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第4章 深い森に迷う二人の姉
第223話 面倒事
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冒険者ギルドの四階。日が傾き焼けるような日差しで、廊下がオレンジに照らされている。グレンとクレアが差し込む日差しが眩しい廊下を並んだ歩いている。廊下の先には第一会議室と書かれた扉が見える。近づく第一会議室を見たグレンは顔をしかめて両手をあげた。
「あーあ。面倒くせえな。どうせろくなことじゃない」
「こーら! そんなこと言わないの! それにまだ何も言われてないですよ」
「ふん。言われる前から分かるさ。面倒事だってのな」
グレンとクレアはギルドマスターのキーセン神父から呼び出されていた。二人揃って呼ぶ出される時は困難な仕事を命令されることが多くグレンは愚痴っていた。
第一会議室に到着しグレンは扉をノックする。少しして静かに扉が開き、キーセンが姿を現す。
「やぁ。わざわざ呼び出して悪かったね。入ってくれ」
ニコッとほほ笑み扉を押さえて体を横にして二人に中へ入るように促す。二人はキーセンの横を通って第一会議室の中へと入った。
キーセン神父は扉を閉めると並べられたテーブルを指してグレン達に声をかける。
「今アメリアさんが茶を淹れてくれている。それとタワー君が後で来るから座ってもう少し待ってくれ」
「居ますよ……」
「うわ!!」
声がして振り向くとタワーがグレンの後ろに立っていた。久しぶりに気配を消された、グレンは目を大きくひどく驚いていた。
「タワー! もう…… 脅かすなよ。いつから俺の後ろにいやがった!」
「そっそれは…… グレンさんが廊下で面倒くせえって言ってたくらいから…… もが!!!」
「余計なこと言うんじゃねえ!!!」
廊下を指しながら話すタワー、呼び出されたことを愚痴っていたことをばらされたグレンは彼の口を慌てて押さえる。クレアはグレンの行動に額に手を置いて首を横に振っていた。
二人の会話を聞いていたキーセン神父は吹き出す。
「ぷはははっ! 確かに面倒くさいことだよ。さぁ座ってくれ」
キーセン神父の言葉にグレンは気まずそうにタワーの口から手をはなす。タワーはせき込んで苦しそうにしていた。クレアは苦笑いをするのだった。
第一会議室に置かれた円卓に三人は並んで座る。キーセン神父は彼らと向かい合うようにして座った。少しいてアメリアが来て茶を各自の席に置いていきキーセン神父の横に座った。
アメリアが席につくとキーセンは口を開く。
「テオドールに福音派の一行が来ているのは知っているね?」
「あぁ。さっき死体から借金回収してたら絡まれたぜ」
「ははっ。彼らにとって主に召された魂は神聖だからね。その器である体は主に感謝し埋葬しなければならないんだ。戦場でもそれを持ち込んで一人の貴族の死体回収しようとして三人の死者を出してけどね……」
両肘を組んで両手を組んで笑うキーセン神父だった。ただ、彼の表情はにこやかだが目の奥は鋭く怒りに満ちていた。
「なぜ彼らがここに来ているかというと…… ディエゴ月の第三日曜日。つまり聖者の復活日を新大陸で行うためだ」
キーセンの言葉に真剣な顔でうなずくタワーとクレア、横でグレンは視線をそっと外した。クレアはグレンに顔を向けた。
「グレン君…… 聖者の復活日のこと知ってますか?」
「はぁ!? えっと…… それは…… あれだ! 祭りして休める日だ!!」
話を振られたグレンは一生懸命絞り出した答えが休日だった。呆れた顔をするクレアと吹き出しそうになるのを必死に押さえるタワーだった。
ほほ笑むキーセン神父の横でアメリアの眉間にシワを寄せ目を光らせた。
「あなた!!! 仮にも教会の組織に属しているのに知らないのですか!!!」
「えぇ!? いやだって…… そういうの面倒だし…… 別に冒険者支援課に必要な知識でも……」
「キッ!!!」
アメリアに睨まれしょぼんとして小さくなるグレンだった。彼は不機嫌そうに口を尖らせ余計なことをつぶやく。
「ったく…… 義姉ちゃんが余計なこと聞くから俺が怒られたじゃないか……」
