ヒナの国造り

第１６章・ステラガーデン編

ヒナの未来③

　ヒナを恐怖に陥れる男は“西覧せいらんマルクス理湖弐りこに”という人物であった。ただ彼がどれくらいの立場か等は不明である。西覧は再び温厚な笑みを見せてヒナに話しかけたのである。


　「まあ、君が脱獄しても私に責任がある訳じゃないから構わない。ただ君が脱獄すれば私にも不利な点はある。くれぐれも脱獄しないでくれたまえ。もししたら・・・」


　西覧は再び恐怖の形相を見せたようでヒナの目には異常な涙が溢れ、額からは汗がダクダクと流れてきた。


　「怒るよっ！！！」


　「(・・・もう、やだ・・・！！)」


　“プルルルルル・・・”


　突然西覧の電話が鳴り、彼はそれに対応したのであった。


　「もしもし、西覧です。ああ、ミシルか。もう少ししたら帰るから。すまんな・・・いつもありがとうな。」


　“プッ！！”


　「私の妻だ。なかなか気を利く素晴らしい女性だ。君もそういう女性になりたいなら私は処刑回避を訴えてもいいがな・・・では失礼。」


　西覧は意味深なあることをちらつかせて部屋を去ったのだ。するとヒナはその場で泣き崩れてしまったのであった。


　「なんで・・・私の人生って・・・こんな・・・ことばかり・・・な・・・の・・・？」


　大量の涙をこぼし、今までためていたストレスをすべて吐くかのような勢いであった。そしてこの日はもうヒナの元に誰も来ず、ヒナは気持ちを落ち着けるために緑の本を読んでいたのであった。


　一方、松浦はベアトリクスに対してある話をしていたのである。


　「ねえ、父方の家族を捨てるってやっぱり罪なのかなあ？」


　「・・・私も父方のことは詳しくわかりません。ですが、事情があれば捨てざるを得ないのも仕方ないのかもしれません。」


　「そうか・・・そうかもしれないな。僕は小さい頃に親戚に父を殺されていつのまにか松浦家にいたんだ。松浦は母方でそこで生きていくことを決意して父方と見切りをつけたんだ。そして警備隊として一時期活動もしたことがあるよ。」


　「私もいつのまにか父方を離れていたの。しかも戻ろうにも皇帝一族とあって戻ることは出来ない・・・寂しさは松浦さんと同じかもしれません・・・でも一族の一部の人達と交流があるから幸いかもしれません。」


　「・・・僕も父方従兄と交流がある。日紙を捨てても彼だけはまた別の存在さ。」


　すると松浦は懐に隠し持っていた小さな刀を天井に投げたのである、


　「そこに潜伏してるのは誰や！！こそこそしてないで出てこい！！(後でキララちゃんに謝らないとな・・・)」


　「ふふふ・・・よく気付いたな。」


　すると天井の一部分が開き、怪しい男性が現れたのである。