ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第12章・ヒナの国造り

『私の求めていた野球はなかった』

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ハビラに背負われたキララは弱々しい声で呟いたのであった。

「泉……樹理……あなたたちがいう私が求めていた野球はここにはなかったわ……」

ハビラはそれを聞き、キララに質問したのである。

「誰だその二人?」

「私にW様……いや、Wの元に引き寄せた東覧泉(とらん・いずみ)と東覧樹理(とらん・じゅり)の兄弟よ……」

「詳しく聞かせてくれ……」


ここで回想に入り、場面はキララの小学生時代である。というのもキララは元々はヒナと同じ世界で関西圏の出身であった。父親はアマ野球のレギュラー選手で叔父も従弟(叔父の長男・次男)もプロ野球選手という家系に生まれたのであった。友人に誘われて地元の少年野球チーム入りしたキララは女の子でありながら良いプレーを見せており、ある日の練習試合で好投すればスタメン入りが確実視されていたのであった。しかし…………

「あぁ~、道岸打たれたぁ!!」

キララはサヨナラホームランを打たれてしまい、レギュラー入り果たせなかったのだ。しかしその時に彼女はとある狂気に走るのであった。

「自分が打ったから私はレギュラー入れなかったやんか!!」

なんとキララは相手チームのところへ行き、そこの選手に向かってボールを投げつけたのである。ボールは声に気づき後ろを振り向いた選手の背中を直撃。よろけて転倒した時、地面にガラスの破片が落ちていたために彼はその破片で右手首を深く切ってしまったのであった。

「うあああっ!!」

怪我をした選手は痛さから泣き叫び、キララはすぐさま逃走したのであった。しかし、同日夜に合宿所でその事を知った監督に平手打ちを食らったのである。

“パーン!!”

「お前、相手チームの監督から電話があったが相手選手に怪我を負わせたとはどういうことだ!?」

キララは叩かれた左ほほをさすり、涙目で答えた。

「私が……レギュラーほしかったのにあの子が打ったから……あの子が悪いんですっ!!」

「バカ野郎!!そんなことで怪我負わせたのか!?お前の叔父さんがこっちに来るから事情を詳しく説明せえ!!」

監督は怒りを露にし、数分後にちょうど試合を終えて帰宅をしようとしていた叔父の与一郎が合宿所に現れたのである。

「監督さん、“また”ですか?」

「ああ、“また”みたいでしてね……以前にも別の理由で殴ったこともありましたからね……」

彼女は以前にも試合でタックルをしてきたと因縁をつけて相手チームの選手を平手打ちした“前科”があった。与一郎も怒りのあまり、利き腕の左手でキララの右ほほを叩いたのである。

「バカキララ!!お前、何考えてるんだ……!?」

温厚な与一郎がついに切れたのである。キララは涙目になり、叔父に問いかけた。

「叔父さんまでなんで怒るの……?」

「キララ……お前、また野球の試合で負けたからって相手選手にボールをぶつけて怪我を負わせたのか……?お前野球は人を傷つけるスポーツじゃないぞ……だから私は怒っている!!怒る理由がなければ平手打ちなどしない!!私の左手は痛い……お前を殴って痛いのだ。今日はこの左手は負け投手になった上でお前のことだからな……」

キララは涙が止まらなかった。与一郎も怒りの顔を見せて涙を浮かべていた。しかしこのキララの涙が後に歪んだ心に変化する前触れと言うことに誰も気づくことはなかったのだ……
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