ?」
すると活蕗は尚徳を睨み付けてこう吐いた。
「子供はもういらん!あんたの好きにしろ!!」
そう言うと活蕗は乱暴に扉を閉めたのであった。尚徳は怒りを隠さず扉を叩き続けたが結局は出てこなかったのであった。諦めて帰宅する尚徳の顔は悔しさで滲んでいた。
しかしヒナは相変わらず尚徳になついていたのである。尚徳は“あの日のこと”を口にしないように気をつけてヒナと遊んでいた。
そのヒナもついに施設を出るときが来たのである。引き取ることができない尚徳は涙をこらえてヒナに声をかけた。
「これから大変だと思うけど頑張ってくれ!何かあれば僕に連絡して!」
ヒナは笑顔で尚徳を見つめていた。
「本当にありがとうございました!また連絡します!」
息長は彼女の行く先を心配していた。まだ就職先が決まるまで住ませてあげるべきか悩んでいたのであった。しかしヒナは尚徳の元にお世話になることも息長の心遣いにも「自分のためにならない」と断っていた。自分でなんとかすることが彼女らしさかもしれないのだ。
そしてヒナは施設を出ることとなった。金一封は施設に募金し、戸籍は尚徳に預けて彼女は施設を後にしたのであった。ヒナが知っているのは自分が1988(昭和63)年4月8日生まれということだけである。そして彼女は後にとんでもないことに巻き込まれることに今はまだ知る由もなかった。
ここに子供がたくさんいて、18歳まで住むことが出来るという。この施設にいるある少女は行く宛てもなく、就職先も決まらぬままここを出ることとなっていた。
少女の名前は『猫屋敷日奈凛(ねこやしき・ひなりん)』という。愛称はヒナである。
「ヒナ、ここを出ても大丈夫か?」
職員の男性が心配そうに声をかけてきた。しかしヒナは優しい笑みで彼に言った。
「大丈夫ですよ!なんとかなりますから!!」
ヒナの自信を秘めた強い言葉に職員は安堵しつつも不安を隠せなかったのである。
ヒナは生まれたときから家族がいなかった。気がついた時には施設の入口の前に置かれたダンボールの中に居たのであった。そのダンボールの中には彼女の戸籍と少しばかりの金一封が入れられていたという。
そのダンボールを見つけたのは施設の園長である息長儀房(おきなが・のりふさ)である。夜に出張から帰ってくるとたまたま置かれていたダンボールに気づき、中を開けるとまだ一歳にも満たないヒナが弱った状態で横にぐったりしていたのである。
「やばい、このままでは死んでしまう……!」
不安を募らせた息長はすぐに空き部屋へと連れていき、そこでミルクを飲ませて風呂に入れてあげた。その時の息長の表情からは「助けたい」という必死さが滲み出ていたのだ。
息長の看護が実り、ヒナは体調を回復させることが出来たのであった。安堵したのか息長の目から少し涙が出ていたという。
その後、彼女は健康に育ったためか他の子供たちよりたくましくなってきたのであった。明るい性格で何事にも最前線に立ち、周りを引っ張ってきた。学校でも成績優秀でスポーツ万能で人気者となっていた。
ヒナの通った小、中学校は木造校舎であった。しかし彼女はこの校舎で夜中に施設を抜け出して一人で肝試しをしたり、校舎内で秘密の地下室の噂を聞き付けては探しに行き、途中で居眠りしてしまい夜に発見されたこともあった。教師の一人は苦笑いしながら彼女をこう表現した。
「男の子以上に男の子だよあいつは。」
高校に入ると通学に時間がかかるようになったが、それでも相変わらず好奇心だけは収まらず、誰もいかないような洞窟を見つけてはそこに入って財宝探しをしたりしていたのである。鉄砲水に襲われたこともあったが、それすらスリリングに楽しい思い出と笑顔で振り替えるほどである。
高校1年時のある日、トロッコのレール跡らしきものを発見したヒナはレールの上を移動するととある山中にやってきてそこで光る石を見つけたのである。石を見つけたヒナは光を見てえらく感動していたがその石こそ後に彼女の人生を変えるものであった。
そんなヒナを大切に見守っていたのが施設の料理長だった猫屋敷尚徳(ねこやしき・ひさのり)だった。東日本の出身で20代からこの施設に勤めている人物である。彼には子供はいたが、彼女の話を息長から聞いて心を痛め、親代わりになろうと決意したのであった。ヒナが2歳の頃に養子縁組を組み、正式に彼女の養父となったのであった。だが、家庭のこともあり引き取るまでは出来なかったのだ。しかし食事は他の子供以上に盛り付けたり、休みの日にはヒナに会いに遊びに来たりしていた。その尚徳に対してヒナも『父親がわり』として接するようになったのであった。
しかし尚徳は一方で彼女の戸籍から実の親を探そうと行動し、隣の県にある家へとやって来たのであった。
「ちょっと大原さん、居てますでしょうか?」
ヒナの実家を突き止めた尚徳の元に出てきたのは大原活蕗(おおはら・かつふき)である。仕事につかず、両親からお金をもらっているだけという情けない男であった。そんな活蕗に尚徳は睨み付けるような表情で問いかけた。
「あんたは子供を施設に残したまま一体何をしているんだ?」
すると活蕗は尚徳を睨み付けてこう吐いた。
「子供はもういらん!あんたの好きにしろ!!」
そう言うと活蕗は乱暴に扉を閉めたのであった。尚徳は怒りを隠さず扉を叩き続けたが結局は出てこなかったのであった。諦めて帰宅する尚徳の顔は悔しさで滲んでいた。
しかしヒナは相変わらず尚徳になついていたのである。尚徳は“あの日のこと”を口にしないように気をつけてヒナと遊んでいた。
そのヒナもついに施設を出るときが来たのである。引き取ることができない尚徳は涙をこらえてヒナに声をかけた。
「これから大変だと思うけど頑張ってくれ!何かあれば僕に連絡して!」
ヒナは笑顔で尚徳を見つめていた。
「本当にありがとうございました!また連絡します!」
息長は彼女の行く先を心配していた。まだ就職先が決まるまで住ませてあげるべきか悩んでいたのであった。しかしヒナは尚徳の元にお世話になることも息長の心遣いにも「自分のためにならない」と断っていた。自分でなんとかすることが彼女らしさかもしれないのだ。
そしてヒナは施設を出ることとなった。金一封は施設に募金し、戸籍は尚徳に預けて彼女は施設を後にしたのであった。ヒナが知っているのは自分が1988(昭和63)年4月8日生まれということだけである。そして彼女は後にとんでもないことに巻き込まれることに今はまだ知る由もなかった。
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