ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第9章・世界の歪み

大洪水への序章②(異世界のルーツの話)

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朝、ヒナは竜太がなにかの文献を確認していたのを発見した。

「ヒナちゃん、おはよう。」

気付いた竜太はヒナを呼んでとある本を自分の鞄から取り出したのである。

「何の本?」

「これはこの世界を共通する先祖の事が書かれているんや。大分古代にこの世界に何もない頃に別の異世界から家族がやって来てそこから子孫が枝分かれしていったんやと。」

「わあ!異世界からのご先祖さんね!」

「ああ。古文書には『遠き昔、長(おさ)と名乗りし一族がある異世界から穴を潜り訪れる。』と現代語訳されているんだ。どこから来たかは分からないらしいが……」

「不思議なものよね……」

「不思議、不思議!!それでこの長さん一家が人類をここまで繁栄させたんだから凄いわ!!」

ザザーッと強い雨が降る中、オフィスではなぜかヒナと竜太が先祖の話で盛り上がっていたのだ。

「ヒナちゃんや稲田さんの先祖ってどんな人かな?」

「稲田さんは御父様が山陰地方という場所の出身だからそこにルーツがあるのはわかるわ。私は大原という名前で生まれたけど関西の古都にルーツがあるくらいしか分からないわ……」

「この本にはヒナちゃん達の世界のルーツは記されとらんからなあ…………でも色んな世界に色んなルーツが……」

「竜太さん!!」

竜太を稲田が呼んだ。どうやら先祖のことについて話があるらしい。

「僕らの世界に遠い太古の昔に関西南部……ヒナちゃんの出身の近くに長(おさ)一族がいたんだとさ。一族は後に滅びたけどその一族の一人が異世界に飛んだと話を聞く。この長一族は僕もヒナちゃんも共通の先祖だからもしかしたらその長さんもこの一族の方で皆、先祖がきょうつうしているのかもしれないですよ!!」

「おぉ!!ホンマに!?素敵な縁ですな!!」

稲田の話は竜太も関心を持った。だが、稲田によると長氏の出自は不明であり詳細は分からないという。しかしヒナも竜太も直露も雪も皆も先祖から枝分かれした兄弟みたいなものだと思うと嬉しくなるのは当然であった。

「太古の話だから詳しくは分かりませんが、恐らく我々の先祖の中に共通される方がいるということです。同じ先祖を持つ仲間同士頑張っていきましょう!!」

「おおきにです。頑張っていきましょう!!」

「でも先祖が一緒やということはあの大東とも先祖が……」

「京介、そこまでや!!」

稲田が竜太に共闘を誓うと京介が現実過ぎる発言をしたので竜太が制止した。しかし京介の分析は正しく、あの大東とも…………となる。

「いやあ~僕は現実主義なんで……」

京介は苦笑いしながらそう語る。竜太は呆れて苦笑いしていた。しかし雨はやむ気配を見せず、ルーツの話はまた今度にしようということになった。この日の晩御飯はサトキの特製のヒナの世界でいう玉子焼きと御飯であった。
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