「アメリアさーん。グレン君はまったく反省してないみたいですよ」
「んまぁ!!! グレン!!! あなたと言う人は!!!」
「おっおい! やめろ!」
睨みつけてくるグレンにクレアは舌を出して笑っている。二人を見てキーセンは笑顔でアメリアに声をかける。
「まぁまぁ。アメリア。彼は冒険者ギルドに所属しているんですよ。教会はその管理者に過ぎません」
「そうですけど……」
「良い機会です。グレン君に聖者の復活日を教えて上げなさい」
「はっはぁ…… わかりました。いいですかまず聖者の復活日というのはラティアス復活伝説が起源になっています」
グレンを一瞥しアメリアは立ち上がりラティアス復活伝説の話を始めた。うつむいてグレンは恥ずかしそうにして話を聞くのだった。
「はるか昔…… 神獣殺しと呼ばれたエルシア帝国の王ディエゴの子ピエトロは暗黒の王でした。彼は部下からの自分の地位を脅かされるという妄言を受け神獣討伐に協力したリア族を弾圧しました」
ピエトロの弾圧から逃れたリア族の前に聖人ラティアスが現れた。彼は女神アーリアの使徒であり、リア族を導きピエトロの支配地域から離れタイロンの丘へ連れて行った。
リア族は聖人ラティアスから、女神アーリアの預言を授かりタイロンに町を造り暮らした。女神アーリアの言葉はやがてタイロン町を中心に世界へと広がっていった。世界最大の宗教アーリア教が誕生した瞬間である。
ちなみに女神は女神でありアーリアという名前ではない、ラティアスが伝えリア族が広めてためラーリアと便宜上呼ばれるようなった。ラーリアという言葉がなまりいつの間にかアーリアへと変わり現代では女神アーリアと呼ばれるようになった。
タイロンの丘に町が出来て十数年後…… 広まったアーリア教は当然ピエトロに見つかることになる。ピエトロは多数の軍勢をタイロンの丘へ派遣した。タイロンの丘を囲んだピエトロはリア族にラティアスの身柄を要求した。リア族の意見は割れたが最終的にラティアスと最後まで抵抗することを決めた。
だが、ラティアスはほほ笑み自身が次の満月で復活とすると告げ、一人でピエトロの軍へと行ってしまった。捕虜となったラティアスはタイロンの丘の中心で処刑が行われた。バラのように棘がついたクレセントツタの茎で磔にされラティアスはその心臓をロングサーベルで貫かれ火あぶりにされた。リア族はラティアスの助言に従い、ピエトロへの無条件従属を条件に延命された。
悲しみにくれるリア族だったが、彼が告げた通りに満足の夜にタイロンの丘に流星が降り注ぎラティアスは処刑された場所に突如として現れ復活した。復活したラティアスの姿は流星のように輝いていたという。彼はタイロンの丘を自らの足で歩いて荒野へと消えたという。ラティアスが消えた方角と残った足跡はピエトロの居城へ向けられいたという。
「以上が聖者ラティアスの復活伝説です。聖者の復活日というのはラティアスの復活を祝う祝日なんです……」
長い話を終えて得意げにほほ笑みアメリアがグレンに視線を向けた。微笑んでいたアメリアがグレンを見た瞬間に眉間にシワを寄せ般若のような顔になった。彼女の鋭く尖らせた目の瞳には腕を組んだ姿勢で、前後に頭を動かし白目をむくグレンが映っている。
「グレン!!!!! あなたって人は!!!」
「はっ!!!」
目を大きく見開いてハッとしてよだれを拭うグレンだった。彼は首を横に小刻みに動かし肩を動かしてたりして、明らかにしていた居眠りを必死にごまかす。
「あなたちゃんと聞いてましたか?」
「もっもちろんです!! ラティアスさんって偉大っすね!!」
必死にうなずこ記憶に残った単語を絞り出すグレンだった。あきれて怒る気を無くしたアメリアは小さく息を吐いて着席する。
「まったく…… 最近の若者はこれだから…… やり方は賛同できませんが福音派の厳しさは時に必要ですわね」
「まぁまぁ。信徒の信心の薄さは我々の努力不足だよ」
「そうですが…… はぁ。私も修行がたりませんね……」
ため息をつくアメリアの肩に優しくキーセン神父が手を置く。アメリアは恥ずかしそうに頬を赤くしていた。目を覚ましたグレンは頭をかきながらキーセン神父に顔を向けた。
「つまり福音派の奴らが聖者の復活日を祝うんだろ? それの何がダメなんだ? 好きにやらしてやれよ」
