ヒナの国造り

第１４章・日常へ戻る時

会議のはじまり③

ガッチ皇帝が現れるとこの会議場の中という世界が揺れたのである。

「皆様、はじめまして。私が皇帝のガッチと申します。」

「はじめまして……」

さすがに誰もが緊張していた(ルミとハビラや鶴鉄川、カタナ等を除く)のであった。

「皆様、緊張なさらずに……」

「緊張するよな……なあ……マル……」

皇帝の言葉に早見は緊張を隠せずパートナーのマルビッシュに話しかけたのである。

「竜太君……顔色が悪いわよ……」

「俺も皇帝様に会うのははじめてだ……緊張のあまり少しのぼせたようで……」

ヒナが緊張のあまり逆上せて頭がフラフラし始めた竜太を心配していたのであった。すると……

「鶴さん……あの方の体調が悪そうだ……何か冷たい飲み物を差し入れてあげなさい。」

「はい！！」

竜太は皇帝の気遣いに感動した。というのも何も語らないのにのぼせと理解して冷たいものを用意してくれるよう鶴鉄川に頼んだことである。国を治める皇帝が庶民の竜太に対して見せた優しさは竜太の心を揺るがしたのであった。気がつけば逆上せも回復していたのである。

「ああ……皇帝様……本当にありがとうございます……」

「いえいえ……体調には気を付けてくださいね。」

竜太の目もとが潤んでいた。感動が半端ないようで竜太はいつにもない幸せを実感していたのである。


その時、ある人物が暗くて狭い場所にいたのである。床(？)を覗きながらじっと下を見つめていたのである。

「必ず……狙うのだ！！」

吹き矢らしきものを懐から取り出して射とうとしたようだ……が……

「ちょっと鶴さん……天井の私が指を指した部分を槍で突いてみてくれないか？」

鶴鉄川は皇帝が指をさした部分を槍で突くと天井の一部分がきれいに落ちたのである。


すると吹き矢を射とうとした男の真下の足場がうまいこと落ちて男は転落したのである。

「ふぉぉぉーっ！！」

男性が転落すると会議室であった。すると鶴鉄川は槍を男の顔に突き付けたのである。

「お前は……誰だ？」

「川口レアード(かわぐち・れあーど)……です……」

「お前、何をしようとしていたのだ？」

「生活が苦しくて……こう……」

すると問い詰める鶴鉄川を皇帝がなだめたのである。

「鶴さん……やめなさい。彼に私が持っている金貨の一部を渡してあげなさい。」

「しかし…………！？」

「彼のような人間は事情があって道を踏み外したのだろう。世の中を生きるために正しい道を歩まなければならないが、それが出来ない者もいる。それを救ってあげるのが我々ではないだろうか？」

すると男性は涙を流したのである。

「うぅ……申し訳ございませんでした……これからは心を入れ替えて頑張って参ります！！」

「ええ……もう道を踏み外さないように。最後のチャンスを生かしてくださいね。」

「はい…………」

男は皇帝の言葉に涙を浮かべて鶴鉄川から金貨を受けとると会議室を去ったのであった。男が外に出るとある人物がいたのである。

「話は偶然だが聞いていた……もう道を外さないようにな……」

「誰かは分かりませんがありがとうございます……必ず更正したい……」

「ならここであったのも何かの縁。私と一緒に平和を求める旅に出ないか？」

「良いのでしょうか？」

「ああ、良いとも。私は“Ａ”“Ｕ”“Ｓ”“Ａ”と書いて『オーサ』という。仲間もみんなアットホームな連中だ。よろしく頼むよ。」

「僕は川口レアードです。こちらこそよろしくお願いします。」


会議室内……皇帝は男が出ていくとニコリと笑顔を見せたのである。

「わずかな貯えをもらえた上に仲間が出来て彼は幸せだな。」

ヒナは皇帝の言葉を聞いて一瞬「？」が頭によぎるもさっきの男性のことかなと思ったのである。

「(本当に優しい方……)」

ヒナもまた竜太と同じく皇帝の器の大きさに心を惹かれたのであった。