ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第6章・ヒナの旅立ち

雪と竜太と日奈凛と④

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雪の行方不明のためヒナと竜太はとにかく雪を見つけないと……という気持ちに駆られたのである。

2006年5月6日夜7時2分……

竜太は左腕に腕時計のようなカウントウォッチをはめていた。時間も表示されているが、人助けや人のために何かをするとポイントが増えるという特殊な物で悪いことをしてもポイントは減らないが、これを15日間の内に5500ポイントを集めなければ再び裁判にかけられるとのこと。竜太は一応は意識していないが、ポイントを集めれる人格があるか試そうと考えたのである。

「すみませーん、僕の知人の友達が行方不明になったので情報提供よろしくお願いします!!」

必死に情報を呼び掛け、ポスターを配ろうとするもしかし街中に出ると犯罪者の肩書きがある竜太は誰からも相手されない。

「やだー!!立てこもり犯だ逃げろー!!」

「ママ……あの人誰ー?」

「あの人は犯罪人よ。近づいちゃだめ!!」

竜太は街頭で情報提供を呼び掛けるも犯罪者の肩書きが前歩きし、情報すら得られないのだ……

「悪いこと……するんやなかったな……」

落胆する竜太にヒナは発破をかけたのである。

「竜太さん、ここで諦めたらダメですよ。あなたは本当は優しい人だから絶対誰かが声をかけてくれるはずです!!」

「んなわけないやろ……誰もシカトするわ……」

するとある老婆が歩いてきて竜太に声をかけに来た。

「あーんた、ここで何しているの?」

「罪を償うために社会奉仕を……」

「偉いわな。あんたはあんな事件を起こしたけど若いときは若気の至りであんなことしてしまうのは仕方ないわ。」

「犯罪に仕方ないもくそもない……僕は悪い最低な人間です……」

「私からすりゃ……例え元犯罪者だろうと更正しようと努力して必死に活動する人間を罵る連中の方が最低な人間じゃ。あんたは悪意に満ちた目をしていない。だから頑張ってください。」

「………………ありがとう……ございます!」

目の潤んだ竜太は自分の今していることが正しくないと思っていたがそうではないことを知り、頑張っていくことを決めたのである。この日は500ポイントが集まった。

竜太とヒナはサトキのオフィスに宿泊しながら雪の情報提供を呼び掛けた。7、8、9日と日は経つが、まだ情報は得られない。この間に竜太は街のゴミ拾いを手伝い、孤児院のグラウンドで焼きそば店を開いたりするなど自分の出来ることをやってみた。

「あの子、立てこもりしてた子でしょ?」

「見えないわな。」

「全然いい子よね。愛想はいいし、しっかり動いてくれる。」

ゴミ拾いのグループからは『真面目』『愛想いい』『よく動く』、孤児院の人からは『子供に優しい』『なかなかおいしい』『ほんとにあの事件を起こした人なの?』『子供がすごくなついている。安心できる存在なんだな』といった評価が出てきた。ヒナも協力しながら竜太の評判が徐々に回復したときは自分のことのように嬉しく思ったという。

「竜太さん、良かったですね!」

「まだや、雪って子の安否が心配や!!」

それでも竜太は雪の安否を心配していたのであった。すると翌日の5月10日の夜9時過ぎに活動を終えてオフィスの玄関に戻ってきたヒナと竜太の元に大きな箱を抱えた宅配業者の男性がいたのである。
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