「それはね…… タワー君、頼む」
キーセン神父は顔をタワーに向けた。返事をしてタワーが話を始める。
「はっはい。聖印書によれば聖者ラティアスは仮名で本当の名前はラーミアと言われています。初代聖女ですね」
緊張し声を震わせタワーが話をしている。グレンは相槌を打って彼の話を聞いている。
「福音派の間では聖女ラーミアが見つかり。聖者の復活日に披露しようとしていると……」
「聖女って…… オフィーリアがいるじゃねえか…… はっ!」
ハッとするグレンにキーセン神父がうなずく。クレアも真剣な表情へと変わった。
「そう。彼らは新たな聖女を擁立しようとしている。その先にある狙いはアーリア教会の主流派への返り咲きだろう。かつては聖女の存在すら否定していたというのにね……」
「あの人たちはまたあの悲劇を繰り返そうと言うのですか!?」
アメリアが立ち上がって少し大きな声をあげキーセンに神父に訴えかける。福音派による弾圧は現生主義派に深く刻まれている。キーセン神父やアメリアは弾圧の現場を何度も目にしてきたのだ。
「あぁ。そんなことをさせてはいけない。特にここで教会がまた分裂するようなことがあればせっかく落ち着いた世界が混乱するだろう」
キーセン神父がいつになく低く真面目なトーンで話している。グレンがキーセン神父に口を開く。
「俺達に聖女の調査をって話だろうけど…… それってまずは冒険者にやらせることじゃないか?」
「あぁ。そうだよ。ただ…… もう八人も調査に向かった冒険者が消えているからね」
「そういうことか」
グレンが納得したようにうなずいた。既に三つの冒険者パーティが福音派が擁立する聖女の調査に派遣されたが全員行方不明になっている。そのためグレン達にお鉢が回って来たというわけだ。
「では私達の任務は偽物の聖女の排除……」
「いや。まずは噂の真相の調査だ。聖女の捜索を見つけ排除するかどうかは…… 任せる」
「わかりました」
排除と言われキーセン神父は小さく首を横に振り返事をした。キーセン神父の言葉にクレアは真面目な顔で静かにうなずいた。キーセンは満足そうに笑うと両肘をテーブルの上について手を組んだ。
「福音派は深層の大森林の北側にオフィーリア様の許可をもらい福音派専用のガーラム修道院を築いている。彼らの聖女がいるとすればおそらくそこだろう」
「なんだよ。場所が分かっているなら簡単だな」
グレンの言葉にタワーが首を横に振った。
「そっそれは表向きです…… 修道院は強固な壁に囲まれ雇われた兵士もいます」
「あぁ。聖女を擁立した際に聖都として機能させたいんだろう。さしずめ裏聖都ってところだね」
「わかりました。まずはガーラム修道院について調べてみます」
クレアの言葉にキーセン神父は静かにうなずいた。グレンとクレアは偽聖女捜索に深層の大森林へと向かうことになった。
「あーあ。面倒くせえな。どうせろくなことじゃない」
「こーら! そんなこと言わないの! それにまだ何も言われてないですよ」
「ふん。言われる前から分かるさ。面倒事だってのな」
グレンとクレアはギルドマスターのキーセン神父から呼び出されていた。二人揃って呼ぶ出される時は困難な仕事を命令されることが多くグレンは愚痴っていた。
第一会議室に到着しグレンは扉をノックする。少しして静かに扉が開き、キーセンが姿を現す。
「やぁ。わざわざ呼び出して悪かったね。入ってくれ」
ニコッとほほ笑み扉を押さえて体を横にして二人に中へ入るように促す。二人はキーセンの横を通って第一会議室の中へと入った。
キーセン神父は扉を閉めると並べられたテーブルを指してグレン達に声をかける。
「今アメリアさんが茶を淹れてくれている。それとタワー君が後で来るから座ってもう少し待ってくれ」
「居ますよ……」
「うわ!!」
声がして振り向くとタワーがグレンの後ろに立っていた。久しぶりに気配を消された、グレンは目を大きくひどく驚いていた。
「タワー! もう…… 脅かすなよ。いつから俺の後ろにいやがった!」
「そっそれは…… グレンさんが廊下で面倒くせえって言ってたくらいから…… もが!!!」
「余計なこと言うんじゃねえ!!!」
廊下を指しながら話すタワー、呼び出されたことを愚痴っていたことをばらされたグレンは彼の口を慌てて押さえる。クレアはグレンの行動に額に手を置いて首を横に振っていた。
二人の会話を聞いていたキーセン神父は吹き出す。
「ぷはははっ! 確かに面倒くさいことだよ。さぁ座ってくれ」
キーセン神父の言葉にグレンは気まずそうにタワーの口から手をはなす。タワーはせき込んで苦しそうにしていた。クレアは苦笑いをするのだった。
第一会議室に置かれた円卓に三人は並んで座る。キーセン神父は彼らと向かい合うようにして座った。少しいてアメリアが来て茶を各自の席に置いていきキーセン神父の横に座った。
アメリアが席につくとキーセンは口を開く。
「テオドールに福音派の一行が来ているのは知っているね?」
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「ははっ。彼らにとって主に召された魂は神聖だからね。その器である体は主に感謝し埋葬しなければならないんだ。戦場でもそれを持ち込んで一人の貴族の死体回収しようとして三人の死者を出してけどね……」
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「グレン君…… 聖者の復活日のこと知ってますか?」
「はぁ!? えっと…… それは…… あれだ! 祭りして休める日だ!!」
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「あなた!!! 仮にも教会の組織に属しているのに知らないのですか!!!」
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「キッ!!!」
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「ったく…… 義姉ちゃんが余計なこと聞くから俺が怒られたじゃないか……」
「アメリアさーん。グレン君はまったく反省してないみたいですよ」
「んまぁ!!! グレン!!! あなたと言う人は!!!」
「おっおい! やめろ!」
睨みつけてくるグレンにクレアは舌を出して笑っている。二人を見てキーセンは笑顔でアメリアに声をかける。
「まぁまぁ。アメリア。彼は冒険者ギルドに所属しているんですよ。教会はその管理者に過ぎません」
「そうですけど……」
「良い機会です。グレン君に聖者の復活日を教えて上げなさい」
「はっはぁ…… わかりました。いいですかまず聖者の復活日というのはラティアス復活伝説が起源になっています」
グレンを一瞥しアメリアは立ち上がりラティアス復活伝説の話を始めた。うつむいてグレンは恥ずかしそうにして話を聞くのだった。
「はるか昔…… 神獣殺しと呼ばれたエルシア帝国の王ディエゴの子ピエトロは暗黒の王でした。彼は部下からの自分の地位を脅かされるという妄言を受け神獣討伐に協力したリア族を弾圧しました」
ピエトロの弾圧から逃れたリア族の前に聖人ラティアスが現れた。彼は女神アーリアの使徒であり、リア族を導きピエトロの支配地域から離れタイロンの丘へ連れて行った。
リア族は聖人ラティアスから、女神アーリアの預言を授かりタイロンに町を造り暮らした。女神アーリアの言葉はやがてタイロン町を中心に世界へと広がっていった。世界最大の宗教アーリア教が誕生した瞬間である。
ちなみに女神は女神でありアーリアという名前ではない、ラティアスが伝えリア族が広めてためラーリアと便宜上呼ばれるようなった。ラーリアという言葉がなまりいつの間にかアーリアへと変わり現代では女神アーリアと呼ばれるようになった。
タイロンの丘に町が出来て十数年後…… 広まったアーリア教は当然ピエトロに見つかることになる。ピエトロは多数の軍勢をタイロンの丘へ派遣した。タイロンの丘を囲んだピエトロはリア族にラティアスの身柄を要求した。リア族の意見は割れたが最終的にラティアスと最後まで抵抗することを決めた。
だが、ラティアスはほほ笑み自身が次の満月で復活とすると告げ、一人でピエトロの軍へと行ってしまった。捕虜となったラティアスはタイロンの丘の中心で処刑が行われた。バラのように棘がついたクレセントツタの茎で磔にされラティアスはその心臓をロングサーベルで貫かれ火あぶりにされた。リア族はラティアスの助言に従い、ピエトロへの無条件従属を条件に延命された。
悲しみにくれるリア族だったが、彼が告げた通りに満足の夜にタイロンの丘に流星が降り注ぎラティアスは処刑された場所に突如として現れ復活した。復活したラティアスの姿は流星のように輝いていたという。彼はタイロンの丘を自らの足で歩いて荒野へと消えたという。ラティアスが消えた方角と残った足跡はピエトロの居城へ向けられいたという。
「以上が聖者ラティアスの復活伝説です。聖者の復活日というのはラティアスの復活を祝う祝日なんです……」
長い話を終えて得意げにほほ笑みアメリアがグレンに視線を向けた。微笑んでいたアメリアがグレンを見た瞬間に眉間にシワを寄せ般若のような顔になった。彼女の鋭く尖らせた目の瞳には腕を組んだ姿勢で、前後に頭を動かし白目をむくグレンが映っている。
「グレン!!!!! あなたって人は!!!」
「はっ!!!」
目を大きく見開いてハッとしてよだれを拭うグレンだった。彼は首を横に小刻みに動かし肩を動かしてたりして、明らかにしていた居眠りを必死にごまかす。
「あなたちゃんと聞いてましたか?」
「もっもちろんです!! ラティアスさんって偉大っすね!!」
必死にうなずこ記憶に残った単語を絞り出すグレンだった。あきれて怒る気を無くしたアメリアは小さく息を吐いて着席する。
「まったく…… 最近の若者はこれだから…… やり方は賛同できませんが福音派の厳しさは時に必要ですわね」
「まぁまぁ。信徒の信心の薄さは我々の努力不足だよ」
「そうですが…… はぁ。私も修行がたりませんね……」
ため息をつくアメリアの肩に優しくキーセン神父が手を置く。アメリアは恥ずかしそうに頬を赤くしていた。目を覚ましたグレンは頭をかきながらキーセン神父に顔を向けた。
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「はっはい。聖印書によれば聖者ラティアスは仮名で本当の名前はラーミアと言われています。初代聖女ですね」
緊張し声を震わせタワーが話をしている。グレンは相槌を打って彼の話を聞いている。
「福音派の間では聖女ラーミアが見つかり。聖者の復活日に披露しようとしていると……」
「聖女って…… オフィーリアがいるじゃねえか…… はっ!」
ハッとするグレンにキーセン神父がうなずく。クレアも真剣な表情へと変わった。
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アメリアが立ち上がって少し大きな声をあげキーセンに神父に訴えかける。福音派による弾圧は現生主義派に深く刻まれている。キーセン神父やアメリアは弾圧の現場を何度も目にしてきたのだ。
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「あぁ。そうだよ。ただ…… もう八人も調査に向かった冒険者が消えているからね」
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グレンが納得したようにうなずいた。既に三つの冒険者パーティが福音派が擁立する聖女の調査に派遣されたが全員行方不明になっている。そのためグレン達にお鉢が回って来たというわけだ。
「では私達の任務は偽物の聖女の排除……」
「いや。まずは噂の真相の調査だ。聖女の捜索を見つけ排除するかどうかは…… 任せる」
「わかりました」
排除と言われキーセン神父は小さく首を横に振り返事をした。キーセン神父の言葉にクレアは真面目な顔で静かにうなずいた。キーセンは満足そうに笑うと両肘をテーブルの上について手を組んだ。
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「なんだよ。場所が分かっているなら簡単だな」
グレンの言葉にタワーが首を横に振った。
「そっそれは表向きです…… 修道院は強固な壁に囲まれ雇われた兵士もいます」
「あぁ。聖女を擁立した際に聖都として機能させたいんだろう。さしずめ裏聖都ってところだね」
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